輸入規制2とラストベルト地帯

輸入規制に頼ったラストベルトの解説です。
http://www.crosscurrents.hawaii.edu/content.aspx?lang=jap&site=us&theme=work&subtheme=INDUS&unit=USWORK059

ラストベルト (さびついた工業地帯)
イリノイ、インディアナ、ミシガン、オハイオ、ペンシルバニア諸州を含むアメリカの地域は「ラストベルト(さびついた工業地帯)」と呼ばれています。この呼び名は、これらの地域の多くの産業が時代遅れの工場・技術に依存していることからつけられました。
1970年代、激しくなる国際競争への対応策として製造業者がこれらの地域からアメリカの他の地域やメキシコに工場を移転、かつて繁栄していた工業地帯の経済が悪化したことによりこの名称が幅広く使われるようになりました。
これらの地域では、工場閉鎖にともなって失業者が増加し、多くの人々はこの地域を去りました。デトロイト、セントルイス、クリーブランドなどの都市、あるいはインディアナ州ゲリー、オハイオ州アクロンといった比較的小さな都市は、都心が衰退してしまったラストベルトの都市の例です。デトロイトは、現在も世界最大規模の製造業の中心地ですが、製造業が衰退していく中で、製造業への依存を減少することができずにいます。

ただし最近、産業の高度化に施工した企業が現れて持ち直しているようです。
上記によれば、企業自体が適応してラストベルト地帯から別の地域へ逃げ出して国際競争に適合していった経緯がわかります。
輸入規制を求めて古い体質にしがみついていたのは、企業経営者ではなく(新しい分野に挑戦できない?)従業員・労働組合だったようです。
企業経営者の方は古い体質グループを放置して他地域に進出してシリコンバレー等で新たな産業を起こして行ったようです。
古いマンションの修繕改築の話し合い(住民の多くが老人)に時間を費やしているより、近隣にできた新築マンション買い替て逃げて姉妹振りマンションはスラム化一方になったようなものです。
企業の方はラストベルト地帯から逃げていたということは、企業は自由競争の必要性・時代適応必要性を認めていたこと・新機軸の製造業に変身する必要性を認めていたことがわかる・・反対していた主役は、新時代についていけないリストラされる人材多数抱えている労働組合だったことになります。
労働組合の名誉のために書きますと、村落社会や町内会その他すべて団体というものは現状を全体とした運営ですので、新時代に適応できる有能な人材はホンの数%でしょうから、多数に従う民主主義の弱点でもあります。
現状変更になんでも反対するのは、組合の特性というわけではありません。
一般社会は自然発生的に生じていることが多いこともあって(陰であんな格好してとか、あんなことを言ってとか・・白い目で見られる・村社会は窮屈と言われることがあっても)直接規制がなく個々人の自由行動の幅が広い(本人さえ陰を気にしなければ良い)のに対して、組合では何でも「機関決定」というものが幅を利かしすぎて違反の問責?追求できる統制委員会的仕組みががっちり整備されて(左翼系組織も似たような傾向ですが)いる点が大きな違いでしょうか?
ソ連の粛清が有名でしたが共産党支配の中国では党紀違反を理由にある日突然党幹部の消息不明になったりしていますが、粛清支配を基本的体質とするソビエットのDNAを受け継いでいるからでしょうか?
日本では中国のように党紀違反を理由に党から拉致され取り調べを受けるような事態は起きていません(そういう権限がありません)が、組合の機関決定重視姿勢はこれの思想影響を受けているので機関決定の重みは似たようなところがあります。
ましてユニオンショップ制やクローズドショップ制の米国では、労組加入しないとその企業で採用しないし解雇する仕組みですから労組から除名されると職を失う効力があり、異論が許されない仕組みです。
ユニオンショップ制に関するウイキペデイアの説明です。

採用時までに労働組合加入が義務付けられ、採用後に加入しない、あるいは組合から脱退し、もしくは除名されたら使用者は当該労働者を解雇する義務を負う、という制度。雇い入れ時には組合員資格を問わないという点で、組合員のみの採用を義務付ける「クローズド・ショップ」とは異なる。これに対し、労働組合の加入を労働者の自由意思に任せるのが「オープン・ショップ」である。

日本の労働法ではこう言う硬直的システムを取り入れなかったので柔軟経営ができたのですが、日本で唯一の強制加入団体は日弁連と各単位弁護士会でしょうか?
昨今弁護士会の政治活動が増えてくると、強制加入システムに不満を言う若手弁護士が増えてきたのは当然の成り行きではないでしょうか?
任意加入の場合機関活動家?が独走しすぎると一般会員が脱退したり、新規加入が減っていくので組織率がバロメーターになりますが、強制加入だと、過激全学連のように機関活動家が牛耳っているのか多数支持を得ているのかが不明になります。
日本で唯一の強制加入団体である弁護士会の場合、不満な人は会活動参加を敬遠するくらいしかない→その傾向が実質的バロメーターになります。
米d国は自由主義国とは言うものの実際には規律が強すぎて個々人が自由な言動ができない仕組みのようです。
こういう頑迷な組織支配するところから、企業の方が逃げ出します・これがラストベルト地帯になった原因です。
企業にも適地を選ぶ権利があります。
ハンマーで日本製品を叩き壊していた背後の主役は、変化に応じられない労組だったイメージです。
こんなところでやってられないと多くの製造業は中西部工場をそのままにして、(チャイナプラスワンの先行事例?)他の地域で新工場設置・・新条件で募集・雇用するため?に動いたので取り残されたのでしょう。

国を選べる時代2(輸入規制1)

米国は自由競争〜市場開放を主張しながら日本が戦後復興すると繊維〜電気〜鉄鋼〜自動車等々で貿易赤字が増えると日本製品をハンマーでぶち壊すパフォーマンスをしたのが今でも記憶に残っていますが、こんなバカなことをしても衰退を免れることはできません。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35787290W8A920C1000000/

日米自動車摩擦 1970年代から繰り返す歴史 2018/9/27 6:30
米デトロイトなど自動車産業の集積地では、日本車がハンマーで叩き潰される「ジャパン・バッシング」のパフォーマンスが繰り広げられた。

今回の韓国での日本製品不買運動の開始にあたっても日本製品配送用の?ダンボール箱を報道陣の前で踏みつけるパフォーマンスが行われましたが、馬鹿げている点は同じです。
不当な政治力で割高なものを庶民が買わされているならば弱者の抗議活動は正当ですが、輸入品は逆に大幅な冷遇・ハンデイを抱えて競争しています。
① 生産段階で母国生産地と違う輸出先現地の法令適合するための調整
② 右ハンドルを左ハンドルにしたり現地気候風土や現地使用傾向に合うように微妙な調整するなど需要地向きに仕様変更するコスト
③ 長距離輸送のためのコストと発注後納品までの時間がかかる
④ 入国段階での検査手続きや関税がかかる
⑤ 税関手続き等の専門業者の介在
⑥ 販売には系列販売店・アフターサービスの提供等のため一定規模のシステム構築が必要であるが、当初は販売量が少ないために初期先行投資がかさむ
⑦ 異民族への輸出の場合言語環境の違いなど営業活動上のハンデイ

等々のハンデイこそあれ、輸入業者が現地生産者より優遇を受けている不当な関係はありません。
ハンマーで壊すなどのパフォーマンスは、自由競争で負けているのを政治力で市場原理を歪めて現地企業保護を訴えるもの・自由競争反対論の宣伝をしているように見えます。
メデイアは内心「こんなバカなことをするようではアメリカもおしまいだ」いう意図で報道していたのかも知れませんが・・パフォーマンスするグループは、「現地製品が日本製品より劣っていても高く売れるようにしろ!」という主張をしていたことになります。
すなわち、冷蔵庫や車の売れる量が一定量とした場合、輸入制限すれば現地製品がわり高でも一定量まで売れる関係になりますので、輸入制限を求めるのはこういう目的で行っていることになります。
交渉結果を見ると騒動の都度数量制限が決まっていたようです。
上記引用の続きです。

対米自動車輸出台数を制限する「自主規制」を導入することになった。日米間の輸出自主規制は繊維や鉄鋼で前例があった。自動車の自主規制の枠は初年度に168万台。80年の実績(182万台)を下回る水準に設定された。自主規制は93年度まで続くことになる。

米国は自由主義経済の守護者のようなふりをしながら対日関係では繊維〜家電〜鉄鋼〜半導体その他いつも事実上輸入制限して自国民に割高な商品を買わせて来ました。
こういう米国の偽善主張は日米戦争をしかけた時から米国の伝統芸であり、対イラク戦争にもつながっていきます。
日本も農業保護が聖域と称して農産物輸入制限を続けてきましたし、後進国は産業がひ弱なために一人前に育つまでの保護としての関税が認められてきました。
米国の場合、一旦国際優位に立っていた産業老化に対する保護という面でまだ国際合意のない分野ですので二重基準の弊害が目立つのかもしれません。
これから成長する子供を大人と一緒に競争させるのは良くないという・後進国保優遇論理は理解しやすいのですが、世界トップ企業が新興企業の挑戦を受けて衰退していくのを保護する論理・政治が行われれば、新たな利便性を追求する新興企業が生まれにくくなります。
後進国の場合期間猶予をもらう間に成長するチャンスを活かせることが多いのですが(子供が大人になってもみんなが横綱や一流の格闘者にになれませんが、二流の人は二流まで育つ可能性が多いということです)しますが、老化する人が時間をもらってもその間老化が進むだけです。
米国が対日輸入制限をもとめた業界は、例外なく時間猶予の効果なくジリ貧になっていったのは当然です。
老人は大事にされるべきですが、いつまでも権力を握るのは老害になるのと同じです。
鉄鋼製品その他米国企業が輸入規制を求めて政府もその方向へ動くために消費者は一定量しか輸入品を買えない→割高な現地生産品を強制的に買わされる結果になります。
前近代の悪代官と悪徳商人が結託して商品不足にして、価格を吊り上げるような不当政治を国民の多くが本当に求めているのか不思議です。
数量制限は・・消費者だけが損するのではなく生産者も安くて性能の良い繊維・鉄鋼製品、半導体、車等々を使えないと困る・・輸入制限しない国地域の企業に比べて競争力を失っていきます。
米国の対日輸入制限効果は、中西部工業地帯だけに及ぶのでなくアメリカ全土の競争力に及ぶ、輸入制限に頼っているより、新時代適合を進めるしかないというのが全米企業家の思いだったのでしょう。
既存工業地帯での改革は反対者(労働者)が多く無理と見た企業家は、チャイナプラスワン同様に米国内の他地域への新規投資に走ったようです。
これが世界に冠たる中西部工業地帯がラストベルト地帯と言われるようになった原因でしょう。

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