アメリカの民主主義と大統領令3(移民)

入国関連法・・アメリカの場合「移民法」に国家安全保障上の緊急条項みたいなモノがあってイラクその他からの入国者を一律に「危険人物」(根拠のない)認定をしたのかも知れません。
ここで横道にそれますが、アメリカ関係報道では「不法移民」と言う報道が多いので,住み着いている移民をイメージしますが、日本の出入国管理法をアメリカでは「移民法 Immigration Acts.」と言う名の法律で管理しているだけのことです。
喩えば、留学ビザ、観光ビザ、ビジネスビザ、就労ビザ・研修・経営ビザ等々・あるいはアメリカのトヨタ工場に働いていた日本人が日本本社へ出張して(数週間帰国)アメリカに帰るときの再入国も全て「移民法」に基づいて申請する仕組みですので念のため・・。
ビザの種類については以下の「「アメリカ移民法基礎」の説明が詳細ですので,参考のため・・関心のある方はご覧下さい。
http://asoajapan.org/investusa/librarydocs/040129RichardGoldstein.pdf
日本では単に不法入国とかオーバーステイと言うのをアメリカの場合,マスコミが「不法移民」と翻訳している可能性があるために,この辺,正確に翻訳してるいるのか不明・・語感が違い過ぎる点に気をつけるべきでしょう。
今回イラク系などの社員が海外出張してアメリカに帰って来たら、再入国禁止されたと言うことが問題になっているようですから、日本語イメージの移民拒否とは大分実態が違っています。
日本人は,外国人が日本人になろうとして来た人だけを「移民」とイメージし,短期ビザ等で来ている人は単に「出入国している人」と言うイメージで分けていますが,(出入国管理法であって,移民法ではありません)法的には入国して来た人の中に就労ビザその他の区別があるだけです。
その後帰化して国籍を取る(これは国籍法)かどうかだけ(帰化した人ではあっても)で「移民」と言う概念はありません。
グーグルで「移民」の辞書検索してもアメリカの移民制度などの説明ばかりで,日本語の説明が出て来ません。
ソモソモ帰化人の熟語自体が,663年に白村江の海戦敗北の結果、「朝鮮半島から帰って来た人」と言う意味(最近では,満州からの引揚者と同じ)でしかありません。
要するに日本語の「移民」の定義がはっきりしないまま、何となくブラジルなどへ定住目的で行った人のイメージが定着している程度で実は意味不明のママですから、アメリカで出入国管理をしているに過ぎないイミグラントを「移民」と翻訳しないで「入国者」と翻訳する方が良いかも知れません。
翻訳の正確性などどうでも良いと思う方がいると思いますが,政治的に見るとかなり重要です。
私はどちらの肩を持つものではありませんが,トランプ陣営の主張では「移民を受入れる基準は主権国家・それぞれの民族が勝手に決めるのが何故悪いんだ」と言う主張があったように思いますが、こういわれると一応尤もに聞こえます。
しかし、民族の仲間として受入れる日本語のイメージする「移民受け入れ」(帰化許可)と,短期に商用や観光等で来る人も含めてどこのクニの人を入れないと言うのとでは次元が違っています。
個々人で言えば誰と同居するか(民族の仲間と認めて帰化を認めるかどうかは)は主観的な要件(好き嫌い)で良いでしょうが,レストランや劇場等で客を宗教や人種の基準で選ぶと言って良いかとなると別問題です。
日本の歌舞伎など関心がないからアラブ人や韓国人が見ないのは勝手ですが,「◯◯人お断り」と言うは行き過ぎでしょう。
高級ホテルやレストランは単価を高くしているだけであって、貧しい人はお金を持っていてもお断りといえないものです。
特定国からのビジネスその他の入国を一律禁止するのも主権の一種ですが,相手が不快感を持つから主権行為とはいえ乱暴なことを言ってよいかどうかは別問題です。
表現の自由があるとしても口に出して言って良いことと悪いことがある・・相手が不快感を持たないように自制し婉曲的方法で接するのが大人の智恵であり国際礼儀です。
この辺の区別なく,「表現の自由があるから何を言おうと勝手だ,誰を移民として受入れるかは主権行為で勝手だ」と言うのは論理の飛躍であり問題のすり替えと言うか、田舎者の智恵です。
(目上の人の家を訪問するのに身だしなみを整えず行ったり、乱暴な口の聞き方をするのは表現の自由の問題ではなく「失礼」と言う次元です)
以上のとおり日本語のイメージする「移民受け入れ」基準と一般的な入国お断りとは次元の違うものですから、翻訳がズレていると日本人に伝わるイメージ効果は大きな差になってしまいます。
話題を大統領令の効力に戻しますと,大統領が直截特定人物を危険と認定することは物理的不可能ですから「このクニ・教徒を危険人物と認定しろ」と言うような一定基準設定の大統領令があったとすれば・・入国手続関連官憲でもない大統領が「司々」の認定手続を経ない個人的意見でイキナリ作れる制度になっていることになります。
入国差し止めの大統領令が法的効力を発揮しているかのような報道によればアメリカの誇る「デュープロセス」「法の支配」尊重主義が本当に機能しているのか不思議・疑問です。
日本人は昔から孔孟の教えを尊びますが,肝腎の中国人の殆ど誰も尊敬していない・・解放後具体的中国人が良く知られるようになると彼らの行動基準にしていないかのように思う人が増えましたが、アメリカも外国には民主主義・自由競争や人権重視を自慢しますが実態はお粗末なのかも知れません。
「イギリス紳士」と習って育ちましたが,イギリスに行ってみると当たり前のことですが「紳士」は殆どいない・・貧弱な人が圧倒的多数でした。
この違いを私は中国の場合,士大夫層と人民が画然と分れているからとし、欧米は市民とピープルの階層分離社会である・・日本のように上下渾然一体社会ではないと書いて来ました。
最近PC(ポリテカルコレクトネスpolitical correctness、)が大流行りと言われますが,政治的にこれが良いとなると誰もが政治禁句を強調してこれを言う人を批判する・・そうすることによって自分が先端人権運動家になったつもりになっていると言われます。
10数年前にこのコラムで書いたことがありますが,共産党支持者・前衛活動家が,女性の地位向上と言いながら自分の妻に対する視線評価が蔑視的なのに(私は自分の能力が低いこともあって,結婚後妻に対する尊敬の念が深まる一方でしたので)驚いたことがあります。
活動家が演説で人権擁護を言ってれば,自分は最先端人権重視家になったつもりになっている人が多いのを昔から実感しています。
外に向かって偉そうなこと言う人は実は怪しいことが多く人権や民主主義を主張する筈の学生運動では、内部の言論の自由や人権無視・・内ゲバに明け暮れていることは周知のとおりですし、弁護士会も外部に向かって偉そうなことを言っていますが,将来的には内部の言論の自由がどうなっているかその内問題になって来るでしょう。
そう言えば日弁連では、総会成立の定足数を設けると言う会則改正案を次回総会議案として出しています。
委任状でよいにしても一定数以上の委任が集まらないと総会が成立しないのですから、将来的には極端な活動家に牛耳られてしまう・・全学連のような空洞化を防ぐ一助になるでしょう。
「少数者の総会招集権を妨害するものだ」と言う反対意見が送られて来ましたが・・。
少数派が僅かな出席者で総会決議を得ようとする方がおかしい・・矛盾に見えますが、難しい駆け引きは分りません。

アメリカの民主主義2(大統領令とは?2)

大統領令に署名さえすれば,イキナリ現場で特定国出身者だけ一律に入国拒否したり拘束したり出来るかのような報道を見ると(報道ぶりからすれば)具体的審査の結果ではないように見えます。
ただし,上記は反トランプ立場?の報道によるだけで,疑いの濃厚な特定国出身だけ厳しく質問・審査したら,怪しい人物が引っかかった・・やはり厳重検査して良かったことになるのかも知れません。
特定国出身到着者全員が入国拒否されたのかどうか知りたいところです。
全員またはこれに近いとなれば具体的審査の結果だと言うのは無理ですから,予め特定国出身者だけ入国させない命令であったことになりそうです。
いずれかについては大統領令自体にどう書いているか見れば直ぐ分ることですから,誰か早くアップデートとして欲しいものです。
※後記2月5日MSN報道で毎日新聞名で大統領令が要約されて出ました。
もしも具体的審査の結果ではなかったとした場合のことですが,
第1に考えられるのは,オバマ大統領が2014年頃に不法入国して15年以上経過している人で子供のいる人には,特別な在留資格(3年間先送り・Deferred )を与えようとして議会(共和党に)に反対されて実現出来なかった政策・DAPA (Deferred Action for Parents of Americans and Lawful Permanent Residents)を,大統領令で断行したことがあります(内容を含めてうろ覚えで正確ではありません)ので、これの撤回署名だったかも知れません。
現状は以下のとおりです。
http://www.cnn.co.jp/usa/35084845.htmlによると以下のとおりです。
「オバマ大統領の移民政策は、子どもが米国籍もしくは合法的な居住者である不法移民(約430万人)については一時的に強制送還の対象から外し、合法的な就労に道を開くというもので2014年に発表された。」
「だがテキサス州を初めとする26州はこれに反発、大統領権限での改革は憲法違反だとする裁判を起こした。15年には連邦地裁が州側の言い分を認めて実施を差し止める決定を下し、高裁でもそれが支持された。」
「民主党の候補指名を確実としたヒラリー・クリントン前国務長官は最高裁の判断は「受け入れがたい」と声明で述べた。一方、共和党の指名候補となるのが確実なドナルド・トランプ氏は「(裁判所は)われわれの安全を守ってくれた」とツイートした。」
上記によると26州が執行停止決定を取っていて,最高裁では4対4の可否同数で決着がつかなかった状態・・高裁決定が維持されている・・効力がないが、訴訟していない26州以外では大統領令が施行されていることになるのかな?
※追記です
2月5日のmsn報道では、今回の入国禁止令はワシントンの連邦地裁で違憲判決?が出て、全米の入国手続再開と出ていますから、個別審査の結果ではなく一律禁止命令だったたように見えますし1地裁で違憲判決が出ても全米で効力があるようです。
【ロサンゼルス長野宏美】中東・アフリカの7カ国からの入国を一時禁止する大統領令について、米西部ワシントン州シアトルの連邦地裁は3日、一時差し止めを命じる仮処分の決定を出した。命令は全米に適用され、即時効力が及ぶ・・」
全国で効力があるとすればオバマの大統領令が全米で執行停止されたままだったことになります。
そうするとAB両地裁で別の判決が出るとどうなるのか?この報道だけではアメリカの制度は意味不明です。
マスコミが一方的に報道していたので,オバマの大統領令がそのまま施行されているとばかり思っている人が多いと思いますが,国内意見の実態は上記のとおり拮抗していたのです。
こう言うややこしい・国論が割れていた状況であったことを日本では全く報道せずに、極論主張のトランプと言うイメージばかりだったので,彼の勝利を「驚き」としているのです。
今,トランプ氏が最高裁判事に推薦している人は保守論客と言うことですから,任命されたら4対4の均衡を破って憲法違反決定になると言われています。
トランプ氏側の言い分は,http://blog.livedoor.jp/wisdomkeeper/archives/52001959.htmlによれば以下のとおりです。
「日曜日の午後にトランプは移民に厳しい大統領令を発令しました。しかし同時にトランプは、ホワイトハウスにて、「・・今回の大統領令と、2011年にオバマ元大統領が発令した大統領令は同じ内容である。彼はイラクからの難民に対するビザの発給を6ヶ月間禁止した。」と述べました。
さらに、トランプは、「イラク、イラン、リビア、ソマリア、スーダン、シリア(無期)、イエメンは一時的に入国に禁止したが、これらの国々はオバマ政権が”テロを支援し訓練している国”と名指しした国々である
「プリーバス首席補佐官は、NBCのインタビューにて「アメリカには325000万人の外国人旅行者が入国している。今回、詳しい入国審査を行う目的で空港で拘束した109人については、オバマ政権と連邦議会がテロを支援、訓練している国として名指しした国から来た者たちだ。」と述べました。
以上によると元々オバマ政権がリストに上げていたクニからの入国審査を強化した結果、一部不審者を拒否したり拘束しただけで、一律拒否したわけではなさそうに見えます。
そうとすれば審査をまじめにしているだけのことになります。
今回の大統領令記載の文言自体を(マスコミの解釈ではなく)早く知りたいものですが、何故かマスコミが翻訳文を報じない・・煽りに徹しているようなので本当のことがよく分りませんが,その内いろんな立場から出て来るでしょう。
※上記2月5日朝のMSNに報道によれば、違憲決定が出たのであれば、個別審査の結果ではなく一律禁止命令であったことが推測されます。
とすればトランプ陣営の「審査強化しただけ」と言う主張は事実に反していたことになります。
繰り返しますが、ここのテーマは国民の多くが支持しているかどうかを知りたくて書いているのではなく,支持さえあれば強制収用所送りなど既存法制度無視の大統領令が今でも有効になる国かどうかを知りたくて書いています。
憲法違反で差し止めになれば良いのではなく,そんな大変な裁判をしない限りさしあたり有効として強制出来てしまうクニかどうかです。
ところで大統領令の位置づけですが,学校で習っている三権分立の原理からしてこれが非常に怪しいと言う関心からこの数日このテーマで書いています。
これまで書いて来たように,アメリカの人道主義と言っても黒人差別、日系人差別(日系人強制収用・・戦後では,クリントン政権の日本標的の100%関税の強迫など)をして来た歴史から見ると人権はアメリカ人・あるいはキリスト教徒だけにあって外国人(白人以外)には人権・・法の保護がないという基本的システムであるような疑いがあります。
トランプ氏の大統領令で具体的事由に関係なく仮に一律入国拒否出来るとしている場合を考えてみましょう。
既存法令無視で大統領令だけでどうしてこんな乱暴なことが出来るかの疑問です。
日本の場合上陸拒否出来る事由は法定(限定列挙)されていて,その中には、総理大臣等が超法規的に「指定したものを拒否し拘束出来る」と言うような乱暴な条項はありません。
入国であれ逮捕などの条件であれ,厳格な法定手続を定めながら,総理または大臣等指定するものを例外とすれば法で拒否理由を限定記載する意味がなくなりますから,そんな法規が国会に上程されたら,それこそ法治国家の全面否定・憲法違反の疑いで大騒ぎになるでしょう。
逆に上記法定事項に該当しても法務大臣は特別に許可出来ると言う逆の救済条項があるだけです・・これなら裁量があっても人権侵害になりません。
出入国管理及び難民認定法
(昭和二十六年十月四日政令第三百十九号)
(上陸の拒否)
第五条  次の各号のいずれかに該当する外国人は、本邦に上陸することができない。
各号省略
(上陸の拒否の特例)
第五条の二  法務大臣は、外国人について、前条第一項第四号、第五号、第七号、第九号又は第九号の二に該当する特定の事由がある場合であつても、当該外国人に第二十六条第一項の規定により再入国の許可を与えた場合その他の法務省令で定める場合において、相当と認めるときは、法務省令で定めるところにより、当該事由のみによつては上陸を拒否しないこととすることができる。」

アラブ7カ国入国拒否(大統領令とは?1)

ここで少し話題が変わりますが、入国禁止に関する大統領令に関して法律家として気になる点を書いておきます。
ただし,ナマの実を知らないで報道だけを前提にしていますので,正確に何が行なわれているのかよく分らないままで気になる点を書いています。
後日徐々に正確な情報が出たら,この意見はその限度で自動的に修正されるものと思ってお読み下さい。
アメリカの価値観は,人種差別・自分が強ければ何をしても良いと言う意味の「裸の」自由主義価値観でないか?と言う基本的疑問でこのコラムを書いて来ました。
英米法のルールオブローは人民を支配者から守るためのものであって,中国の専制君主の支配道具・・命令貫徹のためのマニュアル・法家思想とは方向性が違うと習って来ましたが,本当か?と言う疑問です。
アメリカに都合が良ければ守れと言うが,自分が主導した国際ルールでも自国に都合が悪くなると国際合意を無視する・・国連やユネスコ分担金支払い拒否などの繰り返しがアメリカの行動基本でした。
クリントンも日本に対して100%課税の大統領令署名で脅しましたし、トランプ氏の一方的高関税脅しもWTOルール違反になるか?などハナから問題にしていません・・文句あるなら脱退すると言う基本です。
こう言う自分勝手を繰り返して来たアメリカと日本とは基本的価値観が違っていると言う意見を前提に、安倍総理の価値観外交は便法としては有効だが本質的に違っていることを「2014/02/05/「価値観外交に頼る危険性12(米中韓の一体性4)」その他で書きました。
上記のとおり,私はアメリカは本来の法治国家・人権尊重国家と言えるかの疑問を基本的に持っていますが、今回は対外勝手主義に留まらず国内法制度上も議会無視で何でも出来そうな(上記のとおり報道イメージだけで書いているので正確には乱暴なことは出来ないのかも知れませんが・・)大統領令の効力・・専制・恣意的支配をそのまま許す制度設計・・大統領令1枚でイキナリ入国停止出来る法制度についての疑問を以下書いて行きます。
対外的にルール無視することの多い政府が国内法的にも同じ制度設計だったのかな?と言う疑問です。
外で整理整頓出来ない人が自宅だけ綺麗に片付けられるとは思えないのと同じ発想・・国内人権侵害も同様に酷いのじゃないか?本当は法治国家ではない?と言う疑問が今回の大統領令の騒動によって気になり始めました。
戦時中の(アメリカ国籍を有している)日系人強制収容・資産全面没収は、ルールオブローの国と言われるのに、法によらずにルーズベルトの大統領令だけでやったことです。
三権分立→行政府の長(大統領)は議会の制定した法に従って施行実施するものと思って来た日本人にとっては,驚きでしょう。
日本のような閣議決定すらもいらない・大統領一存で数秒で書ける大統領令とは何か?法に超越する効力があるらしいことに対する疑問です。
日系人と言う枠組みだけで犯罪も何も悪いことをしていない国民を大統領令と言う超法規的命令1つで強制収容→監禁罪や強盗罪を合法化する制度を持っているクニが、専制支配の中国王朝とどこが違うのか?もう一度見直してみる必要がないかの関心です。
一党独裁の中国でさえ党の機関決定等が必要です。
権力闘争を乗り切った習近平は、常務委員会を腹心で固めるだけに留まらず機関決定不要にしたい・・骨抜きを図るために大統領制移行を目論んでいると言われています。
議院内閣制の場合の総理大臣は政令その他重要事項決定には閣議決定が必要であり各省大臣の所管事項を直接行うことは出来ません。
大統領制の場合には各省長官は、命令する部下でしかないので機関決定制度自体不要ですから全面的独裁・・なんらの手続き不要です。
議会議決=法の範囲内しか権限がないからこそ、その範囲内でオールマイティも許されると言う理解が普通でしょう。
ところが立法府の議決に反する大統領令で国民である日系人を拘束できるとなれば、大統領は専制君主とどこが違うかの疑問です。
行政府の大統領が議会議決・・法律・・刑事訴訟手続き等の要件によらずに日系人とはいえ米国籍のある日系人を大統領令を根拠に何故資産没収し強制収容出来たのか?
もしもこれが合法行為であった・・違法な監禁罪、強盗罪に当たらないと言うならば、大統領令が法に優先することになります。
戦後日系人の名誉回復したと言うだけで(犯罪行為をしていないのだから名誉回復など・・当たり前過ぎます)・法によらない人権侵害に携わった人らを強盗や殺人監禁罪等で処罰しないのは、法に優越する大統領令に従ったからと言う解釈によるのでしょうか?
ちなみに、命令に従って法律違反しても違法性がない、責任がないと言い出すとギャングの親分の命令で何をしても良いことになります。
ですから,関与した主な公務員一人処罰されなかったと言うことは,大統領令が人権条項等に反した拘束であっても違法ではないと言う意味でしょう。
今回での入国騒動に戻します。
複雑な移民法に基づいてアメリカ政府から予めビザを得てはるばるアメリカに到着して入国手続している人を、どう言う法制度上の根拠があって、大統領令1つで入国禁止したり拘束出来るようになっているのか不思議な印象を受ける人が多いでしょう。
入国審査官が個別最終判断権を行使した結果言動が怪しかったならばわかりますが、大統領令で特定国出身者だけを(具体的嫌疑なく)一律拒否し拘束出来るかのような報道を見ると、今でも大統領が日系人、中国系と指定する収用命令に署名さえすればすぐにも既存の法令に関係なく強制収容出来る法制度になっているような心配が起きて来ます。
報道の仕方が偏っているのか、上記日系人強制収用を許して来たことや戦後でもクリントン政権が大統領令で対日100%課税で脅して来たことがあることから見ると制度が前近代的なまま残っているようにも見える・・どちらかハッキリしない疑問で書いています。
トランプ氏擁護者は,「どう言う人を入国させるかを決めるのは主権国家として当然の権利である」と言い、今回の措置に対する「支持率が50%を超えている」と言いますが,既にビザ発給されて到着した、形式要件の揃っている筈のひとを出身地域で一律拒否する理由にはならないし、(熱狂的)支持さえあれば,法に基づかず・無視して人権侵害して良いかの議論からすればズレています。
移民規制の妥当性に関しては、昨日書いたとおり,国内に移民との低賃金競争を持ち込んで良いかどうかはよその国のことですから,好きにして下さいと言うことですが,ここの関心はこんな重大なことが議会ではなく,大統領の一存で何故実行出来るのか、法の支配とは何かと言う関心です。
アメリカが宣伝して来た法治国・人権保障国触れ込みの信憑性です。
ただし報道では実態が見えません・・実際にはビザには良いことを書いていたが,到着した人物のチェックをしたら爆弾・銃器を持っていたとか、申告内容の辻褄が合わないなどの場合には,入国審査官の判断で入国拒否したりその場で拘束するのはどこのクニでもしている当然のことです。
トランプ氏が,テロ支援国の7カ国だけ厳重審査しろと言う程度の命令しただけならば法治国として何らの問題もないでしょう。
もしも厳重審査命令だけならば,大騒ぎする必要がない・・反トランプ派マスコミの煽り過ぎです。

産業構造の変化2

11月22日まで民度レベルの重要性をテーマに書いていたのですが、いつの間にかアメリカの民度・ピープルから次期大統領の政策・・異民族思想や意見を参考に持ち込むのは良いが,それを「そのまま国内で通用させるべき」との主張は異民族支配を求めるのと同じだと言う意見に流れてしまいました。
油絵と日本画の違いですが,幕末に入って来た・西欧の遠近法その他の技法を参考にすることで日本画の発展を図るのと油絵そのまま真似する(と言うと叱られそうですが・・素人意見ですが,何となく洋画家に傑作が出ないのはこの傾向があるからです)のとは意味が違います。
(文化人のよって立つ基盤が西欧価値観ですから,その基礎評価が崩れないように当然もてはやしますが,国民は支持していない・・・なれ合いと言うか文化人の評価が高くとも実際の市場評価・・高額で売れているのは日本画中心です。)
音楽分野も同じで,ドコソコで世界的な◯◯賞を取ったと言われるとそのピアニストやバイオリニストが世界で通用するのは素晴らしいとは思うものの自分の好みか?と言うとなかなかピンと来ません。
やはり武満徹のように日本人の魂を揺さぶるような音楽の方に軍配を上げたくなります。
こんな偉い人でなくとも明治に入って来た洋楽を取り入れて早速文部省唱歌のように換骨奪胎したものの方が、日本人の心のにしみ込みます。
年取ったせいか町内会の新年会では,最後の歌唱指導?では唱歌の合唱中心です。
キリスト教やイスラム教の精神にも取るべきところがあれば・・クリスマスを楽しんだり教会結婚式をやったり?バカリではなく取り入れるべきでしょうが,そのままキリスト教徒になる必要があるかは別問題だと言えば良いでしょうか?
11月22日「民主主義の基礎10(産業構造の変化1)」の続きに戻ります。
新興国の台頭→普及品国内生産が無理になると頼れるのは,民度のみです。
世界に伍して行くべき民度としては,独自性が重要で世界の流行を追いかけているだけでは後尾につくしかありません。
新興国の台頭に日本はどのように対処すべきかと言うと,日本武士層の系譜を引く中間層・・その予備軍の庶民も武士の生き方に憧れていることを22日に書きました・・は,もともと内容が充実して中間層になって約千年も政権担当して来ただけのことがあって,新興国と対等な競争に入ってもすぐに地位喪失することはなく,自発的な工夫が出来る労働者や農民層がいくらでも控えています。
戦後アメリカ式大量生産方式導入論が幅を利かして農地の拡大運動が盛んでしたが,一反歩単位の農地を仮に3〜5反歩に統合しても(土地改良法・耕地整理に付いては連載したことがあります)アメリカやオーストラリアの広大な農地との競争力強化には何の関係もありません。
(1万分の1の規模差が1万分の10になっても同じ発想・やり方では競争出来る訳がありません)
そんなことよりも少量でもおいしい米や野菜,牛肉を作る方に精力を傾けた方が良いと気が付いたのが,個々の農民であってマスコミや農学者ではありません。
衣類も同じで,岡山で作る高品質ジーンズが世界を引きつけていますが,量産で勝負していたのでは意味がないコトを現場の人が知っているのです。
欧米の後追いばかり強調し「世界に遅れる」と煽る学者・マスコミは、少しは反省すべきでしょう。
このように日本中間層の足腰はなおしっかりしているので、(幕末に下級武士が活躍したのと同じです)新興国の汎用品生産面の逆襲にそれほど恐れる必要はありませんが,欧米では大変なことになって来ました。
リーダーについて行く社会・・欧米では,少数のエリートを養成して行く方式ですが,これでは,アップルのジョブス氏の例で分るように,エリート1人の御陰でアップルは巨額利益を上げましたが,その殆どの製造は中国の工場で作られています・・・アメリカ国内の製造業従事者に恩恵がなかったのです。
日本やイタリアのように中小企業で特殊なうまいものを作りあるいは数十人のメンバーの手作業で高級品を造り出している民族では,大儲けする人はいませんが,みんなが幸せです。
極上の和牛はあるいはコクのある野菜類は多分粗放農業・大規模組織では作れません。
こうした工夫出来る人が現場に一杯いる・・民度レベルの違いの結果,我が国では生活保護受給者への転落危険度が低いのでトランプ旋風ほどの事態になっていません。
日本でも低賃金・・外国人をドンドン入れて企業自体が安易に低賃金に頼るようになると結果的に脱落中間層が増えて来てアメリカみたいな民族分裂的事態になりかねません。
中国より安い次の新興国の人を入れて競争するようになると,現場の工夫努力のインセンチブが低下し、従業員個々人の工夫チャンス・・も阻まれてしまいます。
企業が社内での工夫努力を求めない・・企業内で現場従業員がああでもないこうでもないと試行錯誤しているとその時間分、目先の生産能率が下がります・・。
そんなことよりも従業員の「時間あたり作業量を多くさせた方が良い」と言う精神でせわしなく経営者が追い立てるだけになると,従業員が工夫努力する余裕がなくなり結果的に従業員の能力低下が進みます。
日本と欧米一般人能力差の原因は、実はこのように「末端は何も考える必要がない・・ただ支持どおり働けば良い」と言うエリートと思考停止を要求されるその他を区別する方式が千年単位で続いて来た差によるのかも知れません。
(個々人の工夫意識を麻痺させるようにしておけば,支配に対する不満が起き難いのは確かで支配に便利でしょう)以前詳しく紹介したので繰り返しになりますが,日本の小作人らしいものの発生は,古代荘園成立時に名望貴族に名義借りしたときと明治維新の地租改正時の2回だけ?ですが,農産品の工夫を続けて来ました。
(明治の地租改正と幕府の伝統的政策であった農地売買禁止令廃止によって,急速に地主小作制度が発達したもの・・維新政府の近代工場労働者層輩出政策によるものであることを、04/10/04「イギリスの囲い込みと我が国の自作農崩壊との相違・農村の窮乏化政策」08/26/09「土地売買の自由化1(永代売買禁止令廃止)」その他で紹介して来ました。)
・・漫画にあるような「長者ドンと小作人」と言う設定は江戸時代には実際には存在しなかった制度・・地主層の発生を幕府は厳しく禁止していましたのでありえないことをあたかも昔からあるかのように・・勝手に歴史改悪して創作しているだけです。
古代荘園への寄進も明治の金納・窮乏化による小作人化もいずれも便宜上地元有力者に名目を「仮託」したに(気持ち)過ぎません・・その後も先祖代々の自分の土地として大事に耕して来ました。
小作人とは言え自分の先祖代々の農地ですから,必死に地味を肥やす努力(これは数世代かかります→長期視野・・環境保全士意識が育つ社会)やとなりの人やとなりの部落より良いものを作りたい意欲満々で千年単位でやって来ました。
地主になったからと言って勝手に小作地の変更など出来ませんし、小作地を取り上げるなどは思いもよりません。
これが日本でエンクロージャーが起きなかった「法理」です。
自分の子孫に残す農地であるからこそ、日夜工夫に励む習慣が身に付いて来たし,陰日なたなく働く習慣になった原因です。

民主主義と郷土愛の必須性4

外国勢力に話題を戻しますと,外国意見を代弁する組織がいくら出来ても却って民意からドンドン遊離して過激になって行くので、いわゆる落ち着いた議論で決めようとしても日本敵視勢力の意見で動いているとした場合,到達目的が違ってくるのですからどこまで行っても平行線・「反対のための反対」になって行くしかありません。
議論をした上で「決まったことを守る」共同体の基本的ルールを無視していつまでもいがみ合って人心の分裂・混乱を引き起こすのを目的にしている組織であるとすれば、融和的社会を共に構築する仲間として付き合うのは無理があります。
国内言論で負けた勢力が国連等海外に足場を築いて日本へ反攻しよう?とするグループは、元は純粋に日本の将来を考えた人の集まりだったのでしょうが・・何回も書いていますが,日本社会は前衛・指導者不要社会なのにそれが分っていない人が自分が指導すると思い上がって?こういう運動しているから誰もついえt来ない・・知らず知らずのうちに海外利益代表意見に影響を受けている人に入れ替わって行きます。
日本赤軍等の極左集団と話し合い解決が無理なように,民意無視の程度差があるものの国外支援を受け始めるとその分国内民意反映しなくなるので,民意遊離性では五十歩百歩・・基礎が同じです。
これが旧社会党消滅の基礎原因です。
11月20日頃に紹介しましたが、もう一度12月6日現在のウイキペデイアの60年安保に関する記事一部を引用しておきます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89%E4%BF%9D%E9%97%98%E4%BA%89
「なお、ソ連共産党中央委員会国際部副部長として、日本をアメリカの影響下から引き離すための工作に従事していたイワン・コワレンコは、自著『対日工作の回想』のなかで、ミハイル・スースロフ政治局員の指導のもと、ソ連共産党中央委員会国際部が社会党や共産党、総評などの「日本の民主勢力」に、「かなり大きな援助を与えて」おり、安保闘争においてもこれらの勢力がソ連共産党中央委員会国際部とその傘下組織と密接に連絡を取り合っていたと記述している[5]」
60年安保騒動はソ連の資金で「反対のための反対をしている」グループが煽っていたコトが今になると判明していますが,元々日本のためにならないことを目的にしているグループと何回議論しても無理があった・・強行採決しかなかったことが分ります。
実は当時の岸総理がこれを喝破していたのですが,ソ連系マスコミは敢えてこれを大きく報道せずに・強行採決の暴挙宣伝ばかりしていたように見えます。
12月8日現在の上記ウイキペデイア記事の一部です。
「岸内閣は緊急臨時閣議声明
「このたびの全学連の暴挙は暴力革命によって民主的な議会政治を破壊し、現在の社会秩序を覆さんとする国際共産主義の企図に踊らされつつある計画的行動に他ならないのであって、もとより国民大多数の到底容認し得ざるところである。
我々は自由と民主主義の基盤の上に初めて真の平和と繁栄が築かれることを確信しているがゆえに、これらを破壊せんとするいかなる暴力にも屈することなく完全にこれを排撃し、以て民生の安定を守り抜かんとするものである。
計画的破壊活動に対して治安当局のとれる措置は当然のところである。
国民諸君においても今回の不祥事件の背後に潜む本質を見極め一層の理解と協力あらんことを要望してやまない。」
「60年安保闘争」は空前の盛り上がりを見せたが、戦前の東條内閣の閣僚でありA級戦犯容疑者にもなった岸首相とその政治手法に対する反感により支えられた倒閣運動という性格が強くなり、安保改定そのものへの反対運動という性格は薄くなっていたため、岸内閣が退陣し池田勇人内閣が成立(7月19日)すると、運動は急激に退潮した。」
「池田首相は動揺を鎮めることに成功。11月20日の総選挙では、社会党と民社党が互いに候補を乱立させた影響もあり、自民党は追加公認込みで300議席を獲得する大勝を収めた[10]。安保条約の改定が国民の承認を得た形になり、現在(2015年)まで半世紀以上にわたり、安保条約の再改定や破棄が現実の政治日程に上ることはなくなっている。」
上記のとおり岸内閣の政治姿経歴の弱みを突いたので、ソ連(実は改訂しない方が有利な米国も岸総理は元戦犯と裏で煽ったでしょう)の唆しが成功しかけただけで、国民は本心で安保改訂反対ではなかったコトが分ります。
反対に成功しても,元々のもっと不利な安保のママですから,反対するコト自体意味がなかったのですから当たりまえです。
逆に外敵の尻馬に乗っていた社会党は、その後の選挙で大敗北を喫しています。
外国政府の応援を受けて外国のために・・日本を不利に陥れるために政治運動をするのは日本国民のための政治をすべき政治家にとって邪道です。
※ソ連の味方をすることがニッポン民族にとって不利かどうかはその当時(その後ソ連側に日本が着かなかったことが正解であったと分りましたが、それは歴史が決めることでその時点では)誰にも分りませんでしたが、民主国家においては選挙で民意を決めた以上はそれが国益であると言うべきです。
Aの遂行が国益と民意が決めた以上はAの効果を減じる方向に運動するのは、国益に反する行為です。
いわゆる外患誘致罪には条文上あたらないコトは明らかですが,同罪処罰の基礎にある国家民族に対する背信行為である点は明らかです。
ウイキペデイアの続きです。
「ソ連側の動き
ソ連は安保改定を自国への挑戦と受け止め、上記のように社会党や共産党、総評の安保反対活動に対して多大な援助を行うとともに、1960年1月27日には、1956年(昭和31年)の日ソ共同宣言で確約された「平和条約締結後に歯舞群島・色丹島を返還する」条件として、日本全土からの外国軍隊の撤退を要求した[12]。
産経新聞によれば、日ソの国交回復以降在日大使館や通商代表部に潜入したソ連国家保安委員会(KGB)工作員や、日本社会党や労働組合等に多数侵入した誓約引揚者(ソ連のスパイ)等が、ソ連による安保改定阻止の意向を受けてスパイ活動を行い、運動が拡大化したという[13]。」
騒動を起こしているそのときには当然特定勢力が外国援助を受けている証拠はありませんが、長期の経過で自然に事実が出て来ます・・この結果社会党は信用をなくし,消滅しかなくなったのだと思われます。
現在の政治状況に戻りますと,旧社会党系議員や現民進党は、本気で日本のためになるかどうかの話し合いをする気がなくて、国会の場で揚げ足取りばかりしている印象が強烈です。
集団自衛権等の審議でもあったかどうか忘れましたが,一般的に野党は何かあると大臣や,関連委員長の◯◯発言を撤回しないと・・あるいは解任・辞任しないと・・審議に応じないなどの戦術で、慎重審議の必要なTPPなどの重要法案に限って議論自体を妨害する傾向があります。
審議妨害ばかりしておきながら,法案が議決されると「充分議論をしていない」と言い張っているコトが多いのもおかしな主張です。
今年の秋の臨時国会で審議時間確保のために与党が大幅会期延長しようとするとこれに反対していたのが野党です。
こういう変な戦術(素人には分らない高等戦術かも知れませんが一般人には理解不能です)に頼っているから,国民の支持率が下がる一方になっているのです。
この10年ほど韓国人が表に立って行なっている世界中での慰安婦騒動の資金は中国政府スジが出しているともっぱらの噂ですが、数十年後には真相が分かって来るでしょう。
最近幕末の政治運動・・明治維新の再評価が進み始めたようですが、当時の国際情勢から見て無茶な結果が見えている尊王攘夷運動はどう言う勢力が火をつけたのか?
どう言う目的があったのか?
今はまだ明治政府の続きだと言う意見を10年ほど前に書いたことがありますが、明治維新政府の影響がなくなると、次第に真実が分って来ると思われます。

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