16年12月初めころの日経新聞9pには、原子力事業のアレバの救済に日本等への出資依頼しているという報道があり、その頃の17日朝刊14pでは三菱重工が出資発表しています。
ちなみにアレバとは、以下の通りルノー同様の政府出資企業で・・言わばフランス国営企業です。
http://www.huffingtonpost.jp/foresight/nuclear-investment_b_13862194.html
三菱重工は12月16日、持ち株会社「アレバSA」とその傘下の核燃料サイクル関連事業を統合した新会社(社名は「ニューコ」)への出資を提案したことを明らかにした。
・・・もともとアレバは持ち株会社制度下にあり、親会社「アレバSA」(仏政府が87%出資する国営企業)の下に原子炉プラント事業会社「アレバNP」、核燃料サイクル事業会社「アレバNC」、ウラン採掘の「アレバ鉱山社」、潜水艦向けの小型原子炉事業などを手がける「アレバTA」、米国に本社を置くゲルマニウム半導体検出器大手の「キャンベラ社」といった一連の子会社群があった。
フランス官僚の優越性?が有名ですが、この結果官僚による管理・国営が好き・・大手鉄道車両工場の大幅縮小計画に政府が待ったを掛けて成功し、その見返りに?価格面で折り合えなかったフランス国鉄に無理に(高値購入を強いて?)車両大量発注させて今後数年分の仕事を確保したり政府は大忙しです。
その分フランス国鉄は割高製品納入を強制された・・いつかは国民にそのツケが転嫁されることになります。
輸出向け国内工場を海外移転するとその分国内雇用が減りますから、目先の支持が必要な政治家が反対したくなるのは分かります。
しかし、仮に競合企業とほぼ同品質の製品の場合、現地生産に成功した競合企業の方が現地ニーズに敏感に反応できて有利ですから、国外消費市場での競争で遅れをとる結果、長期的に国内からの輸出が減って行くしかないでしょう。
いつかは輸出向け生産が減って行き壊滅するならば、・・国内企業の海外展開を阻止するのは、みすみす海外展開の芽をわざわざ潰す効果しかないことになりませんか?
自国メーカーの海外進出を放置していると当面国内最終組み当て工場・要員は減りますが、そのメーカーの世界全体の製造が増えれば、国外子会社工場に必要な部品の供給や人材交流が増えて部品関連の国内生産が維持され拡大します。
海外進出阻止して国内工場を保護していると部品等関連産業の発展も阻止され将来性がなくなっていきます。
国際競争から撤退し国内競争だけに安住していると、結果的に国内競争でも外資企業との競争力を失って国際企業の侵入が始まり、民族資本が壊滅していきます。
アメリカで言えば、保護に徹していた鉄鋼産業が衰退してしまった他に、車で言えば今では、日系車両の販売が4割近くに達しています。
7月4日経新聞の夕刊1面では、米新車販売が8年ぶりに販売減になってきたと報じられています。
その表によると今年1〜6月累計でいわゆる米ビッグ3合計が337、4万台に対して、日系のトヨタ、日産ホンダのビッグ3が276、5万台に肉薄しています。
(起亜を含む現代が64万台でフォルクスァーゲンが26万台ですから、外資系が半分を超えています)
この1〜2年原油安を背景にアメリカ人好みの大型車中心の米ビッグ3の売れ行きアップでシェアーを回復していると言われていましたが、それでもこの程度ですから、今後懐具合が厳しくなっていくとガソリンがぶ飲みの大型車の売れ行きが落ちていくので、小型車中心の日系車の比率がさらに上がっていくでしょう。
リーマンショックの原因は住宅ローンのサブプライム(信用の低い不適格)ローンの破綻がきっかけでしたが、今回は車ローンのサブプライム化のリスクがだいぶ前から指摘されていました。
「すわ!リーマンショックの再来か?」という底流の不安を前提に(淡々とメーカー別販売数しか書いていませんが)販売減が夕刊トップ記事になっていると見るべきでしょう。
この問題は中国新車販売現場でも同じで「ローン手続き数分」とかいうずさん調査でドンドン売っていると言われていて、次の危機は車のサブプライム(支払い能力のない人に対する安易な信用供与)で世界危機同時危機が始まる可能性が心配されます。
公共工事やゴーストタウンは需要無視で政府の資金投入でいくらでも作れますが、車は政府資金で無理に買わせる訳に行かないのにどんどん売れているのを疑問に思っていました。
(中国人民は意外に資金を持っているか?のテーマでこの1〜2ヶ月書いてきました)中国の経済不振に関わらず車の売れ行きが伸びてきた原因が、車のサブプライムローン増加にあるという指摘が出ています。
中国も新車販売の減速傾向が出ています。
昨年までの2桁増が年初来一桁増に下がり、5月に入るとついにマイナスになりました。
https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_sales/salesfig_china_20172017年5月 販売台数速報
5月の中国新車販売は0.1%減の209.6万台
・中国汽車工業協会は12日、5月の自動車生産・販売台数を発表した。生産は前月比2.4%減、前年同月比0.7%増の208.7万台、販売は前月比0.6%増、前年同月比0.1%減の209.6万台。
韓国の基準債務急膨張が議論されていましたが、昨年中に中国の民間債務がGDP比280%に至った急膨張については、従来国有企業ゾンビ企業温存という面ばかり強調されてきましたが、その内実は住宅ローンや自動車ローンその他個人消費債務が大きな比重を占めつつあるかも知れません。
中国でも車ローンの焦げ付き率が上がって、これ以上のローン販売が限界が近づいているという指摘がされるようになって来ました。
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/research/r041101china.pdf
「転換期を迎える中国の自動車ローン実態、問題点と今後の行方
行き詰まった市場拡大とその背景
「・・・・このような国有商業銀行主導の自動車ローン市場で2003年に入って返済リスクが顕在化し始めた。2003年末現在、回収不能となった未償還残高は945億元に上り、自動車ローン残高の5割に達している。個人向け貸出業務による新規不良債権発生の約8割が自動車ローンによってもたらされた銀行の営業店もあれば、自動車ローン返済保証保険にかかわる損害率(加入者からの保険料収入(掛け金)の総額に対する支払保険金(総額)の割合)が400%に達した保険会社もある。」
上記は2004年ころの論文ですが、10年以上も前から問題になっていたとは知りませんでした・・これまでさらに車販売を倍々ゲーム的に拡大できていたのは政策がうまくいっていたからでしょうか?