危険域内人口縮小策・早期移転奨励のためには、政府から交付された金額(正確には事業所等の移転補償分や事務経費等を控除した)を一人当たりで割った分=一人当たり補助金額より一定期間内の早期割り増し(一定期間経過すると平均より少なくする)制が必要です。
この対として、原発立地決定以降は新規定住や事業所の開設を禁止し(その後に定住したり開業した人に立ち退き補償する必要はないでしょう)、あるいは家屋その他の立地を禁止すべきことになります。
定住を禁止するだけですから、危機発生のとき以外は観光やふるさとを偲んで時々帰郷することまで禁止する必要が有りません。
今でも地方の両親死亡後親の家をそのまま残している人が大勢いますが、その光景と同じでしょう。
別荘か本拠地かの違いは生活手段・収入源が主としてどこにあるかの違いとも言えます。
主たる生活手段・・収入源が危険区域にあると避難したときに食べて行けないことが移転奨励策の基礎ですから、それまで農業であった人はムラを出る時にその農地を保有したまま出ることを許さず、自治体または第三セクターによる強制買い上げ(収用)が必要です。
これまで書いている補助金がその対価・原資となるべきでしょうから、トータル補助金・立退料の額は保有していた資産の多寡に応じて少しずつ違うことになります。
これは区画整理等で移転補償が個別に算定されるのと同様の作業です。
自宅だけ圏外に引っ越して毎日車で元の農地を耕しに来ていると事故があって立ち入り禁止になった時に収入源がなくなってしまいます。
立退料が要らないから、(あるいは今は半分しか要らないから)その代わりイザと言う時にそのお金をくれれば、そのお金の支給で食いつなぐと言う人がいてもおかしく有りません。
仮に50年に一回事故が有るとすれば、7〜8%の複利運用で10年で2倍20年4倍・・以降は低金利時代ですが、仮に平均5%運用とすれば単利でも20年で2倍ですから、40年で8倍、50年で約10倍です。
(運用率は5%以下かも知れませんがその代わり単利運用はあり得ないのでこの2倍くらいにはなるでしょう)
9000億円(運転開始後も毎年130億円も貰っています)の10倍以上(事務経費や農地等業務用施設の買い取り資金など控除しますが・・)を避難民7万人で割ると・・・一人当たり天文学的数字を貰えそうです。
あるいは政府が信用出来ないならば一時金で貰っておいて自分で運用すると言うのもありでしょう。
これで5年10年食いつなげるならば、別荘さえ用意してもらえればそのまま現地で農業をやっていて、事故が起きてから避難するのでも良さそうです。
50年も経過すれば当時50歳の人でも100歳ですから、自分一代で農業が終わりだと思えば、どうせ死んでしまうので貰い得かも知れません。
移転奨励に応じない自由(特に高齢者など)もありますから、こうした人たちのために6月17日から書いている自治体による集団避難用地の事前取得が必要です。
交付金を元手に移転奨励政策を前面に打ち出していても、新天地への適応力のない中高年者の7〜8割と適応力のない1〜2割の若者だけが地元に残り続けることはあり得ます。
それでも、原発立地(福島第一原発で言えば1964年には既に90万坪もの用地買収が終わっています)から、2011・3・11までの間に67年間も経過していますので、立地決定当初の中年・高齢者(例えば当時45歳以上の人は109歳以上です)は全員死亡していて存在し得ません。
新天地への適応不全・・あるいは高齢の両親を見るために地元に残った1〜2割の(当時20〜30代の)若者でも現在では84〜94歳になっています。
交付金を貰っていた町村で転出奨励策を大々的に採用していたならば、(例えば)半径15km圏内では(原発関係者用の宿舎などを除いて)殆ど無人になっていて、今回の大被害は起きなかったことになります。
私が6月17日から書いて来た避難用の用地事前取得は、原発立地自治体が無人になるまでの過渡期の数十年だけ必要な施策であったことになります。
15〜25km圏内・・避難必要性の蓋然性が低い灰色地域では、ある程度の危険性が予想されるとの主張によって相応の交付金の分配を受けていたとすれば、交付される限度で少しでも緊急避難対象住民を減らす努力をしておくべきですし、(一定の距離があるので早く戻れる可能性が高いこともあって)事前用地取得と転出奨励策との二段階政策が合理的であったかも知れません。