自治体の拒否権11(自衛隊出動要請2)

自衛隊が自発出動権限内行為としてで折角伊丹駅まで出動しても、その先で燃え盛る火の手・・大量の倒壊家屋が見えていても?動けなかった現実をどう評価するかです。
単に当時の社会党政権非難で終わらせず、(社会党がなくなっても)制度をそのままにしておいて良いのかの議論が必要です。
「10:10 兵庫県知事の名で派遣要請(実際には防災係長が要請。知事は事後承諾)」とあるように結果から現場係長の一存(自己責任覚悟・・国士)で、知事の名を偽って?出動要請したので、待ちかねていた自衛隊が動き出せたと言う顛末らしいです。
知事の依頼はその9時間以上も遅くなっていますが、知事が故意に遅らせたのではなく情報寸断の事態下で正確な情報が入らなかったことが原因らしいですが、手続を踏んだ報告がなくとも知事本人が震災現場にいる以上は、登庁途上の目撃・・目の前の倒壊家屋などの惨状を体験している筈です。
(この数日書いているように現場尊重の制度は自治権や主権重視・・政府施策に楯突くためにあるのではなく、現場直感・緊急事態把握の重要性を基礎にするものですから、緊急時に官邸の意向を窺っているのでは、本末転倒・自治の名が泣きます。)
民間のダイエー社長や外国政府の方が早く動いているのと比較しても、当時の社会党内閣の動きが遅過ぎる点が異常です。
そこには自衛隊アレルギー・・余程のことがないと依頼したくない」と言う骨の髄までしみ込んだ思想的影響があったからではないか?と疑われても仕方がないでしょう。
社会党やこの流れを汲む民主党が、大災害対応が粗末過ぎて両党とも消滅(民主党は改名?)してしまいましたが、自衛隊敵視体質がしみ込んだ世代が、非武装平和・安保反対論を基礎にして、国防・自衛隊関連全てに情緒的に反対している印象です。
今年の熊本地震でミノモンタ氏が、(未だにマスコミ内ではこの情緒共有が地位維持の基礎になっている印象)何の根拠もなく情緒だけで自衛隊をツイッターで非難して、総スカンを食ったのもこの延長上で理解すべきです。
もともと政府や知事の依頼不要の制度設計であれば、知事や官邸の動きが遅過ぎる批判がかなり緩和されていたでしょう。
行政府のやるべき災害対応は、行政対応中心・・どの程度の緊急食糧や災害住宅を用意するか災害指定をどうするかなどですから、実は寸秒を争うことではありません。
このときの社会党政権のお粗末対応批判で政権寿命を縮めたことから、2011年大震災時の民主党菅政権は、迅速対応し過ぎて?官邸が現場に口出し過ぎたことが逆に問題になっています。
社会党に限らず左翼系は共産圏型を理想としている関係で、政権批判目的では、公害とか情報公開などを主張していますが、本音・体質は下部に権限を委ねる経験が乏しい体質が露呈された印象です。
このときもニッポン民族の危機を救ったのは、現場判断・現地工場長が官邸の命令?(東電幹部がそのときの官邸のやり取りをソンタクして注水をやめるように連絡)注水中止命令に表向き応じておいて、実際には(自己責任を覚悟して)注水継続したことによって、大事に至るのを防げたことが分っています。
このように日本の現場はしっかりしているのです。
現在の政治テーマは菅総理が直截注水中止を命じなかったとしても、そのときの総理の剣幕・・雰囲気で同席していた東電派遣幹部は中止をソンタクするしかなかったのかと言う程度のことです。
(以下の06:35 伊丹駅への出動は近傍条件で6時35分には自発出動出来ているのに正式依頼が「19:50 兵庫県知事、海上自衛隊に災害派遣要請」ですからこの間13時間以上もその他部隊は指をくわえて待機しているしかなかったことになりますが、現場係長の機転による(県知事名の)出動要請でその9時間前に実際には出動開始していたので実害がなかったことになります)
時系列データが出ていますので(勿論私にはこのデータが正確かどうかまでは分りませんのでそのつもりでお読み下さい)以下引用しておきます。
https://www35.atwiki.jp/kolia/pages/1209.html阪神大震災の時系列
(引用元 )}
1995年(平成7年)1月17日
05:46 地震発生
05:50 陸自中部方面航空隊八尾基地、偵察ヘリ発進準備。
05:50 第三十六普通科連隊(伊丹)営舎内にいた隊員約三百人による救援部隊編成開始
06:00 CNNワールドニュース、トップニュースで「マグニチュード7・2。神戸で大地震」と報道。
06:00 村山起床。テレビで震災を知る。
06:20 テレビで急報を知ったダイエー中内功社長出社
06:30 百里基地、偵察のためRF4発進検討するも断念。4ヶ月前北海道東方沖地震でRF4が墜落、社会党の追及で当時の指揮官が更迭されたため。
06:30 中部方面総監部非常勤務体制
06:30 村山、園田源三秘書官に、電話で、状況把握を指示(園田本人は「そのような事実は無かった」と否定)。
06:30 警察庁が地震災害対策室を設置、大阪、京都、奈良などに機動部隊の出撃命令を出す
06:35 第三十六普通科連隊(伊丹)、倒壊した阪急伊丹駅へ伊丹署の要請で先遣隊出動
06:50 陸自第3特化連隊(姫路)非常呼集
07:00 スイス災害救助隊、在京スイス大使館へ、日本政府への援助申し入れを指示
07:00 金重凱之秘書が国土庁防災局に電話で状況確認し、村山に「特にこれといった情報は入っていない」と報告。
07:14 陸自中部方面航空隊八尾基地、偵察ヘリ1番機発進。高架倒壊等の画像撮影。出動要請がないため訓練名目。
07:30 村山総理に一報
07:30 陸自第3特化連隊(姫路)、県庁へ連絡部隊発進
07:35 第三十六普通科連隊(伊丹)、阪急伊丹駅へ48人応援
07:50 石原信雄官房副長官、川崎市の自宅を出発。
07:58 阪急伊丹駅救助活動48人
08:00 官邸、防衛庁に、派遣要請がきているか確認するも、要請無し。
08:00 ダイエーが地震対策会議。中内社長、販売統括本部長にヘリコプターで神戸へ飛ぶよう指示。おにぎり、弁当など1,000食分と簡易衛星通信装置を搭載。
08:11 徳島教育航空郡所属偵察機、淡路島を偵察。「被害甚大」と報告。
08:20 西宮市民家出動206人
08:20 貝原知事、職員の自動車で県庁到着。対策会議開くも派遣要請出さず
08:26 総理、官邸執務室へ(予定より1時間早い)。テレビで情報収集。
08:30 セブンイレブン災害対策本部、被災地店舗へおにぎりをヘリ空輸開始。
08:45 村山「万全の対策を講ずる」とコメントを発表。
08:50 韓国政府、「日本関西地域非常対策本部」(本部長・金勝英=キム・スンヨン=在外国民領事局長)設置
08:50 石原信雄官房副長官到着。「現地は相当酷い」とコメント。
08:53 五十嵐広三官房長官「非常災害対策本部を設置し小沢潔国土庁長官を現地に派遣する」と発表。
09:00 呉地方総監部、補給艦「ゆら」が神戸に向けて出港。
09:05 国土庁が県に派遣要請促す
09:18 村山、廊下で記者に「やあ、大変だなあ」、視察はしないのかとの質問に「もう少し状況を見てから」とコメント。
09:20 総理国土庁長官、月例経済報告出席。地震対策話題無し
09:40 海自輸送艦、非常食45000食積み呉出港
09:40 神戸消防のヘリコプターが上空から市長に「火災発生は20件以上。市の西部は火災がひどく、東部は家屋倒壊が目立つ」と報告。市長は直ちに県知事に自衛隊派遣を検討するよう電話で要請。
10:00 村山、月例経済報告終了後廊下で、記者の「北海道や東北と違い今回は大都市での災害だが、対策は?」との質問に「そう?」とコメント。
10:04 定例閣議。閣僚外遊報告。非常対策本部設置決定。玉沢徳一防衛庁長官には「沖縄基地縮小問題で(上京してきている)大田昌秀知事としっかり協議するように」と指示。震災についての指示なし。
10:10 兵庫県知事の名で派遣要請(実際には防災係長が要請。知事は事後承諾)
10:15 中部方面総監部、自衛隊災害派遣出動命令(村山の指示で3000人限定。到着は2300人)
10:25 姫路の第3特科連隊の幹部2人がヘリコプターで県庁に到着、県災害対策本部の会議に参加
11:00 村山、廊下で会見。記者の「総理が現地視察する予定は?」との質問に、「状況見て、必要があればね」。「総理は行く用意はありますか?」、「そうそう、状況を見て、必要があればね」。
11:00 村山総理、「二十一世紀地球環境懇話会」出席。「環境問題は国政の最重要課題の一つとして全力で取り組んでいく」と発言。
11:00 京都機動部隊が兵庫入り。
11:15 村山、廊下で記者に、山花貞夫前社会党委員長の新党結成問題に関して、「山花氏は自制してもう少し話し合いをして欲しい」とコメント。
11:15 非常対策本部設置(本部長・国土庁長官の小沢潔)
11:30 非常対策本部第1回会議
11:34 五十嵐官房長官、記者に社会党分裂問題を聞かれ、「それどころじゃない」と発言し首相執務室入り。現地で被災した新党さきがけ高見裕一からの電話情報を元に、村山に事態の重大さを力説。
12:00 新党さきがけ高見裕一、現地から官邸に電話。自衛隊増員要請するも、村山「高見は大げさだ」と冷笑
12:00 政府与党連絡会議中、五十嵐官房長官が村山に「死者203人」と報告。村山「え!?」と驚愕。
12:48 淡路島・一宮町役場の中庭に自衛隊ヘリ三機が到着。隊員がオートバイで被害調査を実施。
13:10 渋滞に阻まれていた自衛隊第三特科連隊215人が到着。救助活動を開始。
13:30 防衛出動訓令発令検討するも断念
13:30 大阪消防局隊応援部隊到着
13:50 社会党臨時中央執行委員会が「党内事情より災害復旧を優先すべき」として、山花氏の離党届を保留。
14:07 村山総理、定例勉強会出席
14:30 小沢国土庁長官、現地空中視察へ
15:36 河野洋平外相「総理は人命救助と消火に力を入れるようにといっていた。総理が現地に行くのは国土庁長官からの報告があってからのようだ」とコメント。
15:58 村山、廊下で記者の「改めて聞くが、総理が現地に行く可能性は?」との質問に「明日、国土庁長官から現地の状態を聞いてな」とコメント。
16:00 村山総理、地震後初の記者会見。「関東大震災以来、最大の都市型災害だ。人命救助、救援の万全を期したい」、「近く現地入りする」(初めて現地入りを明言)。5分で終了。
18:00 補給艦「ゆら」が姫路港に入港。緊急物資を積載し、神戸に向かう。
19:50 兵庫県知事、海上自衛隊に災害派遣要請
21:00 兵庫県知事、航空自衛隊に災害派遣要請

自治体の拒否権10(自衛隊出動要請1)

アメリカの大洪水被害などでは州兵が先ず出動しそれでも間に合わない場合、州知事の要請で連邦軍が出動する仕組みらしいですが、これはこれまで書いているように元々は独立主権国連合の本質・歴史を前提にしている制度です。
各州が自前の軍を保持している以上は当たり前のことで、県単位の軍隊などを有していない日本に当てはめて主張すること自体が非常識と言うか、牽強付会のそしりを免れないでしょう。
独立国同士では・・日米安保条約があっても目の前で攻撃されている緊急的応援を出来ても、大規模出動するには日本政府の応援依頼があってから出動する仕組みになっているのと同じです。
日本の都道府県は元々独立国が日本政府樹立に参加したのではなく、政府が統治の都合で各地を線引きしたものに過ぎませんから、これにアメリカの州の権限を当てはめるのは土台無理です。
学校で「廃藩置県」と習うので、藩がそのまま県になった印象を持っている人が多いと思いますが、例えば千葉県でも最初に小さな県がいくつも作られて、その後組わせを変えたりして、漸く今の県域が出来上がったことを明治の地方制度のテーマで紹介したことがあります。
アメリから日本独立回復後もアメリカ法の貫徹を目指す勢力が強かった結果、大災害が起きても県知事の要請がないと自衛隊が救援出動出来ない現行法が出来上がっているばかりか,法の運用においても出来るだけ自衛隊を出動させない思想が強固でした。
以下アメリカの州と県とが性質が違う矛盾が露呈した・・神戸大震災の経験を紹介して問題点を見て行きます。
神戸(阪神淡路)大震災では、兵庫県知事による自衛隊出動要請が遅過ぎた批判がありました。
自衛隊法では、以下のとおり知事要請が(原則として)必須要件になっています。
(要請による治安出動)
自衛隊法(昭和二十九年六月九日法律第百六十五号)
(災害派遣)
第八十三条  都道府県知事その他政令で定める者は、天災地変その他の災害に際して、人命又は財産の保護のため必要があると認める場合には、部隊等の派遣を防衛大臣又はその指定する者に要請することができる。
2 防衛大臣又はその指定する者は、前項の要請があり、事態やむを得ないと認める場合には、部隊等を救援のため派遣することができる。ただし、天災地変その他の災害に際し、その事態に照らし特に緊急を要し、前項の要請を待ついとまがないと認められるときは、同項の要請を待たないで、部隊等を派遣することができる。
3  庁舎、営舎その他の防衛省の施設又はこれらの近傍に火災その他の災害が発生した場合においては、部隊等の長は、部隊等を派遣することができる。
4  第一項の要請の手続は、政令で定める。
要請が遅かったか早いかの議論よりも、自治体の要請がないと自衛隊が自発的に動けないシステム・現行法制度や安易に?依頼すると政治責任追及を受ける雰囲気造りをして来たこと自体を問題にすべきです。
明日のコラムで当日の時系列(ネット引用ですので正確かどうか不明)を紹介しますが、これによると、「06:30 百里基地、偵察のためRF4発進検討するも断念。4ヶ月前北海道東方沖地震でRF4が墜落、社会党の追及で当時の指揮官が更迭されたため。」
上記は、特定立場の解説かも知れませんが、神戸震災当時の知事判断には、当時の社会党政権による自衛活用に対する抑制姿勢の影響があったように見えます。
ところで、自衛隊の自発的出動を認めるとどう言うマイナスがあるのかと言う点ですが、自衛隊が自発的に災害出動し、あるいは知事判断が過大過ぎて災害規模が想定よりも小さかったとしても、どのような社会的損害を心配して厳重な縛りを掛けているのかすら分りません。
火災事故で数台の消防車で足りそうな小さなボヤ・・路地周辺に10数台も集まっているような素人から見れば、無駄そうな事例が時おり見かけますが・・。
消防車が多過ぎてもコストの工夫論だけであって、政治責任まで起きそうもないように思えますが・・・。
民主的控制が必要としても、事後的検証システムを整えておく方が合理的です
災害救援のためでも他国軍が勝手に入って来るのは絶対に許されないのは分りますが、自国軍による救援活動まで何故厳重に縛り付ける必要があるのかの疑問ですが、・・自衛隊を敵視する基礎的思想が蔓延している中で法制度が出来上がってしまったのではないでしょうか?
政府や知事の危機管理能力をマスコミが批判する傾向がありますが、政治家は危機管理の専門家ではありませんし自治体職員も日常業務があって、危機管理のために常時情勢監視する仕組みではありません。
各企業の防災管理体制も同じで、支店長をトップに、(兼任)◯◯と言うシステムが普通で、専門職が常駐する仕組みではありません。
防災担当県職員も被災地域に居住している限り一般市民同様の被災者であって独自の情報源などありませんから、瞬時決断を要する危機発生時には彼らの登庁(登庁経路の多くが寸断されています)を待って,漸く一人二人登庁しても彼らが独自情報を持っていない(せいぜい登庁途上の被害目撃情報くらい)・緊急判断するコト自体無理があります。
緊急事態即応には、24時間態勢で寸秒の切れ目もなく危機管理情報を把握している危機管理の専門組織・・(即時に偵察機を飛ばすなどの即応体制のある)軍や警察の瞬発的決断に頼るしかないのではないでしょうか?
神戸の大震災では、地震発生後13時間以上も経過して漸く自衛隊出動依頼していますが、航空自衛隊出動依頼がさらに1時間以上遅れています。
家屋・電柱倒壊などで陸路からの救援が難しい状態が早くから報道動画等で判断出来た筈ですが、知事としては部局を経た報告を待っていたのかもしません。
(自衛隊が早くから偵察機を飛ばすなど情勢分析が進んでいたのに対して、(行政府・知事にはそう言う手段がないでしょう)
空からの救援としてどう言うことが出来るかなどの技術的判断まで、専門外の知事が何故判断する必要があるのかも疑問です。
他方自衛隊の緊急対応を見ると、神戸震災では、「06:35 第三十六普通科連隊(伊丹)、倒壊した阪急伊丹駅へ伊丹署の要請で先遣隊出動」とあるように「05:46 地震発生」発生後1時間以内に対応しています。
これは自衛隊法83条3項で駐屯地の近傍には自発的に出動出来る条項を利用したようです。
それ以上の大規模出動には知事の依頼がなくて出動が遅れてしまったと言う流れです。
上記のとおり、ソモソモ何のために自発的緊急出動が原則許されないのか?自民党との連立政権成立までの社会党が、自衛隊違憲論を強硬に主張していたことが原因になっていることが明らかです。
大震災連続の結果、この種ドグマは次第に勢いを失っています・・ドグマに固執する(確かな野党)社会党消滅→社民党支持層激減の背景です。
私たち世代にとっては戦後約50年間2大政党の1つであった社会党の党是は誰もが知っている常識ですが、次世代では最早歴史の一部になっていて知らない方もいると思いますので、念のため当時の社会党の憲法意識(非武装平和論・自衛隊は違憲存在と言うドグマ)を紹介しておきます。
以下によると連立参加まで社会党は安保廃止・自衛隊違憲論であったことが分るでしょう。
村山総理に関するウイキペデイアの記事の一部です。
日米安保の維持
1994年7月20日、第130回国会での所信表明演説にて「自衛隊合憲」、「日米安保堅持」と明言し、それまでの日本社会党の政策を転換し、日米安全保障条約体制を継続することを確認した。
この際、演説用原稿では「日米安全保障体制を維持」となっていたのを、所信表明演説では村山が「日米安全保障体制を堅持」[30][31][32]と読んだことが注目された。
これは村山の出身政党である社会党にとってはコペルニクス的転回であった。トップダウンで決定した背景から独断専行と批判も受けたが、党は追認している。」
政権参加のために社会党は村山総理の意見を仕方なく?追認しましたが、違憲論が党内でなお根強かったことから腫れ物に触るようにしていた最中・神戸地震発生は国会での所信表明後僅か半5ヶ月後のことですから、ためらいがあり出動決断が遅れた原因と見るべきでしょう。

財政出動5(増税5)

それまでなかった住民サービスを新たに開始するとき・・美術館その他施設(保育所新設も同じです)を造るときには、その分の初期投資額と維持管理費を計算して同額の既存の支出をカット・・何かを廃止するか廃止出来ないならば、増税をセットにして決めるべきです。
可哀想だから生活保護費を上げろ、障害者手当を上げろ、保育所増設せよという議論には、どこかの予算をその分削ることとセットにするか、その分の増税をセットした提案をしないければ論理的ではないし、無責任です。
国保や年金赤字についても以前から書いていますが、一定の収入以下の人には納付義務を免除したり障害者免除など各種例外が設けられていますが、そんなことは税で面倒見るべきことであって、相互扶助・掛け金で成り立っている年金や保険制度に組み込むのは邪道です。
保険制度は相互扶助・・掛け金を納めた人同士で助け合う制度ですから、掛け金を納付しない人にまで保険金を払っていたら赤字になる・・パンクするのは当然です。
生命保険会社や損害保険会社が保険未加入の人にまで保険金を払っていたのでは保険制度自体が成り立たないと言えば直ぐに分ることです。
掛け金も掛けられない人の救済をしたいならば、別途その分これだけ増税する必要があると国民に説明して増税出来たら、増税で来た限度で障害者などは保険の枠外で別途救済すべきです。
生活保護その他福祉予算も税収と切り離して議論するのではなく、「生活保護費に年間これだけかかります、その分の税額はこれだけです」と説明して国民の同意を得た限度で保護して行くしかないでしょう。
放射能測定、一定地域の除染や健康診断は当然個人負担ではなく公的負担でやるべきでしょうが、これら新たに発生する支出に対応する資金はその分増税(または東電に転嫁)しない、と自治体であれ政府であれ赤字になる理屈です。
公的負担と言いさえすれば資金がどこからか降って来るような感覚はおかしいのです。
殆どの市民運動はいろんなことを要求するばかりでその資金手当については何らの言及もしないどころか、セット増税には殆どの場合反対します。
こうした運動方式が蔓延する社会ではどこの自治体でも政府でも財政赤字になるしかありません。
(要するに自分はびた一文負担したくない人が多いのに要求だけはきつい社会です)
今回の震災復興資金でも、全額増税で賄う方式は頭っから問題にされていませんが、おかしな議論風潮です。
可哀想だ・・東北へ援助金をつぎ込むべきだと言いながら、自分の納税額を増やすのを嫌がってるのですから「きれいごと」を言っているだけです。
何事もそんなことに大金をつぎ込むべきではないという意見は、薄情だと批判されるので誰も反対し難い風潮で予算が膨張する一方ですが、他方でそのための資金として増税するべきかという議論になるともっと外に抑制するべき分野がある筈という抽象論で逃げてしまう人が多いのです。
薬害エイズであれ、癩病患者の補償であれ、被害者救済すべきことに私は反対していませんが・・積極的に賛成ですが、それは私を含めた国民全部の責任だから補償すべきと言う考えによるのですが、賛成するからにはその支払分として必要な額を国民みんなが負担すべき=増税すべきだという意見です。
子供の失不祥事に対して親が「私の責任です」と被害者に向かって明言しながらお金を出すのは嫌だと言うのでは、矛盾した発言・・喧嘩になるでしょう。

財政出動4(増税3)

本当に債務を圧縮するには、既存の固定資産を減らしてしまえば、(仮に市内に1000個あった交差点の信号を500個に減らすなど)その年度の固定資産評価残高は一時的に(企業の特損にあたります)減りますが、その代わり翌年以降の減価償却負担や電気代等維持管理費が減ります。
(交通事故が増えるかな?)
企業のリストラや不採算工場や店舗売却はこのやり方です。
こうして見て行くと社会資本が充実している先進国ほど、その管理コストが上がり赤字財政に陥り易いことが分ります。
儲かっているときに野放図に田舎の方まで高速道路網を広げていると財政が苦しくなるとその補修維持が出来なくなってあちこちで危険な道路や橋がいっぱいになってきます。
不要な資産を圧縮し、必要な公共団体保有資産を減らさずに、減価償却費の積み立てをした上で、黒字化を実現してこそ財政赤字を克服したと言えることです。
道路や公園をつぶして用地を民間に売却すれば、維持費が要らなくなる上に、収入が増えますし、福祉的施設・・県営住宅などの削減も経費縮小にはなりますが、その分住民サービスが低下します。
不要公共財産(利用率の低い◯◯会館など)を廃棄縮小して行けば、上記のとおり、次年度以降の維持管理費が減少するので、赤字削減の有力手段になりますが、何が不要かの価値判断が難しいので、一旦造れば原則として維持して行くことになりがちです。
この傾向に歯止めをかけようとするのが民主党政権の事業仕分けですが、やってみるといろいろな要求施策の経費を満たすには、到底足りない感じです。
足りない分は、増税しかない筈ですが、増税には飽くまで反対するのですから不思議な国民性です。
国民性というよりは、庶民が選挙権を持つことに無理があるのではないかと思っています。
下層民は自己の利益を守るのに精一杯で全体の利益などまるで気にしていない階層だからです。
我が国民のレベルは決して低くないのに衆愚政治の弊に陥ってしまいつつあるのは、衆愚に政治を委ねるシステムの行き着いたところから起きるべくして起きたのです。
代表なければ納税なしという以上は納税しない人が政治権力を持つのは矛盾です。
これからの日本は都心集中化政策により人口を都市中心部に集めて公共資産もコンパクトにして行く・・郊外に広がり過ぎた公共資産を売却して行き、管理コストを縮小して行く努力が必要です。
不要資産圧縮努力(国で言えば、事業仕分け)をいくらしても、現状の住民サービスを維持して行くには収支が赤字になるとしたら、住民が自分の拠出金以上のサービスを要求していることになるので、その分を我慢するしかない筈です。
(収入以上の支出をするのは無理があるのは子供でも分る道理でしょう)

財政出動3(増税2)

法人税増税は不景気対策・景気循環の谷間で行うのではマイナスですが、景気循環に関係のない輸出減少による雇用喪失の穴埋め・内需振興策として増税する場合、今回の復興資金目的の場合で言えば、政府は増税分を100%使い切るので特に所得税に限れば、国内需要創出効果としては優れています。
たとえば、税引後所得が500万円の人が100%使い切る生活をしておらず、仮に1割の50万円を貯蓄に回しているとした場合、増税によって手取り所得が450万円に減っても貯蓄ゼロにする人は滅多にいません。
仮に3〜40万円前後の貯蓄をするとした場合、消費が3〜40万円減りますが、その代わり国の方ではお金が足りなくて増税するのですから、増税による増収分50万円を100%使いきるので、全体の消費は10〜20万円増える関係です。
この辺の意見は、大震災復興資金は増税で賄うべきだと言うSeptember 30, 2011「増税と景気効果2」前後のコラムで書きました。
同じ金額の消費であれば、個人の自由・・官が計画して使うよりは民間に任せた方が、社会の発展性があって良いというのが私の基本的意見で、これまで繰り返し書いていますが、国民が自分でお金の使い道がわからずに貯金するしかない・・金融機関も使い道がなくて国債を買うしかないという今の状況下では、どうせ国に任せるならば増税の方が、内需が高まる効果があります。
大震災被害者を可哀想だと言いながら、自腹をいためたくない国民が多い結果、増税・会費増額で解決しないで、対外借金(国債増発)で先延ばしして行くのが今のどこの国でもトレンドです。
何かがあるとその補償をすべきだ政府負担でやれ、という意見が多く、生活保護基準ももっと引き上げるべきだ、あるいは弱者救済の公的補償水準をあげろと言う場合、(エレベーター設置など)その分だけ増税しない限り帳尻が合わないのですが、そっちの方は知らんぷりです。
前回書いた10人の会員の場合で言えば、借金の限度は会員一人一人の金融資産が会名義の借金を上回っていれば、イザとなれば会員が自己資金で解決できます。
日本の場合、輸出は減少して行ってもずっと国際収支が黒字のままで純債権国ですから、黒字蓄積の有る間は財政赤字を続けても政府借金の引き受け手が国内にいる・国債の国内消化可能ですから問題がありません。
国際入札資格を海外に解放している結果、最小割合の5%前後の海外購入者がいる状態に過ぎませんが、国際収支赤字国がこれをやっていると、国内に資金がないので海外からの借金・・海外購入者が中心になります。
国際収支の黒字以上の国債発行を続けていると、いつかは蓄積もなくなりギリシャ危機、南欧危機に留まらず、(対応する税を取らないで対外借金で)財政出動を続けているといつかはその国の信用が破綻するのはどんな大きな国(アメリカ)でも同じです。
我が国の場合、国内個人金融資産1400兆円以内で借りている限り、国内のお金のやり取り・・税でとる代わりに余力の有るところから国債購入代金名目で吸い上げているだけですから、無理が有りませんが、個人金融資産残高1400兆円を越えるようになって来ると越えた分は対外借金ですから、大変なことになってきます。
実際には資産は金融資産ばかりではないので、たとえば日本国民が金塊だけで、100兆円分持っていれば、何時でも換金可能なので、これもプラスしなければ本当の実力が分らないなどもっと複雑です。
金融資産を基準にマスコミが議論しているのは、企業で言えば全体の資産表を見ないで手元流動性の額を基準にした一応の議論を流用した程度のレベルで、あまり合理的な基準とは言えません。

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