官僚機構と秘密体質2

政府(官僚)が自分のしていることが国民に明らかとなった場合、批判に耐える自信がないなら(民主国家では国民の信任で成り立つべきですから)民主国家の政権とは言えませんので、政権を下りる(官僚を辞める)べきです。
オープンな議論を避けようとしていると国民はよけい疑心暗鬼になり、政府発表を信用しないことになります。
風評被害が起きるのは、政府発表に信用がない・・この対で民間のデマの方が信用され易くなっているからでしょう。
風評と言う言葉には無知蒙昧な階層がデマに惑わされ易いと言う意味が含まれているのでしょうが、要は無責任デマと政府発表のどちらが庶民に信用されるかの競争に過ぎませんから、政府発表が負けないためには正確な事実発表が命です。
後から出たデータで政府が過去に発表したことがおかしいと言う事例が積み重なれば、誰も政府発表を信用しなくなるでしょう。
嘘の上塗りと言う言葉がありますが、後で正確な事実が出ると困るので政府はどんなことがあっても非を認めて事実修正をしない傾向があります。
01/28/03「止められない公共工事(無修正主義の問題点 3)」07/12/06「政府の無修正主義・無謬性」と言うテーマで書いたことがあります。
正確な事実があってそのデータに基づく論評の優劣は説得力の問題ですが、これは政治決着・・多数の意見によるしかありません。
古くは新興宗教の多くは愚民を惑わすものとして取り締まり対象になって来たことは歴史上明らかですが、宗教弾圧は許されないことになって久しい・・・すなわち説得力の優劣は民主的・・市場原理的に決めて行くしかないのです。
データ自体を開示しないで、国民は愚昧だから教えない方が良いと言う発想は、むしろデータ公開による論争に政府が自信がない事によると言うべきです。
ただし、原発問題のデータ不信の蔓延は菅政権の秘密主義に由来するのか、歴代政権の習慣に基づいて官僚が小出しにする習性があったので結果的に菅政権がそれに振り回されていたかは別問題です。
危機管理システムの事前準備不足は歴代政権の問題であって菅政権の責任ではないことを5月31日まで書いたのと同様で、菅政権になったからと言っていきなり官僚や東電の秘密主義・体質が改まることはありません。
風向きによる放射能の飛散状況を動画化するシステムが日本にもあったことが後で分ってきましたが、こんなことを政府が秘密にする必要がないので、「知っていれば避難区域の設定の参考に出来た」と言う官房長官の言い訳は信用が出来ると思います。
要は歴代政権の秘密体質が、東電や官僚の行動形態に引き継がれていて現政権の事実開示・処理能力を規定していたことが分ります。
この体質改善には時間がかかるのは当然ですから、政権を取ってまだ年数のない民主党政権の責任問題ではないことになります。
膨大な官僚機構の秘密体質が引き継がれていた場合、透明化を掲げる民主党政権になったからと言って、1年や2年で末端まで改まる筈がありません。
こうした不毛な秘密体質を形成して来たのは歴代自民党政権の思考方式によるのですから、長期間掛けて形成して来た官僚の秘密体質を改めるには10〜20年単位の時間がかるでしょう。
ところで、菅内閣に対する不信任決議案提出騒動(自公両党は6月1日午後6時前に不信任案提出、明日2日に採決の予定が決まりました・・民主党内では鳩山前総理と小沢氏は不信任案に賛成の立場を明らかにしています)
タマタマここ数日のコラム内容が、原発問題の不手際の根本は自民党歴代内閣の責任であって菅内閣の責任ではない言う趣旨の意見ですから、菅内閣打倒の政局の動きに棹さす内容となりました。
不信任決議案の提案理由書を見ていないのでどこに不満・・菅内閣に非があるとするのかよく分りませんが、もしかして秘密体質や危機管理能力の問題ではなく、イラ菅と言われる個人資質を指摘してこれでは(有能な・あるいは秘密体質に染まった)官僚を使いこなせいないと言う矮小な理由かも知れません。
何事も急激な改革では官僚はついて行けないのも事実ですから、微温的改革前進・・これには従来の秘密体質を知っている自民党の方は官僚を使い慣れていると言う主張かも知れません。
私は今のところ菅内閣を擁護したいとも倒閣したいとも思っている訳でなく、単に自分の好み・・思う通りを書いて来ただけです。
どちらにも、知り合いがいないので自分の思った通りのことを書ける・・のは気楽なものです。
私の関心は連載中のテーマの尻取りゲーム的コラムの連続にあるので、今のところ政局に関する意見は書きません。

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