強行主義の限界6(スローガンと実務)

政治家の供給源が弱体化すると政権自体も頻繁に変わらざるを得ません・・これが2年ごとに政権交代を繰り返した原因ですし、民主党も鳩山.菅・野田と短期間に3人も変わった原因です。
安倍総理が長期政権の結果、国際社会でも重要な地位を占められるようになっていることからも明らかなように、一定以上の経験が必須です。
最近自民党の大臣答弁が危なっかし過ぎるのも、小選挙区で一人勝ちになる結果選挙区内の切磋琢磨がない・・経験を積めないことによる印象を受けます。
単純明快なシロか黒かに単純化するマニフェストやスロ−ガンどおりに国内政治を出来るわけがない・・選挙で勝つのに必要な能力・・・振り付け通りお演説演技能力と多様な価値観を受け容れる実務能力とは一致していません。
アメリカの場合、息子ブッシュが背中に何かをつけてその指示に従って記者会見していると言う噂が立ったことがありましたし、オバマも演説はうまいが1対1の政治会話が殆ど出来ないと言われていました。大分前に書きましたがアメリカでは演説のうまい素人政治家が、いきなり大統領になるからこういうことになります。
制度的にはアメリカ大統領はクニを守るための戦争と議会の決めたことを実行する事務局トップでしかないのですからそれでいいのですが、戦争用に議会を待たずに命令出来る大統領令を次第に拡大運用するようになったことと、実務をやって行く過程で社会の需要が顕在化し、実務官僚に利害情報が集まり予算化の必要性その他膨大な識見が集中するのですが、三千人とも言われる政治任用官僚の大幅入れ替えがスキルの蓄積を阻んでいる実態があります。
その上大統領府は議会の議決の執行権だけで予算の提案権すらない・・年頭の予算教書と言う願望演説しか出来ないし、法案提出権もないので日本のように法案について説明を求められることもない・・議会から招待されないと議会にも行けません。
日本では品位上どうかな?と言う場合、政府提出法案ではなく議員提出法案・議員立法と言うランク付けがありますが、アメリカではみんなこれですから(政府提出法案のように各業界根回ししてすりあわせたわけではない粗雑な?)、トランプ氏の暴言に似たとんでもない法案(議員立法が前提ですから、各議員は内閣法制局まがいのプロをスタッフを抱えています)がしょっ中提案されています。
ですから法案が出ただけで一喜一憂する必要がないのですが、トランプ氏が当選したようにときの勢いでアレヨアレヨと言う間に議会通過するリスクもあります。
一方でトランプ氏のように個人の思いつき的な大統領令の濫発?で大統領権限が肥大化しているのですが、お互いのいびつな関係が極まって来たのが今のアメリカです。
何事も粗製濫造で後で裁判して有効無効を決めれば良いと言う乱暴な社会です。
日本は平安の昔から、こう言う乱暴なことをせずに何百と言うか無数の利害調整してから決めて行く社会ですので社会の安定も保たれるし、時々刻々の関係者の要望を取り入れる結果、漸次の社会変化をスムースにこなして来られたのです。
無数の利害を吸収してこそ納得の政治が出来るのですから、二択の公約重視の宣伝は国内対立を激化させることになるだけです。
欧米レベル〜後進国では、社会が未成熟・・二択の単純思考しか慣れていないので、政治を分り易くする必要がある・複雑な利害調整は専門家に任せてくれと言う二階建て方式が妥当だったでしょうが、多数利害を吸収してから政治をする複雑思考・熟達した民度のわが国民に何周回遅れの後進国の単純思考方式を素晴らしいとマスコミがけしかけるのは間違いです。
ちなみにトランプ氏は従来エリートしか分らないような政治運動・・「後はエリートに任せてくれ」方式を庶民にもわかり易い言葉で訴えた点が新手法だったと言われています。
そのかわり、二択・単純思考の庶民が直截政治意見を言うようになると、「白か黒か」のような単純論法で引きつけてしまった分、現実政治で多数利害との調整・修正するのは「裏切り」に見えるので容易ではありません。
単純化は選挙スローガンでは有効ですが、これを如何にして現実政治に引き戻すかの手腕がないとその後政権が持ちません。
シロかクロかのような二分法でも小泉総理の郵政民営化のように産業の中の1部門だけ標的の一点突破ならば、これを具体化しても国論の分裂まで行きません。
利害関係者が、「万分の1」の分野で一点突破をすれば、反対論を封じ込めて強引・無茶をやっても関係のない9999人の多くは傍観ですから、社会の根幹を揺るがすこともなく仕掛けた権力者の一方的な勝ちに終わります。
小池都知事の手法もこの踏襲で、ピンポイントで敵・標的を一人決めて集中砲火を浴びせるやり方です。
小泉総理の場合には郵政民営化という政治テーマがありましたが、小池氏の場合個人攻撃ばかりで具体的政治とどう関係するのか全く見えません。
都政のガンだと決めつけて一方的な内田氏への攻撃をし、これが終わると今度は石原氏攻撃ですが、今やらねばならない都政、築地市場移転の決断のために当時の都知事の責任問題を解明しなければならないとは考え難い・・決断先送りとは殆ど関係がないように見えます・・。
それは別途やれば良いことでしょう。
小池氏の場合具体的政治をどうすると言う議論が殆ど聞こえて来ない・・これを言えば利害対立者が出て来ますが、これまでの小池知事の動きを報道で見る限り次から次へと個人攻撃に集中している印象です。
いじめっ子にされた人以外の人は自分に関係がないので次に自分が狙われたくない・・誰もが我関せずになりがち・対象にされた方は孤立するだけですから、権力を握ったほうが有利に決まっています。
多くの都議が小池新党になびいているのも、政治テーマ・・「都民ファースト」だけでは何もないに等しいでしょう・に共鳴シテのことではなく競合・刺客候補を立てると言われると、困る恫喝に怯えている印象です。
小池氏の擁立する新人の得票が仮に2~3割しかない・・負ける訳がないと思っても、2~3割も票が減ると競合する公明党などに負ける恐怖感がそうさせている・・公明党、民進党も皆同じ状態で浮き足立っているだけのように見えます。
刺客を立てられると怖いからとは言えないので、表向き政治姿勢が共感出来ると言っていますが、「千葉や埼玉のために」と言う都議はいないので「都民ファースト」と言うだけなら、政策ゼロと同じですから何に共感しているのか不明です。
敢えて言えば弱い者イジメに共感していると言うことでしょうか?
具体的政治を言うと利害敵対が生まれるので「政治意見ゼロ」強迫だけが共通項に見えます・・その見せしめに石原氏でさえこうなるぞ!と言う標的に選んでいるのでしょう。
選挙が終わると脅しの効果が薄れるのでその次に何をするかですが、いつまでも脅しばかりでは持たないでしょう。
いつかは具体的政治に着手するしないのですが、今のところ電線地中化程度の意見しか聞こえて来ません。
この程度ならどこにも反対がないでしょうが、その代わり簡単には進まない点では、トランプ氏のメキシコ国境の壁設置と同じです。
争点による波及効果・・単純OR複雑に戻りますと国際政治で言えば、北方領土や韓国竹島の占領は日韓以外に利害がないので 実力行使した方が勝ち・・世界中で日本がいくら訴えても「そう言う問題があるの!」と言う程度で終わり・・どこも気にしていません。
ところが、尖閣諸島の領有争いや南沙海域の埋め立てになると、利害関係国は中国とフィリッピンだけではありません。
通商航路維持に関して日本が強力な利害を持つだけでなく、パワーバランスに関してはアメリカも強烈な利害を持ちます。
(これを日本が説明してトランプ氏に同意して貰うのに成功したことになります)

強行主義の限界5

昨日紹介したとおりトランプ政権としては、選挙では勇ましいことを主張していましたが国内諸勢力を政権内部に取り込んで利害調整して行こうとしていたし、被害を受ける業界も反発するだけはなく内部に食い込もうとしていたことは明らかですが、マスコミの反発が強くて彼らが相次いで辞任の方向になってしまいました。
マスコミは両極対立を煽る方が面白い?と言うことでしょうか?
元々トランプ氏が対立を煽ったのだから仕方がないと言えますが・・「やれたらやり返す」と言う論理でお互いにエスカレートしていくのでは、国内分裂が広がるばかりで大人の智恵・・成熟社会のあり方とは言えません。
日本でも政権内部食い込みを快く思わず政権の外から批判する方に回らないことを非難する民進党のような勢力がありますが、日本では、相手を非難するばかりではなく自分の意見を粘り強く訴えて意見を採用してもらう方に動くのが普通ですし、まして関係のない他所のクニの内政に口出ししてワザワザ喧嘩を売るる必要がないと思う国民が大多数でしょう。
その政権に反対でも先ずは懐に飛び込んで様子を見ようと言うのが、我が民族の知恵です ・・これがマッカーサーの占領軍をうまく手名付けられた智恵です。
「先ずは人道非難・・注文をつけないのはおかしい」と言う民進党の主張は、国益に反すると感じる人が増えて来て民進党が何か主張すればするほど支持率が下がる一方になっています。
天皇陛下の生前退位問題については国民大方は早く決める必要があると言う認識で一致していると思われますが、両院議長による各党に対する意見聴取に関する今朝の新聞を見ると、民進党は原理原則論で短期間に決められそうもないテーマにこだわり退位問題だけの議論に応じない印象です。
国民の多くは天皇家の問題についてまで意見対立を望まない文字どおり「総意」で決めたいと言う民族宗教的一致があると思いますが、こう言うことまで「何でも反対」で前に進めないのでは、共同体の仲間と言えるのか?の疑問を持つ人が増えてくるでしょう。
政権が理由もなく交代すれば民主主義と言うものではなく、政権が硬直して多様な利害を吸収できなくなったときに多様な利害を吸収してくれそうなカウンター勢力に支持が移り政権交代が起きるのが本来の民意反映の政治・民主主義と理解すれば、我が国はいつも時代適合の必要に合わせて政権が変わって来たこと・・摂関政治から平家~鎌倉幕府~建武の親政~室町幕府~応仁の乱→戦国時代~織豊政権~徳川幕府~明治維新~戦後民主主義時代の流れと符合します。
戦後自民党の長期政権は、党内に多様な派閥を抱え刻々と変わる国民のニーズを柔軟に汲み上げて来たことによりますから、国民は政権が変わってくれないと困ると言う意識・・必要を感じないから変わらないのです。
旧社会党以来の系譜を払拭出来ない民進党が現実政治に自己の主張を反映させて良い社会を作るのが目的ではなく、交代の必要もないのに政権交代を望む・・敵対を選ぶのでは結果的に何でも反対するしかなくなります。
上司の課長や部長、社長の足を引っ張ることばかり考えて陰口を吹聴し徒党を組む、スポーツ選手で言えば自分の技量が上がるように努力しないでライバルが転んで怪我するような仕掛けを作る・・こんな人が尊敬される筈がありません。
国民のためにどうすべきかが行動基準ではなく、政権を困らせ社会が困るように仕向けて失敗させるのが目的=日本が困る結果を期待するしかなくなる→どこの国のために主張しているのか?と言う批判を受けるのは必然と言えます。
野党の存在意義は政権の柔軟性・・利害調整能力がなくなったときに新たなニーズの受け皿になることであり、うまく回っているときに外敵と手を組んでまで現政権失敗を起こさせることではありません。
中国歴代王朝では後漢の党錮の禁が有名で唐末の牛僧孺(牛僧孺党派と李徳裕党派の政争が激しくなり、これは牛李の党争の争い)など徒党を組んで権力抗争を繰り返すばかりでしたから、何回王朝が倒れても社会の変化に寄与しなかった所以です。
その意味では日常的な政党林立の必要性がないのかも知れません・・アメリカの回転ドア形式・シンクタンクの存在は政敵を倒すのが目的ではなく政権が変わったときのブレーン供給源ですから、結構合理的です。
革新系野党は中国の党派争いを引き継いでいるからいつも反対しか出来ないのですが、エリート・前衛式の強烈さは西欧のエリ−ト意識の承継と国民に対する優越意識の強い儒教意識の流れの双方の影響があるのかも知れません。
国民意識を尊重するのを大衆迎合主義と決めつけるマスコミと意見が合い(エリート意識で)国民の期待と違った主張を心がけているからこうなるのではないでしょうか?
アメリカはマスコミによるトランプ政権大攻勢の結果、折角政権内で意見を言うつもりでいた業界が政権内から外に出るしかなくなり、回転ドアがうまく回らない・シンクタンクからの人材供給も思うように進んでいない様子です。
トランプ政策で被害を受ける筈のアメリカ国内業界が政権とのパイプを自ら閉じてしまったので、政治に必要な利害調整・妥協の道が閉ざされた印象です。
二項対立しかない韓国型政治に入って行くのかも知れませんが、政治の中二階形式をやめる・・トップが直截民衆に語りかける政治になると本来の民度にあった政治に戻るしかないのかも知れません。
この結果、国内では政敵ばかりで孤立している(回転ドアがうまく回らない)トランプ氏は国際政治ではNATOであれ対中国であれ、妥協の方向に入って来た印象です。
先ずは日米枢軸を大事にして壊さないことを基本にして、国際政治を決めて行くことになりそうな雰囲気の安倍氏との共同記者会見でした。
ところで、いくらワンマン・大統領制のアメリカでも、移民に限らずいろんな利害を政権内に取り込む仕組みを持たないと国内政治はうまく行きません。
移民問題も利害調整してから実施すれば良かったのですが、実施してから反対が強いのでレベルダウンするのでは、政治的影響力としては致命的?打撃を受けてしまいました。
これをどう切り抜けるかの智恵(先ずは回転ドアからプロをどれだけ取り込めるか)次第で、トランプ政権の命運が決まって来るでしょう。
自民党は矛盾したいろんな主張・利害をうまく取り込んで来たので、長期政権を維持出来ていたのですが、欧米流の一神教理論を信奉して政党である限り主張を純化するのが正しい(ドブ板選挙・・派閥連合体政治はおかしいと言う)かのような政治学者?やマスコミの主張が何十年も続いています。
自民党はいろんな利害を包摂しているので「近代」政党ではないから近代政党へ脱皮すべきだと言う議論を聞かされて育ちました。
この種のマスコミ運動の成果が一人しか当選出来ない小選挙区制への変更であり、「公約重視」「マニフェスト」の普及でしたが、→主張や人材の単純化によって自民党が人材の厚みを失い凋落→政権を失わせた一因です。
中〜大選挙区の場合、若手は最下位でも当選すると能力次第で次の選挙まで政治経験を積んで次には2位当選するなど順次の経験が得られますが、小選挙区制の場合ある政治家が仮に5〜10回当選を重ねる場合、その選挙区では2〜30年間競合・好敵手が育たないし次世代の育成・経験者が皆無になります。
熟達した政治家が育ち難い・・毎回「◯◯チルドレン」と揶揄される新人未熟政治家ばかり交代して行きます。
1年生議員は未熟なのは仕方がないですが、選挙民にすれば、役に立たないと不満を持って別の新人に投票するので、連続当選出来ず熟練する暇がありません。
韓国政界が不毛な争いを繰り返す原因は「長くて当選2〜3回の新人ばかりだから」と言われています。
ウイキペデイアの韓国2008年の総選挙記事からの引用です。
「今回の総選挙で、初当選を果たした候補は、137人で全体の45.8%に留まり、前回の17代総選挙の時の62.9%と比べて新人当選率は大幅に減少した。なお、第17代国会の現職議員で再選を果たした候補は、131人である。当選者の内、最多当選者は自由先進党の趙舜衝候補(比例代表)でこの選挙で7選を果たした。また、年齢構成では、50歳代が47.2%で最多となった。反対に386世代を中心とした40歳代以下の当選者は、前回総選挙においてウリ党で当選し、今回は統合民主党からy立候補した議員が、多数落選したこともあり31.7%(前回43.1%)と減少し、前回総選挙より当選者の平均年齢はやや上がった。」
上記のとおり新人当選率が前回が62・9%、2008年に新人当選が減ったと言っても45・8%が新人です。
この比率で入れ替わって行くと選挙2回で全部入れ替わる計算です。
韓国では歴大統領が政権末期に悲惨な目に遭うことが多い・・熱しやすく冷めやすい韓国人の気質が現れていますが、熟練政治家のいない韓国型政治を日本マスコミは何故真似したがるのでしょうか?
若い女性・・綺麗過ぎる市会議員などと頻りに囃し立てていましたが、未熟な政治家に委ねることが何故日本のためになるのでしょうか?

強行主義の限界4

この先の展開はアメリカの民度次第ですが、その代表たるトランプ氏の資質に入って行きます。
勿論私は彼個人を知りませんので、一般的推理です。
弱者をやっつけて膨張することに存在意義がある・・弱い者イジメで支持を集める勢力は、裏返せば複雑な利害調整能力が相対的に弱いことを表しています。
対外的に相手が自分より強いか弱いかを中心とする単純思考政権の場合、内政だけ複雑な利害調整出来るとは思えません。
国内政治もこの基準優先となります。
トランプ政権の特徴を取引型政権と言われ二国間交渉を基本にすると言われていたように、彼は実業界出身とは言え不動産取引・・・原則1回キリの1対1の買収販売が基本で多種多様な利害調整の必要な業界経験が少ない点が危ぶまれています。
1対1・・一回きりの交渉では、自分より弱い相手を恫喝して有利な結果に持ち込む・・・相手の足下を見透かして仕掛けるいわゆる取引型交渉・・その場で相手の弱みにつけんで格安で仕入れたらもう一度同じ相手から土地やマンションを買う必要もないので恨まれても何の心配もありませんが、内政や国家間交渉ではその後何十年も関係が続くのでこんな乱暴なやり方は通用しません。
安倍総理との会談前にオーストラリア総理との電話会談中に意見相違から?ぶち切れて電話を切ってしまったと言う騒動もがありましたので、これに持ち込まれるのを恐れていたのが日本国民でしたが、この難局を安倍総理が切り抜けてほっとしているところです。     
国内政治は上記のようにその後も有権者であり続ける関係から、その都度切り捨てる行くわけに行かない・・多種多様な利害調整の結果妥協で仕切って行くしかないのに、国内でもこの基準を強行すると国内分断・・不信と憎悪の悪循環で内政が無茶苦茶になります。
政治主張が両極に別れる場合、国民には分りよい・選挙スローガン向きではあるものの、選挙後もそのとおり政治をしていると相互に妥協が出来なくなって収拾がつかなくなるのが普通です。 
政権が発足すると実務をやる以上一方的な政治は不可能なので、反対派の意見も取り入れて柔軟な舵取りに変わるしかないと言う期待から、政権に影響力を行使するために不利に扱われそうなIT業界などが政権のいろんな委員会に人材を送り込んでいたようです。
ところが、2月3日予定の第1回会合で彼らにブレーキをかけられるの嫌ったのか分りませんが、トランプ政権は選挙スローガンのママ貫徹姿勢を変えないことを内外に示したのが会合前の1月30日7カ入国禁止の大統領令署施行でした。
対外行為は,相手が弱ければドンドン圧して行けば良いので一見単純ですが、一定のところを越えると周辺国の反発を受けてうまく行かなくなるのが普通です。
トランプ大統領のアラブ7カ国入国禁止令を見ても、カ国は弱いからこれと言った抵抗が出来ませんが、今では国内外の壁が低くなっている結果国内に入り組んだ利害関係者の反発・・国内政治対立に反映して行きます。
報道を見ると、(誇大報道かは不明ですが)IT業界ではかなりの部分を新興国からの技術者によって担われていて、彼らなしに業務が成り立たなくなっていると言われます。
この報道のとおりとすれば、元々の国民は彼ら移民を追い出して入国禁止しても代わりの技術者になる能力がない・・技術者移民によって彼らの職が奪われたのではないことが分ります。
むしろ彼らの御陰で世界企業に発展し、おこぼれ的に中下位程度の労働者の雇用が増加している可能性があります。
移民・IT技術者500人雇用に対して中下位レベルの国民100人しか雇用が増えないにしても、その企業が育たないよりもその分の雇用が増え、税収も上がるなど結果から見ればよりマシです。
大統領令・・アラブ7カ国の入国禁止令ががアラブ人狙い撃ちのために人権侵害の疑いもあって大騒ぎですが、それよりも深刻なのがH1Bビザの厳格化です。
これは運用ですから仮処分に馴染み難いので、実は大変な効果があります。
http://www.cnn.co.jp/business/35096709-2.htmlからの引用です。
2017.02.16 Thu posted at 15:13 JST
「インドのITアウトソーシング産業は世界80カ国以上に640もの開発拠点を置いている。業界団体によれば、外国の取引先のために働いている労働者の数は300万人近い。
一方、米政府の統計によれば、H1Bビザの申請者のうち70%はインド人だ。そしてインド企業の側に言わせれば、もし規制が実施されれば、米国人の技術者だけでは人手が足りないという事態が起こる。」
入国禁止あるいは、ビザ発行絞り込みが実行されると行き場を失った技術者が、本国で起業する率が上がる外、カナダや中国等に高度技術者が吸い寄せられるリスクも懸念されていました。
今回の入国禁止令騒動によって、トランプ氏の移民排斥によって最も打撃を受ける業界であるIT業界が移民排斥緩和働きかけのためにトランプ新政権に食い込む動きをしていたことが明るみで出て来ました。
安倍総理が何故トランプ氏と仲良くするために努力しているかと言えばこの論理・・相手を非難するよりは懐に飛び込んでコチラの都合も斟酌してもらおうと言う大人の智恵です。
日本の野党のように「勇ましいことを言って対決さえしてれば良い」と言うのでは国が治まりません。
入国禁止令に最も過敏に反応したのはIT業界のイメージですが、この結果逆にIT業界の顧客の怒りが、政府に食い込むためにトランプ政権の◯◯委員会などに参画していた企業の不買運動等に発展し、逆にウーバーその他IT業界から送り込んだ委員が辞任をせざる得なくなった模様が時々報道されています。
http://www.cnn.co.jp/tech/35096053.html
2017.02.03 Fri posted at 18:00 JST
「ニューヨーク(CNNMoney) 米配車サービス「ウーバー」のトラビス・カラニック最高経営責任者(CEO)が、トランプ米大統領の経済諮問委員会「戦略政策フォーラム」に参加しないと明らかにした。理由はイスラム教徒が多く住む7カ国からの入国禁止を定めた大統領令だ。」
従業員向けの社内メールでカラニックCEOは「今日、大統領と短い時間話をした。移民に関する大統領令と、われわれのコミュニティーにとっての問題点についてだ」と説明。「私はまた、フォーラムに参加できないと大統領に伝えた。参加することが大統領やその政策を支持することを意味するわけではないが、残念ながらまさにそのように誤解されている」と述べた。
戦略政策フォーラムはトランプ大統領に党派を超えた助言を行うことを目的とし、カラニック氏を除くメンバーにはJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOやゼネラル・モーターズ(GM)のメアリー・バラCEO、テスラのイーロン・マスクCEOら18人が名を連ねている。第1回の会合は3日に予定されていた。」
移民排斥あるいは国際金融関係などトランプ氏の公約どおり政策実行されると被害を受ける関係業界が折角政権内に入って(安倍総理のように?)意見を言おうとしていたのですが、その矢先に入国禁止令の大統領令施行によって、機先を制せられてしまいました。
その結果、世論の批判が厳しくなってしまい政権内に入って意見を言う予定であった業界が政権協力者として批判される事態になって、委員に留まれなくなってしまったようです。
トランプ氏の公約どおり実施されると困る業界の意見がトランプ政権内で具申して修正を求めるチャンスがなくなる(・・内部利害調整不能になって)と、表に出る・・シロかクロかの政治対決しかなくなるのでは、国内政治が危険に瀕します。
日本政府はこの正面対決→先の日米戦争の轍を踏みたくない・・に陥るのを避けるために必死だったのですが、危機一髪で内部食い込みに成功した状態です。
この内部食い込みに反対しているのが民進党です。
「もの言わぬ日本、スネ夫と思われる」 民進・野田氏」朝日新聞デジタル2017年2月13日18時44分」
日本がアメリカの内政に口を出す必要もないのにトランプ氏批判しないのは良くないと言うのですが、兎も角トランプ氏と喧嘩して欲しい→日本の立場を主張する機会を失った方が良いのでしょうか。
党首の蓮舫氏も国会で似たような批判していたように報道されていました。
EUがアメリカの移民政策に口出しなければならないのは、EU自身がアラブ・アフリカからの難民の押し寄せに苦慮していて自分に降り掛かかっている火の粉だから「人道」と称して必死になっているのですが、日本ではこのような問題がないのに「人道問題を知らん顔しているのは如何か!」と言うすり替え報道しているに過ぎません。
まして今回問題になっているIT技術者入国禁止と難民とどう言う関係があるのか・・ないとは言えませんが、いわゆる人道難民問題とは次元が違うでしょう。
ロシア制裁もEUには直接の利害がありますが、日本やアメリカには遠い関係である点が同じです。
日本の難民受入れは年間数人?多くて数十人程度しか認めていないのに偉そうなことを言うとトランプ氏に「じゃ日本は何人受入れている!のかと言われたらグーの音も出ません・・実態無視のマスコミ報道や民進党批判に国民はうんざりしているでしょう。
日本も中国の理不尽な行為に対してはその都度アメリカなどに応援して貰うために主張しているのですから、自国に関係あることでは日本もきちんとやっている点はEUと同じです。
EUも自国に関係のない中国の横暴には口出ししていません・・むしろ独仏は中国取り入りに必死ですから、公海の自由利用・・通商路確保は重要であるとEUを説得して日本陣営に取り込むために日本政府が努力している・・お互いに自分の利害を他人に共有して欲しいのは同じでしょう。
マスコミは欧州の利害に同調しないと非難し、日本の国益を守るための努力や共有努力を無視し、けなす傾向があります。
マスコミや民進党は中国の国内人権侵害には何も言わないで、EUの自己利害の政治活動を人道問題にすり替えている印象です。

対外強行主義の限界3

司法と政治の関係に話題がそれましたが、2月1日までに書いていたトランプ氏の強行策の見通しに戻ります。
内政で勝負している政権の場合、金融も含め政策はいつも当面の対策であって時期が過ぎればその都度方針変更・修正して行くしかない前提ですから、状況の変化によって修正するのは想定範囲です。
地域大国で対外強行発言で政権を維持している場合の共通項の多くは、複雑な内政調整能力が低い場合に多く見られる現象です。
単純思考で威張り散らすのは・・周辺が弱いときには簡単なので,このような誘惑が起きます。
一般的に対外強行発言者は,強者の論理・・2択の単純対決型・・を振りかざすのが好きなグループの支持を受けています。
トランプ氏の選挙演説の傾向は,報道のバイアスがかかっているので正確性はイマイチとしても、1月30日から世界的騒ぎになっているアラブ7カ国に対する入国禁止措置の実行を見ると,弱者迫害傾向は本物であったし、実務に入っても支持者を裏切れない?からこれの中央突破を図るしかないと決めたことが分ります。
妥協するよりは中央突破しかないと決めたとすれば、中央突破に失敗すれば(籠城している城方が最後に打って出るのと同じで失敗すれば討ち取られます)政権の命取りになると自分で決めていたことになりそうです。
入国禁止の大統領令を強行すれば仮処分申請が出るのは目に見えているのに、これに対する備えが殆どなかったように見えるのが不思議です。
2月11日のコラムでサンフランシスコ高裁での口頭弁論の模様の紹介記事・http://bylines.news.yahoo.co.jp/nakaokanozomu/20170210-00067544/トランプの研究(6)」の一部を紹介しましたが、その紹介が正確かどうかは別として、これを読む限り訴訟対策の読みが甘かったどころか殆ど準備していなかった・・泥縄式の印象が拭えません・・訴訟プロの人材不足の印象です。
政権側は急いで異議を出したので準備不足と言うのですが、大統領命令を強行すれば仮処分で抵抗されるのが必然の流れ・・命令執行するときに予定・準備しておくべきことです。
いわばこの訴訟は事実上政権が仕掛けた当然の流れにあるものですから、準備不足を言えるのは仮処分申請側の方です。
マスコミで報道されているトランプ政権内の各分野における熟練人材不足の一端がここにも出ています。
あるいは周囲の意見を聞かないワンマン政権の脆さです。
将棋や囲碁では何十手も先を読んで指すモノですが、入国禁止実施に対して仮処分申請があり得るのは、ホンの一手先・・予想される抵抗戦の第一歩ですが、これがあり得ることすら想定していなかった・・先を読まない素人集団・あるいは読みの浅い政権である本質を表したことに世界中が驚いたでしょう。
この結果反トランプ勢力が一気に力を得て、大統領補佐官であるフリン氏に対する攻撃が始まりあっという間に同氏の更迭表明に追い込まれました。
続いて労働長官候補が、辞意表明するなど足下が揺らいで来ました。
現在15長官の内議会承認を得たのは僅か9名に留まると報道されていましたが、昨日温暖化政策反対の環境保護局長官が承認されたと報道されました。
トランプ政権は手足になるべき閣僚任命がままならない・・手足をもがれた状態・人材不足から、いよいよ失態が続く悪循環を反対勢力が狙っていることは明らかです。
大分前に書きましたが米国の場合、政権交代があると数千人規模の政治任用職員がいて、その何割かの政府高官が入れ替わる仕組みです。
シンクタンクがあって回転ドア形式と言われますが、同等能力の受け皿能力があっても昨日まで実務をやっていた人とシンクタンクで研究していた人が入れ替わってしまうと引き継ぎその他で無理が出ます・・このため政権始動後100日間のハネムーン・マスコミが批判を控える慣習があるのでしょうが、無茶な制度が成り立っているのは、元々米国の実務能力が低いから可能だったかな?と言う意見を書いたことがあります。
長官指名がうまく行かないだけではなく、政府高官にる人は、シンクタンク等で相応の識見を持っている人が多いのでトランプ政権と意見が合わないと政権入に応じません・・このテクノクラートの応募者が少ないと何をやるにも詰めが甘くなって参ってしまいます。
安倍総理歓迎の意味でトランプ氏経営のゴルフ場や別荘に招待する計画していたところ、私企業優遇?汚職?になると言うことで直前ドタキャンも出来ず、急遽国費から出さず、トランプ氏の100%自費招待になったのもその一例でいつもドタバタ劇です。
この程度のことは自費で解決出来るので良いのですが、自分で責任をとりきれない分野では収拾のつかないことが次々と発生します。
トランプ氏の言動は先が読めない原因の1つは詰めの甘い意見を発表することにあります。
こう言うときは慌てて討って出ない・・次々と敵を作らないで先ずは内部固め・体制立て直し・・に取り組むのが政治の常道でしょう。
トランプ氏も国内政治の方向転換をすると白旗を掲げたようになるし支持の離反もあるので難しいが外交なら・・と言うことで、ここで外にも敵を作っていられないと思い直したのか?日米首脳会談直前に拒否していた中国との首脳電話会議に応じて台湾問題でも方向変更していますし、その流れの中で安倍会談があったことが明らかです。
このタイミングで安倍総理との首脳会談が決まっていたので、このチャンスにトランプ氏が飛びついた結果が安倍総理の大成果に結びついたのです。
国内基盤脆弱で外交をすると不利・逆に国内基盤盤石であれば、外交が有利に進む典型事例です。
逆から言えば、歴代韓国政府のように国内失政の穴埋めに外交を利用するのは一種の売国行為であることが分るでしょう。
ただし、トランプ政権が日本と仲良くすることがアメリカにとってもよかった筈ですので、(これを説明するの安倍総理の役割でしたから結果からみれば大成功です。)間違った方向へ行かなかっただけのことです。
日本にとってタイミングよく会談出来たので、(運が良かったと言うのではなく準備を営々と重ねて来た安倍政権の能力が高かった・・運は招き寄せるものです)日米に取ってウインウインの関係を構築出来たことが確かです。
トランプ政権がうまく軌道修正出来るかが重要ですが、日本のように正義のクニとは違う・・相手が弱いと分れば直ぐにつけ込む他国相手でうまく行くかは未知数です。
日本の場合、トランプ氏が無茶をやらないで、いろんな意見を聞いて正常な政治をしてくれれば良いと思うのが普通ですが、多くのクニでは相手が弱いとなれば更に叩こうとするのが普通です。
アメリカ国内でも「ちゃんと政治をやってくれれば良い」と言うよりは、勢いづいて任期途中の辞任に追い込もうとする勢力が多いでしょう。
これが勢いづくとその間アメリカの国内政治が混乱するだけではなく、超大国と言えども対外的地位低下する・・国益に反することは明らかです。
今の韓国大統領に対する弾劾騒動が韓国の(内政外交を含めて)どれだけ国益に反する結果になっているかを見れば明らかです。
明治維新のときの賢明な動きと比べても、これが日本と他国・社会との成熟度の違いです。

対外強行主義の限界2

対外強行主義は、弱い相手を選んでやるので正面だった抵抗が少ないので言わば破竹の勢いで始まります。
対外強行策は国内不満そうの支持率が上がることが多いので,国内政治上のブレーキが利き難い問題があります。
不満の根源解決の代わりに弱い者イジメをして一時的フラストレーションのはけ口にしているだけですから、これによる支持はいつまでも続きません。
お腹がすいて泣いている赤ちゃんにミルクを与えないで,ガラガラッと音をたてて気を引いてもすぐに泣き出すのと同じです。
政権が支持を維持するには,際限なく外国侵略または過激な強迫を繰り返すしかありません。
侵略ならば,圧倒的武力さえあれば無抵抗なので際限なく?できますが,アメリカ国民もこれ以上領土を欲しくないので(世界中から基地を引き上げたい状態です)やるとすれば、・・既存労働者保護のための輸入規制や移民規制しかありません。
ところが,1月30日に入国規制が始まると、直ちにアラブ諸国の反発が始まったように相応の報復を受けるのを防げません。
国内からも有能なアラブ系開発要員が流出する・・結果的にアメリカ企業の競争力低下が始まりますので国内企業からも不満が出ます。
今では,対外強行主義は国内政治・利害に波及する時代で,国内一丸として支持する関係ではなくなっています。
1月30日に紹介したようにクリントン政権は対日100%関税課税で日本を脅したもののその先が続かなかった・・クリントン〜オバマ政権はこの繰り返しを出来ず国民不満を蓄積してしまったので、トランプ氏はこの不満を引きつけて当選したので,簡単に撤回出来ません。
民度を挙げて中間層から非正規雇用へ転落して行くのをふせぐのが本来ですが,基礎レベルの低い国民が多過ぎてこの政策を打ち出せないのが苦しいところです。
かなり有能な政治家でも低い民度を引き上げるのは困難です・・学校で言えば、底辺校に優秀な先生が来ても偏差値20を30に引き上げるのが限界で,イキナリ進学校に引き上げるのは不可能でしょう。
内政充実策がない・あるいは複雑な利害調整能力のない政治家が対外強行策や国内スケープゴートを探しを好むことが多いのですが,国内少数派は文字どおり少数で政治力が弱いので,標的を決めればナチスのようにいくらでもエスカレート出来るので簡単です。
1月30日から問題になっているアラブ7カ国からの入国制限措置実施について,米国内でアラブ系は目立ったデモなどの抵抗が出来ていませんが,国外でアラブ諸国の反発がすぐに起きたように対外的には一定のところで壁にぶつかります。
国内的にも人材利用阻害が経済活動に大きな影響を及ぼすことも時間の経過で明らかです・・その分白人雇用が増える・・それこそが目的だと言うのがトランプ氏と支持者の主張でしょうが,ゾンビ企業温存のマイナスと同じことが労働市場で起きる・・この心配自体行き過ぎ・・その修正をしたいのがトランプ氏の主張ですから,当然の結果・・驚くことはないと言うことでしょう。
理屈はそのとおりですが、輸入や立地規制の外、人材採用規制まで始めるとアメリカ企業の生産性がじりじり下がらないかの疑問がありますが、その辺の政治判断は日本の移民受け入れ政策同様にその国の国民がすることです。
国力低下よりは「人民ファースト」とすれば一貫しているかも知れません。
一見乱暴そうに見える決定もその先の波及効果を読んだ上でやっている場合もありますから、結果が出ないと分りません。
対外強行策に戻りますと、ナポレオン,ヒットラーその他地域大国が傍若無人に振る舞えたのは,地域内だけ・境界内を制圧した結果、地域大国同士の戦いになると勝率が急激に下がります。
波及効果のマイナスが内外から出て来て対外強攻策が行き詰まってから、泥縄式に内政対応に切り替えてもうまく行くわけがない・・殆ど全ての場合,無理があって失速します。
近くは朴大統領による慰安婦外交失敗による内政転換→職務執行停止に至った現状を見れば分ります。
国際紛争が起きると多くの場合,内政の対立をそっちのけにして「先ずは一丸となって戦おう」と言うことで支持率が上がります。
任期最後の数ヶ月〜半年で対外強硬策・対外紛争を起こせば、まだ勇ましいことの言い合い程度で勝敗が決まっていない段階で任期満了ですから、めでたしめでたしです。
相手の方が少し強くても・・(とりわけ日本のように直ぐ反撃しない国相手では)勝敗が出る頃には任期満了ですから,失敗しても元々・・退陣まで支持率を維持出来るのでやるだけやって損がないカードです。
このように、対外強行策は政権支持率が下がった政権末期に政権浮揚効果を狙って最後にイチかバチかの賭けでやれば仮に競り負けそうな状況になったとしても、その前に任期が来て次の政権にバトンタッチすれば良いので気楽です。
次期政権がマイナスになってもすぐにやめる予定の自分の任期は全う出来るので、任期満了直前で紛争を起こすのは損がありません。
韓国では毎期のように大統領任期満了直前に反日カードで大騒ぎの繰り返しでした。
最後に使うべきこのカードを朴大統領もトランプ大統領も就任最初から出しているのでは,乱暴な政策に対する波及効果が出て来る1年〜1年半経過で見事に対処出来るかどうかになり、リスクが大きくなりますが,もしかして混迷するとその先長い任期がどうなるのか・・最初から後がない・・,最低の弱体政権発足となります。
ゾンビ企業や競争力の低い労働者温存のマイナス効果が出て来た場合の政権安定度ですが、経済制裁を受けても言論自由度の低い北朝鮮やロシア・イランなどでは,国民生活に徐々に利いて来る程度では支持率が失速しません・・逆に強国の横暴・・悲壮感を煽って団結アップに利用出来るのが普通ですが、言論自由度の高いアメリカで同じように行くとは思えません。
この辺の違いについては昨年のロシア空軍機撃墜事件直後に世界中から経済制裁を受けて弱っている筈のロシアが対トルコ経済制裁を実施した際に、自由化度の進展度合いと買う方と売る方の差を含めて制裁耐久性を考える必要があることをSep 19, 2016「フラストレーション度2と中華の栄光復活」でと書きましたが、その続きが先送りになっています。
経済制裁打ち合いの耐久度は自由主義国・生活水準の高い方が弱い・・余程の格差・・ダメージ度7対4程度では無理・・10対1程度の差が必要で、消費国の方が強いと言う当時の予想通りエルドアンが直ぐに屈服しました。
トルコは農業産品を買って貰っている外にロシア人の観光に頼っていた面も弱みでした。
中国が気に入らない国に対しバナナ輸入制限や観光客を絞って攻勢をかける(・・これが国際司法裁判所で折角完勝したのにフィリピンが黙ってしまった主な原因です)ことが多いのと同様で、日本も中国人観光客増は大きなリスクになります。
強力な輸入制限は相手国からの輸出規制を受けているのと経済効果が同じですから、消費レベルが高く民主化の進んでいるアメリカで、トランプ氏がロシアや北朝鮮の耐久度を参考にしていると誤算になります。
朴大統領やヒットラーあるいはナポレオンは,対外強行策が限界に来て行き詰まった歴史ですが,トランプ氏の場合、国力背景の強行策は世界相手でも一応貫徹出来るでしょう。

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