年金赤字の主たる原因は制度設計のミスですが、これを隠すために世代間扶養であるから、次世代の人数が減ったので苦しい、次世代の給与が少なくて納付金が少ないなどと今になって言い出しました。
世代間扶養説のまやかしについては9月12日にも書きましたのでその再論・続きです。
世代間扶養の具体的場面ををちょっと考えれば分りますが、成長が永遠に続き人口が永久に増え続けない限り無理な制度ですから、こんなことは最初から誰も本気で考えていなかった筈です。
年金制度開始当初の中高齢者は積み立てが少ないから次世代が負担するしかないという説明が多いのですが、加入したばかりで積み立ての少ない人に対する救済は税や生活保護で見るべきであって、加入者間の助け合いを基本とする年金で見るべきではありません。
年金保険は各人自助努力で積み立てた仲間だけでその結果を分かち合い受給するべきものです。
自分が積み立てても積み立てなくとも老後は貧しいから受給権があるというのでは、誰も年金を掛ける気持ちにならないでしょうから、貧しい人に対しては税や国債を原資とする社会保障でやるべきものです。
障害者は年金を1銭も掛けてなくとも障害年金をもらえる・・サラリーマン主婦も同様で、こうした社会保障的給付制度が多いのですが、こうした社会保障給付を年金に紛れ込ませていて(1銭も払わない人も受給出来る)年金が赤字だと言われてもまじめに掛けている人は納得出来ないでしょう。
こうした点が、本来の年金制度をダメにしているという意見を05/03/05「年金未納問題8(一般免除者)国民年金法 5」前後で書いたことがあります。
世代間扶養説は、障害者年金等と同様に年金保険の本質・掛け金を掛けた人同士の助け合いの本質に反しています。
世代間扶養説によれば、ある国で年金制度が始まった瞬間に、そのときの高齢者が積み立て始めると同時に次世代の積立金で十分な年金を受けられることになります。
年金制度未熟国では世間扶養しかない・・世界中でそんな思想がもしも妥当しているならば、中国でも韓国でもフィリッピンでもまだ年金制度が始まって年数が浅いので蓄積が薄く、高齢者が大変で自殺が多いと一報道されていますが、世代間扶養を主張する報道と矛盾していることになります。
世代間扶養説によれば加入後10日でも数ヶ月でも支給年齢が来れば、全額給付されることになるべきですから、その国で制度が始まったばかりかどうかは問題になりません。
始まったばかりはまだ一定期間(我が国で言えば25年)かけてないから、25年間掛けたことによる受給開始年齢が来ないと言うならば、25年かける期間に足りない中高年者は誰も掛け金を払う気持ちにならないからだと言います。
しかし、彼らも掛け金を払うような気持ちにさせるためには、その差額を(社会保障として)税で見るべきであって、開始当時の若者の掛け金で使ってしまうのでは、次世代加入者の積み立て金の使い込み・詐欺みたいなやり方です。
サラリーマンが集金の使い込みを隠すために次の集金を穴埋めに使う・・自転車操業みたいにやって行く予定が、売上減→集金額の減少で(年金の場合次世代加入者や納付金が減って来たので)やりくりがつかなくなって悪事露見という事件が多いのですが、似たようなことではないでしょうか?
ちなみにどこかの報道で読んだことがありますが、現在の積み立て金残高は、給付額の6年分程度しか残っていないとのことです。
25〜30年間年金を払い続ける予定とすれば、同期間分積立金が残っていないと計算が合いません。
差額20〜25年間分を長い間に少しずつ食いつぶして(集金員で言えば、使いこんで)来たことになります。
現役世代の給付金をそのまま年金給付に当てるならば、給付金額は現役世代次第ですから固定額を予め約束出来ない筈ですし、毎年の入金額をその翌年に全部配れば言い訳ですから、1銭も積み立てて来る必要がなかったことになります。
「毒食らわば皿まで・・」と言う言葉がありますが、世代間扶養説に悪のりして、この積立金があるから、これを財政赤字補填に使えば良いという説まで現れています。
元々年金積み立て・・積んで残しておく意味なのに、各掛け金納付者の積立金を障害者給付その他次々名目を付けてはつまみ食いして来た結果6年分しか残らなくなったものですから、これを25年分充つるまで再補充すべきです。
「6年分しか残ってないなら、世代間扶養ということにして全部使ってしまおう」という無責任な意見が堂々と出て来るのは、世代間扶養などと誤摩化しの意見が流布しているから誤解して出て来た意見です。
世代間扶養のつもりではなかったからこそ、何十年も積み立てて来たのに案に相違して次第に減って来たので(これまで書いているように設計ミスです)危機感を持って騒ぎ出したが、何十年も経過しているうちに僅か6年分しか積立て(蓄え)がなくなってしまったということです。
一生面倒見ますと言って給与天引きして財産管理していた人が無駄遣いした挙げ句に65歳になった人に対して「老後資金が僅か6年分しかありません・次世代に扶養してもらって下さい」と告白している状態が現状です。
世代間扶養とは各人の掛け金に関係なく次世代が負担したお金で見るということですから、掛け金に関係なく支払うと言い出したらそもそも社会全体で見るべきこと、即ち税で賄うのが筋になって来て個人の自由意思による積み立て方式である年金制度と矛盾してきます。