上昇率が相互に似たようなものになった場合、均衡を破るのは、産業革命のような大規模な革新的発明発見がどこかの国で起きたときでしょう。
ただ、グロ−バル化が進んでいるのでどこかの国で画期的技術を発明・発見しても世界中に直ぐに伝播しますから、先行者利益の期間が短いので、18〜19世紀型の先進国と後進国に分かれるような大きな格差は生じないと思われます。
例えばアイポド・アイフォーンが開発されてもアメリカだけで何十年も閉鎖的に進歩する時代ではありません。
05/26/07「現地生産化の進行と加工貿易の運命1(先行者利益の寿命)」で古代には文明の伝播に数千年かかっていたの次第に短期化されて来た経過を紹介しました。
上記発展段階の理解によれば、韓国や中国と日本の賃金格差は韓国や中国が近代産業に目覚めて発展を始めたときには妥当だったかも知れませんが、その後急激な発展を始めた以上は従来の賃金格差は大きすぎるので、急激な発展に合わせて賃金格差も急激に縮まるのが本来です。
中国が改革開放を始めた頃には日本と中国の賃金格差が3〜40倍あったように思いますが、今では約10倍の格差に縮まっていますが、文化力・技術力の差がそれだけあれば良いのですが、そうでなければ現状はまだまだ縮小不足となります。
(対中貿易、対韓貿易では我が国だけが?輸出超過国ですから、これで良いのかも知れませんが・・・)
アメリカの場合は、リーマンショック後のドル急落や国内人件費下落(26日に書いたようにGMに関しては倒産前の4分の1まで下がっているとのこと)によって賃金格差縮小が充分に進んだということでしょうか?
ちなみに今でもアメリカの一人当たり収入は中国の一人当たり収入をはるかに凌駕していますが、これは海外利権・石油採掘権・収益の還流等があって、これを国民の数で割るから大きくなっているだけで、労働者の賃金水準と一人当たり収入は関係がありません。
同じことは日本の一人当たり収入算出にあたっても気をつけるべきことです。
GMの好調は中国での販売好調に由来するものですが、これら投資収益があって企業は大もうけしたのであって、アメリカ国内のGM労働者の生産性にこれをカウントするとややこしいことになります。
企業の海外での大もうけが労働者の収入増に結びつかないので、アメリカ国内では格差が余計広がる仕組みです。
この点は我が国でも貿易収支の黒字よりも所得収支の黒字の方が大きくなって来ると、労働だけに所得源を頼る人は所得が総体的に低くなりがちであることを、05/26/07「キャピタルゲインの時代16(国際収支表1)」までの連載で書きました。
新興国と先進国との賃金格差の縮まり方が新興国の技術発展のスピードに追いつかないので、その間日本や先進国の貿易収支が赤字に傾く・・国際競争力が低下していくのは仕方がないことです。
2月27日の例で言えば、点数差が初期のころは急激に縮まるのに対して賃金差が縮まり難い・・・中国の方はいくらでも奥地から労働者が供給されるので、技術力アップに見合う賃上げが簡単に進みませんでした。
(最近様相が変わってきましたが・・・)
先進国の方は容易に賃下げが出来ない(下方硬直性)のが普通ですが、2月26日のブログの終わりころに書いたようにアメリカではレイオフが簡単(賃金相場も市場原理が貫徹し易い)なこと急激なドル安で、対外的な賃金水準引き下げに成功していることが却って格差社会の問題を引き起こしています。
GM人件費が倒産前の4分の1に下がっているというのですが、これを円に換算すれば分りますが大変な下落状況です。
1ドル120円前後のリーマンショック直前の給与水準が仮に月額25万円前後であったと仮定して計算すればアメリカ労働者の悲惨さが直ぐに分ります。
ドルの下落の結果今は1ドル約80円ですから、円換算で月収11〜12万円だったのが8万円、24万円だったのが約16万円に下がっていることになります。
為替換算だけで約16万円になっていたのが、更に国内で4分の1に下がっているとすれば、月収4万円前後に下がっていることになり大変なことです。