損害賠償リスクの先送りと外国人労働

損害賠償リスクの先送りと外国人労働

エコノミストによる肝腎のコスト計算論が出て来ないのは、脱原発宣言をしている菅総理を非難しているものの、マスコミや有力政治家の誰一人として、原発をやめるべきかどうかの議論を正面からしないのも同じ傾向です。
原発のコスト問題は外国人労働者移入問題と似ています。
低賃金の外国人労働力を国内に引き込んで儲かってるのは、未熟練下層労働に頼る風俗系経営者や現場系業種だけで、そのツケが後で全国民の税金になって帰って来ているので、当面の利益が後で損害になって来るのと似ています。
物価の安いフィリッピンや東南アジアからの通勤なら日本人の半値〜何割安で働いても大もうけでしょうが、日本国内で住み日本の物価でものを買い食べている限り、下層労働でしかも半値〜何割減では極貧生活しか出来ません。
超低賃金外国人のホステスや現場労働者の2世がマトモに育たず、(お金がないだけではなく、言葉も充分ではない、母親が朝方帰って来て直ぐ寝てしまうようでは、子供のしつけ・勉強を見てやるどころではない・・教育環境も悪いし・健康状態の悪い子が多いなどなど・・)一定年齢になると少年事件の主役に台頭しつつあります。
言葉もウマく通じない何をしてもうまく行かない・イライラの蓄積状態で、説教されるばかりですから、校舎を蹴飛ばしたり、やっと仕事を見つけても上司を殴ってしまったりとフラストレーションのはけ口を求めている状態です。
彼らは今のところ少数で孤立しているので個人的不良行為に留まっていますが、世代を重ねてイギリスのように多数になって来ると何かの切っ掛けがあれば、これに呼応して暴徒化・予備軍になることは目に見えています。
公教育でも外国人子弟向けの教育プログラムが必要になるなど、彼らに対して膨大な国税の浪費に繋がっている・・成人しても・犯罪予備軍化・生活保護所帯化・・こういう人は病気も良くしますので医療財政の悪化原因にもなるなどマイナスが目に見えています。
結果的に外国人を安く使って儲けている一部の人のために、関係ない国民がみんなで何世代にわたってそのマイナス負担・・税負担している関係です。
外国人労働力導入問題については、02/25/07「外国人労働力の選択的移入1」その他で繰り返し反対論を書いて来ましたが、目先の賃金コストの安さに目を奪われて、その関係者だけが安い労賃で儲かって長期間経過の後に国民負担に跳ね返って来るのですが、原発も当面はコストが安いでしょうが、将来事故が起きたときのマイナス負担を次世代国民全般に先送りしている点は共通です。
本当に原発はコストが安いかどうかについては、膨大な積算データが出て来ないので(意図的に関係者が明らかにしていないのでしょう)正確には分りませんが、東電の財務体質のあり方で外形的に推測出来ます。
東電の賠償責任が無限責任・・無制限と言う意味ではなく賠償責任がある場合、その何割しか賠償しなくて良いとする限定がないという意味です。
本来相手に損害を掛ければ、加害者はその損害を100%賠償するのは一般企業や民間どころか国であってもすべてに妥当する原理です。
ところが原子力事業に関しては、国民に被害があってもその被害を100%賠償しなくとも良いのかどうかという議論があって、そんなことは許されないということから大げさに無限責任と明記されているのです。(当たり前でしょう)
無限責任・・賠償金を100%払わせられたら東電は即倒産になるので・・事故前には2000円前後していた東電の株価は事故直後から大暴落で3月末頃には400円台まで下がっていました。
・・・その結果責任の大部分を国家で責任を持つスキームの策定が急がれていたことが外形的な参考になるでしょう。
株価大暴落は東電には100%の賠償能力がないという市場の判定・・賠償コストを原発のコストとして計算して引き当て基金等で積み立てていなかったことが前提になっていたのです。

原子力損害の賠償に関する法律
(昭和三十六年六月十七日法律第百四十七号)

(無過失責任、責任の集中等)
第三条  原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。
2  前項の場合において、その損害が原子力事業者間の核燃料物質等の運搬により生じたものであるときは、当該原子力事業者間に特約がない限り、当該核燃料物質等の発送人である原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。
第四条  前条の場合においては、同条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき原子力事業者以外の者は、その損害を賠償する責めに任じない。
損害賠償措置の内容)
第七条  損害賠償措置は、次条の規定の適用がある場合を除き、原子力損害賠償責任保険契約及び原子力損害賠償補償契約の締結若しくは供託であつて、その措置により、一工場若しくは一事業所当たり若しくは一原子力船当たり千二百億円(政令で定める原子炉の運転等については、千二百億円以内で政令で定める金額とする。以下「賠償措置額」という。)を原子力損害の賠償に充てることができるものとして文部科学大臣の承認を受けたもの又はこれらに相当する措置であつて文部科学大臣の承認を受けたものとする。

不法滞在者

外国人登録数に関係ないとは言え、不法滞在者はそのほとんどが(水商売であれ・・)日本で働く目的での不法滞在ですから、労働需給に大きく関係しますので、念のために不法滞在者数の推移を見ておきましょう。
不法滞在者数は、法務省統計によれば、2005年1月1日現在207,299人〜2006年1月1日193,745人〜2007年1月1日現在170,839人〜2008年1月1日現在の14万9785人から2009・1・1現在の11万3072人となって最近ではほぼ毎年3万人前後減り続け、直近では約3万6000人も減っています。
不法滞在=働きに来ている人が中心でしょうから、仕事がなくなればさっさと引き上げる人(帰る金がなければ自分で出頭して、強制送還して貰えばタダで帰れます。)の比率が高い(14万人の内3万人減とすれば20%減です)のは当然です。
ちょうど外国人の正規登録数の減少幅・・毎年数万人と絶対値では似ているのですが、不法滞在者は元々外国人登録している人が少ない・・留学等で登録した後に資格喪失などもあるでしょうが・観光ビザで来た人は登録しないまま不法滞在に移行していますが、・登録比率は少ないので、ここで数字が合致しても意味がありません。
前回紹介したとおり正規登録者数がここのところ年間2〜3万人減っているのと平行して、不法滞在者も数万人づつ減っている・・実数では合計2倍の減少率と読むべきでしょう。
正規登録者の内でも、労働者数としてはもっと減っているのでしょうが、正規登録者の場合、留学・日本人配偶者等その他多目的入国が含まれているのでその分野の増加があると総合計の統計では中和されるので、労働者数の減少よりも結果の数字が小さく出ている可能性があります。
ちなみに留学生がどのくらい来ているかについて見ておきますと、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の22年12月発表のデータによれば、「平成22年5月1日現在の留学生数 141,774人  過去最高(前年比 9,054人(6.8%)増)」とされております。
留学生が増えたか減ったかは別の問題として統計を取る意味はありますが、外国人を含め総人口減少だけを騒いでも意味のないことです。
話を日本人だけの人口増減に戻しますと、2005年の2万1266人の人口減少数は日本人だけの統計ですが、その翌年には8226人の増加に戻り、2007年以降また2万人台の減少に転じて、この2010年の国勢調査でイキナリ8万人台の減少(人口の0、06%と言う厚労省のパーセント表示数字)になったものです。
マスコミは日本の総人口には統計上在日外国人も含めていることを説明せずに(外国人を含めた)総人口の減少10万7000人減だけを大きく報道していますが、(マスコミは人口減少の危機感を強調したいようです)実態は小さなものです。
日本人だけのパーセント数字では0、06%減と厚労省が発表しているので、100年かかっても6%しか減らないことになります。
これではインパクトがないので、January 5, 2011「合計特殊出生率2」で紹介したとおり、政府では今後更に出生率が低下するとした場合のシュミレーションに励んで、今後約50年で50年前(1955年)の8000万人台に戻るとする研究結果を発表しているのです。

総人口と外国人数

ところで人口と言っても、外国人居住者を含めた総人口と日本人だけの人口の2種類があって、総人口とは外国人を含めた概念であるのに、マスコミが何ら限定なく総人口が減ったと大きく報道するのはミスリードする意図があるとしか思えません。
統計内容を見ると昨年の減少数は総人口では10万7000人減ですが、日本人の人口だけですと8万1000人(統計表にある%では0、06%減=100年で6%しか減らない計算です)しか減っていません。
在日外国人総数は上記統計によると・・総人口から日本人人口を差し引くと約170万人ですが、その中で特別永住権のある在日朝鮮人を含む朝鮮系は60万弱、留学生等が14万人前後で残りの100万人弱がいわゆる外国人労働者とその家族と思われますが、ここから1年で2万人以上も減ったとすれば、この減少率の大きさこそ注目すべきです。
在日韓国・朝鮮系は不景気になったくらいでは、韓国・朝鮮への脱出する人は稀ですが、(むしろ呼び寄せていることが多いにもかかわらず)60万人前後で何十年も安定しているのは、他方で日本人へ帰化が進んでいるからでしょう。
ところで、厚労省の統計とは別に法務省の外国人登録の統計「(2010年) 国籍別外国人登録者数の推移 法務省」によれば、外国人登録数が2000年末168万6,444人、2007年末215万2,973人、2008年末の221万7426万人と増えていたのが、リーマンショックのあった2009年218万6,121人と約3万人減少していますから、(2010年末現在はまだ発表されていませんが、)その1年後の2010年10月1日の国勢調査による約2万人減は趨勢としては大方合っていることになります。
法務省統計は出入国記録によるものであれば(密入国を除けば)正確でしょうが、統計局と若干時期が違っているとは言え、昨年の国勢調査による外国人人口=総人口−日本人人口との差額数字約170万人よりも約40万人も多くなっています。
(1年分の減少数2〜3万人引いても数字があいません)
国勢調査は自己申告による実態=不法滞在者も含む可能性がありますが、飯場に住み込んでいる不法滞在者が自己申告することは稀でしょうから、法務省統計が、仮に出入国記録の誤差(観光や留学・研修生その他で入ったままで、出て行かないオーバーステイなど)を全部カウントしているとすれば、不法滞在分だけ多くなっていると考えることが可能です。
そこでもう一度、法務省統計を見ると「外国人登録者数」ですから出入国の差額ではなく、正規に登録した人の数に限定されていることになります。
とすれば、不法滞在者数がこの数字・・2008年の221万人等の外国人数に入っていないことになります。   
2010年1月1日の国勢調査の外国人は総人口から日本人人口を差し引くと170万人前後しかないのに、法務省統計では210万人もいる誤差は、結局は正規登録者でも、外国人は国勢調査に協力しない人が多い(・・漢字が読めないなどで・・意味不明でプライバシーを書きたくない・・書けないでしょう・・英語などで対応しているのな?)と言うことでしょうか?

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