空襲による焼失の場合、100km離れたところにバックアアップしておいても、その翌日にはそこも爆撃を受けることがあり得るので(広島の帰りに長崎に原爆を落としたように)離れていれば良いとは言えませんが、自然災害の場合は距離が決め手であることは間違いがないでしょう。
しかも空襲の場合、じゅうたん爆撃に遭ったとは言っても、書類関係は端っこが焦げるくらいで意外に全体まで燃えないものです。
それに被災者はその土地に居残る率が高いので、いろんな人の持っている書類の持ち寄りによって復元がかなり出来ます。
行政文書は役所にあるだけではなく、6月27日に戸籍簿の復元で書いたように(中には戸籍謄本を取り寄せて自分で持っていた人もいますし)複数以上の関係者が持っていることが多いこともあります。
設計図書で言えば、工事関係者がそれぞれ自分に関係する部門の設計図を持っていますので、それを持ち寄れば何とかなります。
学籍簿で言えば、空襲が終わった後で生徒が三々五々学校に戻ってくれば、全員の名簿の復元は簡単です。
今回の津波や放射能被害による避難では、根こそぎ流されてしまう外に原発避難の場合も、ムラや町中誰一人いなくなる避難ですから、みんな散りジリに避難すると、関係者の連絡を取るのさえ不自由な状態になっています。
原発避難地域では、未だにあるいはこの先どの程度の期間経過すれば被害把握が出来るのかさえ予測不明なくらい、被害実態が調査出来ない状態になったままです。
前もって何の準備もなかったので、(戸籍事務は法務局に速やかに送るようになっていますが、それ以外の本来日々活用すべき市町村作成公文書はすべて)行政文書の消失・水浸し等による・復元にこれから頭を悩ませることになる筈です。
建物や構築物等の物損被害額は直ぐに計算出来ますが、行政文書消失による被害は目に見えた損害額にはなりませんが、じわじわと効いて来て、事務作業が滞ることになるのでその経済損失は甚大なものになる筈です。
各個人が取るもの取りあえず緊急避難して身の回り品が何もなくて困っているのと同様に、みんなのお世話をするべき自治体自身も避難に際しての事前準備がなかったので、膨大な行政文書・・住民登録データに始まる分野ごとに必要なデータを海の藻くずにしてしまったりして持ち出せないままになっています。
(死亡者数や被害実態の把握・避難住民の詳細把握が進まないのも、各種データ根こそぎ消失の結果でしょう)
危険手当としての交付金をもらうときから、避難準備の議論が日頃から進んでいれば、データの避難・バックアップをどうするかにも当然検討が進んでいたでしょう。
これは住み慣れた地元を離れられないと言う生身の人間・・心情相手とは違い、合理的に検討し、お金さえ出せば直ぐに実行出来た分野です。
(山間僻地への資料移送保管の費用は、9000億の巨額交付金との比較からすれば費用のうちに入らないわずかな額です。)
美術品や生き物と違って、紙記録は積み上げておいてもそれ程痛まないし、市町村の情報記録は5年間の保存期間が殆どで、永久保存の不要なものが大半ですから、大した保管コストがかかりません。
永久あるいは長期保存文書・紙記録の場合、20年や30年放置しておいて少しは痛んでも(津波に流されてしまうよりはマシです)イザとなれば何とか使えるでしょう。
現在生きている・・・毎日のように動いている情報が失われると、今後2〜3年の仕事が困難になるリスク・損害が大きいのですから、保管技術の面は(私にはよく分らないのですが・・)とにかく移転しておくメリットは大きかった筈です。