三民主義・目的と手段の違い2

昨日、漢詩の1節を引いて紀元前の前漢初期から賄賂社会であったことを紹介しましたが、「漢民族の特性」と言えばそれでおしまいですが、何故こう言う民族性になったかの原因が重要です。
繰り返し書いていますが、秦の始皇帝以来専制支配体制が確立したこと・・と関係があるように思えます。
民の工夫努力・自由な発想よりも、上司の気に入るか否かが最重要社会・・権力者の気に触るといつクビが飛び、一族皆殺し・族滅の危機に遭うかもしれない社会が2000年も続いてきましたので、漢民族はいつもびくびくして目上のご機嫌を窺うしかない状態・・勢い上司・強いものに取り入ることが最大の行動基準社会になります。
派生的に取り入るべき派閥が出来、(漢時代に党錮の禁が始まり、各王朝で党派の争いがいつもあります)今でも上海閥やダンパあるいは太子党などの派閥がありますが、その下位集団として習近平や李克強の過去の勤務地別の派閥もあり複雑です)相手派閥を蹴落とすべく権謀術数工作も盛んになります。
中韓政治家が、国際社会でのロビー活動などでは、権謀術数の経験に乏しい、日本などはモノの数ではないと豪語して来た所以ですし、実際に中韓のロビー活動により、国連での日本非難決議に向けた下工作が横行しています。
国際機関やスポーツ組織にいつの間にか韓国系が浸透しているのがこれです。
中国の派閥とは、透明性の全くない私的集団・マフィア的人的つながりを言うものであって、政策研修・勉強会などしている政策集団の日本の派閥・・東京弁護士会の派閥でさえ勉強集団です)とは本質が違っていますので、日本の派閥をイメージする翻訳は意図的すり替えの疑いがあります。
石油閥などが報道されるので、利権集団的側面もあるように思う方が多いでしょうが、人脈形成の主目的がイキナリ失脚するリスクを減らし出世するためにある・・その結果として利権集団化しているに過ぎない・・手段と目的の関係が違っています。
専制や独裁の場合、出世あるいは牢獄に繋がれるかの基準が社会のために良いことをしているか正しいコトをしているかよりも自分の親分が主流派になれるかで決まる社会です。
政敵失脚させるためには表向き何かの失敗を取り上げられるのですが、取り上げられるかどうかの大もとの選別基準は政敵かどうかによります。
現在の腐敗撲滅運動を見れば分るように習近平周辺には及ばず政敵粛清目的で賄賂を取り締まっていると言われているのは正にこれで、政敵粛清が目的であって、汚職摘発はその手段になっている・・主目的がどこにあるかで大きな違いが生じる例です。
権謀術数は相手を蹴落とす目的であって、陰で讒言するのが基本的攻撃手段で正義の基準は不要ですがこれが長年有効だったのは、専制社会では1回勝負の社会だったからです。
政治抗争に勝てば相手一族皆殺しですから1回勝てば「勝負あり」になる・・どんな卑怯な手段でも何をしてでも勝つことが最重要基準で・・勝ってしまえば、相手を皆殺しに出来るので、後に道義的非難などあり得ない社会を前提にしています。
日本は縄文の時代から争いがあってもトコトンやらない社会ですから、卑怯な勝ち方をすると時間の経過でいつかは真実が出て来る・・数百年単位での評価・・手段が卑怯かだけはなく結果もやり過ぎかどうかを含めて批判される・・後で社会全体の批判を受けるのが怖い・・名誉重んじる社会がこうして出来上がっています。
讒言などするとあとでバレル・・陥れたとなると結果的に「損」と言う社会ですから、パク大統領の讒言外交には唖然としてしまったのです。
専制社会で負けた方が皆殺しされる制度で、負けた方はどんなに正しい意見であっても一族関係者が皆殺しに合うので何も言えない言うべき人が残らない仕組みです。
勝った方が抗争の歴史を書き換えて行く社会では、どんな非道な手段を弄しても勝つことが先決の社会になります。
アメリカ日本を戦争に引きずり込み原爆まで投下したのは、そう言う基準・・勝った方が歴史を塗り替えれば良いと言う方針があったことはそのご戦犯裁判や中韓を使っての「歴史修正主義者のレッテル貼り」に精出して来たことから見ても明らかです。
現在の中韓両国の経済活動を見ても、1回勝負のやり方は変わっていません・・。
目先の受注量を競うために採算割れの無茶な受注あるいは自国技術で出来そうもない無謀な受注競争を仕掛け、怒濤の勢いで規模拡大をする・・購買力誇示のために続く訳もない爆買いで札ビラを誇示する・・みな同じです。
目先にこだわるのは、一時的に相手を失脚・倒産させれば、永久に自分が支配出来る社会が2000年も続いたことにより、先ず受注競争に勝って競争相手を潰してしまえば、後は独占企業としてスキなように契約変更も出来ると言う思想によります。
中韓の一時的な反日攻勢が効を奏さずジリ貧になって来たのは、閉鎖された専制社会とは異なり国際社会ではロビー活動で如何に噓八百を言って勝っても、毎回相手を奴隷化することが出来ない・・精々一時的に多数派形成し、ありもしない慰安婦決議慰安婦像を建てたり南京虐殺を世界遺産に登録する程度がやっとですから、長期的には真実・正義を主張している方が勢力を回復して行きます。
時間をかければ中韓の噓がバレて信用をなくして行く・・時間の経過でグランデール市のように「慰安婦像があるだけ韓国にとって惨め・恥の歴史」を世界に残して行くことになるでしょう。
勿論この像建設を推進した市議などもその内恥をかいて行くと思います。
一時的にアフリカやオーストラリアなどを資金力や資源その他の爆買いで捩じ伏せていても、こう言うやり方は先が続かない・・一過性でしかないので、その間にこのときとばかりに目一杯威張ってしまうことも愚かで浅ましい限りです。
一過性の爆買いや投資が減少すれば威張られた方は直ちに愛想を尽かしますので、中国が投資して来たアジア(ベトナムやミャンマー・カンボジアなど)アフリカ諸国では、元々親切な日本に足下を掘り崩されつつあるのがその例です。
権謀術数で言えば、日米戦争の始まりは、(その前から非白人国家日本を壊滅させるアメリカの基本政策があってのことですが・・)蒋介石夫人宋美齢がルーズベルトに対する工作が成功して蒋介石軍の応援を始めたことが日本を敗北に追いつめた切っ掛けです。
ですから、一度で大損害の生じる戦争に関しては、権謀術数の重要性は変わりません。

占領統治の難しさ(日本奴隷化作戦の変更)

何回も書いているように欧米は、日本を叩き潰した後には単純被植民地、被奴隷国の限度で生存させる・・一切の工業生産を許さない方針でした。
アメリカ政府のインデイアンに対する協定破り・相手が武装解除・降伏すれば、降伏時に約束した協定など全く守らない前提の国です。
降伏したインデアンに対する非人道的政策は良く知られていますが一例を挙げれば以下のとおりです。
どこの誰か?根拠があって書いているか知りませんが,私が何かで読んだ記憶に大方あっているので一応引用しておきます。
http://goodorbadamerica.blogspot.jp/2013/01/blog-post_17.html

「徹底した同化政策を進めるために、赤ちゃんは、強制的に白人家庭に養子に出されたり、5歳以上の子供たちは、全員親から引き離されて、寄宿学校に入れられちゃいます。
学校と言っても、牢獄に近かったらしいですよ。
無理やり、部族や親と隔離して、キリスト教に改宗させられて、英語を習わされて、白人の下働きをする、「良いインディアン」作りをするための学校だったんですね。
まさに、インディアンの文化そのものを根絶やしにするための同化政策ですね~。
たしか、インディアンの寄宿学校が廃止されたのは、1965年あたりだったはず。
と、いうことは、今でも、だいたい50才以上の人たちは、ほとんど、入れられた経験があることでしょうね。」

赤ちゃんのときからオヤから引き離し、インデアンが如何に劣った民族かの言う教育を徹底していたのですから、ジェノサイドの極致ではないでしょうか?
英語しか知らない状態で育ち、寄宿舎を追い出されるとその後インデアン部落に戻っても言葉も通じないし生活習慣もまるで違う・・生きて行けません。
白人社会に入っても何も出来ず、保護に頼って無為に過ごすしかない・・人間が腐って行くだけの生活が待っている・・民族消滅するように仕向けられたのが今のインデアンです。
何回かポツダム宣言を紹介していますが、もう一度紹介しますが、「奴隷化・・するものではない」と言う表現は、正にその予定にあったモノの日本が容易に降伏しないので仕方なしに表向きの方針を変えたに過ぎないことを言外に表明しています。
武器を取り上げて占領してしまえば、約束など守って守らなくとも勝者の勝手・・自由自在と言う思惑があったでしょう。
我々の意志は日本人を民族として奴隷化しまた日本国民を滅亡させようとするものではないが、日本における捕虜虐待を含む一切の戦争犯罪人は処罰されるべきである。日本政府は日本国国民における民主主義的傾向の復活を強化し、これを妨げるあらゆる障碍は排除するべきであり、言論、宗教及び思想の自由並びに基本的人権の尊重は確立されるべきである。

実際に占領後の実際を見ると、日本民主化の名分と占領後の日本の工業生産禁止はどう言う関係があるのか、米軍による軍政、検閲は?民主主義化の建前と全て矛盾です。
アメリは占領さえすればこっちのモノ・・後はインデアンに対するのと同じでやりたい放題・・元々ポツダム宣言を守る気持ちが始めっからなかったのです。
ソ連が満州侵入後日本軍をシベリアに連行し文字どおり奴隷支配したのは、アメリカから事前に聞いていたとおりに実行した(アメリカが腰砕けになっただけ)と言う立場だからでしょう。
アメリカはソ連と対立関係にあったのにソ連の蛮行に対して何の非難もしていませんし、だんまりのままだったのは、「自由に連行して奴隷化しても良い」と言う密約があったことが推測されす。
日本人奴隷化の基本方針からすれば、占領後天皇制廃止・・天皇の縛り首実行が既定路線だったでしょうが、これらを実行出来なかったのは、そこまでやると日本人の怒りが半端でなくなると言う教育?が功を奏したからです。
この進言をマッカーサーが聞くしかなかったのは、硫黄島や沖縄での日本軍の最後の踏ん張り・・これ以上追いつめたら何をされるか分らないと言う恐怖心が占領軍を自制させ、日本人を奴隷化する戦略を変更するしかなかった・・モノを言ったからです。
子供の頃に竹槍訓練や玉砕戦法をバカな戦いだったと、アメリカに都合の良い教育を受けて育ちましたが、今になって考えるとニッポン民族が奴隷化されないで済んだ結果にはすごく有効な捨て石・・戦略だったことが分ります。
関ヶ原で西軍の負けが決まった後に最後の突進で戦場を突き抜けた島津軍団の精強ぶりが、戦後処理で島津家が寸土も失わなかった結果になったのと対比出来るでしょう。
負けは負けでも、負け方が重要なことが分ります。
我々弁護士業務でも同じで、勝つ事件は誰がやってもそれほど大きな差がありません。
負けている事件・・有罪事件あるいは債務があることは間違いがない・・債務整理でも離婚でも(浮気したことは間違いがないなど)負ける方ではそのやり方で大きな差が出ます。
軍事でも戦闘に勝った後の追撃よりは負けて撤退する方こそが難しいのです。
越前の朝倉攻め中の信長が浅井の離反により、北陸路からの撤退に際して秀吉がしんがりを務めて成功したのと、本能寺の変での中国路からの撤退作戦・・これらを見事にやってのけたことが天下人になれた大きな要素です。

量的資源に頼るアメリカ

西欧は産業革命→植民地支配によって自分の働き以上の何倍もの良い生活していた結果、収入源の植民地を失った後で本来の能力に応じた生活に戻る・・軟着陸するのに苦労しています。
日本による欧米の植民地支配批判を黙らせるために,ABCD包囲網・・更には植民地ごとのブロック経済化によって、日本を締め上げた結果、日本を戦争に引きずり込み叩き潰すのには成功しましたが、西欧は植民地をあっという間に日本に占領されて赤恥を掻いた(非支配民族が自身を取り戻した)結果、戦後植民地支配を復活出来ませんでした。
これに対する日本に対する西欧の恨みの深さが分ります。
アメリカは牧畜であれ、農業(綿花栽培も含めて)であれ、資源採掘であれ、広大な原野を切り開いた大規模運営が特徴ですが、当初これに対応する目に大規模な奴隷「仕入れ」」工業化後はドイツアイルランド等の移民に頼り、移民・・多くは未熟練者ですからこの適正に応じたベルトコンベアー式大量生産時代の幕を開けたものです。
ついでに書きますと,南北戦争は北部工業地帯の発達で奴隷労働では採算が取れなくなったことによるそうです。
奴隷とは、労働契約的に見れば、日本江戸時代の遊郭の前金制度みたいなものですから、一生分の代金前払いになり,途中でいらなくなったからと言って前金を返してもらえないし、今で言う終身雇用であるばかりか死ぬまで面倒見る義務があります。
綿花栽培労働と違って工場生産要員になると(生産して全部売れるとは限らないし)景気変動があるので、一種のリース・・働いて欲しいときだけ働いてくれる・・給金制の方が合理的です。
他方で工場労働的習慣性となるとアフリカ育ちの奴隷は(綿花摘みクライは適応しまししたが・・)そう言う習慣がないし5大湖周辺は寒くて気候的にあわないでしょうから、ドイツ系・アイルランド系の方がきちんと働けることから、この頃からドイツ系移民が急増しています。
奴隷解放の結果、奴隷の生活を見る義務がなくなった結果?巷に放り出されてしまうなど、元奴隷が解放前よりも悲惨な状態になったと言われています。
大量の人手に頼る生産方式に話を戻します。
農業や畜産に限らず資源採掘でも、この圧倒的大量生産方式と一体化して世界制覇の基礎を作りましたが、資源保有の有利さが領土拡張競争に拍車をかけて来たことをどこかに書いてきました。
アメリカの13州独立以来の領土拡張の勢いはすごいものでした。
ちなみにドイツの強国化は、産業革命の基礎となる鉄鉱石と石炭の双方を手に入れた・・領内にあったことが大きな要因でした。
鉄鉱石の出るアルザスロレーヌ地方をプロシャが普仏戦争で奪った経緯は、ドーデの「最後授業」で有名になっています。
その結果・・近くのルール地方炭田と一体化した独逸重工業化発展の基礎を得たのです。
この地域の鉄鉱石・石炭の資源争奪は普仏戦争〜第1次〜第2次世界大戦に続く独仏間の領土争いのテーマになっていましたが現在は最後に勝った?仏領になっていると思います。
EUは元々欧州石炭鉄鋼共同体で始まったことを7月2日に紹介しましたが、産業革命後必要となった資源を巡る怨恨の歴史経緯があるからです。
ロシアがアメリカにアラスカを売ったときには、まだ資源の重要性が認識されていなかった・あるいは極寒の地での採掘技術がなかったことによります。
以下はhttp://matome.naver.jp/odai/2139674489665795001からの引用です。
「1867年に帝政ロシアからアラスカを買ったときの値段はさらに安く、わずか720万ドルである」
豊富な資源力・広大な国土に見合った流れ作業方式・・大量生産時代を切り開いたアメリカは、労働者の実力以上の収入を得て来たのですが、今では先進国の収入源は汎用品から知財やソフト・文化力・・精巧な手作り品・工芸品などの重要性に移っています。
汎用品生産量で勝負する時代が終われば、人口の多さよりは資質が重要ですし、量産系資源力の相対化によってアメリカの優位性が失われて行くのは目に見えています。
物量を運び生産するには10人よりは100人(トラックや機械の量に比例)の方が有利ですが、デザインや知財や美術・金融取引等になると下手な人が百人いても優秀なデザイナーや絵描き一人に叶いません。
とりわけ大量生産系・汎用品組み立ては低賃金単純労働向けの新興国の産業となっていて、これに対応する石炭・鉄鉱石・原油等の量で勝負する資源力が国力そのものではなくなった・・相対化して来た事は明らかでしょう。
ある国単位で考えれば分りますが石炭石油・レアアース等の採掘現場が、大都会や首都あるいは高級住宅街にありますか?と言う比較です。
ロシアであれアメリカであれ、どこの国でも資源採掘現場は、人里離れた荒野あるいは禿げ山にあるものです。
国単位になると資源があると自慢しているようですが、過去佐渡の金採掘作業が囚人の仕事であったように近代の炭坑夫も過酷な労働でした。
最近コマツの重機が無人運転出来るようになっているようですが、資源採掘従事者は泥にまみれ汚い現場で、最低生活層が従事しています。
彼らが作業着のママ都会に出て来てホテルで食事しません。
採掘現場を走り回るような重機や巨大ダンプが住宅街や都会を走ることはありません。
国の果てにある資源を利用する遠くの資本家が良い思いをしているだけであって、資源そのものに従事するグループが良い思いを出来ません。
これがタマタマ同じ国内にあると言うだけであって、シベリアが別の国であってモスクワ経由で売りさばいている場合も結果は同じです。
この理を用いてアメリカは中東の石油利権の獲得に動き、いわゆる「メジャー」支配をして来たのです。
アメリカのシェールガスやサンドオイル回帰は、アラブの民族意識の高まりを背景に現地政府の力が強くなって来て、メジャー支配の旨味がなくなって来たところで、国内資源利用に変更したに過ぎません。
19末〜20世紀に成功したモデル・・量的資源(人的資源も量を求める)に頼る政策そのままです。

アメリカの格差社会(フードスタンプ配給)

6月24日以来の格差社会論に戻りますと、鄧小平の言った有名な、格差容認論・・「◯◯の猫でも稼ぐ猫は良い猫だ」と言う・・金持ちになれる人から豊かになって行くと言う格差容認論は前向きですから、儲けに遅れた人の夢・・励みになります。
アメリカで昔言われたアメリカンドリームもこれに似たものでした。
現在欧米の格差論は、新興国の挑戦を受けて単純労働に高額賃金を払えなくなって来た・・負け始めた以上は、等しく貧しくなるべきところをアップルやユニクロみたいにタマタマ成功した経営者や金融のプロあるいは資源利権により特定一握りの階層だけが逆に金持ちになって焼け太りになっている点が大違いです。
アメリカの格差不満を背景にするトランプ旋風の張本人自身が、大金持ちであることを自慢する歪んだ社会です。
西欧を追い越す途中の新興国だったアメリカや・・中国や新興国の格差は、先に儲けた人ですから、こう言う社会では後に続く予定の多くの国民には「アメリカンドリーム」であり、賄賂であろうと何であろうと、「中国の超金持ち」は(自分もその仲間に入れば良いと言う希望で)まだ儲けていない人に夢を与えて来ました。
現在の先進国の場合には水位がずるずる下がって行く中で、特定の成功者だけが天文学的利益を独り占めしているのですから,ビルゲイツやジョブズ氏のように仮に特別な才能のあって不公平ではないとしても一般人には夢がありません。
中国や新興国の明日への夢がしぼんで行くと共産党幹部(の場合能力差ですらないのですから)だけが良い思いをしていることに対して国民の不満が高まります。
先進国で新興国労働者と同じレベルの仕事しか出来ない人は、本来新興国労働者と同じ収入でいい筈ですが、先進国の場合上記の特定巨額収入者の納めた税金や過去の利権収入(海外進出企業からの送金など)でインフラや社会保障コストが補填されているので、なお新興国労働者の何倍もの生活が出来ています。
生活保護その他何らの給付も受けていないつもりでも、非課税者は言うに及ばず納付税額の少ない人は、納付額以上にインフラを利用出来る恩恵を受けている人が一杯います。
月10万円前後の収入で税を払っていない人が保育所利用している場合、その維持費として税で膨大なコスト負担しています。
保険制度に至っては納付保険料の何十倍も使っている人はざらでしょう。
このように格差と言っても直接収入格差は、インフラ次第で大幅に緩和される結果、本当の格差感は社会のインフラ充実度によります。
アメリカの一人当たりGDPが高いと言っても資源や石油利権収入、金融取引、知財収入等の平均ですから、平均収入の議論しても工場労働者やサービス業の平均賃金など詳細は)何も分りません。
アメリカは昨年あたりから末端労働者の賃金水準は中国の人件費に負けないと豪語しているくらいですから、工場労働者やストアー店員の個々人の給与は高くありません。
ですから金融資本や知財等海外からの収益による高額所得者がいる結果却って格差が激しくなるし、成功者の収入が下がって行くと格差は縮小するでしょうが、そうなると将来的に(社会保障を含めた)収入が下がって、本来の働きレベルに下がって行く不安があります。
知財収入や過去の遺産(利権収入)等の分配に頼るようになると受益者が少ない方が有利・・高齢者が退職金等の預貯金を90歳まで残せるか心配になるのと同じでいつまで続くかに関心が移って行きます。
この不安がイギリスの移民増加反対論・・分配対象を減らせと言う運動が盛り上がった現実です。
金融や知財のぼろ儲けや資源・石油利権等で、一人で何十億と言う収入のある人の払った税金や寄付で多くの国民がフードスタンプを配給されていると、国民は不満と言うよりも将来が不安でしょう。
非正規雇用の多いアメリカ最大の大企業のウオールマートの店員の多くが,生活困窮者向けの1、25ドル分のフードスタンプを貰う列に並んでいることが問題になって日本でも報道されましたが、漫画みたいな社会です。
アメリカではフードスタンプ受給者が増え過ぎていて、この数年支給を絞り始めています。
http://www.huffingtonpost.jp/2015/01/09/food-stamp-enrollment_n_6441040.html
「ボーレン氏「2016年にはさらに多くの人びとが給付を失うことになるでしょう。たとえ、登録申請者数の動向が、これまで通りであっても」と述べた。
政府の最新データによると、2014年9月の登録者数は4650万人で、前年の4730万人から減少した」
ちょっとデータが古いですが別の解説によると以下のとおりです。
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=279619
13/07/27 PM10
「四人家族で年収2万3314ドル(約230万円)という、国の定める貧困ライン以下で暮らす国民は現在4600万人、うち1600万人が子どもだ。失業率 は9.6%(2010年)だが、職探しをあきらめた潜在的失業者も加算すると実質20%という驚異的な数字となる。16歳から29歳までの若者の失業率を 見ると、2000年の33%から45%に上昇、経済的に自立できず親と同居している若者は600万人だ。」

フードスタンプは所帯単位で配給するので、約3億あまりの人口を割ると受給率は労働者3人に1人とも言われていますので大変な事態です。
たったの1、25ドルの食品購入券(1ヶ月分で所帯全員分とすると結構な額ですが・・)を貰うために夜中の12時に(何故か深夜に配布する仕組みらしい)並んでいる映像を見ると・・それが全米労働者の3人に1人と言うのでは、如何に格差が進んでいるかが分ります。
こんな夢のない生活で何年もよく我慢しているものだ・・中国よりも先に暴動が起きてもおかしくないような気がしますが・・。
トランプ氏の煽動に乗りたくなる人が増えているのは当然でしょう。

日本の対応1(工夫による対処)

日本企業・国民は公害になると言われれば田舎に引っ越すのではなく、脱硫装置や騒音・消臭防止に工夫しますし、川や海の水が汚れたら水源に樹木を植えたり工場や生活排水を規制して、水質浄化に努めます。
江戸時代に幕府は森林伐採を厳しく規制していましたし、火力・・薪炭需要が増えると武蔵野に雑木林を作り、循環型の火力資源を工夫してきました。
資源が枯渇すると言われれば省資源化努力し、労働者不足・低賃金競争になれば自動化・ロボット化工夫、少子高齢化すると言えば高齢者も働けるように工夫して行くのですが、欧米では新たな環境適応よりは外部環境の取り替えに関心が行くようです。
中国が低賃銀で競争して来れば、アメリかもEUも移民を入れて低賃銀競争にする・・言わば移民導入による低賃金競争・高齢化対策は、欧米の事業モデルでしたから、欧米モデルを何でも有り難がる日本の識者・マスコミが同じ政策をすべきと言う合唱になっている原因です。
日本マスコミやインテリは欧米の真似をすることが進歩的・合理的であり、これに異議を唱えるのはポピュリズムと言う烙印を押したがるスタンスです。
移民導入による目先の値下げ競争・高齢化対策等々の限界・・西欧での移民反対論の高まりは移民による誤摩化しが限界に来たことを表しています。
日本は移民導入→低賃金競争に参加しないで、持ち場持ち場ごとに歯を食いしばって部品高度化やロボット化で,あるいは高齢化も凌いで来ました。
実際に私の周囲でも70歳前後でまだまだ元気に働いている人が一杯いるようになってきました。
世界標準が65歳以上を高齢化率とカウントしているようですが、日本ではこの15〜20年の間に多くの人が高齢化に備えて意識変化・・適応していて75歳くらいまでは元気な人の方が多いように見えます。
移民で誤摩化す・・外国人を働かせて自国民を失業させておく・・欧米人は元々怠け者が多いからそうなったとも言えますが・・よりは、日本人がこの仕事はイヤだなどと言わずに持ち場持ち場ごとに身近な道具類をより便利にするための細かな工夫する習慣を利用して最末端の人にまで工夫のチャンスを与える日本のやり方は、大げさに言えば研究環境その他働ける場所を増やす良い対応だったと思います。
日本はプラザ合意以降の環境激変に対して、欧米流に言えば外部環境激変に対して、欧米のように移民を入れたり資源を略奪したりせずに、しかも輸入障壁を儲けるどころか、円高が逆に進んで行ったのでどんどん安いものがはいって来ていました。
言わば二重苦(同時に自由貿易を推進する機運が衰えて日本外しのFTA包囲網もあり)三重苦でしたが、それでも移民や通貨安に頼るよりは国内で力を合わせて何とかしようと頑張って来た成果がこの数年で出て来たと思えます。
おいしければ国産野菜の価格が中国産の何倍しても買い求める人が増えています・・これこそが日本人の努力の成果ですし、中国人よりも高い労賃を貰っても正当化される基礎です。
欧米は(腕力があるのでツイ競争力のある日本排除の誘惑が働くのでしょうが)テストでカンニングがバレれば、監督官変更を要求するようなやり方・・スポーツで負ければルールを直ぐに変えて来ることがはやりました。
欧米は自由競争と唱えながら日本に負けるようになると、EU結成による安易な輸入障壁造りに頼っていたことになります。
・・例えば独仏の貿易で見た場合、EU結成の結果独仏間の貿易は国内扱いで関税がなくなる・・他方で日本からの貿易には国外扱いで高率関税がかかるやり方で差をつけてきました。
一方で移民・低賃金労働者増加によって中国などの低賃金攻勢対応→製品価格下げ競争に対応して来たのですが、製品工夫で競争優位に立つ努力を二の次にして、値下げ競争に入った商店・・従来と同じラーメンやお菓子の味の工夫に注力せずに単純に値下げ競争しているようなもの)同様で将来性がありません。
競合料理屋に負けているからと言って、従来の高給取りの職人を解雇して2流の職人や贖罪に入れ替えて値下げしているともっとだめになります。
日本でもアメリカの真似をして農地の統合で大規模化・品質よりも量産する運動が戦後盛んでしたが、アメリカと同じ土俵で戦うのでは、規模拡大しても(国土が狭いからではなく、河岸段丘平野の特性で農地・水田大規模化に無理がある)知れていて品質が劣化する一方ですので(米で言えばいわゆる標準価格米が席巻したことがありましたが・・まずくて米離れが進みました)、勝ち目がないことが明らかです。
狭い農地でも手塩にかけておいしい牛肉や果物やキュウリ、トマト,サクランボなどを作った方が勝ち目があることに気づいたのが日本の農民です。
大規模化共同仕入れなどにこだわって個の工夫を認めない農協の衰退は当然の結果です。
世界の覇者の歴史あるいは個々人の成功の歴史・・近代で言えば、イギリス海軍力による世界支配、アメリカの資源+中程度の技術+広大な国土=大量生産・大量消費方式、中国の人海戦術・・それぞれ新規挑戦者にはそれぞれの総合条件に適した挑戦スタイルで急成長出来たものです。
野球で言えば王禎治の1本足打法がその典型ですが、持って生まれた筋肉の方向性その他の総合力発揮でそうなっただけであって、違う人が真似してもどうにもなりません。
落語で俳優でも、政治家の語り口でもその人の個性を生かした演技・表現力が決まって来るもので、個性の違う人が成功者の真似をしても二番煎じでうまく行きません。
国家間競争もアメリカは、その条件下で世界覇者になったのであり、中国がいま台風の目になっているのは人海戦術と言う武器です。
中国の挑戦に対応して同じ低賃金競争をするために条件の違う中国の真似をしても失敗する・・中国の下風に立つしかありません。
低賃金国の中国から仮に移民を入れて労働者の半分も入れ変えても中国で作るより安く出来ませんから、当面自国民しか雇っていない競合他社よりも有利と言うだけで対中競争力はつきません。
移民導入反対を01/04/02「外国人労働力の移入1」以下あちこちのコラムで書いてきましたが、100人の従業員のうち10人でも移民を働かせれば、国内同業他社(同じ駅前商店街内の競争相手)より有利になるだけで賃金競争で中国と戦う限り対中競争力がないことは日本でも同じです。

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