近代産業革命とIT革命の違い1

近代産業革命前に100人必要だった生産や輸送が産業革命による効率化で10人で生産し輸送できるようになれば、90人の職場が失われるはずが、余剰生産分を国外輸出によって失業しないで済めば、生産その他すべてが10倍になれば、国力10倍となり民生も10倍豊かになります。
その輸出を受け入れる国は受けれた分元々の生産従事人口が失業します。
いわゆる「失業の輸出」ですから、一旦受け入れ国になると失業が増える一方・・貧しくなる一方で先進国と後進国の格差が開く一方になっていた・・この市場構造固定化・・相手に生産力をつけさせない半永久的市場支配の権力構造が植民地支配体制です。
英国の紡績業発達がインドの綿産業を壊滅的に滅ぼし「白骨街道」になったことを以前紹介しました。
ラッダイト運動で主張していた矛盾を海外に押しつけることで自国内矛盾を回避し、先進国の優位性の固定化装置だったことになります。
それまでの植民地とは文字通り「植民する」ことだったのですが、産業革命以降は市場支配の枠組み固定化装置に変わったのです。
この枠組み変更に異議を唱えたのがアメリカ独立でした。
西欧諸国は植民地現地人台頭(・・・人種差別して威張るのが目的ではなく現地生産が始まると市場を失うの)を阻止するために人種の違いを強調し「アジア人は劣っているので何をしてもかなわない」という諦め精神を植え付ける人種差別政策に邁進することになります。
オリンピックも欧米人が身体能力がいかにすぐれているかの宣伝目的で始めたというのが私の偏見です。
フランスなどの西欧文化芸術宣伝もアメリカの好きなミスワールドなども同じです。
日本人はミスワールドなどハナから相手にしていませんし、文化芸術分野でも日本画に始まり独自文化を主張できたので自立できてきました。
販路である植民地で自前の産業育成・挑戦意欲を持たせないよう自信喪失政治をしていたのですが、同族出身者で構成されている北米では人種の優越論理が通じなかったから単なる市場扱い・搾取されるままでは納得しなくなり独立革命が起きたのです。
この支配構造に唯一の穴を開けたのが日本で、その日本が逆に工場生産品の輸出国になってアジアの市場を荒らされるどころかアメリカ市場に逆輸出が始まり、坐視できなくなった始まりが米国の排日差別法の成立であり市場争奪(欧米植民地に輸出させないブロック経済化→決定戦が第二次世界大戦です。
日本軍のシンガポール占領時に目の前で英軍が追い散らされ捕虜になっていくの見たシンガポールのリークアンユー氏が「絶対叶わないと思っていたアジア人が勝てる」と自信を持ったという原体験につながったのです。
戦争でこそ欧米は勝ちましたが、その後現地人の自信回復によって次々と独立運動が始まり戦後秩序が始まります。
日植民地民族もやればできるという自信がうまれた下地の上で、プラザ合意以降の日本叩き→日本企業の韓国台湾〜アジア諸国への工場移転による迂回輸出の成功→中国参入以降の低賃金国の攻勢です。
賃金格差が市品競争力低下になり、市場経済的に修正されていく・賃金の低い方に生産地が動いていくべきですが、市場経済的反映を上記の通り植民地支配により力づくでダムのように堰き止めてきた分、巨大な賃金格差・欧米とアジア・アフリカ諸国との途方もない生活水準・教育格差が生じていたのです。
旧植民地諸国・・低賃金国が生産に参入するとダム決壊による怒涛のごとき低賃金国からの工場製品の流入が始まると先進国(国内生産縮小→低賃金サービス業への転換)労賃がつられて下がらざる得ません。
(賃金平準化作用が終わるまで恒常的デフレ発生です)
世界の工場の地位が中国から東南アジア諸国等へ順次伝播していき、最後は世界の人件費の平準化が始まる・本来人皆平等論でいえば、公平な世界になる動きであると「世界平準化」というテーマで10年ほど前に書いたとおりです。
アメリカは、戦前排日法で日本人を鉄条網の収容所に収容して対日開戦を急いだように、今次の挑戦者中国に牙をむいたところですが、戦前の日本はいじめられているのをアジア人が内心で応援していても力がなかったので孤立したのですが、いまの中国は戦前日本よりはもっと乱暴ですが、その代わり周辺アジア諸国の地位があがっている点が大きな違いです。
話題が逸れましたが、今回のホームレス化の動きは英国産業革命後の囲い込み運動で、小作人を農地から追い出した運動の焼き直しのように見えます。
第二次産業革命?の寵児IT覇者も、世界規模で市場を席巻できる点は19世紀の産業革命と同じとしても、覇権国で新たに生み出すIT関連者数は微々たるものです。
この結果・・富分配に参加できる人はごく少数=格差が広がる宿命です。
IT産業で覇権国になっても、アップルの生産が中国で行われているように世界の工場として大量の中間層を生み出せません。
近代産業革命の恩恵を受ける国と受けない国が国単位(一定の社会規模・結局は民族単位)で分かれていたのが、IT革命では国単位〜民族単位ではなくITに適した能力の有無によって、砂粒的に分化し始めたと言うことでしょう。
今後民族出身地域差→奥深い文化力能力差は問題にならない時代が来ると言えば、現実の目の前の若手弁護士層を見ていると民族精神の精華である文化に関心のない人が増えてきた印象です。
IT化・デジタル化で気がつくことは、・・実務世界ではデジタル的処理能力が目先重要な印象・・これが文化の比重低下=出身民族差が背景に退く時代の予兆を感じるのは私だけでしょうか。
シリコンバレーでの活躍者は噂によれば出身民族差にこだわらないような印象を受けます。
今回は領主様が地域からまとめて小作人を追い出すのではなく、家賃引き上げに対応できない個別の住人をアパートから追い出すので、(地震による液状化現象のように)水が地面から染み出すようにあちこちに滲み出てきた印象です。
これが先端産業で成功している都市に限って一流ホテルやマンション周辺にホームレスが大量発生し群がり住み着いて?いる状況になっている原因と思われます。

米国の高家賃5とホームレス(IT化)1

ここでいよいよホームレス問題に入ります。
https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/6755によれば以下の通りです。

ホームレス大国アメリカ」の現実 世界覇権どころではない国内の疲弊
国際2018年1月20日
賃金は減り 住宅価格は暴騰

㊤路上で寝るホームレス(ニューヨーク)、㊦行政が設置したシェルターベッド。入居待ちが続いている(2017年、ロサンゼルス)

・・・西海岸を代表する都市ロサンゼルスは・・・前年比で20%増加した(支援機関「LAHSA」調査)。18歳から24歳までの若年層ホームレスは64%も上昇しており、「ロサンゼルス短大地区の学生の5人に1人はホームレス」という調査結果(ウィスコンシン大学)もある。
・・・昨年11月、シカゴ大学が発表した報告書では、ホームレス状態にある学生が全米で少なくとも420万人にのぼり、そのうち13~17歳は70万人、18~25歳が350万人という衝撃的な数値が物議を醸した。
また、約46万人の学生を擁するカリフォルニア州立大学(全米最大)が委託した調査によると、同大学では10人に1人にあたる約5万人の学生が特定の住所を持たないホームレス状態にあり、さらに5~4人に1人にあたる10万人が食べ物の確保ができていない。

1大学だけで学生5万人もホームレスとは、日本では想像もつかない現状です。
ハングリー精神から新規イノベーションが生まれるとは言われますが・・・???。

・・・ホームレス増加の主な理由は、工業の機械化による解雇や病気による失業の増加、実質賃金は増えず家計収入は減っているのに進む物価上昇、とくにリーマン・ショック以来続く住宅価格と賃貸料の異常な高騰である。
・・・(金融大規模緩和・・稲垣注)それによって住宅金利は下がり、住宅への投資を促進したが、余剰マネーがふたたび不動産市場に投機する流れをつくり、不動産価格はリーマン・ショック以前をしのぐ天井知らずの高騰を見せている。
・・・矛盾が集中したのがIT産業で急成長を遂げたシリコンバレーを抱える西海岸で、全米で進む不動産市場のバブル化に、企業進出や労働人口増加による需要増大という条件が加わり、住宅価格は高いところで年平均20%も上昇。高級住宅に暮らす人人がいる一方で、低価格帯でもワンルームの家賃が3000㌦(約33万円)にもはね上がったため、多くの人人が住居での生活を諦め、路上生活をしながら働いている。
「更新手続きでいきなり家賃が500㌦(5万5000円)も上がった」「年収700万円稼いでも家族を養うのが難しい」というほど異常な高騰が家計を襲い、空き地や川縁にはテント村ができ、道路に連なる宿泊用の車両が急増した。時給15㌦(1650円)程度の所得ではフルタイムで働いても、とても2000~3000㌦もの家賃は支払うことはできない。いまや「ホームレス=失業者」という概念は過去のものとなり、工員やショップ店員、技師、教員までが路上や車上生活をしながら職場に働きに出て、シャワーを浴びるためだけにスポーツジムの会員になっている(AP通信)。

19日にアマゾン第二本社誘致運動を取り上げましたが、以下に続く文章によれば、アマゾンの本拠地では全米最高のホームレス発生という実態が背景にあることが分かり分かります。

グーグルやアップルなどハイテク企業の本社が集中し、国内でもっとも平均収入の高いシリコンバレーの大都市が、米国最大のホームレス地帯となっている。
・・・アマゾンやマイクロソフトが本拠地を置くワシントン州シアトル(人口70万人)では、ホームレスが1万人をこえて過去最大を更新し、ホームレス人口が全米ワースト2位になった2015年には緊急事態宣言を発令した。人口が増えた反面、住宅価格が年平均10%上昇し、賃貸価格も六年間で57%も上昇しており、多くの一般家庭が家を失った。「好景気」によって富が集まり、経済活動が盛んになったのは数%の上流層だけであり、多くの人人は低賃金労働のもとで住む家すら失って社会の枠組みからはじき出されている。

以上によれば、ピッツバーグ等製造工場の盛んであった地域衰退・・ラストベルト地帯ばかりメデイアが取り上げていますが、もっと問題なのは高度成長している成功地域でホームレスがどんどん生み出されている状況です。
昔のラッダイト運動の場合、製造業の発展で農奴に近い小作人が中間層に脱皮できて収束できたのは、先進国がこの技術を囲い込み世界の工場として世界中から富を収奪できていたからです。
先進国がマルクスの御託宣のとおり矛盾激化しないで後発国ロシアや中国で矛盾劇化して共産革命や動乱が起きたのは輸出受け入れ国の地位になっていたからであって偶然ではありません。
先進工業国は、先進技術独占による高賃金・中間層の厚み構築・社会の安定・未来への希望社会を作り上げていたのですが、これが後進国を市場とのみ位置付けてきた収奪の仕組みによっていたにすぎません。

米国の高家賃4と路上生活者激増1

ここまで先走った意見を書いてきましたが、いよいよ本題の住宅価格上昇と家賃上昇のカラクリに入っていきます。
“https://gentosha-go.com/articles/-/3293”>https://gentosha-go.com/articles/-/3293によると以下の通りです。
国債金利と価格との差を説明した論説ですが、関心のある結論部分のみの引用です。

2019.2.12
全米アパート市場の特徴&米国国債と不動産の関係とは?
小川 謙治2016.6.1
サンフランシスコ・ベイエリアの家賃価格が上昇を続ける理由
小川 謙治2015.12.15
雇用成長はアパート賃貸マーケットに大きく影響を与えています。
日本ではごく一部のサブマーケットでしか経験できない家賃上昇について、ピンと来ない方もいらっしゃるかもしれませんが、米国不動産投資を語る場合、家賃上昇がキャピタルゲインの一部をなしていると言えるでしょう。つまり、経済成長率以上の家賃上昇があれば常に不動産価値が上昇し、さらに不動産価値上昇率は常に家賃上昇率を上回ることになるのです。
上記の通り、価格アップが賃料値上げに波及し、賃料上げが住宅価格上昇に跳ね返る悪(資本家にとっては好)循環が起きているようです。

花見酒の経済のようにキャッチボールを繰り返して一握りの高額所得者しか買えない天井に行き着くまで不動産相場を吊り上げて行くつもりなのでしょうか?
ここ数ヶ月の株式相場変調でも不動産リート系が底堅いといわれる根拠かもしれません。
住宅価格→家賃高騰によって路上生活者に転落したアメリカの労働者がなけなしの金で不動産系ファンドに投資して利回りアップを期待しているとしたら漫画のようです。
賃料値上げに対する歯止め制度が整備されていないこと(部分的値上げ規制があっても日本のように基礎法での整備不足)によるのではないか?というのがここ数日の意見です。
この結果、同じ地域に住むものでもシリコンバレーのように超高額所得者と普通の人が混在しています。
地域格差ではなく、同じ地域内格差が大きいと正社員でさえ家に住めない・・ホームレスがうまれ始めているようです。
地域格差・・モザイク国家どころか、砂つぶ社会・・合衆国社会の問題が噴出している様子です。
まず高額家賃の実情から見ていきます。
ちょっと古いですが、米国の家賃事情はhttp://www.apalog.com/maxre/archive/91によると以下の通りです。

米国の主要都市アパート家賃相場  2012/10/17 11:10
レントコントロールの無いアパートは1~2年置きに家賃が値上がり、お給料は上がらない、物価は上がるで、別のエリアへの引っ越しや、アパートのシェアをしている人達も多くいます。家賃はどこまで上がり続けるのでしょうか、TimeOut New Yorkに、家賃相場の記事が出ていたので抜粋しました。

スタジオタイプは、一つの部屋の中にキッチン、リビング、寝室が一緒になったワンルームマンションの様な部屋。 1ベッドルームは、寝室とリビングが別にあり、キッチンも別に付いているケースが多いと思います。 探せば、この相場よりも安いアパートもあるでしょうが、マンハッタンで一人暮らしをしようと思うと、最低でも2000㌦近く必要!? 普通に生活するには、収入の3分の1を家賃を当てるのがバランスが良いといいますが、こんなルールは全く適用できないことになります。

http://www.apalog.com/maxre/img/91/g1iDToOKgVuDk4NWg4eDYapngWkyMDEyLTEwLTE2IDYuMzguMzYgUE2Bamp-.png

上の表は、米国の主要都市の1ベッドルームの家賃相場をリストしたものですが、トップはニューヨークで、主要都市ベースでみると、ブルックリンが2番目に家賃が高いエリアという事になります。人気のブルックリンもどんどん家賃が高騰している様です。
こんなに高いと普通の正規社員でもちょっとしたことで路上生活者・ホームレスに転落し・路上から出勤という姿があるようです。

米国の高家賃3(継続しない社会)

社会のあらゆる分野で更新(継続)原則社会にするか自動終了社会にするかは、社会の在り方の根本を規定するものですからこのような基本法が成立するかどうか自体が、庶民を大事にする社会か否かのバロメーターです。
日本では地代や家賃を地主や大家の都合で簡単にあげられない制度・・昨日紹介したように更新原則制度(終身雇用の定着もこの原理によります)が大正時代から始まって定着していますが、住宅価格が上がれば家賃もあがる→ストレートにホームレスが増える結果から見ると米国には(個別対応法があるとしても、それでは政策が後手に回ります)こうした基本的制度がないのでしょうか?
ネット企業ではアマゾンなどネット企業の横暴さについて、ある日いきなり出店条件改定を突きつけられたという悪評が目立ってきました。
日本のゾゾタウンの場合、アパレル等大手が多いので逆に出店中止の動きが出ている例が報じられていますが、報道に出ない中小の出店者は契約解消するといきなり販路を失うので一方的改定通告の言いなりのようです。
契約自由に対する「規制さえなければ何をしても良い」という「悪しき自由主義」・・「法家の思想・法万能主義」は性悪説に始まっていることを15日に書きましたが、この基本思想が米国社会を蝕んでいるのでしょうか?
(一般に「せいぜん、せいあく説」と習いますが、日本語で表現すれば「しょうよし」と「しょうわる」ですからピンとくるでしょう)
欧米で発達した近代立憲主義政体・3権分立制度は権力はいつも悪いことをするという性悪説的思想を骨格とした猜疑心を前提にしています。
今では三権の抑制均衡にとどまらず、公正取引委員会その他第三者的機関がどんどん増えているし、企業も監査役の充実にとどまらず外部委員や社外取締役制度の拡大(ゴーン氏の事件でより一層勢いを得ています)・近年流行のオンブズマン制度などはこれを権力同士の抑制均衡に任せずに多角的監視の必要性を拡大する動きと言えます。
西欧近代社会では人間は基本的に性悪(しょうわる)の人が多いから「しょうわる説」で国家や組織運営するし国民も皆納得しているのでしょう。
現在野党はこの動きを手放しで「良し」とする気風に便乗して古代法家の思想の純粋適用的国会活動をしているように見えます。
統計「不正」主張問題では(その後何が出るか不明ですが)今まで出ている情報では「やっていることが善意で結果が良くても職分を超えて仕事をすれば処罰すべき」との考えでルールに反してさえすれば、批判することを職業にしているのが現在野党のように見えます。
社会に警察や監察部門が必要なようにこういう部門に目を光らせる政治家も一定数必要ですが、これが政治全部の役割と思って国会議事がそれ中心にするのは社会のあり方として不健全です。
企業の総会で言えば経営計画の審議そっちのけで、経営陣に不正がないか・・しかも不正の有無ではなく「疑いの有無」ばかりに終始していて肝心の経営計画の議論をさせないような運営ではないでしょうか?
政治家の仕事が不正の「疑い」主張ばかりで良いと考えている人は、そこ(不正)に関心があるのではなく社会の少数者になっている僻みがあって、歪んだ視点ばかり増幅させる・・「自己内部に性悪(しょうわる)な部分を多く見たい心理の反映」ような印象を受ける人が多いでしょう。
事件処理で、「このことからなぜそういう主張に導けるの?」と驚くほど、相手の行動を捻じ曲げて解釈して憤っている人の感知能力の高さにど驚くことがありますが、「自分の場合こういうことをするのはこういう悪意を前提にしている」という自信があって主張しているとすれば「主張者の心の闇がすけて見える」ことになります。
日本では「法」があろうがなかろうが「やって良いことと悪いこと」の区別は庶民末端までみな知っていますが、上記のように「心の奥に性悪(しょうわる)気質が渦巻いている例外的な人も一定数います。
財布を落とした場合の届け出率は根拠不明ですが以下のように出ています。
xconsulting.jp/gyanburu/son/saifu.html

・・おそらく多くの方が財布が戻ってきたと答えるでしょう。なぜなら、日本において財布が戻ってくる確率と言うのは、私たちが想像している以上に高いのです。その確率は63%になり、世界的に見てもかなり高い確率なのです

高いといっても63%ですが・・。
ただし、落とした財布が100%落とし主の想定した時間場所で拾われるとは、限らないので37%の人が懐に入れているとは限りません。
(いつどこで無くしたかをはっきり知っている人はそんなにいません・・自宅内で探し物が思いがけない場所から出てくることが多い・・生活道路を歩いていると手袋の半分とかマフラーなど不思議なものが落ちていますが、落とした人はコートを着た時にマフラーを忘れたか、コートと一緒に手持ち移動のビル内で落としたか・/手袋の場合切符を買うときに落としたか?などとと思うのでしょうが、実は思いがけないところに落ちているのです・・電車移動の場合10分違えば乗った駅前広場と降りた駅前では全く別の場所で落としたことになり違った警察に行きます・・・財布の中に身分特定事項があれば検索可能でしょうが、特定事項が少ないとちょっと場所が違うだけで遠く離れた別の警察署に行くことになりそうです)
全国で落とし主の表れない数字を引き算しないと届けても戻らなかった人の数字だけでは正確な比率が出ません。
道徳律レベルにもどりますと「個々人の良心」に頼る率が比較的低いのでこと細かに契約で縛り法規制に頼るしかないのが米国社会なのでしょうか?
日本だって大正時代に借地法が出来、昭和で借家法が全国施行になったのは「えげつない商法」が少しでも出てくると放置できなくなったことによります。
日本の場合明治民法(現行法)で契約自由の原則その他西洋法制度を取り入れましたが、少しでも法制度悪用の動き・・日本的価値観で見ると「心得違いの動きがホンの少しでも出てくると大騒ぎになり、放置できなくなったことによります。
こういう場合にもイラン等の過激な主張・・欧米式近代法制度自体を根本から否定するのではなく、国民共同の価値観が欧米的法形式・流儀を利用して確認される点が、日本とイラン等と違いますし、膨大なホームレスが生まれてもさしたる国内議論にならず放置されているように見える米国との違いです。
香港、シンガポールなどIMF式自由を謳歌している地域(資産家移住奨励)で家賃急騰が目立つのは、・高額家賃を払える人がいる限りいくら上がっても良い・(払えない底辺労働者はマレーシアに出ていき、そこから通えばいい?)外部からの移住者が多く共同体意識が元々ないのが原因かも知れません。
ホームレス対策は、共同体意識によらない皮相的人権擁護論では、発生原因を見ない傾向・・(貧困者向け公営住宅が足りないのは結果でしょう)対症療法にとどまり限界があるように見えます。

更新・継続原則社会1(日本)

普通の労働者がホームレスになるようないびつな社会になりつつある原因を法制度の違いで見ておきます。
例えば契約更新を原則としない社会では、2〜3年契約の場合、2〜3年ごとに契約が自動終了しますので、大家にとっては次にもう一度貸すかどうかは大家の気持ち次第・・一方的関係になります。
前の契約が月額5万円であったか10万であったかに関係なく、契約終了後の新規募集価格を「月額13万」とすれば、元借家人かどうかに関係なくそれに申し込まない限り借りられません→契約期間終了すれば契約がない以上(ラーメンを食べ終われば店を出るように)家を出て行くしかありません。
法形式上は新規契約なのでどういう新規提案しようと「契約自由の原則」という論理構造のようですが、この辺は毎回行く店を変えても良いパン屋やラーメン屋が商品値上げ自由なのと本質が違っています。
パン屋やラーメン屋が1ヶ月後200円値上げすると書いてあれば、次から別の店に行くか?など顧客の自由選択ですが、住居や商店の場合「そんなに上がるなら契約したくない」という選択はよほどのことがないと(例えば1000円上がるのが嫌で引越しできるか?)できませんので、大家のいいなりになる傾向が強まります。
この違いに着目して日本では、大正時代から労働契約や賃貸借等の継続性を前提とする分野(講学上「継続的契約関係」と言います)では契約期間が終了しても(正当事由は滅多に認められない・労働分野では解雇権乱用の法理が確立しているので)原則として更新しなければならない制度設計になっていることを13日に紹介しました。
(元請け下請け関係は一見毎回個別の契約のようでありながら継続取引を前提としている関係でよほどのことがないと発注を打ち切れない商道徳関係に縛られます)
契約期間の定めがあっても更新(従前の契約条件がそのまま継承される)することが原則ですから、契約期間終了日が来ても自動的に契約が終了しません。
借家人が同意しなければ、更新しない理由として正当事由があるかどうかを裁判して争う必要があります。
正当事由とは何かですが、その例示として法律に「自己使用の必要性等の外・・」ですから、商業的借家や借地にこういう必要性などあり得ないので訴訟する人が皆無に近くなっています。

借地借家法(平成三年法律第九十号)
(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
以前紹介しましたが平成の新法では自己使用等の他に「財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、」決められるようになった分流動化に資するようになっています。
「財産上の給付」申し出とは平たく言えば立退料の提案次第ということです。
参考までに大正10年からの借地法記載の正当事由の記載を紹介しておきます。
第4条
借地権消滅ノ場合ニ於テ借地権者カ契約ノ更新ヲ請求シタルトキハ建物アル場合ニ限リ前契約ト同一ノ条件ヲ以テ更ニ借地権ヲ設定シタルモノト看做ス 但シ土地所有者カ自ラ土地ヲ使用スルコトヲ必要トスル場合其ノ他正当ノ事由アル場合ニ於テ遅滞ナク異議ヲ述ヘタルトキハ此ノ限ニ在ラス
平成の大改革といってもこの程度の微温的改正でしたが大騒ぎになったものです。

この旧借地法や借家法は平成新法制定前の契約は旧法適用ですので、私も昨年から旧法適用事件で訴訟中です。
ただし判例理論が今の平成の法律とほぼ同じでしたので・いろんな法改正は判例実務の後追いが原則です・・不都合はありません。
14日に法家の思想紹介で書きましたが、日本はいつも法令改正前に実務が先行していく社会です。
社会の変化に法令が合わなくなる・・不都合が発見され、それを判例で修正していく流れで、その判例が世間の支持をうけて定着して行くとそれを新法令に変えていくという流れです。
象牙の塔にこもる研究者が社会の流れを先験的に見通して10年先の社会を前提にした法律案を提案するなど不可能なことですから、法はいつも実務変化の後追い作業になるのは当然です。
また現実に変化の芽も出ていないうちから10年先を見通した法案を提案しても国会での議決は不可能でしょう。
「今起きている変化の芽からこれが大きな潮流になりそうだからこの方向の規制をしたり緩める」というのを否定するのではなく、この変化が先に起きるのは実務界であり既存法令で不都合があるときに法規制の範囲をめぐる係争が増えてくるので半例が先行指標になるという意味です。
借地借家で言えば、時代の変化に合わせることも社会的にある程度(自己使用目的でなくとも都心のビル街で古い瓦屋屋根の家を温存しているのは社会的マイナスです)必要なので立退料支払いでの法の穴を埋めてきた実務慣行(知恵)があったのを法で明記し認証したことなります。
元に戻りますと、日本では期間満了=新契約ではなく・・「前契約ト同一ノ条件ヲ以テ更ニ借地権ヲ設定シタルモノト看做ス」・・ 契約が同一内容のまま継続ですから、家賃を高くするには家賃や地代賃上げ・契約変更の場面になることが重要です。
「契約は守られるべし」というのがローマ法以来の原理ですから、相手が応じない限り裁判所の変更可否の判断手続きが必須です。
(労働法では賃上げ〜賃下げ交渉)
13日に借地借家法で書いたように意見が合わないと契約関係を維持したままの法的争いに移行します。
訴訟手続き等で鑑定等を経て結果的に大家の値上げ要求が正しかったとしても負けた方は差額に利息をつけて払えば良いだけですから、それほどのリスクはありません。
大家の方は、鑑定費用や弁護士費用等を負担するので、日本の場合1〜2万円程度の値上げ目的では裁判で勝っても費用倒れです。
しかも裁判所はいくら土地が急激(個別取引事例ではなく統計的に)年間1割といえばかなりのインフレですが)に上がっていてもそのままの引き上げを認めない運用が定着しているので、この種の争いをする大家や地主がいない・・何十年も同じ家賃のままというのが普通になります。
イギリスのエンクロージャムーブメントで小作人がいとも簡単に追い出されてしまうのを奇異に思うのが日本人です。

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