家計債務膨張3(韓国15)

韓国で不動産バブルが繰り返された実績を5月4日紹介の第一生命https://diamond.jp/articles/-/190478?page=5
のグラフ引用の続きで見ていきます。

ソウルの不動産価格

足下のインフレ率は低水準で推移しており、中銀は今後も緩和的な政策スタンスを維持する方針を掲げる一方で、先行きの政策決定の判断材料に、同国の景気と物価に加えて家計債務の動向、主要国の貿易政策及び金融政策、新興国の金融・経済動向などを挙げるなど、家計債務の動きに敏感になっている。
足下の景気が力強さを欠く展開となっているにも拘らず、利上げに踏み切らざるを得ない状況は、中銀も別の意味で『板ばさみ』状態に見舞われていると言えるだろう。

上記不動産価格のグラフを見ると、アジア通貨危機以降01年から02年にかけて約20%の急騰〜05年にかけて20%急落し、05年から7年にかけて約25%弱の急騰を演じ、07年のピークから09年にかけてまた約25%以上も下がり10年に5%ほど盛り返したもののまた低下に転じ、以後低迷したままでしたが15年から上昇に転じ現在も上がり続けていることがわかります。
これが実態経済に連動していれば健全ですが、実態経済不調を隠すために不景気が来る都度不動産価格の上昇を誘導している・・・庶民から資金吸い上げをしているとすれば庶民は貧しくなるばかりでその咎めが蓄積していきます。
韓国国際収支のデータを見ておきましょう。
世界ネタ帳からです。
https://ecodb.net/exec/trans_image.php?type=WEO&d=BCA&c1=KR

上記によると第一回不動産急騰期の01〜02年は、国際収支黒字がゼロ%近辺に落ち込んだ時期です。次の05年〜07年にかけての不動産急騰期は同時期の国際収支低下始まりと連動しています。
16年からの不動産持ち直し・・・18年からの急騰も、16年からの国際収支低下開始および19年1〜3月期のマイナス成長と連動しています。
マイナス成長になっているのに、19年1月の第一生命論文で「足下のソウルの不動産価格が前年比で二桁%の高い伸びとなる」というのですから異常事態です。
この連動関係を見ると日本のバブルと違い、資金が潤沢すぎてバブルになっているのではなく、苦しいときの逆張り・・庶民の資金吸い上げに頼っている状態が窺えます。
政府はマイナス成長を緩和するために「必死になってエンジンをふかしている」・・・資金不足分を国民から吸い上げるのに躍起と見るべきでしょう。
国民の方は乾いた雑巾を絞るように絞られるだけ絞られて借金を増やしてGDP成長に協力してきたが、それでも実体経済の落ち込みを補えなくなって、ついにマイナス成長に落ち込んだとすればたいへんです。
日本は戦時中、軍事用の鉄不足のためにお寺の鐘まで供出していたことが知られていますが、韓国では国民からの搾り取りが限界に来たと言うことでしょう。

家計債務膨張2(韓国14)

企業の場合には、自己資本率と負債率の違いは金利と配当率の関係による代替性があるので、低金利下では年7〜8%(日本ではもっと低いですが)の利益配当を求められる新株発行よりは、ゼロ金利近辺の社債発行による資金手当の方が合理的ですが、家計は消費単位であって配当圧力がないのでそういう関係がないでしょう。
家計債務で考えられるのは、金利低下による毎月の支払額の減少とインフレによる名目収入増→負債の実質減価・期待でしょうか?
ケインズ理論によって財政資金投入にあるいは、民間需要拡大による需要創出・・不景気脱出を図るるようになると、世界中で財政赤字→家計債務膨張リスクが膨らみます。
アメリカが家計債務を証券化して世界にばらまいたので世界的リスクが現実化したのが、リーマンショックでしょう。
その後、アメリカでもEUでも膨らんだ債務破裂を防ぐために・・低金利政策をゼロ金利近傍・・限界まで進めましたが、低金利になっても元金を繰り上げ償還→債務縮減する方に行きませんでした。
業績低迷企業に対する補助金の多くが、企業活性化に資するよりはゾンビ企業の延命資金になることが多いのと同じでしょう。
比喩的に言えば、従来3000万までしか借りられなかった階層が、3500万まで借りても毎月の支払額が同じで返せるので・・より一層の債務元金膨張が進んだ方が多かったということでしょうか?
銀行にとっては企業向け融資が減った穴埋めに個人向け融資が増えて好都合でしょうが、利幅が減る一方の矛盾で苦しんでいます。
資本市場の発達で金融の社会的使命が終わった以上は、速やかに存在感を減らしていくべきでしょう。
金融緩和策がゼロ金利に張り付いて限界にきたので、今度はインフレ期待→元金の減価を目指す政策・・物価が2倍になれば負担感レベルでは借金が半分になったのと同じ・・一種の徳政令が国際的に採用されましたが、流石にこれは借金せずに真面目に働いている人が損をするので、国民支持が得られずうまくいきません。
黒田日銀だけの失敗ではなく、仮に制御したインフレが可能(制御できるのはインフレと言わないでしょう?)であっても、インフレ拒否感は世界的傾向でしょう。
いわば真面目に資産形成に励む方が良い・・・ベネズエラのように何万倍の物価になれば、金融資産の差(過去努力した人としない人の差)は雲散霧消・・全員が食うや食わずになります・・こういう社会を期待する人・・ヤケになっている人の方が少ないということであって慶賀すべきです。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41052900Y9A200C1000000/

ベネズエラ、1月のインフレ率が268万%に
2019/2/8 6:24
【モンテビデオ=外山尚之】南米ベネズエラの国会は7日、1月の物価上昇率が年率268万8670%だったと発表した。与野党が激しく対立する中、政情混乱が経済にも波及し、ハイパーインフレーションが加速する状況となっている。
月間の物価上昇率は191%だった。前月から約50ポイント上昇しており、物価上昇のペースが加速している。国際通貨基金(IMF)は年内にインフレ率が年率1000万%に達すると予測しているが、現状のままではさらに上回る可能性が高い。

だいぶ前から書いていますが、物流の発達した現在、一国だけ商品価格が上がることはありえない・・あるとすれば「世界の物流網から切断された時だけ」・すなわち政府の制御したインフレはありえないのです。
世界経済から切断されるかどうかは、デフォルトするかどうかの経済実態によるのであって、一国政府が自由に決められません。
韓国や中国が、ウオンや人民元の暴落=輸入品決済資金が回らなくなるのを恐れる所以です。
昨日見た第一生命のグラフによれば、韓国の場合GDPに対する家計債務比率が(この間に日本同様に消費者破産があり、そのほかに多数回の徳政令実施があって債務チャラになっているにも拘らず)一直線で増えすぎている点が異常なのか?金融政策とおりに国民が踊る・・がうまくいっているかの評価の違いです。
中国も企業負債率の急上昇が国際関心になっていますが、両国ともに政府の誘導する通りに人民が資金吸い上げに協力している・・借金してでもGDPアップに協力してきた経済です。
昨日見た第一生命のグラフでは韓国の家計債務比率が90%あまりですが、他の報道ではすでに100%を超えているというグラフが出ています。
中国の統計が信用できないと言われますが、韓国の場合数字自体の誤魔化しではなく、統計分類・・チョンセなどの返還債務を家計債務に入れていないとか、個人事業債務が入っていないなどをプラスしていくと現状で約200%以上という意見もあります。
ちなみに日本では、個人事業債務も家計債務(法人化しているかの基準?)になっていますので、家計債務といっても統計方法によって大きな違いが出てきます。
まして韓国では自営業者が人口の25%というのですから、このグループをどのように分類するかによって実体経済の現状把握が大きく違ってきます。
自営業でも他人を一定数以上(たとえば5人以上)常時雇用する自営と家族労働に頼る(時々アルバイト使う程度)自営では負債の経済的意味(事業用の負債は一種の投資ですから巨額です)がまるで違ってきます。
30代でリストラされてすぐに飲食店やチェーン店など開業する一般的な韓国自営業の場合、負債の性質は家計負債に限りなく近いでしょう。
中韓ではどうやって国民から資金吸い上げに成功しているかですが、株式〜不動産バブルその他国主導の一種の仕手相場に国民を巻き込むパターンのようです。
日本人は堅実を重んじる国民性・投機相場に乗りにくいので、平成バブル期も業者間転売→消費者が買い始めた初期段階で大方終わったのですが、末端消費者まで参加させて毎回徳政令や破産で救済→救済しきれない分は自殺増や国外売春輸出で切り捨てられている韓国人民との違いでしょう。
中韓共に国民?人民が弱すぎるのです。

家計債務膨張1(韓国13)

インフラ整備後の消費減退を専門的表現・・例えばみずほの以下の論文です。
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/as180126.pdf

2018年1月26日
1.はじめに 韓国の家計債務は近年急速に拡大している。IMFのレポートによると、家計債務がGDP比で36~70%の水準にある間は、長期的な1人当たりGDP成長率に対してプラスの影響をもたらすが、それ以上高くなるとプラスの影響が弱まり、徐々にマイナスの影響に転じていくとの分析がなされている1。
韓国の家計債務は名目GDP比90%以上に達しており(図表1)、経済にマイナスの影響をもたらしうる水準に近付いているとみられる。
図表省略

1年後の第一生命の論文です。
https://diamond.jp/articles/-/190478?page=5

2019.1.11
韓国経済「板挟み」の窮地、7つの指標で読み解く減速
西濵 徹:第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト
長期の金融緩和で家計債務が拡大
一方、長期にわたる金融緩和政策の影響で家計部門の債務は拡大している。この動きに呼応するように首都ソウルを中心に不動産投資ブームが起こった結果、足下のソウルの不動産価格が前年比で二桁%の高い伸びとなるなど、金融市場を巡る新たなリスクとなることが懸念されている。

「二桁%の高い伸び」といえば外貨がたまりすぎて欧米から「内需拡大しろ」とせっつかれて困っていた日本のバブルでも、私の記憶では年率全国平均10数%と報道されていましたから異常です。
18年、米国の金融緩和打ち止めによって、ほんのちょっと金利が上がるだけでデフォルトリスクに怯える韓国が、バブルを煽る資金力があるとは思えません。
日本のバブルは国内に資金がだぶついて起きたバブルであり、外国からの借金によるものではなかったのですが、韓国の場合国内資金不足・・ウオン売り浴びせに怯えながらのバブルですので自然発生的なものではありません。
日本は外貨準備が積み上がりすぎて米欧の批判を浴びて(プラザ合意)苦肉の策・内需拡大を迫られていて無駄遣いせざるを得なかったのですが、中国や韓国の場合低成長→マイナス化をごまかすために国民に金を貸して借金で消費させる・・やせ我慢のバブルですから意味が違います。
日本の場合内需拡大の掛け声に乗った金融機関→業者が都内狭小地を高値で買いあさり、業者間転売でどんどん釣り上げたものの、実際に焦って買った消費者はわずかで多くの消費者が踊らなかったので末端商品化したところで・・金融引き締めがきっかけですが・・本当は高くなりすぎて、転売目的でない本当の消費者が買えない価格になっていたので、バブル崩壊しました。
業者間でバブルを煽りに煽って転売を繰り返してはその都度値上げしていたので、最後のババをつかんだ仕入れた業者がやむなく駐車場幼稚とか空き地のままで塩漬けになっている土地があちこちで見かけました。
日本では大損したのは概ね不動産業者であり、(目先が聞く消費者が参入して損をした人もいたでしょうが稀です)これに貸し込んで損をしたのは国内金融機関でした。
高値で売り抜けて大儲けしたのは近郊農家に限らず都内の狭小地を億単位で売り抜け千葉等で広く安い土地を買い立派な新宅を得て優雅な生活を満喫できたモト都民や農民等の庶民でした。
バブルとその崩壊で庶民の懐が潤おい・落ちついた文化発酵時期になったことを、だいぶ前から書いてきました。
日本の場合、バブル崩壊による大損といっても国内でのお金のやりとり・急激に上がった土地を売って儲けたのはほぼ100%日本人であり、損をしたのは高値で仕入れた不動産業者(主に国内業者と便乗しようと参入した外資)でこれに貸し込んだ日本の金融機関でした。
外国からの借金で業者が仕入れたものではありません。
損をした以上に儲けた国民の方が多かったということを10年以上前に書いてきました。
いわば高度成長によって得た利益が輸出産業や金融機関に偏っていたのを、(都市住民と近郊農家中心ではありましたが)恩恵の少なかった庶民への再分配機能を果たしたことになります。
韓国家計債務に関する第一生命の論文https://diamond.jp/articles/-/190478?page=5
に戻ります。

まず今日は、家計債務の規模拡大とGDP比率アップのグラフを紹介し、明日不動産相場変化グラフを紹介します。

家計債務残高

家計債務の負担感・・月収100万の人にとって月額10万のカードローン支払いは負担でないでしょうが、月収20万の人にとっての月額10万の支払いは負担です。
負債規模は、収入(売り上げ)が大きくなればこれに比例して(仕入れ)が増えるのが普通ですから、国全体のあり方を見るには絶対額の増減だけでなくGDP比の債務伸び率が重要指標ということでしょう。

内需拡大と国民負担(中韓)1

インフラ整備は発展に必要なインフラが足りない場合必須ですし(後進国が後進国のままに留まったのは、起爆剤となるべき資金がなかったので発展できなかったのですが、)中韓では日本との国交回復条件として巨額資金援助・賠償金?を獲得してこの隘路を乗り越えられた結果日本との国交回復後いずれも高度成長の波に乗れたのです。
一定の成長が始まると産業規模拡大に応じたさらなるインフラ整備と国民の所得アップに応じた衣食住・・国民の生活水準底上げが次なる消費文化発展のために必要な政策です。
成長に応じた住宅供給や街路整備は文字通り市場経済の要求によるものですが、市場の需要によるのではなく、景気対策としてのインフラ整備や住宅の実需以上の需要喚起政策は、一時的に景気悪化をごまかせても「ごまかし」である以上は、その分社会に歪みをもたらします。
オリンピックで言えば、日本の高度成長の受け皿としてのインフラ必要期に当たったことが、首都高や新幹線その他スポーツ競技場等の整備がオリンピック後も国民生活レベルアップに役立った・次のステージへの起爆材になりましたが、まだその段階にない・・・例えばギリシャオリンピックでは負の資産が残った結果ギリシャ危機につながったのです。
実需に基づいてのインフラ整備や、住宅供給であれば健全な経済活動ですが、景気対策としてのインフラ投資や、住宅供給拡大策は、無理がある分歪みを生じさせます。
中韓が、実需に基づかない急速な高学歴化やインフラ・住宅供給増加は、一時的な経済カンフル的に有効ですが、完成して利用が始まると需要以上の無理なインフラ等の整備→維持費が負担になってきます。
例えば、中韓の実需に基づかない大卒大量供給が就職難(中国の蟻族の処遇・韓国の国外就職誘導)を生み出し、そのミスマッチ・不満をどうするかに苦心しているのも同根です。
中韓では実需以上の大量の大学を開設して国民に学歴必要性(英検の仮需要も同様)を吹き込んで仮需を発生させて、大学や塾等の教育産業を盛況にしそこまでの大量勧誘には成功しましたが肝心の卒業後の就職口がありません。
このシリーズで紹介してきたように韓国では大卒の1割しか大卒向きの就職口がないのにいわば10倍のミスマッチ・学歴に対する過大期待を煽って客を呼び込んでいたのです。
中国でも、大卒の大部分が就職口がなく年間700万人に上る「蟻族」が発生していると言われています。
14年の記事で古いですが、以下の通りです。
https://matome.naver.jp/odai/2137427535216293801

中国で大卒700万人の現実!中国の若者(蟻族・鼠族)の厳しい現状まとめ
中国では、2013年に日本の10倍以上の700万人が大学を卒業しました。その中で3分の1は就職が決まらず、都市部の郊外などでアルバイトをして過ごしています。
安いタコ部屋の環境は劣悪で、蟻族、鼠族などと呼ばれており、社会問題となっています。この話は、日本人にも無縁ではありません。
更新日: 2014年05月04日
北京の大卒で内定は30%という厳しい現実”
出典中国でも大卒就職浪人が急増中:|NetIB-NEWS|ネットアイビーニュース
北京市の卒業生就職斡旋工作会の発表によると、2013年に北京地区の大学を卒業した者で、就職に内定した者の割合は28.24%ということが明らかになった。大卒者の就職内定率が3割を切るという極めて低い数字が中国経済の停滞感を物語っている。
“大学院卒業生の就職率は更に悪い”
出典レコードチャイナ:中国の大学生が抱えるワーキングプア「アリ族」への不安—米誌
今年4月の時点で卒業予定の大学生のうち、就職が決まった大学生はわずか35%で、大学院生はさらに悪い26%であった。
大卒の初任給が1000元(1万5000円)を提示される現実”
<出典朝日新聞グローブ (GLOBE)|バーリンホウ(80后) 中国を変える新人類 — ワーキングプア 大学ではコンピューターを専門に学んだが、最初に決まった会社から提示された月給は1000元(約1万2000円)。農村からの出稼ぎ労働者と同じ水準だった。 「買い手市場」の現実に挫折感を味わった。1万2000元(約15万円)を払って4カ月間専門学校に通い、より高度なコンピューターの技術を学んでいる。

中国では約7割の卒業生が就職できない状態をこのコラムでも、May 3, 2014に引用紹介したことがあります。
(地方の貧困層・低賃金農民工からの脱出を夢見て親が食うや食わずで大切な一人っ子を都会の大学へ進学させたのですが結果、7割の大卒に就職口がないのです)
中韓共に国を挙げての学歴万能論の呼び込みは、政府の行う詐欺的商法だったことになります。
中韓政府が住宅産業とマッチを組んだ住宅購入勧誘政策は、その先のローン支払い見込みもないのにローンでの住宅購入を煽り夢の生活を煽る点で学歴・英検万能の呼び込みと方向性が似ています。
我が国で言えば、バブル崩壊後に行われた地方自治体の箱物整備がその後維持費負担に耐え兼ねて最近閉鎖ラッシュに見舞われるのと同じですが、この負担は中央政府の財政赤字・地方公共団体が負うのに対し中韓では国民が吸い取られる自己責任仕組み担っているのが大違いです。
中国でいえば、ガラガラの高速鉄道をどんどん作って(世界最長キロ数と自慢しますが・・)どうするの?誰も住まない巨大ニュータウンをどうするの?となります。
より良い住宅を求める住宅需要は一定のところまであるでしょうが、経済力アップに応じた自宅取得は合理的ですが、背伸びした住宅取得を政策誘導すると、その咎めがのちになって出てきます。
中国の新都市建設がゴーストタウンにならずに、本当に売れたら売れたで、国民が住宅ローン支払いに追われるようになり・・家計債務がGDP比一定率に達すると国内消費がその分減少する限界がきます。
地方自治体が豪華な〇〇会館維持コストに追われて必要な施策に予算をまわせなくなるのと同じです。
昭和40年代に川崎市(いまトレンデイーな武蔵小杉周辺)に住んでいましたが、その頃田園都市園の開発が始まりニュータウンとして一種の憧れの地でしたが、(玉川高島屋オープン直後に妻からおしゃれなセーターを買ってもらったのが青春時代の思いです)千葉に移り住んでから年を経て、昭和女子大病院に行った時に街の貧しさに愕然としたものでした。
活気のある千葉からいくとお昼を食べようとしてもこれと言った飲食店もなく、地元の話では住民の多くはローン支払いに追われる生活で消費が極度に細っているということでした。

超格差社会・韓国5(住宅建設と個人債務膨張2)

以下は」16年までのデータで約2年遅れですが、韓国の家計債務のリスクに関する意見が見つかりましたので引用します。
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/as180126.pdf

No.9, 29 SEPTEMBER 2017
韓国の 2016 年住宅着工実績
○韓国の家計債務は近年拡大基調にあるなか、特にノンバンクにおいて家計向けを中心に貸出の伸びが高い点がリスク。ただし要注意先債権比率は銀行・ノンバンクともに低下傾向 ○過去の債務拡大局面とは異なり、近年は消費を目的とした家計の借り入れは限定的で住宅関連の債務の割合が大きく、家計債務の拡大が抑制されても個人消費の大きな下押し要因とはなりにくい ○アジア通貨危機時のような大幅な住宅価格下落・金利上昇が起これば、低所得層を中心に家計のデフォルトリスクが大きく拡大するが、リーマンショック時程度のレベルであれば影響は限定的
1.はじめに 韓国の家計債務は近年急速に拡大している。IMFのレポートによると、家計債務がGDP比で36~70%の水準にある間は、長期的な1人当たりGDP成長率に対してプラスの影響をもたらすが、それ以上高くなるとプラスの影響が弱まり、徐々にマイナスの影響に転じていくとの分析がなされている1。韓国の家計債務は名目GDP比90%以上に達しており(図表1)、経済にマイナスの影響をもたらしうる水準に近付いているとみられる。また同レポートでは、家計債務の増加がどのようにマイナスの影響をもたらすかのメカニズムが示されている

ところで上記論文は重要な点を書いています。
リーマンショック級の危機が来なければ良いのではなく、(昨年の米国金利上げの影響をこのシリーズで書いている・・ちょっと金利が上がっても払えるの?問題の他に)住宅供給が際限なく増え続けることはないのでいつか需要の面からも限界が別に来るはずです。
ピアノも車も空調設備も一定の普及段階が終われば、(アップルの変調はまさにこれによります)更新需要しか無くなるのが基本原理です。
韓国の住宅着工数の推移の表が上記論文に出ています。
韓国の 2016 年住宅着工実績
1.構造別の建築着工実績
韓国の 2016 年国内総生産(GDP、実質基準)は建設投資を中心に固定投資が好調を示したが、輸出不振のため、2015 年と同様に 2.8%の成長にとどまっている。 好調な建設投資により、同年の建築着工数は 231,971 棟にのぼり、前年と比べて 6,031棟が増加した。
年別着工数数の表を見ると、2005年 114,55が2016年 231,972棟で11年間で約2倍になっています。
2007年 179,01〜2013年が187,54まではほぼ安定的ですが、13年から16年までの3年間でいきなり23万棟ですから政策誘導的急増だったのは確かでしょう。
内需といっても国民に消費する資力がないので、住宅建設(借金してでも消費するので)による中国同様の不況先送りを兼ねた内需振興策でした。
建築物の用途別の表で見ると
2005の合計が 114,554 棟で内、住宅用が32,710で3割弱、工場や商業用あるいは教育用などその他合計が約8万棟で約7割あまりでしたが、2016年には合計 231,972で、住居用が約5倍の155,16ですから、住居用が約7割を占めていて工場や商業用等その他は2005年とほぼ同様の約8万棟のままです。
サムスンの国外展開の例を見たように企業等は内需振興策と言われても無用な商業ビルや工場を国内に建てなかった・・この間国内生産が空洞化した穴埋めに日本のような財政出動・・政府債務を増やさずに、家計に負債増加を求めた結果でしょう。
このシリーズでは、2月4日の「債務膨張と債務負担部門・中韓」以来、「債務を社会内のどの部門に付け回しているかが重要」という視点で書いてきましたが、韓国では最も弱い庶民に「自宅を持てる」という夢を煽って、巧妙に債務負担をせて内需振興・経済破綻を防いできたことがわかります。
中国の場合もこの点は似ていますが、いじましい夢を売るのではなく投機熱で2戸目3戸目を買い求める文字通りのバブル現象ですが、韓国庶民の場合は日常消費を切り詰めても住宅が欲しいという購入ですから、堅実といえば堅実ですが、目一杯借りている以上金利が上がり始めれば持たない点は同じです。
上記表によれば、この3年間で需要の先食いが起きているので、金利優遇等の政策がなくなれば需要が急減するでしょうし、逆に国際的金利上昇の流れに引きずられると耐えられなくなるリスクです。
上記論文は専門家の意見ですので「素人が異論をいうのはおこがましい」ですが、リーマンショック級の外部環境によるのではなく、需要先食いによる反動減と借金過多による消費減→国内不況による自律的問題を論じるべきです。
ただし、以下の論文では中国、韓国の住宅価格は家賃収益還元内に収まっているのでバブルではなく外部要因による急激な利上げ(少しの追随利上げ程度は景気循環の範囲?)等がなければ価格調整が起きないのではないかという意見?データを示しています。
https://www.smtb.jp/others/report/economy/64_1.pdf
三井住友信託銀行 調査月報 2017年8月号
経済の動き ~ 低金利下の各国住宅価格と家計債務

https://screenshotscdn.firefoxusercontent.com/images/e28350b0-e6e8-4ae0-939e-8e9963e451e0.png

リーマンショック等外部危機場合、逆に金利下げその他の内需振興策を取るので、却って一息つける方向になるのではないでしょうか?
素人目には中国はバブルが弾けそうになると混乱を恐れた救済の繰り返しで現在になったように見えます。
まさに卵を積み上げすぎて「累卵の危機にある」状態で米国と経済戦争を戦えるのかが素人世界の関心でした。
上記論文によれば、賃料相場の範囲内にあるので中韓の住宅建設ラッシュは「社会の発展に遅れていた分を取り戻しただけ」(数年事業拡大に忙しく自宅新築の暇がなかったのがようやく落ち着いて自宅も立派にできるようになった状態?)という解釈になるのでしょうか?
そういう目で見れば遅れて海外旅行を楽しむような遅行指数と言えなくもありません。

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