TPP12とアメリカ支配4(一体化と本社機能1)

TPP参加国では、関税が基本的になくなり製品規格やルールも共通で完全な自由競争・・国内都道府県間競争のようになるとどうなるでしょうか?
大都会と一定の距離(これこそが障壁です)があることによって独立的経済圏を維持していた地方都市が、交通の便がよくなることによってストロー化現象に見舞われるのと同様に、弱小国はアメリカに吸い取られるばかりになるのでしょうか?
最近までアメリカの庭と言われていた中南米諸国では、アメリカの覚え目出たい独裁軍事政権とその下で貧困に苦しむ民衆・・まさにこれと言った産業が育たないまま貧困化が進む一方でした。
独裁政権はアメリカに地位の保障してもらう代わりに、国内産業育成のための抵抗をしないで来たからです。
この傾向は中南米に限らずアラブ産油国の王族等に共通の立場でした。
これに反発する民族主義勢力・・ナセルによるエジプト革命やパーレビ王制打倒、リビヤのカダフイ大佐の革命、イラクのフセイン政権樹立になって行ったのです。
アメリカは日本の朝鮮半島支配を批判しながら、自分はフィリピンを植民地にして支配していましたし、日本が解放したインドシナ半島では、フランスの再植民地支配の応援をし、フランスが撤退するとその後に自分が南ベトナム政府を作って中南米やアラブ諸国同様の傀儡軍事政権を樹立しましたが、所謂ベトナム戦争で敗退しました。
このように見て行くと戦後アメリカは直接的な植民地支配の代わりに傀儡軍事政権を作って間接支配して来た地域のあちこちで、ほころびの連続であったことになります。
日本進出地域では全て近代工業化に離陸して行くのに、アメリカの関与する地域では全て極貧化が進むのは何故かと疑問に思う方が多かったと思いますが、これは上記のとおり19世紀型直接植民地支配の形を変えた現地搾取の構造だったからです。
日本の朝鮮・台湾支配に関しては、欧米が自分がやって来たことを日本もやったに違いないと想像して搾取奴隷化を前提に非難しますが、誰でも知っているように日本の朝鮮支配は現地進歩に少しでも協力しようと搾取どころか持ち出しばかりの歴史でした。
ご存知のようにソウル帝国大学は、国内の大阪帝国大学よりも先に設立されています。
女学校その他も国内設備よりも立派なものが出来ていますし、植民地人が学ぶための設備を本国よりも立派な設備で先に作るような国がどこにあったでしょうか?
この精神が戦後の東南アジア進出でも連続していて、日本の関係して来た国は全て豊かになっています。
アメリカ型の傀儡政権支配はどこでも行き詰まっているので、今度はTPPに取り込んで・植民地支配の再構成・ストロー化してしまおうという魂胆ではないでしょうか?
一体化・・これは軍事支配によらない自主的参加です・・懐に入ってしまえば、日本のように近代産業分野でアメリカを逆に攻略出来るような国は殆どないでしょうから、彼らは実質アメリカの属州・支配下になるのを覚悟で参加しているのでしょうか?
マトモな先進国と言えるカナダやオーストラリアでも、これと言った強い近代産業があるとは聞きませんし・・その他ブルネイ・ニュージーランドなどはマトモに戦えるような産業があるとは思えません。
ただし、現在有力企業が存在しなくともアメリカと一体化することによって、大きな市場で起業するチャンスをつかんで成功するニュージーランドの青年が出ないとは言い切れません。
しかし、地方出身者が大きな舞台で成功すれば本社をアメリカ等の大都会に置く・・移転することが多いので、アメリカとしては国内企業の入れ替わりに過ぎず全然困りません。
日本の戦前の例で言えば、九州の田舎で成功すれば福岡に進出して九州全体の企業になり、次いで大阪に進出して関西方面の大手になれば本社を大阪に移し、日本全体でも大手大企業になればその多くが本社を大阪から東京に移してしまう・・このように販路の拡大に応じて本拠地を移して行くのが普通でした。

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