切り捨て社会の持続性3

それぞれの後進国が民度レベルに合わせて落ち着くところに落ち着けば、変化の激しい国際変動が終わるのでしょう。
初対面のある集団(新入生集団やPTAなど)が始まると各人の居場所・位置関係が決まるまでキョロキョロキョロして落ち着きませんが、一定時間経過で自然にそれぞれの役割が決まって行くものです。
日本人の場合多くの人は遠慮して隅の方から席が埋まって行くのが普通ですが、自分から進んで中心に立ちたい人もいます。
自分から名乗りをあげる人を(「あなたその器ではないでしょう」とは言えないので)誰も咎めませんが、長い時間軸でいつの間にか人望のある人が中心になる人が決まって行くのを待つやり方で、選挙によるよりは実質的です。
推挙された人も「自分はその器ではないで自分よりあの人の方がいいのではないか?」と一応辞退し、振られた方は当然「イヤイヤ〇〇さん適任ですよ!」と応じて円満に決まって行くのが普通です。
選挙の場合、こういう阿吽の呼吸がなく、誰がどういう能力を持つか不明の状態で「俺が俺が」という自己顕示欲の強い人が名乗りを上げて当選してしまうマイナスの方が大きいでしょう。
アメリカも中国も人から自然に推されるようになるのを待つよりは「俺が俺が」という自己顕示欲中心の国のように見えます。
こういう自己顕示欲中心の国・・アメリカはどこまでの西欧を追い越し続けたいので、いっときも休むことができない気の毒な民族?国です。
いっときも休むゆとりのない点では、現在中国(共産党政権)も成長経済を止められない点で同根のように見えます。
アメリカや中国の民度レベルの問題もありますが、金融資本に牛耳られる社会では目先の利子配当収入の多寡が最大の関心になります。
前年度同期比何%の成長か4半期の業績ばかりが株式相場の基準になっているのでは、ホンの数年先のための投資すら危ぶまれます。
自分で経営していれば一定の規模になれば昨年同様の収益があって、従業員を養なえれば満足して文化活動に精出す人が多いでしょう。
これが江戸時代に大旦那が番頭に経営を委ねて文化活動をしていた日本人の一般的生き方です。
我が国は誰もスタンドプレーに走らず・・黙々と戦後住宅不足時には公営住宅供給に税を投入してきたし、教育無償化や国民皆保険や年金制度を進めてきました。
アメリカではオバマケアなど個人名で騒ぎますが、日本の国民生活安心の基礎を作り上げた功労者の話をついぞ聞きません。
こういうことは短期の得票を求める選挙向きではなく、誰か立派なリーダーが旗振りして決めるのではなく、国民の暗黙合意によるからです。
農地で言えば数百年かけて耕地を肥沃にしていく日本の農業と土地を酷使し、使い捨て的に使いきり、土地が痩せれば化学肥料を撒いたり、移動して行く農業の違いでしょうか?
こうした息の長い政策には天文学的予算が必須でしかも地味です・・長くても4〜5年で選挙の評価を受けねばならない民主政体・・政権交代する前提の短期施策では不可能です。
日本人の多くは選挙や目先の評判でなく、子孫のために・・が恥をかかないようにお国(結局は郷土です)のために尽くす姿勢で多くの人が頑張ってきました。
これが我が国に住む人たちの価値基準であり、良き伝統です。
企業は不要な人材を「遠慮なく解雇し」「少しでも条件が良ければ転職する」「都合によっては外国へ逃げればいい」という価値観の国では、日本のような愚直?な価値観は育たないでしょう。
社会のあり方として、いわゆる性善説と性悪説を古くはjune 4, 2013,モラール破壊10(性善説の消滅)前後、近くは19年2月14日頃に書きましたが、日本は性善説の国であって、監視してこそ真面目によく働くというような性悪説・投票箱民主主義のように底浅いものではありません。
使い捨てといえば、都市さえもスクラップアンドビルド政策・用済みになれば、ゴーストタウンにして捨てていくアメリカ社会に対して、日本は戦災を受けた東京駅復元が数年前にようやく終わりましたが、毎日何百万という人が利用しながら復元していく地味な仕事です。
いろんな町の行事や古美術の保存、民具、地域のお祭りなどの伝承にエネルギーを注ぐ町の人たちを見ると、なぜか胸が熱くなります。
最近では日本でも利益率中心の経営がようやく根付いたと賞賛する声が大きくなり、アメリカの真似をするのが正しいという主張が有力ですが、私はアメリカ方式に反対です。
コスト重視の経営原理→賃金は低ければ低いほど良い→さすがのアメリカも低賃金政策は、新興国に汎用品の生産がどんどん移転するようになり、職業訓練や教育を受け付けない膨大な数の底辺労働者を抱え込んでしまった負の遺産・解雇すれば済む時代ではなくなってきました。
あまりにも大量に底辺移民を入れてきたので、「あとは知りません」というこれまでのやり方は数が多すぎるのでどうするか・放置できない時代に入っています。
2月27日に紹介したヒスパニック人口が約6000万人で、その中で一握りの成功者もいるでしょうが、大多数が文字やパソコン不要の現場作業(草刈り等の原始的?)に従事している階層では、真面目に働いてもアパートに住む収入がない状態になっている状態になってきたようです。
日本でも失業→転職対策として、再教育論が盛んですが、アメリカの底辺の場合基礎学力の違いが大きすぎる印象です。
しかも2月26日と27日紹介したように、彼らは米国民という共同体意識を持っていない・どちらかといえば、長年排他的扱いを受けてきた関係でむしろ敵意を持っているので、米国にいながら職業に必要な英語を身につけようとする意欲もない状態が見えます。
政府が正面に出ないでボランテイアに補助金をだす程度・餓死者続出時に政府は手を出さずに教会で気休め的にスープを振る舞うような政策が米国の基本的方向のようです。
底辺労働者・移民大量受け入れによる負の連鎖が始まると、この解決には途方も無い国民負担が生じる現実に嫌気したのがトランプ氏の反移民政策になって国民の感情的支持を受けるようになった基礎のように見えます。
オバマ時代から不法移民に対する合法化の政策が採用されました。
これは長期間不法移民のままで放置(追放しないまま放置)すると帰属意識の乏しい(逆に反感を持つ)移民に対する国民融合化を進めるための政策だったと考えられます。
不法移民の中で一定の要件に該当するものを合法化することで懐柔する・・その方が再教育に馴染みやすいのです・・が行われ、他方で新規移民には、能力に応じた枠を強化する方向できたのは、これ以上の底辺労働向け移民不要という政策表明と見るべきでしょう。

切り捨て社会の持続性(米国)2

弁護士業界で言えば、都心の名だたる法律事務所に入って数年して周辺県に移籍して、時代遅れ?旧来型の家事事件や生活保護事件に従事する若手がいくらもいます。
旧来型職種は総じて競争が激しくないというか高度なスキルを必要としない(弁護士であれば、半年〜1年の見習い程度ですぐできそうな)ことが多いので、脱落者には再挑戦し易いのです。
移民〜難民が人間であれば言葉が半分しか通じなくても誰でもできる最底辺層職種に浸透する傾向があるので、底辺層ほど職を奪われる危機感が強い・・移民反対、排外的になる傾向が起きる原因です。
国民同士の階層間移動では排斥運動がおきませんが、ただでさえ底辺労働の場が新興国の挑戦で職場が狭まっているときに上からの脱落者が加わるので、(弁護士業界で言えば旧来型業務は限界があるので新業態の企業法務進出が奨励されているのですが)余計に従来型の労働者の地位低下・平均賃金低下→先端産業で働く人との格差拡大を招きます。
韓国では就職路人予備校に通ってようやくサムスン等超一流企業に就職できても、30代から肩叩きが始まると言われています。
肩叩きにあうと、退職金等を利用して小さな居酒屋、土産物屋、コンビニ店主等を始めるしかないと言われていますが、似たようなことが世界中であるのでしょう。
要するに各種業界内の先端分野ではアメリカ企業的感覚で、少しでも能力に難があると見れば、容赦なく切り捨てて旧来型業種に脱落させていく集団です。
部外者にとっては、コンピューター系職業についていると聞くと先端で将来性がありそうですが、内部は多様な階層分化が出来上がっています。
プログラマーの職業寿命が短いのが知られていますが、職業寿命が尽きて再就職するとなれば、同業種で生きるのは無理で映画で見たようにローエンド・・ボイラーマンやタクシー運転手など超古式ゆかしい職業に戻るしかないのかも知れません。
数日前にリクルートが求人倍率の公表を取りやめたという記事が日経に出ていましたが、同じ業界関連でも職種が細分化されているので、求人倍率が細かな職種別で見ないと意味不明になる関係があるということらしいです。
建設業の求人倍率といっても分野によってまるで違うでしょうし、パソコン関連でいえばトータル求人が多くてもある分野では求人が少ないのに別の分野では求職が溢れているなどで細かな分野別で見ないと意味がないらしいです。
職業訓練校などは、数十年前から残っている古びた職業(重機操作等・今ではパソコン操作の練習?)の訓練をしているのが普通です。
4〜5年ほど前に交通事故被害で失業した1級建築士が、CADシステムの職業訓練に通っていたことがありました。
1級建築士でも何ができるかによって、求人倍率が違います。
長寿時代には再教育システムが必要と言うものの、40〜50台の人が20台の若者と最先端分野の教室で机を並べても生まれ付きのIT環境で育った彼らに付いて行くことができるわけがない・同年代の中高校教育でいえばいわば「落ちこぼれ組」「お荷物」です。
再勉強しなかった人よりはある程度分るようになったという程度でしかないので、本当の戦力として就職戦線で戦えるとは思えません。
部長職に止まったままでの学習ならば、基礎的能力で若者に叶わないものの、ある程度若者のやっているIT関連職務の理解ができる年配者になったという程度でしょうか?
完全離職した人の再就職用スキルを与える職業訓練校の役割は、「ローエンドのありふれた職業にせめて就職できるようにします」という程度の底上げを図ることでしかない印象ですがいかがでしょうか。
アメリカのホームレスに対する施策をさっと見た印象では、サービス業で接客できる程度の職業訓練・ピンポイント救済に引っかからないその他大多数は底辺労働にもつけない・・滅びゆく「先住民」のごとく「ゲットー」に囲って死ぬまで保護していくしかないイメージです。
シェルターは出入り自由なのでその点収容所とは違いますが・・。
出入り自由でも、アパートを借りる金もなく、ホテル等に泊まれない以上は夜になると路上で寝るか、別のシェルターを選べるにしても結局は近くのシェルターに帰るしかないのでは、事実上一生シェルター暮らしになる点は同じです。
能力別人口構成はピラミッド型で、底辺層の裾野が広いのでボランテイアがピンポイント的再教育して・一つ一つの成功例・・やっている人は善行を積んでいる達成感や満足感いっぱい・・それはそれでいいことです。
しかし・・こういうやり方では砂漠に水を撒いているような気休め・自己満足で抜本的解決にはなりません。
マザーテレサで知られるように、あるいはビルゲイツの巨額寄付金のように、欧米ではこういう気休め政策にのる人を賞賛して「アメリカ人の心根は優しい」のだという宣伝をして?底辺層不満のガス抜きしてきた社会です。
日本は個人スターを必要としない社会ですから、こういう真似事の売名行為?・・といえば怒るでしょうが・・は不要です。
一本釣りだけではなく、底辺レベルの底上げ・・40点以下の製造要員の仕事が新興国に取られるようになれば、国民の最底辺レベル層を原則として(それでもついて行けない人は一定率残るでしょうが)40点以上に引きあげる努力・・この種の底が挙げには静かな長期ビジョンによる国・社会の制度設計が必須ですが、これには数世代にわたる施策が必須です。
外国人を受け入れるようにする以上は、彼らに対する教育投資が必要と騒がれているのはこの現れです。
膨大な再教育投資の必要性を考えると、縄文の昔から一体的価値観のある日本人と違う歴史経緯・・外国人を受け入れて同化させていくだけでなく、単純労働で受け入れると彼らの技術水準をあげる教育が成功するとは思えない・・長期的に日本社会のためにならないという意見で、長移民受け入れ反対をしてきました。
日本の人手不足・高齢化の循環が安定軌道に乗るまでの数十年間・・我慢すれば高齢者と生産年齢人口のバランスが取れるようになります。
長い日本民族の歴史で見ればほんの短期間のことですから、ジタバタせずにじっと我慢の哲学こそが必要です。
民族ごとにスキルの歴史が違うのですから、その歴史にあったレベルの産業構造社会を作っていく・(日本がアジア展開するまで・・例えば中国は鉄のカーテンによって比喩的にいえば、中国人レベルが50点であれば50点の産業を担当できたのに政治力学によって解放されていなかったために5〜6点程度の低レベル産業にとどまっていた・・ダムが決壊して急激な近代化が生じたにすぎません。
中国がその勢いがどこまでも続くと過信?あるいは空威張りで自国民は100点の仕事をできると息巻いていますが、それは結果を見てからのことにすべきでしょう。

切り捨て社会の持続性(米国)1

米国から逃げ出す企業は以下の通りです。
https://japanese.engadget.com/2018/11/27/ev-gm-5-15/

EVと自動運転車に資源集中。GMが米国内5工場閉鎖、人員15%削減へ
トランプ政策空振り
米ゼネラルモーターズ(GM)が、契約社員の15%をレイオフするとともに、北米5か所の工場を閉鎖、さらに6車種を生産終了すると発表しました。
GMでは今回の再編によって正社員、契約社員あわせておよそ1万4000人のGM従業員が失業する可能性があります。
電気自動車と自動運転車の開発に資源を集中する方針です。

要は、EV系人材に入れ替えたいということでしょう。
車がEV系になると関連部材が大幅減になるので、生産台数が同じでも必要雇用が減るだけではなく、人材の系列が違いますので旧来型人材はそっくり適応障害・失業またはサービス業等への転換が求められる状態です。
本体で1万4000人減といえば、部品納入その他関連企業・周辺飲食業などの雇用減は膨大ですが彼らの多くが行き場を失なっていきます。
https://jp.reuters.com/article/gm-restructuring-trump-tweet-idJPKCN1NW29P

トランプ氏はツイッターで、GMがメキシコや中国の工場を閉鎖しなかったと批判。「米国はGMを救ったのに、その返礼がこれとは!われわれは今、電気自動車を含めGMへの補助金全額カットを検討している」と述べた。

旧来型製造技術者のレベルアップで国内雇用を守るには、時間もコストもかかるので民間企業としてはそんなことにエネルギーを使うよりも、新興国であるがままの低レベル人材を安く使って生産を続ける方が有利というのが米国企業の価値判断です。
アメリカの場合、労働者を機械設備同様の視点で見ているのでペイしないとなれば、(効率の良い機械が出てくれば新しい機械に取り替えるように)簡単に切り捨てるし、労働者も自分の能力(その企業で教えられた恩義など考えずに)に見合った待遇がない=他社からより良い条件を提示されれば転職(勤務先を切り捨てる?)する相互関係です。
中国への日本進出企業では中国人に技術やノウハウを教え込むとすぐに高い給料をくれる現地企業に転職してしまうのが普通ですが、諸外国では組織に対する帰属意識の歴史経験がないのです。
日本の場合には大昔からの村落共同体の発展した武士集団=お家大事・企業一家の思想できましたので、構成員全員生き残り策が最大関心です。
上杉、毛利の例を書いてきましたが、苦しくともリストラなど一切しない(・支配層の儲けを図るよりも構成員の維持が最優先です)のが基本です。
新興国に汎用品製造で追い上げられるようになると海外進出しますが、本国製造業をマザー工場として維持するための海外進出であって、本国の人員削減を目的にしていません。
アメリカ・ユダヤ資本主義は従業員のための企業ではなく「儲け」の基準で切り捨てる仕組みのようです。
新興国の低賃金に対抗するために能力が細分化した弊害をなくし多能工化を進めるなどの工夫努力を多くの企業で進めて、単純作業しかできない新興国との差別化に日々努力してきたのがその一例です。
その努力の結果現場から新技術発見工夫も生み出しやすくなっています。
日夜の努力の結果、国内製造業の急激な縮小を免れてきたし、車その他の各種部品産業が輸出産業・国際競争力を保っています。
人材育成・地味な努力ができるのは、大昔からの組織構成員相互の信頼関係が基礎にありますが・・時間とお金をかけて訓練しても一人前になると転職してしまう社会では企業が自己資金で訓練する意欲を失うでしょうから仕方のない面もあります。
アメリカや中国の現状・転職が先か企業がドライに切り捨ててきたから会社に忠誠を尽くす気持ちがなくなったのが先かの問題ですが、これを日本型の相互信頼社会に変えるのには数世紀どころか千年単位の時間が必要な印象です。
ホームレスに話題を戻します。
放逐された時代不適合・低賃金労働者をどうするかの政治がないことが可視化されたのが近年のホームレス激増になっていることがわかります。
彼ら全員の再教育には無理がある・・・教育機会がなかっただけで教育さえすれば、戦闘機やロケット製造技術者として参加できるようになれる人がいるか?よいえば1万人に一人?あれば良い方で、9割方は今なくなりつつある標準的技術を習得することさえできないでしょう。
国外移転企業を非難したり、ボランテイアによるピンポイントに頼って残酷な切り捨てに対する罪悪感解消に努めている様子ですが、ボランテイアが5人〜10人の再教育に成功しても、全体の底上げにはつながりません。
20年ほど前に職業転換教育・「学校」という映画を見た時の印象ですが、営業マンがリストラにあって職業訓練校に通う設定でしたが、なんとボイラーマンになって再起するストーリーでした。
当時既に新築ビルでは地下でボイラーを炊くスチーム暖房など時代遅れでしたので、再就職後すぐにその職業自体なくなる・・衰えゆく職種なので非常に違和感を覚えながら鑑賞したものでしたが、26日に紹介したボランテイアによる再教育も似たような滅びゆく職種に就職させるための訓練でした。
これから伸びゆく最先端・・ITや金融取引・製造業でも戦闘機製造技術等の能力付与は(文字も読めないものに教えるのは無理があるので、最底辺の接客訓練などでなんとか最低賃金でも雇ってもらえるようにするものに過ぎないようです。
職業柄リストラに遭った人たちを見ていると、先端系産業に勤めていて熾烈な競争に敗れた人が結構います。
時代遅れ産業よりは最先端系の方が日々の競争が熾烈で、そこでの優勝劣敗が日常的です。
学問でも絵描きでも体操でもスケートでも将棋でも皆そうでしょう。
その道のプロコーチその他が工夫しても、無理・プロをやめるしかないということで脱落していくのです。
そこで脱落した人がもう一度挑戦できるように再訓練出来る公共の?職業訓練校など有るはずがありません。
先端系で脱落した人は時代遅れと言われる旧式産業界でやりなおすしかないのが現実です。

資本環流と貿易赤字の持続性

前世紀の成功体験にしがみつく米中の恫喝は、どうせ一過性のヒステリーに過ぎないと言う前提で、そのときだけ廻りがある程度言い分を聞く程度のアメリカに対するあしらいになる時代が来るのでしょう。
言わばヤクザが息巻いている間黙って聞いているだけの関係と似ています。
これの前触れがトランプ政権の結果の見え透いた恫喝的取引外交です。
これを繰り返しているうちに、国際社会におけるアメリカの存在がドンドン軽くなって行くでしょう。
July 25, 2016「消費力←金融3」前後で消費力のテーマで書いて来ましたが、腕力政治・・大鑑巨砲時代が終われば、発言力は生産力によるのではなく、消費力によるのですが、まだその辺の理解が出来ないので時代遅れの国になりつつある所以でしょうか?
韓国が中国に露骨になびいたのは、04年から約10年間にわたり対中貿易がアメリカを抜いて韓国経済にとって世界一の関係になっていた事実・・今後益々拡大すると言う読みがあったからです。
15年のデータですが、以下のとおりです。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000005986.pdf-
平成28年2月-外務省アジア大洋州局日韓経済室
中国は韓国にとり貿易総額で第1位の貿易相手国。
03年に対日貿易額を,04年に対米貿易額を上回り,15年は約2,274億ドルで貿易額の約25%を占める。
同年の対中輸出の割合は26.0%,対中輸入の割合は20.7%。
輸出依存度:(輸 出 の 対G D P比)50.6%(14年,世界銀行)と極めて高い比率。為替変動や他国の景気動向の影響を受けやすい経済構造(13年の日本の輸出依存度は16.2%)
上記貿易実態をみれば、朴政権が日米の制止を振り切って中国依存へ舵を切っていた背景が分ります。
ところが、頼みの中国経済が15年夏の上海株式大暴落以来変調気味になってきたことから、日米勢力圏へ回帰し日韓合意に踏み切りサード配備を決めた基礎事情でした。
生産力ではなく購買力が世界政治を決める時代になっています。
消費・購買力の基礎は資金力です。
資金力の本質的な差は持続性があるかの評価次第であって、株式発行による自己資本か社債発行によるかの差には本質的な差がありません。
発行済社債評価が下がっても発行体に関係がないようですが、既存社債の満期がしょっ中来る関係で、借換債発行が不利になるのは死活問題になります。
普通の国では長期間貿易赤字・・借金で消費しているとそのうち信用不安・・通貨が暴落で、ベネズエラ危機になります。
アメリカは貿易収支の赤字・・マイナス分をアメリカ国債購入などの資金環流で補っていますが、普通の国と違い基軸通貨の地位が続く限り、今のところ無限の可能性があります。
日銀引き受けによって政府がいくらでも国債を発行出来るのと同じような関係です。
この結果世界の製品を引き受けて、大幅赤字を提供して来ました。
貿易家赤字を続けると言うことは、その国からドンドンものを買ってやって大きな顔が出来る・・恩を着せられると言うことです。
国際収支上は、収支バランスが理論的結果ですから、赤字分同額の資本収支勘定の黒字=流入があります。
いわゆる資金環流ですが、これがいつまで続くかの問題・・基軸通貨国の地位は軍事力によるのではなく、経済力の裏付けがあってこそですから、資本収支・・海外収益還流が大きい我が国のような場合健全ですが、強面で強制的に資金環流をさせている場合いつまでも続くわけがありません。
アメリカが海外収益の拡大が続いて基軸通貨国の地位が続いた場合にも、・・海外子会社の収益還元であれ、国公社債購入であれ資金環流に頼っていると現場労働によらない収入ですから、この恩恵を受ける層と受けられない層(・・これが大多数です)に分かれて来ます。
最貧国への援助であれ、資本環流に頼る社会では、(5月13日に書きましたが、)これに関与出来る階層(先進国ではグローバル企業や金融資本家や関連従事者・後進国の場合独裁政権幹部の賄賂)と関与出来ない階層の国内格差が拡大する一方で格差問題が解決しません。
(後進国への巨額援助に関与する高官の賄賂収受と中国の巨額賄賂も根っこは同じで外資導入・・外資・・店舗や工場新設許認可に関与する「袖の下の横行」にあります・・中国が外資に頼る時代が終わると国民相手の賄賂要求では多寡が知れているので賄賂も激減するでしょう)
格差問題の根源は、資本流入に頼る経済にあるとすれば、反格差論はイキオイ貿易赤字解消運動に帰結するしかありません。
これがトランプ氏の保護主義・国内生産回復政策→貿易赤字解消策であって一応理論としては一貫していると思われます。
これに加えてアメリカが永久に貿易赤字を続けて行けるか先行き不安解消もあって一石二鳥の主張です。
いつまでも大幅赤字を続けられない・何とかしろ!と言われるとアメリカの赤字で潤っていた日中韓など黒字国はうろたえます。
軍事力が怖いのではなく、赤字=黒字削減を言われるのが怖いのです。
貿易赤字国は損をしているのではなく、実は働き以上の消費をして「得して」来た関係です。
働かないでうまいことをする関係は長く続かない・・貯蓄がなくなるとあるとき遂に支払が出来なくなる・・イキナリ最貧国転落・・10何時間時並んで漸く必要な食糧の一部を手に入れられるだけの今のベネズエラみたいになります。
アメリカの場合も、資金還流が止まるとおしまいです。
資金環流には自国企業の海外収益還流と強国へのおつきあいで(巨大な貿易黒字を多めに見てもらうために?)義務的に環流させられている資金の2種類があります。
日本や中国の政府がアメリカ国債を買わされているのは目に見えた還流強制ですが、トヨタなどが無理にアメリカに工場を作らされる・・その分資本環流させられているのもこの一種です。
無理が利くのは消費力があるからですが・・これがいつまで続くかです。
義務的とは言え、長期的に見れば資金移動は投資効率が基準であって、金利の高い方〜安全な方に流れたいのが本来です。
以前は「有事のドル」と言われ国際政治上の危機・動乱が起きると一時的にドルが上がり、さすがにパックスアメリーカーナと言われるだけのことがあると言われたものですが、この20年間程は、「有事の円」となってアメリカドルよりも円が上がります。
こう言う状態下で、アメリカ国債が日本より金利が安いと何のために割高な(金利の殆どつかない)アメリカドルを「イザというときのために」保有しておく必要があるか?アメリカ国内工場を造っても採算が合わないと続きません。
例えば中国に取っては国内基準金利でさえも4〜5%ですから、国債利回りで言えばこの2〜3倍とすれば、15日に紹介した金利のアメリカ国債を買って保有しているのは完全に逆ざや・・大損です。
このためもあって中国のアメリカ国債離れ・・ユーロなどへ分散投資の流れが続いているのですが・・これを阻止するためにアメリカは一刻も早く金利を上げるしかない・・いわゆる出口戦略・・金利上げに必死なのです。
エコノミストは「アメリカがやっているから、日本も出口戦略策定を急ぐべき」と言いますが、日本は世界最強債権国ですから金利上げを急ぐ必要性がありません。
・・それどころか日本が金利を挙げたらアメリカその他世界の資金がみんな日本に吸い上げられて困ってしまうでしょう。
アンカーの日銀がむやみに金利を上げると市中銀行がその上乗せ金利で貸すしかない・・中銀が金利を上げると金融引き締めになるのと同じで、世界経済のアンカ−たる日本が金利を上げるとみんな一斉に上げるしかなくなり参ってしまいます。
アンカーの金利は最低でないと世界は混乱します。

中国購買力持続性6(外貨準備減少)

中国の外貨準備と言っても日本等からの外資の投資が多いから膨らんでいるのであって、真水の外貨準備金は少ないとMay 5, 2015「中韓の外貨準備1(真水)」その他で繰り返し書いてきました。
孫正義氏が世界的大富豪と言ってもこれに匹敵する巨額負債を抱えてM&Aを繰り返していることも知られています。
日本の財政赤字報道はプラス財産を見ない不思議なものですが、孫氏の富豪度報道になると逆に巨額債務を見ないで買収した相手の株式評価額だけを計算して世界何位と言うのですが、中国関連報道も中国に都合の良い面ばかり報道している傾向があります。
(本当の事実を知らないと中国も方向性を誤るので虚偽報道が中国自身にとって良いかどうかは別問題です・・政権中枢だけが本当のことを知っていても、国民がねつ造の歴史を信じていたり強国になったと誤解して強気になってしまうと、政権がこれまでの教育は全て噓でしたとは言えず引きずられてしまうので、結果的に国民全体が誤解しているかどうかが重要です・・個人で言えば、本当の健康状態を知っている方が良いのと同じです)
中国は見かけだけの外貨準備で威張っていたのですが、外資の引き上げが始まり先行き人民元下落のリスクが高まって来た昨年末に掛けて月に千億ドル規模の外貨準備減少が続いていました。 
以下は、日経新聞ネット配信記事です。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM07H1R_X00C16A2FF8000
北京=大越匡洋】中国の外貨準備高が過去最大規模の減少を続けている。中国人民銀行(中央銀行)は7日、1月末の外貨準備高が3兆2309億ドル(約 378兆円)で、前月に比べ995億ドル減ったと発表した。
減少幅は過去最大だった2015年12月の1079億ドルに次ぐ大きさだ。中国の通貨人民元への下落圧力が強まり、人民銀がドルを売って元を買う為替介入を繰り返していることが大きな要因だ。」
上記は政府発表の外貨準備ですから本当の流出はもっと大きいかも知れませんが、中国政府は人民元防衛に必死で、実際の輸入決済以外には両替を認めないとか個人の年間の外貨持ち出し限度額を規制強化するなどあの手この手の為替規制をしていることが報じられています。
それでも減少を食い止めることが出来ず2月にも300億ドル近い外貨準備減少です。
以下はhttp://jp.reuters.com/article/china-reserve-feb-idJPKCN0W90QH
Business | 2016年 03月 7日 18:48 JSTの引用です。

[北京 7日 ロイター] – 中国人民銀行(中央銀行)が7日発表した2月末時点の外貨準備高は前月比285億7000万ドル減の3兆2000億ドルで、2011年12月以来の低水準だった。
減少幅はロイターがまとめたエコノミスト予想の300億ドルをやや下回った。1月は995億ドル減だった。
12月は1079億ドル減少し、過去最大の減少を記録した。
外貨準備は、2015年通年では5130億ドル減少し、年間の減少としては過去最大となった。」

この間貿易収支が黒字発表(政府発表自体が当てにならないことは周知のとおり)ですが、それでも減少を続けている状態です。
言わば、張り子の虎の「紙」が破れ始めた状態で輸入・自己消費だけ増やすことになる内需拡大が出来るかの疑問です。
充分な年金積み立て金+個人預貯金等蓄積がないのに高齢化が先に進む・・支出だけする人が増えると(未富先老)個人も国家も借金地獄になって大変ですが、これを国際的に拡大して行こうとする・・外貨準備を越えて内需拡大出来るかのテーマです。
国家的モラルハザード期待論・・債務を国外に付け替え(て踏み倒す)運動でないかの危惧で書いています。
健全社会日本では、高度成長期にも爆買いせずに環境保護や子育てを含めて将来のために投資してきましたし、現在金利を下げても更にはマイナス金利にしても合理的な投資予定がないかぎり「タダだから借りよう」と言う人(モラルハザード)がそれほど増えません。
中国の場合金利を下げると人民元がさらに下がるのでこれが出来ませんので、預金準備率を下げて紙幣供給量を増やす政策になったのですが、そうするとゾンビ企業や消費金融利用者の延命を助けるだけ・・負債が増える一方になっていると言われています。
この結果、中国が決めた6、5%成長論を実行するための金融緩和をすれば、過剰投資の整理どころか逆に投資再開されて破綻を先送りし、破綻時の規模を大きくする政策だと言う批判が普通です。
http://ameblo.jp/katsumatahisayoshi/entry-12135478183.html
勝又壽良の経済時評
2016-03-10 04:03:52
中国、「預金準備率引下げ」人民元相場より経済成長を優先
③「長期的には、債務拡大という形での刺激策導入で状況がさらに悪化する恐れもある。ゴールドマン・サックス・グループの投資管理部門は、中国債務の国内総生産(GDP)比の増加が近年で目立つと警告してきた。2月に公表されたブルームバーグ調査のエコノミスト8人の予想中央値によると、今後数年以内に同国債務はGDP比283%でピークとなる見通しだ」。
以下は韓国の場合です
http://biz.searchina.net/id/1598022
まずい!韓国企業の債務比率が主要新興国で最悪の水準に、債務拡大が加速 2015-12-24 13:58
韓国メディアの亜洲経済の中国語電子版は18日、米財務省はこのほど国際通貨基金(IMF)の統計データに基づいた報告書を発表し、2014年第4四半期までの国内総生産(GDP)に対する韓国企業の債務比率は主要新興国のなかで最悪の水準となったことを伝えた。(イメージ写真提供:123RF)

実際にこの3〜4月頃に1線都市での不動産バブルが再燃し、今春G20で公約していた過剰生産力整理どころか、休止設備再開の動きすら出て来ている様子が報道されています。

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