客観証拠が充実して来れば、事件当時の半年〜1年以上前のおぼろげな記憶による当事者の思いつき的供述の真偽究明よりは、(記憶違いではないかなどと前後供述の矛盾追及などよりも)提出されたビデオやパソコンの記録やデータの読み取り方その他のデータ相互の矛盾追及などの信用性を争うのが、弁護士の中心的仕事になってきます。
大阪地検の証拠改ざん事件は、このチェック過程で生じたものです。
いろんな民事事件で現場写真や録音テープ・メール等が証拠提出されることがありますが、写真やテープは証拠にならないと言って争うのではなく、「この写真が現場写真としてはこの家が写っていないはおかしい」「この表情・動作からこのように読み取るべきだ」など、内容で争うべきことです。
たまに法律相談で「メールや録音などは証拠にならないですよね!」と(ネットに書いてあったと言って自分の意見が正しいと言う前提で強制的に?)同意を求めて来る人がいますが、「一般論ではなく前後の事情その他具体的内容による」と答えています。
ただし、刑事事件では証明力以前に証拠能力と言う関門がありますので、刑事件の相談ならば一応検討する意味がありますが、一般的にこう言う相談は浮気のやり取りがメールに残っていて、これが配偶者に抑えられた場合、証拠にされるかの相談が圧倒的です・・民事では証拠能力と言う関門がありません。
防犯カメラの設置に反対する動き・・論文を11月8日に紹介したことがありますが、この運動主体が「自白に頼るな」と主張するグループである弁護士会と重なるのが不思議です。
プライバシー保護を理由にいろんな客観証拠のデータ化に反対・または反対論を学ぶための集会をしている・・「証拠収集反対論2(防犯カメラ1)」 November 8, 2014で紹介した論文は、「■九州弁護士会連合会主催「監視カメラとプライバシー」シンポジウム 2004年10月http://www.meinohamalaw.com/activity01/5.htmから見た論文を読んだ印象を書いたものですので、関心のある方は上記にアクセスして原典に当たって下さい。
・・その大会で防犯カメラ設置反対決議したものではないとしても、こう言う講演依頼をして集会を開催していること自体が主催者の意図・体質を表しています。
このような研修集会をするならば、防犯カメラの有用性を主張する学者ああるいは捜査関係者にも講演してもらい、双方の意見を戦わせて会員が公平に判断出来るような集会にすべきです。
一方の立場に有利な講演をしてそれに基づいて防犯カメラが社会に害があることばかり強調する集会運営して行くのでは、防犯カメラと言う客観証拠の発達を阻止したい・・反対するためにあら探しの研修集会をしているように国民が思う・・誤解?するのではないでしょうか?
憲法9条を考える会と言うような趣旨の集会案内を良く見かけますが、双方または複数の意見を聞いてみるのではなく、一方的な意見ばかり聞かされるのが普通です。
弁護士団体が偏った意見の集団ではなく、法制度をよりよくして行くためにいろんな研修をして行くのは良いことだと思っていますが、反対意見の講演ばかりしていて「何でも反対集団」と言う評価が定着していた元社会党のようになってしまうと、マイナス・・本当に良い意見も通り難くなる心配をしています。
11月30日日経新聞朝刊17Pには、脳指紋の研究が進んでいて「未来の科学捜査」と言う見出しで、将来は、無意識でも脳に痕跡が残る・・過去に脳が見たり経験した事柄が科学的に判別出来るようになりそうだと言うサイエンス記事が大きく出ています。
これらも、将来現実化して来ると技術の不確実性・・信頼性が100%でないことを理由に(「専門家による)採用反対論が大きな声になるように思えます。
スピード違反自動検出機器(オービス)も、たまには間違いがありますが、それでもその誤差を自覚して運用すれば良いのであって、その有用性は明らかで、今は定着しています。
技術には当然欠陥や誤作動があり得るので裁判では、万分の1の欠陥でも当該事件になかったか厳密に検証して行くべきですが、それとは別に各種機器や科学検査の否定運動・・防犯カメラのように設置自体反対になって来ると、刑事弁護の立場からの主張としては意味不明です。
ただし、公益と人権(プライバシー)侵害の兼ね合いと言う批判は勿論ありますが、新技術が出ると先ずは反対する材料がないかと言う視点が先にあるような印象を受ける人が多いのではないかが心配です。