外貨準備の内実1(中韓政策金利の推移)

国際収支の黒字分だけ円キャリー取引でドルに換金するならば,円が上がらないだけですが、国際収支黒字分以上にドル換算が進むと円が下がります。
現在は貿易巨額赤字中なので放っておいても円が下がる地合ですが,これに加えて円キャリー取引による円売りドル買いが加速すれば、いよいよ急激に円が下がるのは当然です。
これが政府による直接(ドル買い)介入ならば国際政治問題ですが、円キャリー取引は民間投資家が独自に商売をしている結果ですから、日本政府は責任がないという論理で今のところ進んでいます。
「韓国や中国が口惜しかったら自分も低金利したらどうだ!」と言うところですが、彼らは実質資本不足国ですからそんなことは出来ません。
中国や韓国の例で言えば,為替操作のためにドル買い支えをして取得したドルと同額の自国紙幣が国内に放出される・・国内資金余剰が生じますが、日米欧等主要国よりも高金利のために余剰資金の国際需要がありません。
中国や韓国では豊富な外貨準備があると言っても、内実は他所から流入した資金や為替介入によって得た資金中心であること・・・資本逃避が起きると大変なのでいつも投資してくれている国・・日米欧より高金利状態にしておく必要・・低金利に出来ないのです。
以前紹介しましたが、もう一度最近の中韓の政策金利を紹介しておきます。

http://blog.livedoor.jp/kawase_oh/archives/51740057.html

 

http://blog.livedoor.jp/kawase_oh/archives/51688432.html

中国のグラフ文字がボケてみ難いですがキッチり知りたい方は引用しているアドレスにアクセスして下さい・・大方5〜6%の推移です。
韓国のグラフが2010年までしかありませんが、大体こんな程度の高金利を維持するしかないということです。
ちなみに今年4月11日のニュースでは韓国政策金利は2、75%とのことです。
これだけの高金利を維持しないと資金が入って来ないか逃げて行くのが中韓両国の実力であり,金利差こそが真の国際実力差になります。
企業の信用力・実力に応じて借り入れ金利が変化するのが市場原理ですし、グローバル市場で評価される国力差も同じです。

国内総生産の推移

ところで、本当に日本の成長は止まっているのかの疑問で、1月16日に製鉄や車の生産増を紹介しました(これに付随して関連産業の生産も増加しています)が、以下に国内総生産推移データも紹介しましょう。
以下は世界経済のネタ帳からの転載です。
これによると、我が国経済は言わば国内生産が高原状態どころかジリジリと増えていることが分ります。
1990年の国内総生産と現在を比べると約12%(ドル建てですと1、85倍)も増えているのに、就労人口が製造や建設だけでも700万人も減っている(と言う)のですから、これは技術革新によるものと考えるべきでしょう。
先ず円表示ですが、1990年の447兆円が2010年の推計値では(リーマンショック後の落ち込みにもかかわらず)539兆円になって約12%増になっています。
次のドル表示で見ますと1990年の2兆3260億ドルから、2010年推計値では4兆3080億ドル・・・1、82倍に増えています。
円ドル換算値が問題ですが、2010年の推計値539兆8420億円がドル表示で4兆3080億ドルに換算されているのを割り戻してみると1ドル125円11銭になります。
知ってのとおりリーマンショック後、円は80円台で推移していますので(1月15日の終値は82円94銭でした)539兆8420億円を実勢相場の82円94銭で割ると6、5兆ドルになりますので、ドル表示では90年の2兆3260億ドルの約2、82倍に国力が増加していることになります。
(ドルのその他通貨に対する下落があるので少し割り引くべきですが・・・)
1ドル80円台が常識の時代に何故リーマンショック前の125円で換算して政府が統計を出しているのかですが、海外から叩かれないように出来るだけ小さく見せたい智恵がそうさせているのでしょう。
外向きには、「儲かってますか」と聞かれれば「ま・ぼちぼちです・・」と答える習慣・・智恵の発露です。
ちょっと力がついたら尖閣諸島でもどこでもすぐ腕力むき出しにする中国とは智恵の深さが違うだけです。
中国の例で言えば、1月17日のヤフーニュースによれば、胡錦濤中国主席がアメリカ訪問に先立ってワシントンポストのインタビユー答えて「今やアメリカを基軸通貨とする体制は過去の遺物だ」と言い切ったそうです。
日本が今の中国の状況下にあるとしたら、ほぼ100%の日本人が、「まだまだアメリカには及びもつきませんよ・・・」と答えるところでしょう。
中国の威張った態度をそのまま信じ込んで、日本も奮起1番頑張れ!と言うメッセージなら良いですが、マスコミが、もう日本は駄目だ駄目だと宣伝し過ぎて子供までそう思い込んで(自信をなくして)いるようなアンケートが発表されると、マスコミは日本を本当に駄目にしたいのかと疑いたくなります。
以下の数字は実質GDP(デフレによる修正後)ですので、名目表示とは違う点を、御注意下さい。

[世] [画像] - 日本の実質GDPの推移(1980~2010年)

年度 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989
GDP 284,375.00 296,252.90 306,256.20 315,629.90 329,719.30 350,601.60 360,527.40 375,335.80 402,159.90 423,756.50
年度 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999
GDP 447,369.90 462,242.00 466,027.90 466,825.10 470,856.50 479,716.40 492,367.90 500,066.40 489,820.70 489,130.00
年度 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009
GDP 503,119.80 504,047.50 505,369.40 512,513.00 526,577.70 536,762.20 547,709.30 560,650.80 553,913.60 525,014.60
年度 2010
GDP 539,842.56

単位10億円

以下は$表示(購買力平価ベース)です。

年度 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989
GDP 978.27 1,114.64 1,222.57 1,309.81 1,419.68 1,555.29 1,634.68 1,751.22 1,940.83 2,122.27
年度 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999
GDP 2,326.99 2,489.58 2,569.48 2,630.75 2,709.38 2,817.86 2,947.25 3,046.18 3,017.48 3,057.56
年度 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009
GDP 3,213.09 3,291.75 3,353.82 3,474.45 3,666.32 3,872.84 4,080.55 4,299.91 4,341.07 4,152.30
年度 2010
GDP 4,308.63

単位:10億 USドル

※2010年は予測値(経済見通しの数値)

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