異次元緩和→公的資金運用と市場

中央銀行による有価証券類の購入例についてアメリカの場合を見ておきましょう。
 アメリカの量的緩和に関する本日現在のウイキペデイアの記事からの引用です。
https://docs.google.com/document/d/1B_k-2lcstvNhZWWRqkWpEo0Evf1mJlU7NLjlDEZOEak/edit
「FRBは、買い入れ対象としていなかった証券の買い入れ、それを担保する資金貸し出しについて「信用緩和(credit easing)」と称した[98]。「信用緩和」と称したのは、日本銀行の「量的緩和」と区別するためである[99]。
2008年のリーマンショック時にアメリカは、一時的なデフレ寸前の状態にまで陥り、その後QE1(量的緩和第1弾)・QE2(量的緩和第2弾)と呼ばれる大規模な金融緩和政策によってデフレ懸念から脱し、その後のインフレ率はまたデフレに陥ってしまうのではないかと危惧されるほど、低位のインフレの状態で安定した[67]。
2010年11月から2011年6月までの8カ月間にわたって1カ月あたり750億ドルのペースで6000億ドル分の米国債の追加購入を行ったQE2は、株式市場をはじめとする資産市場や実体経済に一定の効果をもたらしたが、雇用創出に大きな影響を持ち得なかった[25]。
2013年現在、リーマンショックが起きた直後FRBは、マネタリーベースを危機前の3倍以上に増やしている[100]。
 EUの量的緩和については以下の通りです。
日経新聞の報道です。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM08HA4_Y6A201C1MM8000/
欧州中銀、量的緩和を縮小 期限は17年12月まで延長 2016/12/9 0:55
・・ECBは15年1月に量的緩和の導入を決定。期間を延長し、規模を拡大してきた。いまはユーロ圏各国の国債や欧州系の国際機関が発行する債券のほか、社債などを買い取っている。銀行や企業にマネーを流し込んで経済を活性化させ、物価を上向かせる狙いだ。
 今回の理事会では、民間銀行がECBに資金を預ける際に手数料を課すマイナス金利の幅を0.4%で維持するなど主要な政策金利を据え置いた。「17年3月末まで」としていた量的緩和を17年末まで続ける一方、毎月の購入額は800億ユーロから600億ユーロに減らすことで合意した。ECBが量的緩和の規模縮小に踏み切るのは初めて。
29日現在の円ドル・ユーロ相場は以下の通りです。
http://www.nikkei.com/markets/kawase/
2017/6/29 22:33現在(単位:円)
112.89 – 112.90
ユーロ(円) 128.60 - 128.64 ▲+1.00(円安) 29日 21:06
128✖️800=1兆2400億円です。
以上の通り総額には相違がありますが、米欧共に中央銀行が国債等の買い入れをしている点は同じです。
諸外国の公的資金運用は以下の通りです。http://www.world401.com/401k/world_401k.html
世界の年金融機関      国内債券 外国債券   国内株  外国株  その他
国民年金&厚生年金【114兆円】
(GPIF)           67%    8%     11%   9%  REITゼロ
現金預金5% 国民年金基金【2.3兆円】
(国民年金基金連合会)   25%   22 (12%) 28%   25% ( )内は円ヘッジ外債運用額は05年度
厚生年金基金 【25.7兆円】(企業年金連合会)
            20.7%    11.5%    31%  20% ヘッジファンド4.6% REITゼロ 
(06年度数値) OECD諸国の公的年金運用の平均(日本除く)
            50%       36%  不動産3%その他11%
カルパース 【25兆円】(アメリカ最大の年金基金)
           26%     40%  20%  REIT8% ヘッジファンド系6%
ABP オランダ【20兆円】
(ヨーロッパ最大の年金基金) 44%   34%  REIT10%ヘッジファンド系7.5% 他
ブリティッシュテレコム 【6兆円】
(イギリス最大の年金基金)  24.3%   36.9% 31.6% REIT15.5%
(9%分借り入れ運用) アメリカの大学財団の平均 
【資産規模1000億円以上の財団】 14.2% 44.9% REIT4%ヘッジファンド系31%
以上によればOECD平均では債券運用が50%で株式が36%になっています。
この組み合わせをどうすべきかは安全性と利回りの組み合わせで考えるべきことですが、これを株式相場維持の道具として運用するのは(政府の相場介入で)邪道といえば邪道ですが、そうとしても「大機小機」が論じるにはそのような目的で運用していることについて、もうちょっと精密な実証的議論をして欲しかったところです。
公的資金運用のあり方は正面から堂々と議論すべきことで、株式運用率を上げた場合や、政権支持者の特定株式の値下がり防止や上昇を狙ったり、政権の都合による全体の相場維持などのゆがんだ運用をしない・独立性が重要と一般的に言われて来ました。
ECBの国債買い入れ枠についても、各国の出資比率によると購入枠が決められ恣意的運用されないようにされています。
ただこの枠組みの結果、弱小国の国債購入が必要で始まった制度なのに、最大出資国ドイツの国債購入が最大になっていて肝心の南欧諸国の国債購入率が低い皮肉な結果になっているように推測(私個人の推測)されます。
物事から裁量をなくすとこういう結果になります。
世上日銀の中立・独自性維持の合理性が言われますが、政策総動員の中で本当に政府方針と違った方向へ勝手な振る舞い(例えば、リーマンショックのような事態で金利をあげてもいいのか?)が許されるかは別問題です。
軍事専門家の独立性といっても軍事戦略については専門家の意見を重視すべきというだけのことで、政府がA国を敵として戦う方針を決めているのに政府が友好関係をもつB 国を攻撃するのは許されません。
日銀の独立性と言っても国家の一員である限り金融専門領域の尊重というだけであって、国策の基本方針に真っ向から反対するような金融政策をとり、反対方向で動くことが許されないのが普通です。
現在「財政金融政策」と一体的に言われているように財政と金融政策は一体的運用が必須です。
もともと異次元という前から、不景気に際して政府は減税や公共工事を増やして需要喚起し日銀は金融緩和して借入増を通じた投資を誘導してきました。
経済総崩れの場合に緊急事態として旧来理論にない「異次元」債権等の買い支えに公的資金を総動員して動いているのがリーマンショック以降の世界傾向です。

TPP17(市場一体化と本社機能争奪4)

シンガポールが何故国際化・TPPに熱心かという点はこの後で書きますが、東南アジアの統括拠点をシンガポールに移転する企業を増やす程度を我が国も目指すならば気楽ですが・・・。
地域拠点程度での勝ち残りを目指すとしても、極東に限定すれば競争相手が中国と韓国ですし、日本は外れに位置していて地理的優位性を持っていないので、これも実は大変です。
日本は志を大きく持って飽くまで世界拠点・世界本社機能維持・拡大を目指すしかないでしょう。
地球は丸いので世界地図にすれば日本列島を真ん中に描くかアメリカ中心に描くかの問題であってどこを中心にしても良い関係です。
昔は巨大な太平洋の彼方と交易することは考えられなかったので、日本はユーラシア大陸の東端でしたが、交通手段の画期的な進歩によって、日々東端にあることの不利さが縮んで行く状態です。
日本が世界をリード出来る秀でた能力さえあれば、日本を中心にした知識・技術伝播や物流だって考えられます。
TPPに限らず今後グローバル化が進む潮流自体を否定出来ませんから、日本が世界の文化・技術の中心位置を占められるように努力するしかないでしょう。
大阪は東京に次ぐ第二の拠点都市として戦後頑張ってきましたが、各種決定機能の集中する首都東京に引きずられて行き、次第に事実上の本社機能(東京本社の増加)〜本社そのものが移転してしまった歴史に学ぶべきです。
日本を拠点にして東南アジア諸国やアメリカへの物流や人的交流があるならば良いのですが、アメリカが事実上全ての決定権を有しているTPPが機能し始めると、決定組織のあるアメリカの周辺地域にことを有利に運ぶために首脳とその側近が蝟集する傾向を阻止出来ません。
日本もTPP参加後数十年はトヨタその他の企業本社が残るとしても時間の経過でTPP規制基準決定をする事務局のあるアメリカに吸い寄せられない保障はありません。
アメリカが事実上のヘゲモニーを握っているだけで、法的な決定機能のない現在でも、ソニーがアメリカ本社を構えざるを得なくなっている現状を、軽視すべきではないでしょう。
経済活動が世界規模になって垣根が低くなる一方になるとNo.2やNo.3はなくなって、一強とその他大勢・・フラット・・すなわちその他は地域拠点程度になり兼ねません。
人材需要で言えば中間層が減少しつつあるのと同様に、企業間競争も似たような関係になっています。
国内で言えば県庁所在地が地域拠点から脱落し始めているように、世界的な地域拠点も集約される一方になるでしょう。
日本での本社機能や国内生産機能を守りこれの海外移転を阻止するには、さしあたり神戸大震災以降失いつつある物流や交通(空港)の拠点回復から始めないと、難しいように思われます。
こうなると人的移動もアメリカを中心とする放射線状の移動となりますし、アメリカから直接東南アジアに出張することが増えて来るでしょう。
アメリカから製品輸出した方が合理的となると、トヨタもアメリカ産の車を直接アジアに輸出し、ニューヨークからアジア諸国へ出張する時代が来るかも知れません。
実際に円安によって韓国市場での日本車の逆襲が始まったと言っても、FTAの関係もあってアメリカ国内性産車両を韓国へ輸出しているに過ぎない実態があります。
日本で輸出向け生産がなくなって国内需要分だけの生産になれば、国内の関連部品生産や物流も減って行きますので、国内需要がさらに減退する・・ひいては人口維持機能が減って行き、縮小再生産のスパイラルに陥りかねません。
以上書いて来たようにTPP参加によって市場規模が大きくなり一体化が進むことの問題点は、日本所在企業や産業が目先有利か否か・生き残れるか否かにあるのではなく、本部機能や生産部門もこれに連れてより便利なところに移動して行くのを阻止出来るか否かこそが重要です。
これらが移って行けば、民族の個性・文化その他もかなりの勢いで失われて行くようになります。

第二次世界大戦=市場開放と人種差別の合体戦争3

アメリカは何とか日本を戦争に引きずり込んで無茶苦茶にやっつけたい欲望に溺れていたことから、自分に向かってくれば直ぐに叩きつぶせる相手である弱い日本に対していろいろ難癖付けて日本を戦争せざるを得ないように嵌め込んで行きました。
こう言う本音で始めた戦争ですから、・勢いで焼夷弾攻撃による民間人の無差別攻撃というよりは、民間人そのものの殺戮を攻撃目標にしたジェノサイドまで進んだのは、本音である戦争目的から言って当然の帰結だったことになります。
戦争の現場・前線の末端兵士が勢いでやり過ぎたのではありません・・だからこそ、アメリカは民族大量殺戮の責任から逃げられないので、ナチス以上のジエノサイドをやって来たことの隠蔽に必死なのでしょう。
第二次世界大戦は民主主義を守る戦いではなく、(ナチスも民主主義選挙の結果成立した政権です)人種差別殺戮目的戦争であった点では、ナチスとアメリカは同根同一志向でした。
植民地獲得競争に遅れて参入したかどうかの基準では、日独伊と英米仏蘭は共通でしたので、市場獲得競争・経済側面で相互に同盟対立関係が成立していたのですが、表に出ないどす黒い心理では人差差別戦争の側面が濃厚でした。
現在の政党の公約が入り組んでいてどの政党にも似たような主張のグループが入り組んでいるのと同じで表向きの公約は綺麗ごとですが、本音は同じ人種差別戦争だったと思われます。
アメリカによる中国市場参入への「機会均等要求」ばかり学校では習いますが、ブロック経済化で苦しんでいたのは日本の方ですから、アジア全般で見れば日本の方こそアジア市場での機会均等・解放を求める立場で、このための植民地解放戦争であったと見るのが正しい歴史認識でしょう。
戦争が終わると欧米は植民地支配復活に精出しているのですから、現地の民主化どころではないし、人種差別撤廃など何もしていません。
アメリカ自身も日本軍を追い出した後で、フィリッピンに対する植民地支配を復活しています。
日本はアジアの植民地解放・欧米に対するアジア人の隷属からの解放が主目的でしたし、植民地支配を続けたい欧米はこれを守る戦いだったことが、戦争終結後の連合軍による戦後処理を見れば明らかです。
中国と韓国を除いたアジア諸国は、日本のアジア人開放主張路線に沿って戦後政治が始まったので、「独立を果たせたのは日本の御陰だ」と感謝している国が殆ど全てです。
日本がアジアへ進駐をするまでは現地人は何らの武器も持てなかったし教育も受けられなかったので独立運動という概念・・考え方すら育っていなかった状態でした。
鉄砲伝来程度の武器レベルのところを最新兵器大砲等で侵略して、そのまま現地人には兵器を渡さない・・弓矢鉄砲程度しか武器のない状態に止めておいて日本進駐まで来たので、現地人は近代兵器を擁する欧米植民地軍と独立戦争を戦える状態ではありませんでした。
敗戦後の日本をこの状態にしておこうとしたのが、以前紹介したポツダム宣言の精神でした。
繰り返しになりますが、日本は進駐先の現地人に学校教育を始めただけではなく武器を持たせて軍事訓練までして来たのですが、こんなことは欧米諸国の植民地支配ではあり得ないことでした。
今漸く国際社会復帰が可能となったミャンマーも、日本に招いて軍事訓練した将軍達の存在があってこそイギリスから独立出来たのです。
当然ミャンマーは親日国ですが、これが英米系に嫌われていて軍事政権というだけの理由で今まで北朝鮮並みの封じ込めの対象にされて来た原因です。
以前書きましたが、アメリカの傀儡であれば軍事政権を承認するのはアメリカの十八番でその事例の枚挙にイトマがないほどでしょうが、ミャンマーだけが軍事政権というだけで経済制裁の対象にされて来たのは、こうした不純な理由・・戦前日本の息がかかっているという反感によります。
経済制裁して追い込んで行くと、ドンドン中国に取り込まれて行くので仕方なしに最近制裁解除に動き出したという所です。

税と国債の違い4(市場評価)

  国債の場合、政府としては借り換えて行けば良いとしても満期・返還義務がありますので、国債の市場評価(運用ミスで支持者が減る)が下がると借り換え債の発行が回って行かなくなる(価格下落・金利アップ化する)点が民主的コントロール面で、税との大きな違いとなります。
国債が絶えざる市場評価に曝される弱点は、逆から言えば国債発行によって入手した資金の使い道・・官による投資がいつも市場・国民評価に曝され続ける分より合理化・民主化されるメリットと言えます。
増税するについては国民の批判があって(野田総理が政治生命をかけるほど)大変ですが、一回税率を上げてしまえば、政府はその後毎年何の必要性も説明しないで黙ってその税率で徴税出来るし、入手した資金は予算さえ通れば市場の批判を気にせずに勝手に使えるので放漫財政になり勝ちです。
予算は野党の追及もありますが、政治家同士のなれ合い・妥協でいくらでも決まって行きます。
何年かして更に増税(消費税で言えば税率アップ)しなくてはならないときになって始めて無駄遣いしていないか追及されるだけで、新規増税しない限り政治家同士の野合(主に官僚の振り付け)によって予算さえ通れば自由にお金を使える仕組みです。
どうせ資金を市場から吸い上げるならば、国債の方が拠出するかどうか自体を(拠出段階で)国民が選べる外に拠出した後その使い道について、常に国民の評価を気にしなければならない緊張感があってこの面からでもすぐれています。
10年もの国債なら10年間国民を気にしなければ良いかと言うとそうではなくて、数ヶ月間隔で次々と償還期限が来るので、(国政・地方選挙間隔の比ではありません)しょっ中国民の評価(価格下落)を無視出来ないことになります。
これまで書いていますが、税と国債の違いは、税の場合国内資金の限度でしか徴収出来ないのに対して、国債は海外からも資金調達が出来る点で歯止めがなくなるリスクのある点が違います。
ですから、民意に副い易い国債で政府資金を賄う方式の弱点を是正するには、国内消化率・・発行限度を国内消化率を90〜95%の一定水準に歯止めをかければ良いことです。
その歯止めをかけるのは法的・技術的に簡単です。
法で外国人保有比率を5〜10%に規制すれば足りるので、複雑な経済政策に比べて簡単な規制に過ぎません。
(ただし間接保有等の実態を含めた規制は難しいでしょうが、要は金利を世界一低くして外国人保有の魅力を減じることです)
原子力の安全性議論は国会で安全宣言しても安全になる訳ではありませんが、国債の場合、国会で禁止する法律を設ければ足りる簡単なことですが、これをしないでおいて「国債に頼るのは危険だ」という論調は不合理な主張です。
国債にたよると外国人の意向に影響を受けるから・・増税という論法は、ガソリンを燃やす車は危険だからと言って安全装置を考えないで車を禁止するようなものです。
増税は国内法人その他国内の資源しか対象に出来ませんから、元々外資を当てに出来ない点は国債以上に対象が厳しいのです。
国内消化が出来なくなったときは、国内で資金が余っていないということ・・即ち対外的に借金経済に陥るリスクが高いのですから、法で制限を設けるべきでしょう。
国際貿易決済上それぞれの国で一定額の外貨保有が必要ですから、外国人の国債保有比率を一定率認めるしかないとしても、例えば国民が新規国債の引き受けをせずに、海外投資家保有比率が1割から2割3割とドンドン上がって行くとき、国民が同額の海外債券を持っていれば借金経済かどうかの基準・・資金的には満たしていることになります。
しかし、民主主義の観点・国民意思による政治の重要性から見ると民間資金を政府が吸い上げて余計な仕事をして欲しいと思う国民がいなくなっていると言うべきです。
とすれば、政府が国民の意思を無視して海外から借金してまで、政府支出を増やして行くのは民主主義の原理に反します。
資金手当健全性の観点だけから見れば、海外引き受けを増やし、国民は海外債券をその分以上買って行くのが合理的であると書いてきましたが、直接民主主義の観点から見れば国民が買いたくない・・国債発行による財政運営に賛成していないのに海外投資家に買って貰って政権が財政ファイナンスをするのは政府が国民の明白な意思を無視していることになります。
国民意思を無視ないし軽視して外国人の意思に頼る・・彼らの意向が国内経済・政治決定に影響力を高める政府の存在意義は何でしょうか?
江戸時代でも藩札の所持者が殆どが藩内の人だけでも、実際にデフォルトするとその次から藩財政が回らなくなるので、大名家は極力これを避けるように努力し、気を使ってて来たものです。
この点はギリシャ政府だって同じことです。
日本の国債も今のところその殆どは国内消化であるからこそ外国の意向に左右されないでいられるのです。
領内の資金力のある人から回収して領内の資金不足者に回すのは、所得の再分配の1つの方法でしょうが、領外から持って来て分配するとなれば、他人からの借金・資本参加を受けることになるので本質が変わって来ます。
現在の日本はまだ国内での国債保有率が92%前後を維持しているので、(昨年までは95%と言われていましたがギリシャ危機で円購入者が増えた結果昨年末では8%に上がりました)言わば国民からの回収である限り、国税徴収と本質が変わっていません。

税の歴史4(楽市楽座)

楽市楽座制の宣伝は現在で言えば租税回避地であるタックスヘイブンの先がけあるいはシンガポールのような法人税低減化で企業誘致の競争を始めたようなものです。
こういう競争が一旦始まれば、対抗上諸国は際限なく法人税を下げて行くしかなくなるので、(アメリカでもオバマ政権は大幅な法人税の引き下げを宣言しています)将来的には法人税がなくなってしまうのでしょうか?
楽市楽座制の普及の結果、政権は町衆からの合理的な徴税方法がなくなったまま、明治まで来たことになります。
ただし信長は、堺の町衆から矢銭を徴収しています。
(この時点ではまだ軍資金目的税で一般経費向けではありません。)
こんな程度で膨大な戦費を賄えたのは、織田、豊臣から徳川初期までは、金銀の豊富な採掘があって、(当時世界採掘量の何割という量であったことを November 9, 2011「鉱物資源で生活する社会3(ナウル共和国)」のコラムで書いたことがあります)政府資金は間に合っていたので無税でも、政権が成り立っていたからです。
今の湾岸諸国や、ブルネイが豊富な石油収入(・・採掘権の直轄収入)の御陰で、税を取るどころか国民にお金を配れるような状態になっているのと同じで、織田・豊臣政権時代には、政権維持費用を主として豊富な金産出に頼っていたことになります。
戦国時代の強国ないし勝ち残りは、おおむね金銀の取れた地域または商業利権の大きかった大名でした。
ちなみに信長〜秀吉は商業利権で伸びた大名ですから、商業に関心をおいていました。
上杉謙信も、越後ですので佐渡の金山を連想しますが、当時は越後の布・青苧などが主要商品で、この経済力で戦費を賄っていたので彼の二度にわたる上洛もそのルート維持に精出していた面があると言えるようです。
ちなみに、佐渡金山は、1601年(慶長6年)鶴子銀山の山師3人によって発見されたとされるもので徳川政権になってからのことですから、謙信の頃には関係がありませんでした。
農業系は鉱物資源に頼ることになるので、武田家の衰亡は領内の金採掘量の減少と比例しています。
徳川は農民系ですから政権を取ると生野銀山や佐渡金山など直轄支配していました。
またオランダ・中国貿易など独占していましたが、これは権力者が握るものと言う過去の歴史経験によるだけで、これを幕府財政の大きな資金にするつもりはなかったでしょう・・。
金銀の採掘量が減って来て徳川政権も経済的に参ってきますが、信長以来の楽市楽座制のままで・・日本国民は商売と言うものは自由に出来るものと思い込んでしまって・・既得権になっているので、商業活動に対する徴税方法がうまく機能しないままでした。
この辺は商人から税を取ることから始まった中国の政府・王権と自然発生的な我が国社会の世話役としての政府との大きな違いです。
中国(中国という国家は周知のとおり辛亥革命高成立した国家でそれ以前の王朝とは違います)と言うか、その土地で権力が発生したのは異民族・異境の地に出かけて行く商人の護衛をしたり、行った先での交易・市場の秩序を守る役割があって成立して来たものです。
現在の中国地域での王権の成立に関しては、08/30/05「都市の成り立ち9(異民族支配)」で用心棒・秩序維持役として始まったことを紹介しました。
商業・交易にはルールが必須ですし、ルールあるところにはそれを守らせるに足る武力・権力が必須です。
商業活動と権力の親和性・随伴性については09/18/05「唯一神信仰の土壌(商業の発達と画一化・・・信教の自由2)」を嚆矢として03/27/06「デザイン盗用と電気窃盗4(刑法44)」その他で連載しました。
異民族との交易のために出かけると市を開いた場所で一定期間駐在するための砦を作って(中国人は今でも世界中どこでも似たような中国人街を作るのはこうした歴史があるからです)商人を夜間護衛することも当然しました。これが中国や西洋の寿の始まりですから、どこでも城壁を持っているのですが我が国ではそのような歴史がありません。
・・砦では夜間門を閉めて朝鶏が啼いてから門を開ける(鶏鳴狗盗の故事)習わしでした・・。

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