国債の場合満期まで償還する必要がないので、いくら空売りがあっても政府自体は1つも困りませんが、期中の売り浴びせは国債の市場相場を下げる=金利上昇をもたらすので国内金利市場での影響が生じます。
ただし国内資金あまり状態下で空売りをやっても、少しでも(債券相場が下がり)金利が上がれば資金の持って行き場のない国内勢の余剰資金での買いが入りますので、空売りは失敗に終わります。
空売りが成功するのは資金不足状態・・長期的国際収支赤字が続いている結果対外純債務国に転落している場合に限られます。
国債破綻問題・・心配があるとすれば長期的国際収支次第であって、国債の残高の多寡に関係がないと繰り返し書いている所以です。
長期的国際収支赤字継続の結果、もしも国内資金不足状態に陥ると、政府にとっては満期償還資金を手当てするための借換債を発行したくとも、その引き受けが滞る・・あるいは額面を大幅に割り込まないと引き受け手がなくなる・・金利負担が高まる心配がありますが、この場合でもその分を日銀引き受けにすれば解決します。
日銀直接引き受けの場合、その紙幣が政府に入り、政府が満期の来た国債の支払に回すので結果的に同額の紙幣が市中に多く出回ります。
これが従来理論では紙幣大量発行は紙幣価値を下げ(インフレ化)ますが、我が国の場合、消費成熟国ですので紙幣が多く出回っても物価が上がらず、再び銀行へ還流して行くか海外流出して行くだけです。
この辺の理は、2012/03/30「日銀の国債引き受けとインフレ3」2012/03/31「日銀の国債引き受けとインフレ4」前後、最近では2012/06/19「新興国の将来11(バブルとインフレ1)」のコラムで書きました。
国際収支赤字継続の場合,その赤字分だけ紙幣が足りなくなるので貿易決済に使われて、これがひいては円安に連鎖して行きます。
貿易黒字下では紙幣が還流した銀行では、低成長経済のために投資先がない・・使い道がないので会亜害で資金不足で困ってるところへ貸し付けるか(我が国は最低金利ですから海外勢は日本で借りて高金利の海外で運用すれば儲かります)国債を買うしかないので、次からは国債引き受け資金不足が起きません。
18日に書いているように中央銀行の金利政策は結果の追認または先取りでしかなく、今では金融政策と言えるのは、量的緩和くらいしかない状態です。
しかし、量的緩和の一環として発行済国債を市中から買い上げる日銀のいわゆる買いオペはしばしば札割れ・・応札不足になっているのは、資金余剰のために市中では国債を日銀に買って貰って資金を獲得する必要がない状態を表しています。
タマタマ今日の日経朝刊15面には,札割れが解消しつつあることを紹介していますが、これは日経新聞の解説・・日銀の応札条件変更によるだけではなく,ここ1年程度貿易赤字が続いている結果,我が国の資金余剰が緩んで来た(余っている資金が減って来た)経済状態を表しているのかも知れません。
これまで日本は国内不況とは言え,長期に及ぶ国債収支黒字の継続の結果,民間では資金余剰で困っているのに量的緩和をしても余計だぶつくだけで意味がなかったことを表しています。
以上が長年資金余剰であった我が国の現状ですが、もしも今後長期的国際収支赤字が続いた場合、輸入代金決済資金不足状態に陥りますから、国内企業が輸入代金決済のために銀行から借りる需要が継続的に発生します。
貿易収支赤字分だけ紙幣が戻って来ない・・市場に出たままになり、この円でドルを買うので円相場がそれだけ下がります。
国際収支赤字によって円相場の下がった分に比例して輸入代金が上がるので、結果的に輸入インフレになります。
マスコミでは頻りにデフレ脱却が必要・・インフレ目標設定が必要などと騒いでいますが、グローバル化時代では1国だけの金利政策で出来るものではありません。
国際収支が黒字である限り円は上がり続けるしかなく、ひいては輸入品は下がり続けますので、国際収支赤字にならない限り輸入物価が上がらない仕組みです。
デフレ脱却期待論・・最近では緩やかなインフレ目標論は、国際収支の赤字定着期待論・一種の亡国期待論と結果が同じになります。