対外強行発言と損失1

アメリカの国際交渉が思うように行かないのは,第二次政界大戦後世界覇者になった地位に応じた政治をするべき能力・背景の民度が低い付いて行けないことによりますが、民度の低い国民を背景とする政府は地位相応の能力がついていない結果道理に基づく交渉ではいつも言い負かされる方に回るのが許せない・・オバマが無能だと批判して溜飲を下げている状態です。
民度が低くて正義の基準がはっきりしなくても圧倒的強者であるときには何とかなっていましたが・相対的強者の地位になってくるとうまく行きません。
実は今でも一対一であれば圧倒的強者ですが、中東、ロシア、中国、その他「全方位的に)全世界的紛争に関わると比喩的に言えば中露に対して3~5対1の比率であっても勢力分散によって大幅に交渉力が低下して行きますので、強引な主張が通り難くなります。
全方位・同時多発的対処は不利なので,オバマは成長地域であるアジアに集中して、ここの権益だけでも日本との協調で守ろうと決めたと思われます。
このように決めた以上は、アジア以外では思うようにいかなくとも捨てた場所だと割り切るしかありませんが、思い切れない非合理意識(・・中東その他地域では利害関係者も一杯出来ています)が国民不満になっているようです。
政府も企業同様にの選択集中判断が求められているのですが、トランプ氏が政権担当になった場合これを承継できるかヒステリーを起こして世界中から手を引くことになるかです。
最近のトランプ氏の発言は上記アジア重視政策の基本になるtpp反対を昨日あたりヘースブックで明示したことから見て、アジア全域でのヘゲモニー確保も諦めて個別交渉で自国有利に展開したいという戦略のように見えます。
多角交渉の場合,上記のとおり一対一ならば圧倒的発言力の筈が10カ国相手だと勢力分散されて無茶が言い難くなります。
そこで一対一の個別交渉を強国が望むのですが,多角交渉の場合自分勝手な主張は誰が指導者になっても紳士的対外交渉をするしかなくなる、自分勝手な主張がうまく行く訳がない・・そこでTPP構想は本来アメリカ主導で始めたものでありながら,トランプ氏は「俺ならうまくやる」とは言わずに、過去の経緯や合意〜約束事を一切認めない・・ちゃぶ台返しをやると言う宣言を始めたのです。
何沙諸島問題でも中国は個別交渉を要求していて「関係ない国は口を出すな」明白に主張しているように、強国が一対一で小国を圧迫する意図が露骨です。
強迫に屈しない手強い相手には・・一方的に課徴金をかけるなど・・ルールによる交渉でなく腕力背景の交渉をする態度・・言いたい放題です。
戦後70掛けて作り上げて来た世界秩序をちゃぶ台返し的に全部認めないとなれば,世界は大混乱ですからこんな無茶が貫徹出来る筈がないですが、当初は個別ルール無視・違反から始めるのでしょう。
ヤクザは一時的に無茶出来ますが、長期的には無理が出るのとおなじですが、民度の低いアメリカ人がこれに「格好いい!』喝采している構図に見えます。
ところで選挙でのスローガンは分り良く単純ですが、実務となれば仮に選挙で圧勝しても風景が違って来ます。
喩えば、排ガス規制や耐震基準を変えるにしても、新規製品から適用するのが普通で過去にさかのぼって適用するのは余程の違法行為以外には無理があります。
移民追い出し・・新参古参の区別もスロ−ガン的には簡単ですが、既得権擁護のための移民排斥?にも入国後数世代経過、20〜10〜5年経過、数年経過など、なだらかなグラヂュエーションがありますから、どこで切るかは難しい・・切り分ける年次によって支持基盤の離反が起きます。
トランプ氏支持者には,居住歴の長いヒスパニック系が結構多いと言う解説が選挙前にあったことを紹介しましたが,トランプ氏は最近「犯罪歴のある不法移民だけ」と言い出しました。
現実政治とはこう言うものですから、トランプ氏が仮に選挙で圧勝したとしても(総取り制度をうまく利用しただけで獲得票数はヒラリー氏より少ないと言われています)統治権を握ると国内でさえも無理は出来ません。
まして対外政策は、相手があって国際情勢を背景に・・比喩的に言えば100の諸要素の組み合わせによる損得を計算して・・ギリギリの交渉で決まって来た経過があるので、国内で圧倒的支持を受けた政策は,逆にそれに縛られる・・政策自由度が低いことになるマイナスでしかありません。
実行出来ないとそれを支持した数に比例して「国内支持率を失うので協力して欲しい」と言う対外泣き言の範疇であって、アメリカと言えども外国に対する強制力はありません。
有無を言わせぬ課徴金等で無理を通せばそのしっぺ返しが必ず起きて来ますので,(22日書いたように国内物価上昇によって国民不利益に直結する外,)どんな小さなクニでもそれなりの対応(報復)が必ずありますし,長期的にアメリカとの約束は信用出来ないと言う評価が出来あがる不利益が生じます。
中国が投資した国外企業に対する商業ルールに反するいろんな嫌がらせをすると,カントリーリスクの高さを嫌がる国外からの次の優良投資減少リスクにあっています。
焦点が変なものを売りつければ客が泣き寝入りしても,その代わりそのお店に行かなくなるのと同じです。
中期的影響が大きいので強国と言えどもそれほどの無茶は出来ないので,内々の泣き言を言って無理を通して貰うには、国民に見えないところで何かを譲るしかないのが原則です。
現実的でない対外スローガンを実現しようとする場合、対外交渉は軍事力に訴えない限り勇ましいことを行って来た手前妥協すると国内的に政権が持たないので表向き強行突破しかない・・裏で相手国に大幅譲歩するしかない・・あまり実益のない成果を求めるために実質的国益の大幅売り渡し外交に陥ります。
中韓両国の首脳は「大言壮語」するのが普通ですが、外交では相手の了解がいる・・相手のメンツを潰すマイナスを補ってあまりある実益提供を内々にするしかない・・売国的外交に陥っているのが普通です。
習近平の英国訪問では、強引・非礼の限りを尽くして子供染みた優越感に浸ったようですが、その裏で経済合理性のない各種投資約束があった・・このため英国は仕方なしに応じた?と思われていることは周知のとおりです。
尖閣諸島周辺示威行為や南沙諸島の埋め立て工事強行など見ても,国費浪費でしないのが明らかです。
鳩山内閣が「少なくとも県外へ」と言うスローガンで失敗したのは、アメリカが応じるようなメリット提案の根回しをしていなかったことと、そんな大規模な政策変更に見合うほどのメリットを裏でアメリカに与えるお土産提案が不可能だったからです。
佐藤内閣時の沖縄返還に際してもそれなりの密約があったと言われています。
成熟した民主国家においては、見返りにアメリカとの約束内容も公開して、それでも沖縄を返してもらった方が良いかを正々堂々と沖縄県民や国民合意を図るべきだったことになります。

欧米と日本の対応2(EU→一体化・対外障壁)

今回のイギリスの国民投票結果によるEU離脱騒動・・マスコミ報道によれば、EUはグローバリズムの本家みたいな印象を受けます。
しかし、EU結成〜拡大の流れを見ると、グループに入った各国別の貿易障壁を低くする努力・・低くした結果を他の国にも解放する努力をやめる方向へ努力して来たことが分ります。
EU参加のメリットを周辺国に強調することは、結果的に参加しない国との差を強化することに繋がって来たからです。
吸収合併の繰り返しによる大規模市場メリット強化=域内外差の強化をして来たのですから、その目的は、内外格差・・外堀的国境の拡大政策(戦前のブロック経済の強化政策)・・帝政ロシアの版図拡大・・東進〜南進政策の焼き直しです。
19世紀ロシア南進の衝突・限界点がいわゆるクリミア戦争でしたが、今回西欧による東進の衝突・限界点がウクライナであり、ロシアによるクリミア編入事件でした。
以前ロシアのクリミヤ編入に関してどこかに書きましたが、ウクライナはロシア民族の故地・・発祥の地ですからこの地をEUに取り込まれることは現在でもロシアにとって、譲れない境界線と言うことでしょう。
西欧諸国が世界の共通市場化・グローバル化を目指しているのであれば、国の合体ではなくWTOの進行を図れば良いのです。
国境の壁を低くするよりは、自分の市場規模を大きくする・・内部自由化に邁進するのは、国の内外の障壁を低くする運動とは矛盾します。
EU結成進行と同時にWTO交渉が意図的にサボタージュ・停滞してしまった原因ですし、他方で自己市場規模拡大=EU拡大を続け、EUに入っているかどうかで大きな差を設ける・・戦前植民地ごとのブロック化の焼き直し・・ブロック経済拡大強化こそがEUの目標であったことになります。
(June 16, 2016「国際政治力学流動化5(ウルグアイラウンド中断→FTA)」で、ウルグアイラウンドの失敗・・その後の停滞はEU拡大促進と裏腹の関係にあることを書きました)
バルカン諸国で言えば、巨大市場のアメリカも日本も中国も遠過ぎる・・隣国がEUに入って自国が入らないままですと陸続きの対西欧貿易で大きな格差・不利が生じます・・この脅しを利用して隣接の中東欧諸国の加入希望を煽り・・当然国際政治問題でも、西欧の主張に反対出来ないので国際政治力発揮戦略にもなります。
古来から強国や豊かな国が誕生すると周辺国は競って使節団を送って来た所以ですが、多くは「交際しましょう」と言う程度の引力であって、吸収合併まで強制するものではありませんでした。
TPPは通商条約参加であって,アメリカ国内の州の1つになれと言うものではありません。
EU加盟勧誘は、武力による強制ではありませんが、貿易交渉の不利益を餌に事実上吸収合併を強制したものです。
使節を送って文化影響を受けるのと吸収されて支配が直截及ぶのとでは、周辺民族に対する衝撃度がまるで違いますが、EUは核となる英独仏等が予め決めた先進国ルールをそのまま受入れない限り加入を認めない強硬な仕組みです。
言わば軍事占領よりも(古来から民族支配の場合総督を於いて支配地の文化に応じた別の法制度を執行するのが普通でした)強力な強制でした。
私的理解によればこれは大陸的・・仏独的中央集権支配の理解でことが進んだものと想定されます。
EU離脱騒動が始まって以来ちょこちょこと書いていますが、海洋民族・・経験主義の(ある程度ルーズに決めて行きたい)イギリスが何でもキチキチと決めて行く独仏的官僚主導政治に我慢出来なくなったのではないかと言う理解です。
軍事行動出来る限りの周辺国を際限なく吸収合併して来て属国的併存を許さなかったのは、アジアでは秦の始皇帝の統一国家であり、その次にはモンゴルです。
その後の清朝も中共政権もこの系譜を引いていて、軍事力の及ぶ限り出来れば直截支配・・最大限勢力拡大したいことから、少しでも力をつけた思うと対外膨張策に出たくなるのです。
我が国では古来から生物に多様性があることを前提にそれぞれを大切にする「八百万の神」の精神でやってきましたし、封建制と言われる徳川政権に限らず古来から基本は中央集権よりも地域にそれぞれの神がいる・・間接統治社会です。
西欧の人道主義もその基本は民族にも多様性があり、併存しながら共存して行くのが良いとされて来た筈です。
多様な民族の共存のあり方としての国際ルール・・グローバル化のあり方に関する議論で多様な意見を尊重しつつ決めて行くためにガット→WTOが運営されて来たのです。
EU結成は多様性を前提にするWTO交渉・・粘り強く交渉する努力を放棄して、日々の生活ルールまで一体運営に参加・・吸収合併に応じる国だけの小宇宙を作里、加盟しない国を不利益に扱う思想でやって来たように見えます。
イギリス国民が離脱の意思表示をすると激しくその不利益を強調するのはその対の関係です。
単なる貿易協定ではなく、準国内扱いする以上は時間の経過で日常的生活ルールまで干渉するようになって行きます。
この不満を回避するために最低基準を「キリスト教国」と言う枠をつけたつもりでしょうから、トルコに対しては理由なき理由をつけては加入を長年認めませんでした。
・・この1年程度の動きによれば、トルコは熱望していたEU加盟を諦めて・・見切りを付けて?EUとは(ぺこぺこするのをやめて)是是非の交渉相手として行くことに方針を決めた可能性があります。

欧米と日本の対応1(EU→大規模化)

石炭鉄鋼連盟. EC→EECに始まるEU結成は、元はと言えば戦後米国に対する劣勢挽回のために構想されたものですが、先ず資源から入った点が象徴的です。
第1次〜2次世界大戦は資源争奪戦争(日本はABCD包囲網に対して、「油の1滴、血の1滴」と言う状態で戦端を開くしかないところに追いつめられました)でもあったので、資源確保が第一条件だったのでしょう。
第二次世界大戦時には石油の時代に入ってましたが、西欧諸国は石油産出地である植民地を次第に失って行く過程・・たとえば中東での利権が次々とアメリカのゴリ押し・・植民地支配批判の名分の元に?アメリカに奪われ続ける時代が始まっていました。
この最終章で起きた事件が、ナセルのスエズ運河国有化騒動・・英仏進駐事件だったことになります。
現在で言えば、アメリカが裏で反日運動を中韓に唆しているのと同じ状態ですから、ソ連からの英仏に対する強迫に対して当然アメリカは英仏を応援しません・・怒った英仏が自前の核武装をすることになった切っ掛けです。
折よく北海油田が開発されてこれが軌道に乗った80年頃から資源的側面が解決された結果、イギリスは戦後耐乏生活から何とか抜け出せた原因です。
マスコミはサッチャーリズム成功と言いますが、実質は資源特需によるものです。
・・7月2日現在のウイキペデイアによると「サッチャリズム(英: Thatcherism)は、1980年代のイギリスでマーガレット・サッチャー政権によって推し進められた経済政策である。」と書いていますので時期的にあっています。
(この後に紹介するように北海油田による原油輸出代金収入が軌道に乗ったのは80年代からです)
サッチャリズムは金融ビッグバンもやりましたので、金融取引のウインブルドン現象と言われるようにその収入も増えました。
これまで書いているように製造業復活ではなく金融取引や資源収入による場合、多くの労働力が不要ですので自ずと格差が拡大します。
ナウール共和国の例を引いて、資源収入等が上がるとその分通貨が上がるので、製造業等従来型国内産業にとっては国際競争上不利になる結果却って衰退して行く・・日本が原発停止による原油輸入による大幅赤字が円安を導いて製造業等の競争力が挙がる例としてFebruary 26,2013「原発事故と天佑」で書いたことがあります。
西欧・・得に英国はこの逆に精出して来たトガメが格差拡大を広げ今回の離脱騒ぎの遠因になっていると見るべきです。
上記ウイキペデイアには以下の記述が続きます。
「サッチャーが政権についた時点では、平均所得の60%未満で生活する層は約13%であり、ジニ係数は約25であった[12] 。サッチャーが退任する頃には、平均所得の60%未満の層は約22%、ジニ係数は約34まで上昇した。」

西欧はアメリカの資源力と大規模市場を背景にした19世紀以降の挑戦に対して、資源確保とEU結成による人口では負けないぞ!と大規模市場・・単一市場化で対抗して来たことが分ります。
折角多くの国々が事実上合併・・市場大規模化しても少子高齢化で人口が減って行くのではどうにもならないので移民を入れる・輸血するようになりました。
しかし人口さえ多ければ良いのならば、中国やインドは昔から人口が多かったのです。
EUに関する外務省発表のデータを紹介しておきます。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eu/data.html
欧州連合(EU)平成28年6月1日
総人口(2015年)
 5億820万人(Eurostat、暫定値)(日本の約4倍)
略史
1952年 欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)設立(パリ条約発効)。原加盟国:フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク
1958年 欧州経済共同体(EEC)、欧州原子力共同体(EURATOM)設立(ローマ条約発効)
1967年 3共同体の主要機関統合 1968年 関税同盟完成 1973年 英国、アイルランド、デンマーク加盟
1979年 欧州議会初の直接選挙実施、欧州通貨制度(EMS)導入
 GDP (出典:IMF World Economic Outlook)
16兆2,204億ドル(2015年)
対するアメリカは以下のとおりです。
アメリカ合衆国(United States of America)
                平成28年4月20日
面積 371.8万平方マイル(962.8万平方キロメートル、50州・日本の約25倍)(内水面18.1万平方マイル)
3億875万人(2010年4月 米国国勢局)
GDP 17兆4,189億ドル(名目、2014年)

上記によればGDP規模=市場規模はEUが中東欧諸国編入で拡大し続けた結果、年間約16兆ドル対アメリカが17兆ドル規模でほぼ拮抗していることが分ります。
これを背景にアメリカと対等に渡り合うための共通通貨ユーロも創設しましたが、寄り合い所帯の弱さでユーロは今なお、基軸通貨ドルを脅かすには至っていません。
以下ロイター記述によれば、最盛期でも28%しかなく(イギリス離脱騒ぎ前)の今年4月には、19、91%に下がっています。
以下http://jp.reuters.com/article/forex-reserve-usd-eur-imf-idJPKCN0WX2A5
からの引用です。Business | 2016年 04月 1日 01:45 JST
「第4・四半期のドルの比率は64.06%(4兆3600億ドル)となり、前四半期の63.98%から上昇。 一方、ユーロの比率は19.91%と、前四半期の20.34%から低下した。低下は8四半期連続。ユーロの比率のピークは2009年につけた28%だった。 」

米欧のGDP規模と通貨構成率の相違は何に起因するのでしょうか?
このシリーズは元々消費市場の大きさが実際の国力を分ける・・今や生産力を競う時代ではないと言う関心で5月7日「資源+生産力から消費力アップへ1」以来書いている原点に戻ると分りよいでしょう。
EUが貧乏人の集合体・・とした場合、GDPの割に消費水準が低調・・内需比率の低さが通貨構成比に現れていると言えるかも知れません。
EU内で最大の経済力を誇るドイツの内需比率の低さが有名ですが、ドイツの外需と言っても実はEU域内の内部貿易中心で域外から殆ど購入しないのでは、結果的に経済のEU域外に対する対外的影響力は多寡が知れています。

内需拡大と所得再分配(非民主国と対外冒険主義)

貧しい国では、庶民にお金が行き渡らなくとも、先ずは国家規模の黒字を大きくしたい気持ちも必要性も理解出来ます。
その段階では威張るのは早過ぎるのですが、すぐに威張り散らしたくなるところが中韓両国民の底が浅いところなのか、あるいは成果が国民に行き渡らない不満が嵩じて来た結果も知れませんが、不満そらしに対外威嚇を始めたのではうまく行く訳がありません。
難しい対外交渉は本来「満を持して」行なうべきなのに、苦し紛れに言いがかり的に打って出るのでは、名分がない分だけでもマイナスから始まるので多くは失敗します。
昨日からネットニュースになっていて今朝の日経朝刊に出ていますが、昨年習近平の英国訪問についてエリザベス女王が「中国は無礼」だったと言う発言がカメラに拾われていたことが大ニュースになっています。
AIIBへのイギリス参加など英中蜜月演出のための訪問でしたが、イギリスの足下を見た習近平の横柄な態度にイギリスが内心怒っていることが表面化したものです。
札ビラに頼る外交は不満をその分高めている・・本当の敵を作っていることに気が付いていない・・札ビラ外交の場合、内心反感を持たれている関係で札ビラの威力がなくなるとすぐに力を失います。
中国の横暴な発言力・行動力の源泉が札ビラ・力ずくしかないから、中国の購買力持続性に関するテーマでこのシリーズを書いています。
我が国は戦後70年間道義に基づく外交をして来たので、日本をけなすことに存在価値を置いている中韓政府を除けば世界中が信頼してくれています。
信頼に基づいて発言を求められてから遠慮ガチにする発言と誰も聞きたくないのに、金や軍事力を背景に偉そうに言うのとでは、影響力がまるで違います。
中国は黒字蓄積・・大盤振る舞いによる強引な対外威嚇が効かなくなって来たので、今度は内需拡大による輸入拡大→発言力維持策に移行していますが、内需重視政策こそは民主政治化・・国民を大切にしないとうまく行かないので共産党独裁政治に対する試金石です。
内需拡大のためには国民を豊かに・・政府と国民、あるいは共産党幹部や財閥と国民間の所得分配公平化への改革が先決・・待ったなしになって来る筈です。
内需拡大→所得分配公平化のためには、既得権益層に切り込む必要があるのにそれが出来ない場合、国民に金を貸して誤摩化す道を選んで来たのが韓国ですしアメリカのサブプライムローンでした。
言わば先進国がアフリカなど最貧国相手にODAでお金を貸して(貸し主としての事実上の支配継続)製品輸出市場にして来たことを国内でやって来た状態です。
時々最貧国への債務免除がテーマになりますが、韓国でも過去に何回も徳政令が出されて来たと言われます。
韓国の場合大手企業の大半が欧米に買収されて支配されている・・経済植民地支配を受けている状態ですから、正に形を変えた経済支配を甘受している状態です。
中国の場合、資源等の爆買いをテコにした発言力誇示に無理が来たので、貧しくとも人口さえ増やせば人口比で消費が増える→発言力が上がるという倒錯した発想・・折角鄧小平の始めた人口抑制策緩和・人口増に先祖帰りして来たようです。
国民のための政府であれば、指導者の?発言力アップよりは国民の生活水準アップが先決でしょうが、そうはならないところが国民のための政権ではない共産党政権の本質を表しています。
トランプ氏の主張は、海外駐留軍経費を減らす・移民禁止など言い方が乱暴なために批判があるものの、為政者が外国で威張ったり国際会議等でチヤホヤ・よい待遇を受けるために国費を使うのに反対と言うもので、国民のための主張・・民主国家の本質に合っています。
中国政府も国外で威張っても意味がないことは分ってはいるが、経済実態が悪過ぎて、きれいごとを言ってられない・・仕方がないから対外成果を強調するしかない状態なのかも知れません。
ロシアだって経済がうまく行っていたら、ウクライナ侵攻・クリミヤ併合事件は起きなかったと思われます。
経済の苦しいときにシリアまで出て行って空爆する巨額経費を何のために掛けていたかです。
経済的には何のメリットもないどころか大損でしょう。
損をしてでも対外威力を示せば国民が喜ぶ?非合理な国民性があるからです。
そんな火遊びばかりでは国民が余計窮乏化して行きます。
ところで、経済が最悪であっても必ずしも対外冒険主義に走るとは限りません。
ソ連崩壊時・中国の改革開放時には今よりももっと酷い状態でしたが、酷い状態にした責任者がいれ変わっていたことが大きな違いです。
鄧小平にしろエリツイン→プーチンにしろ酷い状態は前時代の責任であって、「これからどん底から這い上がるぞ!」と国民に夢を持たせられたので我慢を強いられたのです。
現在のプーチンは自分の長期政権の結果ですから、責任転嫁出来ませんから対外冒険主義に出ていると解釈出来ます。
習近平の場合、彼の就任前から実体的には経済悪化が始まっていた・・リーマンショック後の約50兆円の財政資金投入による過剰投資・・その後始末に困った反日暴動も彼の就任前から始まっていたし・・本来彼個人責任の問題ではありません。
彼にはゴルパチョフのように過去の政体を破壊し、新体制を標榜するほどの勇気も力量もないので、(安心して選ばれたと思われます)ずるずると共産党政権延命のために前政権が始めた対外膨張活動の延長政策をしているに過ぎないように見えます。
円満退陣して行く仕組みがないと(独裁者失脚の末路は悲惨ですから)為政者が簡単に引き下がれない・・悪あがきするようになるようです。
こうして見ると政治家は(大規模天災や日本政府に責任のないリーマンショックや原油下落など外的要因によるとしても)結果が悪ければ円満退陣する仕組み(選挙)の必要性が分ります。

経済不振と排外行動のツケ1

最近突然噴出したクリミアやウクライナ紛争も、ココ1〜2年の資源・原油価格の値下がりによるロシア経済の悪化によってプーチン政権が苦境に陥っていることが背景にあると言われています。
解説を読むとそれなりの長い確執もあったのでしょうが、あっさり武力侵攻に踏み出すのはそれなりに差し迫った動機があったと見るべきでしょう。
シリア問題等国際交渉ではオバマはプーチンにやられっぱなしの印象ですが、オバマ大統領には恥をかかせたかも知れませんが、国際会議の主導権を握って国際的に得点を稼いでも、経済停滞が始まったロシア国民には何の意味・メリットもなかったと言うことでしょう。
国内不人気挽回にはどこの国でも、国粋主義的領土拡張主義が最も手っ取り早い手段です。
プーチンは速攻でクリミアを占拠してすぐに領土編入してしまうその手際は鮮やかでしたが、その瞬間だけは国民は喝采するでしょうが、実際の景気が悪くて月末の支払に苦しんでいる人や失業者はすぐに現実に戻ります。
泣いている赤ちゃんにミルクをやらないで大きな音を出して瞬間的に泣き止むのを期待しているようなもので、お腹の空いている赤ちゃんは、一瞬驚いて泣き止むもののすぐにまた泣き始めます。
不満の基礎を取り除かない排外行動は、絶え間なく起こさないと国民の関心をそらし続けられません。
プーチン政権は、絶えず国民の関心を集める事件を必要としていたためにクリミア編入の成功で手じまいに出来ず、引き続きウクライナ東部騒乱を煽る必要があったのでしょうか?
とは言え、ただでさえ経済が悪化しているのに、騒乱に軍事介入または背後での援助を続けると軍事費負担もバカになりませんし、欧米による経済制裁が利いて来てもっと経済停滞が進むので、国民の不満がよりいっそう強くなりかねません。
排外行為による国民の興奮は一時的なものですから、膠着状態が長引いた場合、経済苦境拡大による政権ダメージの方が強くなってしまいます。
苦しいから目くらましに始めたのに、対外紛争拡大によって軍事費の膨張によって、なおいっそう国民経済は苦しくなって行きます。
排外行動で愛国心を煽って国民の目をそらせるやり方はその間に経済好転する見通しがあれば別ですが、上記のように事件が終われば、その間に実体経済が好転していない限り不満がまた出て来ます。
しかし、経済好転の見通しがないから排外行動に打って出るしかなくなった状態で始める以上は、短期間の排外行動でその間に経済が好転している筈がありません。
赤ちゃんで言えばミルクを貰わないままびっくりさせられて一時泣き止んだだけですから、その間にもっとお腹がすいています・・大きな音が止めばまたもっと大きな声でな泣き始めます。
補給するミルクがない以上は、もっと大きな音を出して赤ちゃんをびっくりさせるしかない・・一旦国民不満のはけ口に排外行動を始めると際限ない対外軍事行動の拡大を続けるしかない・・終わりのない戦いになり兼ねません。
韓国の場合・・軍事行動を起こさないで日本の悪口を世界中で宣伝しているだけですから、まずいと思えば(日本が謝って来たからと言う口実を設けて・・多分水面下で朴大統領の顔を立てられるような形を付けてくれと言うお願いが来ている筈です)これをやめれば良いと言う安易な考えで始めたものでしょう。
慰安婦問題の河野官房長官談話もこう言う形で応じてやって来た結果ですが、・・この談話を利用して来る・・禁じ手を使って来る国ですから、今回は表面上顔を立ててやる解決をすることを日本国民は許さないでしょう。
韓国大統領は引っ込みがつかなくなって今回は勝手が違って困ってしまい、「毒を食らわば皿まで」と言うことで、反日批判で歩調を合わせられる中国接近を図ったと言えます。
国内不満そらすために直接的な排外行動を起こすと、終わりのないことになる傾向があると書いたことの韓国政治版です。

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