昨日見た現行の出入国管理難民認定法でも、「更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り」と限定的記載で、更新は「特例あつかい」です。
相当の理由の存在は申請側の主張立証責任となりますので、法文上は大臣裁量の幅が大きそうです。
ただ、ちょっと考えれば分かるように家族が日本人で母親だけ外国人の場合、よほどのこと(主張立証責任は大臣の方になります)がない限り更新申請には、相当の理由があることになるでしょうし、その他事業経営者や駐在員任期延長(担当プロジェクト進捗状況)の必要など様々な事情が該当することになりそうです。
以下の論文中には、更新拒否や入国拒否用ではないものの、退去強制事由に関するガイドラインが紹介されていますので参考までに引用しておきます。
http://law.meijo-u.ac.jp/staff/contents/64-4/640401_kondo.pdf
自国に入国する権利と在留権:
比例原則に反して退去強制されない権利
近藤敦
日本の入管の行政実務上、 退去強制事由に該当する場合でも、 法務大臣が在留を特別に許可するかどうかの判断に際しては、2009 年に改訂された 「在留特別許可に係るガイドライン」 において 「特に考慮する積極要素」として、 以下の 5 項目が示されている。
(1) 当該外国人が、 日本人の子又は特別永住者の子であること
(2) 当該外国人が、 日本人又は特別永住者との間に出生した実子 (嫡出子又は父から認知を受けた非嫡出子) を扶養している場合であって、次のいずれにも該当すること
ア 当該実子が未成年かつ未婚であること
イ 当該外国人が当該実子の親権を現に有していること
ウ 当該外国人が当該実子を現に本邦において相当期間同居の上、 監護及び養育していること
(3) 当該外国人が、 日本人又は特別永住者と婚姻が法的に成立している場合 (退去強制を免れるために、 婚姻を仮装し、 又は形式的な婚姻届を提出した場合を除く。) であって、 次のいずれにも該当すること
ア 夫婦として相当期間共同生活をし、 相互に協力して扶助していること
イ 夫婦の間に子がいるなど、 婚姻が安定かつ成熟していること
(4) 当該外国人が、 本邦の初等・中等教育機関 (母国語による教育を行っている教育機関を除く。) に在学し相当期間本邦に在住している実子と同居し、 当該実子を監護及び養育していること
(5) 当該外国人が、 難病等により本邦での治療を必要としていること、又はこのような治療を要する親族を看護することが必要と認められる者であること
上記ガイドライン該当の場合に、政治活動したという不明瞭概念で相当性拒否の理由にするのは、今の時代、無理があるのではないでしょうか?
政治という定義の曖昧さによるのですが、政治、経済学者の訪日講演やシンポジューム参加も政治に与える影響が大きいですが、政府が世界の有名学者から消費税増税延期の箔付けに聞くのは良くて、野党系が反政府運動のために聞くのが違法あるいは在留更新拒否や次回の入国拒否理由になるのでは、法の基準がない・憲法保証の範囲かどうかのテーマ以前に基準が恣意的すぎて法治国家と言えません。
例えば以下の通りです。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46435
消費税の増税延期をめぐって始まった茶番劇
スティグリッツもクルーグマンも日本の格差を知らない
2016.3.25(金) 池田 信夫
政府は3月、「金融経済分析会合」という異例の会議を3回も開いた。そのうち第1回に呼ばれたのがジョセフ・スティグリッツ、第3回はポール・クルーグマンというノーベル賞受賞者で、彼らはともに「消費税の増税は延期すべきだ」と提言したと伝えられている。
以上のとおりですから、今どきマクリーン判決を現在の基準として持ち出すのは無理があるでしょう。
なぜ最高裁判決が変更されてないか?と疑問に思う人が多いでしょうが、裁判所は訴える人がいなければ裁判しない・・裁判になれば負けるのが明白すぎて政府が政治活動を理由に拒否しないとすれば、裁判にならないから判例変更もない可能性があります。
政策的に考えても短期ビザ入国者が、激しい政治活動しても許可取り消しするまでもなく、帰ってしまってもデータ化しておけば、2回目の訪日時に入国拒否すれば間に合う(・・・殺人や傷害窃盗など具体的犯罪行為がない程度であれば)その程度のゆるい対応で十分ということでしょう。
入国拒否の場合トランプ政権のアラブ諸国に対する入国制限措置が問題になったように、事前に決まった基準に該当しないと、法的安定性を害する問題が起きます。
トランプ政権の入国拒否は、事前発給済みのビザ所持者が米国空港に着いてからの入国拒否ですから問題が大きかったようなイメージですが詳細までは知りません。
ビザ発給許否は裁量の幅が広そうですが、具体的政省令を知りませんが、法レベルでは以下の通りです。
出入国管理及び難民認定法 (昭和二十六年政令第三百十九号)
(上陸の拒否)
第五条 次の各号のいずれかに該当する外国人は、本邦に上陸することができない。
1〜13省略
十四 前各号に掲げる者を除くほか、法務大臣において日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者
2 法務大臣は、本邦に上陸しようとする外国人が前項各号のいずれにも該当しない場合でも、その者の国籍又は市民権の属する国が同項各号以外の事由により日本人の上陸を拒否するときは、同一の事由により当該外国人の上陸を拒否することができる。
(上陸の拒否の特例)
第五条の二 法務大臣は、外国人について、前条第一項第四号、第五号、第七号、第九号又は第九号の二に該当する特定の事由がある場合であつても、当該外国人に第二十六条第一項の規定により再入国の許可を与えた場合その他の法務省令で定める場合において、相当と認めるときは、法務省令で定めるところにより、当該事由のみによつては上陸を拒否しないこととすることができる。
14号では「国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがある」「と認めるに足りる相当の理由がある者」に対して上陸拒否できるのですが、「何が国益か」「公安を害するか」は人(政治的立場)によって正反対になることの多い概念です。
上記消費税増税可否をはじめとして、児童売買春の実態調査・発表のために訪日して調査発表するのは国益に反するでしょうか?
いずれも政治的立場によって有利不利の意見相違する分野ですし、児童売買春でいえば、国内の実態を知ることは、日本社会にとって有益なことですが、酷い実態が(出るのを)を知られたくない勢力にとっては、国益に反することになるのでしょう。
反対勢力は、事実に基づかない虚偽発表が国民や世界の対日評価を歪めるのが良くない・・あるいは事実としてもその事実は国内にとどめるべきで海外発表するのは国益に反するということでしょうが、虚偽かどうか国家秘密にすべきかどうかは思想表現の市場→法で決めて行くべきでしょう。
公安を害するかの基準も同様で、例えば沖縄反基地闘争に韓国人が検挙されていることが国会質疑によって知られていますが、日本国益のためにやっているかどうかは、立場によって違うでしょう。