8月3日以降支援法は政府保証を骨子とするものであることを前提にいろんな意見を書いてきましたが、仕事の合間に見ているとなかなか条文そのものが出て来なかったのではっきりしていませんでしたが、国会通過後約1ヶ月もたったので、9月3日の土曜日にゆっくりサーチしていたら条文が出てきました。
これによると政府保証だけではなく国債そのものを交付したり、資金を直接交付しても良いようですが、これは多分実際的ではないでしょうから、マスコミがあまり報じていなかったのかも知れません。
政府保証債の発行限度が政令で2兆円とされています。
わずか2兆円では仏アレバ社に対する支払にも足りないでしょうが、これは賠償金支払用というよりは当面満期の到来する社債償還資金や銀行短期借入金の返済資金を念頭に置いているのかも知れません。
少しでも目立たないように少しずつ発行したいことと、あまり一度に発行しても市場で消化しきれないこともあって当面借替債の資金繰りに必要な2兆円限度としたのかも知れません。
(政令に委ねているので、法改正なしに今後必要に応じて機動的に変更・増加出来るようになっていますが、法律上予算の範囲内となっていますので結局は国会通過が必要になる筈です)
ちなみに政府保証と資金繰り入れの組み合わせ形式は、9月7日に二重ローン関係の解消に向けた債権買い取り機構(株)法案の文書が事務所に来ていたので読んでみると、支援法とにたスキームが採用されています。
債権買い取り機構を株式会社組織にして、且つその資本金として預金保険機構や農協貯蓄何とか機構から出資するのですが、その前提として預金保険機構等に政府から200億円投入する外に機構の債務については政府保証を付けることが出来る仕組みになっていました。
大きな枠組みは支援法と同じ発想です。
マスコミや他人のネット情報のマタ聞きでは頼りなかったのですが、条文が出て来てほっとしているところです。
以下要点の条項を紹介しておきましょう。
原子力損害賠償支援機構法(法律第九十四号)
(平成二十三年八月十日)
(資金援助の決定)
第四十二条 機構は、前条第一項の規定による申込みがあったときは、遅滞なく、運営委員会の議決を経て、当該申込みに係る資金援助を行うかどうか並びに当該資金援助を行う場合にあってはその内容及び額を決定しなければならない。
第三款 特別資金援助に対する政府の援助
(国債の交付)
第四十八条 政府は、機構が特別資金援助に係る資金交付を行うために必要となる資金の確保に用いるため、国債を発行することができる。
2 政府は、前項の規定により、予算で定める額の範囲内において、国債を発行し、これを機構に交付するものとする。
3 第一項の規定により発行する国債は、無利子とする。
4 第一項の規定により発行する国債については、譲渡、担保権の設定その他の処分をすることができない。
5 前三項に定めるもののほか、第一項の規定により発行する国債に関し必要な事項は、財務省令で定める。
(国債の償還等)
第四十九条 機構は、特別資金援助に係る資金交付を行うために必要となる額を限り、前条第二項の規定により交付された国債の償還の請求をすることができる。
2 政府は、前条第二項の規定により交付した国債の全部又は一部につき機構から償還の請求を受けたときは、速やかに、その償還をしなければならない。
3 前項の規定による償還は、この法律の規定により行う原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施を確保するための財政上の措置に関する措置の経理を明確にすることを目的としてエネルギー対策特別会計に設けられる勘定の負担において行うものとする。
(資金の交付)
第五十一条 政府は、機構が特別資金援助に係る資金交付を行う場合において、第四十八条第二項の規定による国債の交付がされてもなお当該資金交付に係る資金に不足を生ずるおそれがあると認めるときに限り、当該資金交付を行うために必要となる資金の確保のため、予算で定める額の範囲内において、機構に対し、必要な資金を交付することができる。
(資産の買取り)
第五十四条 機構は、資金援助を受けた原子力事業者からの申込みに基づき、当該資金援助に係る原子力損害の賠償の履行に充てるための資金の確保に資するため、当該原子力事業者の保有する資産の買取りを行うことができる。
(借入金及び原子力損害賠償支援機構債)
第六十条 機構は、主務大臣の認可を受けて、金融機関その他の者から資金の借入れ(借換えを含む。)をし、又は原子力損害賠償支援機構債(以下「機構債」という。)の発行(機構債の借換えのための発行を含む。)をすることができる。この場合において、機構は、機構債の債券を発行することができる。
2 主務大臣は、前項の認可をしようとするときは、あらかじめ、財務大臣に協議しなければならない。
3 第一項の規定による借入金の現在額及び同項の規定により発行する機構債の元本に係る債務の現在額の合計額は、政令で定める額を超えることとなってはならない。
4 第一項の規定による機構債の債権者は、機構の財産について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
5 前項の先取特権の順位は、民法(明治二十九年法律第八十九号)の規定による一般の先取特権に次ぐものとする。
(政府保証)
第六十一条 政府は、法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律(昭和二十一年法律第二十四号)第三条の規定にかかわらず、国会の議決を経た金額の範囲内において、機構の前条第一項の借入れ又は機構債に係る債務の保証をすることができる。
(政府による資金の交付)
第六十八条 政府は、著しく大規模な原子力損害の発生その他の事情に照らし、機構の業務を適正かつ確実に実施するために十分なものとなるように負担金の額を定めるとしたならば、電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営に支障を来し、又は当該事業の利用者に著しい負担を及ぼす過大な額の負担金を定めることとなり、国民生活及び国民経済に重大な支障を生ずるおそれがあると認められる場合に限り、予算で定める額の範囲内において、機構に対し、必要な資金を交付することができる。
附 則
(検討)
第六条 政府は、この法律の施行後できるだけ早期に、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故(以下「平成二十三年原子力事故」という。)の原因等の検証、平成二十三年原子力事故に係る原子力損害の賠償の実施の状況、経済金融情勢等を踏まえ、原子力損害の賠償に係る制度における国の責任の在り方、原子力発電所の事故が生じた場合におけるその収束等に係る国の関与及び責任の在り方等について、これを明確にする観点から検討を加えるとともに、原子力損害の賠償に係る紛争を迅速かつ適切に解決するための組織の整備について検討を加え、これらの結果に基づき、賠償法の改正等の抜本的な見直しをはじめとする必要な措置を講ずるものとする。
原子力損害賠償支援機構法施行令
(平成二十三年八月十日)
(政令第二百五十七号)
(借入金及び原子力損害賠償支援機構債の発行の限度額)
第四条 法第六十条第三項に規定する政令で定める額は、二兆円とする。