EU弱体化とフランスの混迷3

燃料税アップに対する反対から火がついたデモは、各種不満爆発の導火線として多様な不満を背景にするデモに変わってきたので、マクロン氏は燃料税の増税を中止しただけでは収まらない様子を見て、11日のニュースでは、最低賃金アップも決めたようです。
メデイアは燃料税アップ中止と最低賃金引きあげによる税収減が何ユーロ→財政赤字拡大方向と報道していますが、目先の財政赤字の問題よりは、経済原理無視の最低賃金引き上げはもっと大きなダメージをフランス経済に及ぼすことになるでしょう。
韓国文政権の性急な最低賃金引き上げの弊害でもわかるように、最低賃金を引き上げるだけでは、却って中小企業の窒息を招き失業率アップにつながりかねませんし、(このために小企業への補助金を出すような報道も見られます)大手でも生産性無視の強制賃上げでは、国際競争力がいよいよ損なわれていきます。
社会主義的政策・・政府の介入が多すぎて国運が衰退してきたのを挽回するためにマクロン改革踏み切ったのですが、国民の方は長い間の政府介入による救済に慣れているので今更これをやめるのは難しいのでしょう。

https://www.jiji.com/jc/v7?id=201812france

【地球コラム】何も変わらぬ「フランス病」~マクロン大統領の書生論通じず~(12月11日)

フランスでは1789年の大革命以来、デモやストライキは労働者の生活防衛の武器であり、対話ではなく直接行動によって、お上に公然と盾突くのが流儀だ。そのたびに歴代政権は動揺し、譲歩ばかりしてきた。このため大胆な改革はなかなか生まれず、経済の低迷が続いた。この「フランス病」にメスを入れようとしたマクロン大統領は、いかにもエリートくさい書生論的な改革の手法が民衆から嫌われ、窮地に立たされている。(時事通信社解説委員・元パリ特派員 杉山文彦)

大方の評価は「書生論では現実政治はできない」というところでしょうか?
日産ゴーン事件の背景にはフランス政府のルノーに対する政府介入(例えば工場閉鎖制限)に嫌気した日産からのクーデターとも言われていますが、フランス国民自身どうにもならないほど政府介入(期待)中毒になってしまっているようです。
マクロン政権が最低賃金アップに限らず、今後痛みを強いる改革を放棄して市場競争分野への介入やバラマキをするしかないとなれば、イタリヤ・ギリシャなどのバラマキ無責任赤字財政放置政治をフランスも非難できません。
上記の通り、今やマクロン政権は自分の身を守るのに精一杯で解任されたゴーンの心配やルノーの将来像を考えている暇などないでしょう。
今やフランスでは国中がゴタゴタの渦中にあって、国内がてんやわんやの状態です。
EUの盟主、ドイツではメルケル首相が秋の地方選大敗の責任をとって(首相の座に残ったままの)与党党首辞任表明し数日前頃に後継党首選を実施したばかりです。
メルケル腹心の幹事長を次の党首候補に立てて同候補が党首の座を射止めたものの、メルケルの意向そのままでは何のための党首交代かの問題に行き当たるので、新党首は独自色を出すしかないので微妙な運営が要求され結果的にメルケル政権がレームダックになるしかありません。

今やフランスでは国中がゴタゴタの渦中にあって、てんやわんやの状態で国際的発言力はほとんどない状態です。
EUの盟主、ドイツではメルケル首相が秋の地方選大敗の責任をとって(首相の座に残ったままの)与党党首辞任表明し数日前頃に後継党首選を実施したばかりです。
メルケル腹心の幹事長を次の党首候補に立てて同候補が党首の座を射止めたものの、メルケルの意向そのままでは何のための党首交代かの問題に行き当たるので、新党首は独自色を出すしかないので微妙な運営が要求される結果、メルケル政権がレームダックになるしかありません。
国内が支離滅裂状態にあって国際問題にまともな発言力維持は困難になりつつあります。
昨日紹介したようにトランプ氏に「自分の頭のハエを追い払ったらどうか」と言わんばかりに揶揄されるのはまさに核心を突いた一撃でしょうし、黙ってられなくて外務大臣が「こちらに口出ししてくれるな!」という応酬をせざるを得なかったのでしょう。
他方EU離脱予定のイギリスはこの数年EU離脱交渉条件に振り回されていて、まともに国内政治に向き合えない状態です。
メイ首相はEU側とようやくまとめた離脱合意案に対する反対派が多くて国会採決断念に追い込まれた上に、その翌日?党首不信任案が出されて昨日ようやく否決したばかりですが、国会採決断念に追い込まれて造反議員を締め付けるどころか、逆に造反議員の方から不信任案が正式議題になること自体、まともな政権運営では考えられないことです。
しかも不信任票が4割もあったと言うのですから、野党を含めた国会での不信任案決議となるとどうなる?ということで最早政権の体をなさないように見えます。
と思ったら翌日頃のニュースではメイ首相は総選挙前の党首辞任を表明したという報道がありました。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3886867013122018I00000/

英与党、メイ首相を「信任」 次期選挙前の辞任表明
2018/12/13 6:0
一時的に党を離れていた議員も含め317人が投票。信任200、不信任117で、メイ氏の信任が決まった。
英BBCによると、メイ氏は投票に先立つ演説で「次の選挙の時に、私は党首(首相)としては選挙戦に臨まない」と述べ、次期総選挙の前に首相を辞任する意向を示した。今の下院議員の任期は2022年まで。メイ氏は自らの職に区切りをつけることで、EU離脱を実現する覚悟を示したとみられる。

日本だけが国内政局が安定し、強固な日米基軸関を構築したうえで、ロシアのプーチン、トルコのエルドアン、インド、フィリッピン〜東南アジア諸国との関係も良好で、国際政治上の安定感が際立っています。
以上の国際情勢を前提にすると、中国でハードランデイングの混乱が起きたとき・・または起きる直前に目くらまし的に中国軍が対日戦端を開くことが、国際政治的・物理的・経済的に可能かどうかの疑問があります。
このシリーズは15〜6年頃に書いた原稿の再起動ですが、今になると中国は米国の激しい攻勢に困っているので、日本を敵に回すどころか(ほとんどすがりつきたい?)応援を頼みたい状態になっています。

EU弱体化とフランスの混迷2

https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/121000910/?P=4
怒号と催涙弾の応酬は、フランスに何をもたらすのか

2018年12月11日(火)
米国のトランプ大統領がパリ協定からの離脱を表明し、その実効性が疑問視されている。マクロン大統領はそのトランプ大統領の説得役を買って出ているのだ。
「私は絶対に諦めない。それが自分の使命だと思う」とまで話している。皮肉なことにそのマクロン大統領のお膝元であるパリで、温暖化対策のための燃料税に反対するデモが広がり、パリ協定の存在が揺らいでしまっている。
マクロン大統領は温暖化対策だけでなく、様々な改革を進めてきた。
特に力を入れてきたのが、フランスの構造改革だ。フランスは他の先進諸国に比べて公務員の比率が高く労働組合が強い。そのため雇用の流動性に乏しく、低成長の状況が続いている。
こうしたフランスの積年の課題にメスを入れたのがマクロン大統領だった。
公務員を削減し、労働者を解雇しやすくする法改正を実施する一方、法人税を減税し、社会保障費の負担を高めた。
経済成長などの成果が出ていたら、改革に対する不満はさほど顕在化しなかったかもしれない。
しかし、成果が出るまでの時間がかかっている間に、低所得者などの不満のマグマがたまり、これが今回の燃料税の引き上げで、爆発した。

国内の痛みを伴う矢継ぎ早の改革だけでも国民の限界が来ているのに、地球温暖化対策のために、(国民には痛みを強いるだけで・・悪く言えばマクロン氏の格好つけだけ?・・なんら恩恵がない燃料税アップの追い討ちは、我慢の限界に火をつけるに格好の標的だったでしょう。
http://news.livedoor.com/article/detail/15717313/

トランプ大統領の投稿にフランス外相が不快感「口を出さないで」
2018年12月10日 10時32
燃料税の増税を巡るフランスのデモについて、トランプ米大統領が言及した
Twitterに「パリ協定をやめ、低い税率で人々に金を戻すときだ」と書き込み
フランスの外相は9日、テレビ番組で「口を出さないでほしい」と語った
フランスでは環境に配慮した経済への移行を目指し、燃料税を引き上げることを巡ってデモが続いています。アメリカのトランプ大統領は、ツイッターに「馬鹿馬鹿しいパリ協定をやめ、低い税率で人々に金を戻す時だ」と書き込みました。フランス政府を批判し、地球温暖化対策に取り組むパリ協定からの離脱を表明したトランプ政権の決定を正当化する狙いがあります。これに対してフランスのルドリアン外相は9日、テレビ番組で「我々はアメリカ国内の問題に口を出していない。アメリカも口を出さないでほしい」と不快感を示しました。

何か“滑稽な”やりとりになるのがフランス流というべきでしょうか?
原油高→ガソリン値上げで庶民が困っているところで、温暖化対策のために燃料税をあげるというのは我慢の限界に来ている点にきづかなかった・・センスが悪すぎますが、(功を焦ったのかな?)これが発火点になったところで、1年間の矢継ぎ早の改革はどちらかといえば富裕層に対する優遇措置が多く低所得層に厳しい内容でしたから、これに対する不満が吹き出して、燃料税アップの中止だけではすまなくなってきたようです。
11日のニュースでは、最低賃金引き上げも発表するなど、過去1年間の改革の巻き戻しになってきました。
富裕層に対する不満の強いフランスではゴーン氏の日本での「高額所得隠し検挙」を好意的見ている人の方が多いというネット評論があったようですが、今回の騒動によって高額所得者優遇改革に対するフランス国民の反発の強さを見ると、意外にそのようなネット指摘が当っていたのかな?と感心しています。
https://www.msn.com/ja-jp/money/news/ゴーン被告の支援、仏政府動かず-エリート主義の印象払拭に躍起/ar-BBQRyhT#page=2
Ania Nussbaum

2018/12/13 03:59
「黄色いベスト運動」のデモが吹き荒れるフランスで、ゴーン被告の窮状という問題は脇へ追いやられている。デモ参加者が訴えているのは富の不平等に対する憤りであり、エリート主義に対する強烈な嫌悪だ。
ノッティンガム・トレント大学でフランス研究を専門とするクリス・レイノルズ教授は、「ある意味、カルロス・ゴーン氏は黄色いベストの参加者が嫌悪する全てを体現している」と指摘。「所得上位1%に入るゴーン氏は、経済改革に必要との名目で政府が強いるあらゆる犠牲から完全に保護されている」と述べた。
ゴーン被告の支援に動かないのはフランスの政治家だけではなく、幅広い層からも同情が見られない。
ハッシュタグ「#FreeCarlos(ゴーン氏を自由に)」のツイッターは全く広がらず、著名な実業界幹部や業界団体もほぼ口をつぐんだままだ。
ルノーの筆頭株主として、ゴーン被告の苦境に最大の経済的利害を持つのはフランス政府だ。だがマクロン大統領は、同被告について直接コメントすることを控えている。ルメール財務相はゴーン被告が推定無罪であり不正の証拠を要求するなどと主張してはいるものの、言及は最小限にとどめている。

このような国内情勢ではゴーン氏の逮捕に対して、フラン政府も日本に対して表向き異を唱えられない半端な状態になっていることがわかります。
燃料税アップ以外はやっていることは真っ当な感じですが、国民の方はこの真っ当すぎる荒療治に耐えられず暴発しているということでしょうか?
病人の体力が弱り過ぎた時に大規模な手術をしたら、却って病人の命を縮めることがあります。
フランス経済は長年の社会主義的政策による弊害に慣れすぎて・・治療開始が遅すぎて、すでに不治の病いにかかっているかのようにも見えます。

 EUの中国離れ→(EU弱体化と対日EPA・フランス混迷)2

対EUEPAに関する政府発表は以下の通りです。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ie/page22_003091.html

(参考)
日本のEPA・FTAこれまで21か国・地域と18の経済連携協定(EPA)が発効済・署名
済(2018年7月現在)。
EUの最近のEPA・FTA・韓国:2010年10月署名・カナダ:2016年10月署名
日・EU経済連携協定
背景
<経緯>
2013年 3月 交渉開始決定
2017年 7月 大枠合意
2017年 12月 交渉妥結
2018年 7月 署名
本協定はアベノミクスの成長戦略の重要な柱(総理施政方針演説等)。
日本の実質GDPを約1%(約5兆円)押し上げ,雇用は約0.5%(約29万人)増加の見込み。
(内閣官房TPP等政府対策本部による試算)
自由で公正なルールに基づく,21世紀の経済秩序のモデル
(国有企業,知的財産,規制協力等)。
世界GDPの約3割,世界貿易の約4割を占める世界最大級の自由な先進経済圏が誕生。
(EUのGDPは17.3兆ドル(世界GDPの21.7%)。日本のGDPは4.9兆ドル(世界GDPの6.1%)。)
⇒ 早期締結は,日EUが引き続き貿易自由化の旗手として世界に範を示し続けるとの力
強いメッセージ。
⇒ 日EU双方の経済界には早期締結への期待あり。日EU首脳間でも早期発効を目指すことを繰り返し確認している。EU側は,12月13日に欧州議会,20日に理事会の承認を得られる見込み。
(カタイネン欧州委員会副委員長による10月23日の記者会見での発言)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181208/k10011739531000.html

日本とEUの経済連携協定 国会で承認 来年2月発効へ
2018年12月8日 6時04分
協定の発効に向けて国会承認を求める議案は、6日の参議院外交防衛委員会で可決され、8日未明開かれた参議院本会議で採決が行われました。
その結果、自民・公明両党と日本維新の会、希望の党などの賛成多数で可決・承認されました。
EU側は今月下旬に承認手続きを終える見通しで、協定は、来年2月に発効されることになります。

立憲民主などの野党はいつも何かと「この点がはっきりしないと賛同できない」と不満を言って(ケチをつけては?)は日本にメリットのアリそうな政治は結果的いつも反対であり、少しでも先送りしたい姿勢です。
働き方改革であれ、外国人労働者拡大であれ、法律段階では一定の方向へ踏み切るかどうかを決めるのが中心テーマであり、方向性・大綱を決めるのが政治家・政党の論じるべき争点です。
このために多くの法律では施行後数〜5年程度で運用実績をみて再考する規定が置かれているのが普通です。
ですから細かいデータが違っていることは法案反対の理由にはなりません。
神様のような予測できないのですから、枝葉末節のデータの粗探し・・そのデータが整うまでは議論できないとして審議拒否する・・そんなことを言っている・・百年河清を待つような議論・反対のための反対・・ケチをつける類ではないでしょうか。
最後はいつも決まりの不信任決議案提出等での時間稼ぎですから、そんなことをするために国会議員がいるのか不思議に思う人の方が多いでしょう。
これではどこの国のための運動なのか?という疑念が起きて国民の支持が減る一方でしょう。
EUの混迷に戻ります。
フランスではこの10日間ほどマクロン下ろしの大騒動が連日報道されている状態です。
https://news.nifty.com/article/item/neta/12189-20161909025/
2018年12月08日 15時00分

閣僚は次々と辞任し、パリでは激しい大規模デモ 低支持率に悩むマクロン大統領の行く末
昨年の5月に39歳の若さでフランス大統領に就いたフランスのエマニュエル=マクロン氏が燃料税増税方針を先月、発表した。それに端を発して抗議デモが全国各地で勃発し、、パリで一部が暴徒化し、建物が破壊され車両が炎上する事態にまで発展した。
マクロン氏は減税などで大企業や富裕層を優遇してきた。マクロン氏は「金持ち大統領」と批判されてきた。庶民の怒りは頂点に達し、社会の不平等に対する不満が爆発。支持率は発足一年半年で66%あった支持率が12月4日の調査では23%まで落ちた。

この騒動を受けて、数日前マクロン政府は来年1月1日から始まる予定だった燃料税アップ撤回発表していますが、それでも騒動が収まらず12月8日の週末デモが強行されたとニュースになっています。
https://www.asahi.co.jp/webnews/ann_i_000142645.html

フランス 政権へ不満爆発でデモ再び 1300人超拘束
12/9 06:20
燃料税の増税をきっかけに始まったデモは、政府が増税の見送りを発表しても暴動が収まる気配はなく、事態収束の見通しは全く立っていません。

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