ケインズ理論によれば、財政投資すればその何倍の投資乗数(投下した部門によって違いますが・・・)効果があるので、不景気のときには財政出動した方が良いというもので,しかも政治家に都合の良い理論なので、世界中どこでも不景気が来ると財政出動要請のオンパレードでした。
金融緩和・紙幣の潤沢な供給論もこれの亜流でしょう。
輸出増加基調の経済・・たとえば年率8%増の国が今年は不景気で5%増に落ちたという好不況の波の場合、臨時の谷間を浅くするために財政出動・・おもに内需拡大向けは意味があります。
輸出向けに偏っていた産業構造を内需向けに修正することによって、それまで働き過ぎて生活を楽しむゆとりのなかった国民が貿易黒字の成果を享受出来ます。
生産余力が3%分有るので、その分の雇用確保になります。
土日も働いていた大工さんが土日に自宅を少し手直ししたり出来るようなものです。
構造不況・・国際競争に負けて輸出減少傾向にあるときに、あるいは既に貿易赤字になっているときに、不景気の谷間を浅くするために内需拡大の財政出動をしても、貿易赤字がその分増えるだけです。
構造不況・・恒常的赤字国の場合、海外からの輸入増加による供給過剰ですから、財政出動で需要を増やしても輸入業者に食われてしまう確率・・却って輸入増を招いてしまいます。
貿易赤字傾向による需要不足は臨時の不景気とは違うので、一旦内需拡大と称する麻薬を始めるとやめるチャンスがなくなり惰性的に連続することになりがちです。
国内で言えば北海道や東北地方の各県をギリシャのような独立国としてみれば分りますが、県内所得からの資金ではなく、内需拡大の公共工事等資金は中央からの交付金・補助金(独立国なら借入金)に頼っていいて、これを打ち切ると直ぐにもでフォルトする関係になっています。
アメリカは1986年には純債務国転落ですから、そのずっと前から貿易赤字が続いていたことが明らかです。
輸出が減るということはその分国内生産が減る→失業の増大ないし不景気ですが、戦後世界生産の半分以上を占めていたアメリカの場合、今の日本のように膨大な蓄積がありましたから、気前良く内需拡大を続けられたのです。
これをやっている内に、遂に1986年には、貿易赤字どころか蓄積も食いつぶして純債務国に転落したのですが、それでも内需拡大をやめられません。
アメリカは少なくとも純債務国転落以降は、収入減少に応じた緊縮政策・国民の生活水準を下げて行くべきでしたが、これをしないで不況の度に政治圧力で逆に借金で内需拡大していました。
ジリジリと輸出が減って来た分だけ毎年生活水準を落とさないとやって行けないのは国も一般家計と同じですが、その差額分を過去の蓄積の取り崩し、蓄積がなくなると財務省証券の発行や、住宅公社名義の債券発行などで国外から借りて補って来たのは、サラ金禍家計と同じやり方(規模が違うだけ)です。
それでもリーマンショックまで約20年あまり持ち応えましたが、今回は僅か2年余りで矛盾が露呈し、この夏からドルの大幅安に発展しました。
赤字転落後も老舗企業がジリジリと赤字拡大のまま持ちこたえて、20年後に危機を迎えて、親族などの援助・短期借入金で数年持ちこたえたが再び危機が到来したというところです。
今はギリシャ危機の発生によってユーロが下がり、結果的にアメリカドルの下落が落ち着いていますが、言わば世界金融・情報界を牛耳るアメリカ特有の目くらまし戦法に過ぎずアメリカ経済が立ち直った訳ではありません。