石炭鉄鋼連盟. EC→EECに始まるEU結成は、元はと言えば戦後米国に対する劣勢挽回のために構想されたものですが、先ず資源から入った点が象徴的です。
第1次〜2次世界大戦は資源争奪戦争(日本はABCD包囲網に対して、「油の1滴、血の1滴」と言う状態で戦端を開くしかないところに追いつめられました)でもあったので、資源確保が第一条件だったのでしょう。
第二次世界大戦時には石油の時代に入ってましたが、西欧諸国は石油産出地である植民地を次第に失って行く過程・・たとえば中東での利権が次々とアメリカのゴリ押し・・植民地支配批判の名分の元に?アメリカに奪われ続ける時代が始まっていました。
この最終章で起きた事件が、ナセルのスエズ運河国有化騒動・・英仏進駐事件だったことになります。
現在で言えば、アメリカが裏で反日運動を中韓に唆しているのと同じ状態ですから、ソ連からの英仏に対する強迫に対して当然アメリカは英仏を応援しません・・怒った英仏が自前の核武装をすることになった切っ掛けです。
折よく北海油田が開発されてこれが軌道に乗った80年頃から資源的側面が解決された結果、イギリスは戦後耐乏生活から何とか抜け出せた原因です。
マスコミはサッチャーリズム成功と言いますが、実質は資源特需によるものです。
・・7月2日現在のウイキペデイアによると「サッチャリズム(英: Thatcherism)は、1980年代のイギリスでマーガレット・サッチャー政権によって推し進められた経済政策である。」と書いていますので時期的にあっています。
(この後に紹介するように北海油田による原油輸出代金収入が軌道に乗ったのは80年代からです)
サッチャリズムは金融ビッグバンもやりましたので、金融取引のウインブルドン現象と言われるようにその収入も増えました。
これまで書いているように製造業復活ではなく金融取引や資源収入による場合、多くの労働力が不要ですので自ずと格差が拡大します。
ナウール共和国の例を引いて、資源収入等が上がるとその分通貨が上がるので、製造業等従来型国内産業にとっては国際競争上不利になる結果却って衰退して行く・・日本が原発停止による原油輸入による大幅赤字が円安を導いて製造業等の競争力が挙がる例としてFebruary 26,2013「原発事故と天佑」で書いたことがあります。
西欧・・得に英国はこの逆に精出して来たトガメが格差拡大を広げ今回の離脱騒ぎの遠因になっていると見るべきです。
上記ウイキペデイアには以下の記述が続きます。
「サッチャーが政権についた時点では、平均所得の60%未満で生活する層は約13%であり、ジニ係数は約25であった[12] 。サッチャーが退任する頃には、平均所得の60%未満の層は約22%、ジニ係数は約34まで上昇した。」
西欧はアメリカの資源力と大規模市場を背景にした19世紀以降の挑戦に対して、資源確保とEU結成による人口では負けないぞ!と大規模市場・・単一市場化で対抗して来たことが分ります。
折角多くの国々が事実上合併・・市場大規模化しても少子高齢化で人口が減って行くのではどうにもならないので移民を入れる・輸血するようになりました。
しかし人口さえ多ければ良いのならば、中国やインドは昔から人口が多かったのです。
EUに関する外務省発表のデータを紹介しておきます。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eu/data.html
欧州連合(EU)平成28年6月1日
総人口(2015年)
5億820万人(Eurostat、暫定値)(日本の約4倍)
略史
1952年 欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)設立(パリ条約発効)。原加盟国:フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク
1958年 欧州経済共同体(EEC)、欧州原子力共同体(EURATOM)設立(ローマ条約発効)
1967年 3共同体の主要機関統合 1968年 関税同盟完成 1973年 英国、アイルランド、デンマーク加盟
1979年 欧州議会初の直接選挙実施、欧州通貨制度(EMS)導入
GDP (出典:IMF World Economic Outlook)
16兆2,204億ドル(2015年)
対するアメリカは以下のとおりです。
アメリカ合衆国(United States of America)
平成28年4月20日
面積 371.8万平方マイル(962.8万平方キロメートル、50州・日本の約25倍)(内水面18.1万平方マイル)
3億875万人(2010年4月 米国国勢局)
GDP 17兆4,189億ドル(名目、2014年)
上記によればGDP規模=市場規模はEUが中東欧諸国編入で拡大し続けた結果、年間約16兆ドル対アメリカが17兆ドル規模でほぼ拮抗していることが分ります。
これを背景にアメリカと対等に渡り合うための共通通貨ユーロも創設しましたが、寄り合い所帯の弱さでユーロは今なお、基軸通貨ドルを脅かすには至っていません。
以下ロイター記述によれば、最盛期でも28%しかなく(イギリス離脱騒ぎ前)の今年4月には、19、91%に下がっています。
以下http://jp.reuters.com/article/forex-reserve-usd-eur-imf-idJPKCN0WX2A5
からの引用です。Business | 2016年 04月 1日 01:45 JST
「第4・四半期のドルの比率は64.06%(4兆3600億ドル)となり、前四半期の63.98%から上昇。 一方、ユーロの比率は19.91%と、前四半期の20.34%から低下した。低下は8四半期連続。ユーロの比率のピークは2009年につけた28%だった。 」
米欧のGDP規模と通貨構成率の相違は何に起因するのでしょうか?
このシリーズは元々消費市場の大きさが実際の国力を分ける・・今や生産力を競う時代ではないと言う関心で5月7日「資源+生産力から消費力アップへ1」以来書いている原点に戻ると分りよいでしょう。
EUが貧乏人の集合体・・とした場合、GDPの割に消費水準が低調・・内需比率の低さが通貨構成比に現れていると言えるかも知れません。
EU内で最大の経済力を誇るドイツの内需比率の低さが有名ですが、ドイツの外需と言っても実はEU域内の内部貿易中心で域外から殆ど購入しないのでは、結果的に経済のEU域外に対する対外的影響力は多寡が知れています。