中国は「アジア危機の教訓」と言う名目で、ホットマネー(短期資金)の流入(実は流入はいくらでも良いのですが、流出を恐れているのです)を厳しく規制していましたが、自由に任せる・・流出を恐れると言うことは、公表とは違う自国経済の脆弱性・信用力の低さを誤摩化そうとする意識があることを自白しているようなものです。
ポンド危機(防衛)の事例を紹介したことがありましたが、統計や為替・金利水準が実態経済と違っている場合に、ジョージ・ソロス氏のようなファンドから、大掛かりな売り浴びせを受けると大恥をかきます。
国民の海外移住を規制しているのは、自国政治に関する自信のなさの現れです。
報道規制している国は、国民に知られると、まずいことをしている国です。
「自由に撤退して良いですよ」と言って、初めて安心して資本も観光客も入れますが、「一旦入ったら最後無事に出られないぞ!」と言われたら誰でもおそろしくなるでしょう。
デフォルト危機の本質は危機を察知したホットマネーの動きがキッカケになるだけであって、ホットマネーさえ規制すればデフォルトを防げるのではありません。
ホットマネー規制は「体温計さえなければ熱が出ているか分らないだろう」と言う論理みたいですが、本来は借換債発行がどうなるかにかかっています。
中国では厳しい規制にも関わらず、貿易黒字を装った資金流入が大きかったことが(相手国の赤字額と中国の黒字額があわないことから)この数年以上前から明らかになっています。
この結果、中国の外貨準備には(統計誤摩化しの外に)貿易黒字によるものの中にホットマネー流入分が多く入っていたことが一因になり、(最近問題になっている個人資金国外流出にはホットマネーが紛れているでしょう)流入分だけ危機を察知すると流出が増えることになります。
中国は表向き禁止で輸入代金名目等で入っているので、ホットマネーの流入量については実態不明ですが、(反日暴動後資本流入が減少しても増加率が下がっただけで結果的に流入超過であったとの発表にも拘らず)2007年以降29兆ドル(この数字の翻訳に誤りのある可能性があるとして)も中国の借入金が増えたと言うことは、資本流入による補填では間に合わないほどの巨額の資金流出に直面していたことが推定されます。
本来ホットマネーが逃げるときは相場値下がり傾向のときですから、10万ドルで買った債券(やビル・マンション)が5万ドルに下がって逃げてくれれば中国人が半値で買い戻せるので、放っておいた方が得します。
(日本企業が捨て値で設備を売却して撤退している例を書きました)
ホットマネーが出て行くならば出て行かせれば良い・・その分外貨準備が減少するだけですが、借金せざるを得なかったのは何故でしょうか?
ホットマネーの流出の場合、株式や公社債等→人民元が大幅下落してしまうので、「ホットマネーが勝手に損すれば良いのだ」と放置できません。
買い支えた場合・・これの集約された取引が通貨下落に対する政府買い支えです・・これをやるとたちまち巨額の外貨準備金が出て行きます。
国内業者等の仕事がない場合も「企業はそう言うものだ・うまく行かなければ倒産すれば良い」と放っておけないので、公共工事等による財政支出増大・・一種の買い支えによって政府資金不足が起きた穴埋めとの複合要因が対外負債増大の原因だろうと推測するのが合理的ではないでしょうか?
リーマンショック直後の4兆元の国内財政出動決定までは良かったのですが・・当時は多分相応の外貨準備=自己資金があったでしょうし、不足分については潤沢な外資流入継続を当て込んでいたのでしょう。
5月31日日経新聞朝刊3pには、4兆元の財政出動表明の翌年・09年にはGDP(一応統計によれば)比で約3%弱の財政赤字になってしまっていると紹介されています。
中国では大事故でも20名以上の死者は認めないから、どんな大事故でもそれ以上の死者発生の事故発表はあり得ないと言われていました。(ただし6月2日報道の長江の客船沈没事故(500名弱の乗員)では乗客数を誤摩化せないので、限定しない様子です)
成長率も7%が死守ラインと決めれば何年もマイナス成長を隠してきましたし、今もニューノーマルと称して6・7%前後の成長を予定しています。
昨日・6月8日の日経夕刊3pによれば、中国の貿易輸出入総額が今年1〜5月合計で前年比8・0%減と出ています。
ちなみに対日貿易(輸出入合計)はこの間11、5%減になっています・・これも反日暴動以降毎年3割前後減少していましたから、減った分から更に11・5%%減り続けていると読むべきでしょう。
日本との貿易が減った分欧州で増やしているかと言うと、対欧州でも7%減と出ていますので、マスコミが言うように、欧州(技術)が日本の穴埋めで増やすどころか、欧州との取引も減少していることが分ります。
相手国によって違いますので、個別に取り上げてもキリがないですが、中国の世界全体との貿易総額が上記のとおり8%減(本当はもっと減っているかも?正確性はいつも書くとおり分りません・・)の結果です。
国によって自給率が違いますが、経年変化が傾向を表すことは否めませんので、貿易総額の前年度比増減はその国の経済活動の活発度の辺かそのままを表すものと言えるでしょう。
大分前の数字は忘れましたが、中国ではここ何年も貿易総額の前年比大幅減が続いていると思いますが、(資源輸入大幅減がブラジル等の資源国経済の変調を来していることは、顕著なことです)経済活動率がトータルで8%減っていても、成長率6・7%前後の主張はそのままですし、政府が決めたら成長率もそのとおりになると言う不文律(数学の公式のようなもの?)があるのでしょう。
上記5月31日の記事によれば、財政赤字も3%以内と言う不文律があるようです。
これを守って行くために、政府債務の過小発表をするか、GDPの水マシ発表に頼って来たのでしょうか。