継続契約保障と社会変化3(借地借家法立法3)

12月6日に出たばかりのNHK受信料に関する最高裁判例で時間軸をhttp://www.toranosuke.xyz/entry/2016-1105_nhk-saikosaiによって見ると以下の通りです。

事件の概要 *6
2006年3月、テレビを設置、「放送内容が偏っていて容認できない」と契約拒否。
2011年9月、NHKは男性宅に受信契約申込書を送付したが、応じず。
契約の申し立てを行った時点で契約は成立すると、NHKは主張。
1審:東京地方裁判所判決(2013年7月判決)
2審:東京高等裁判所 (2013年12月18判決, 下田裁判長)

となっていて、超長期の時間がかかっています。
弁護士が判例を説明して、企業からどのくらいの期間で決まりますか?と聞かれてもそう簡単には答えられないの実情です。
これでは企業活動(大手マンション業者の場合には、見込みだけであちこちにちょっかいを出しておいて買えるようになった順に仕入れていけばいいのですが、事業用地取得・・デパートの出店や工場進出などの場合には売ってさえくれれば駅に近ければどこでもいいという訳にはいかないので長期間不確定では事業計画がなり立たない・・不向きな制度設計になっています。
判例さえあれば良いかというと実務的には大違いなのが分かるでしょう。
この法制度がない時代にも事実上適正な立ち退き料支払いの示談で出てもらって都市再開発などができていたのですが、建築後4〜50年以上のあばら家に住んでいる借地人や借家人に正当な立ち退き料の提案をしてもアクまで「金の問題でない」と言い張られると法外な立退き料を払うしかなく、法的に強制する方法がありませんでしたが、判例は徐々に自己使用目的でなくとも金銭補完を認める方向に動いていたのです。
借地制度は、戦後牢固とした勢力を張る「何でも反対派?」(社会変革反対)政党の基礎的制度ですから、解約の自由度をあげる改正には頑強な反対が続いていました。
これでは時代即応の都市設計・再開発が進まない不都合があったので、借地借家法が新規立法の機運が盛り上がったのです。
昨日借地借家法の付則を紹介しましたが、「付則」とはいえ、これが最重要部分で(超保守系)革新政党との妥協によって、既存契約に適用なしとする妥協がされたので、過去の契約に関しては、従来通りとなってしまいました。
今どき新規借地契約をする人などめったになく、存在する借地権等はいつ始まったか分からないほど親や祖父の世代からの古いものが中心ですから、新法では古くからの借地の再開発案件には利用できないままですから、新法制定による都市革新促進効果は(定期借地権付き大型マンション等でたまに利用されることがある程度で)限定的になっています。
時代遅れのブティックやレストラン等の場合、この先何十年も建て替え予定がないのに「今度家を建て替えたら綺麗にするから」というだけでリフォームを一切しないのに似ています。
このように「弱者救済」の掛け声ばかりでなんでも反対していると木造密集アパートばかり残って行く・・近代化阻害ばかりでは災害対応も無理ですし、国際都市感競争に遅れをとるのが必至です。
車や電気製品のように短期に買い換えて行く商品の場合には、新製品からの規制・・排ガス規制というのは意味がありますが、超長期の借地契約でしかも無制限的に更新が保証されている借地関係では、(しかも新規借地契約など滅多になく旧契約が問題なのに、)今後の契約からの適用ですと言っても社会的にほとんど意味がないことなります。
都市再開発や新規事業用地取得の障害になって困っているのは、新規借地ではなく明治大正昭和前半に、大量に生み出された山手線の内外に多い古くからの借地です。
古くからの借地が事実上無期限に更新されていく前提ですと新法制定の効果がほとんどなくなります。
現代型借地契約として時々見かけるのは、大型マンションの場合、多数地権者からの買収が必須ですが、開発用地内の一部地主が先祖伝来の土地を売りたくない(一時に大金が入ると税負担が大きいなどいろんな事情で)と頑張った場合、便法としての「定借」が利用されるようになっている程度でしょうか。
あらたに生まれた定期借地権の利用形態としては、ビル用地の一部に所有権を残しておいても50年程度の長期ですから、(自分が生きている間には)配当金をもらうだけの債権に似ていて「保有」している意味が実際に無い(50年先に何か言えるというだけ)のに比して、マンション等ビル保有者の方は50年先にどうなるか不明で不安定になるマイナスだけで新規借地を奨励するべき社会的意義がほとんどありません。
マンション法の累次の改正で特別多数で所有権の一態様で有る共有者に対してさえ、強制的改築(建物取り壊し決議)ができるようにになっているのに、地主というだけで(全体敷地の1%しか持っていない地主が合理的理由なく拒否権を発動できる)老朽化したマンションの死命を制することができるのは、おかしなことだという時代が来るべきでしょう。
長期的には借地という半端な制度は臨時目的の1時使用目的以外にはなくなって行くべきではないでしょうか?
自分で利用する予定のない土地を持つこと自体がおかしいのであって、必要な人がいて相応の価格で買いたいといえば手放すのが筋です。
数十年あるいは50年以上も先まで土地利用計画すらないのに、売るのを拒否して所有権維持にこだわる人をなぜ保護するのか分かりません。
こういう不合理なヒト・しかも社会にとって迷惑なひとを保護するために、(既存借地の流動化を図るためならばわかりますが)いつでも返してもらえるような法律(新借地法)を作るのは方向性として間違っています。
有効利用もしていないのに「あくまで売りたくない」と言い張る所有権者の乱用と同じで、いったん借りたら既得権になって周辺の発展を無視して巨額立ち退き料を積まれてもアクまで「この古い家が好きです」と言い張って占拠し続けるのを社会が保証してやるべき・・どういう借地人でも「何が何でも保護すべき」という論者がいるとしたらこれも異常で、どういう社会のあり方を想定しているのか不明です。
バブルの頃に小さなラーメン屋か薬局だったかで何億という立ち退き料支払いが何件か話題になっていましたが、そのたぐいです。
※ ただしH6年の最高裁判例によって相当の対価が提供されていれば正当事由が補完されるようになってることは昨日紹介した通りです。
都市再開発での借地権問題同様に既得権には手をつけない・先送りしか出来ない問題は、厳しい解雇規制の結果、国際競争にさらされている大手企業の雇用現場で起きています。
企業でよくいう新事業向けに再構築し直すときに旧事業向けの余剰人員をリストラしないで、定年退職対応の新人不補充・(解雇規制があるため)「自然減を待つ」というのも同工異曲です。
1〜2ヶ月ほど前に三菱UFJBKの(フィンテック化進展等による)大規模人員不要化発言が話題を集めましたが、不要になるというだけで希望退職を募るのかすらはっきりできない・・不明の批判を受けているのは、解雇制限法理による点は、借地法関連の保護法理が支障になっているのと根底が同じです。

継続契約保障と社会変化2(借地借家法立法2)

昨日紹介した法改正の議論の結果、平成3年に成立したのが現行借地借家法で、この新法により定期借地や定期借家制度が創設され、さらに定期契約でない場合でも更新拒絶ができるように「正当事由」の条文内容を類型的具体化して使い安く変更されました。

借地借家法(平成3・10・4・法律 90号)
第1章 総 則(第1条-第2条)
第2章 借 地
第1節 借地権の存続期間等(第3条-第9条)
第2節 借地権の効力(第10条-第16条)
第3節 借地条件の変更等(第17条-第21条)
第4節 定期借地権等(第22条-第25条)
第3章 借 家
第1節 建物賃貸借契約の更新等(第26条-第30条)
第2節 建物賃貸借の効力(第31条-第37条)
第3節 定期建物賃貸借等(第38条-第40条)
第4章 借地条件の変更等の裁判手続(第41条-第60条)

(趣旨)
第1条 この法律は、建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権の存続期間、効力等並びに建物の賃貸借の契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、借地条件の変更等の裁判手続に関し必要な事項を定めるものとする。
(借地契約の更新拒絶の要件)
第6条 前条の異議は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。以下この条において同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。

附 則 抄
第四条 この法律の規定は、この附則に特別の定めがある場合を除き、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、附則第二条の規定による廃止前の建物保護に関する法律、借地法及び借家法の規定により生じた効力を妨げない。
(借地上の建物の朽廃に関する経過措置)
第五条 この法律の施行前に設定された借地権について、その借地権の目的である土地の上の建物の朽廃による消滅に関しては、なお従前の例による。
(借地契約の更新に関する経過措置)
第六条 この法律の施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関しては、なお従前の例による。
(建物の再築による借地権の期間の延長に関する経過措置)
第七条 この法律の施行前に設定された借地権について、その借地権の目的である土地の上の建物の滅失後の建物の築造による借地権の期間の延長に関しては、なお、従前の例による。

平成3年の借地借家法との比較のために旧借家法(わかりやすくするために「旧と書きましたが、実は以下に書く通り現行の借地権の大方は、この法律の規制を受けますので、実務家では廃止された借地法と借家法が日常的アイテムになっています)を紹介します。
そこで、借地法(大正十年法律第四十九号)を紹介したいのですが今のところ、ネット情報では現行法中心で改正前の法令情報が極めて少ないので、ネット検索では借家法しか出てきませんが、更新拒絶要件関連の基本は同じですので、借家法の引用だけしておきます。

大正十年四月八日法律第五十号
〔賃貸借の更新拒絶又は解約申入の制限〕
第一条ノ二
建物ノ賃貸人ハ自ラ使用スルコトヲ必要トスル場合其ノ他正当ノ事由アル場合ニ非サレハ賃貸借ノ更新ヲ拒ミ又ハ解約ノ申入ヲ為スコトヲ得ス

昨日紹介した大阪市立大学法学部生熊長幸氏の論文のとおり、借地借家法制定立案時に定期借地、定期建物賃貸借制度創設の他に一般(従来型)の借地借家契約でも、更新拒絶自由の合理化を図ったのですが、いわゆる現状維持派・反対勢力の主張が強くて法制定作業が進まないので結果的に当時すでに判例で認められている正当事由を法文化する程度で収まりました。
反対派の動きが強くて借地借家法の制定作業が進まないので催促するかのように、新判例の動きが出てきたとも言われます。
結果的にこの判例を条文化する程度までは仕方がないか!という妥協ができて国会通過になったようです。
最高裁のデータからです。
最判の時期は法制定後の平成6年ですが、高裁事件受理は昭和63年(ということは1審受理はその1〜2年前)で最高裁受理は平成2年の事件ですから、借地借家法制定準備・・審議会等での議論と判例の動きが並行していたことがわかります。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52466

平成2(オ)326事件名 建物収去土地明渡等
裁判年月日 平成6年10月25日
法廷名 最高裁判所第三小法廷裁判種別 判決
結果 棄却
判例集等巻・号・頁  民集 第48巻7号1303頁
原審裁判所名東京高等裁判所原審事件番号 昭和63(ネ)3286
原審裁判年月日 平成元年11月30日
判示事項
借地法四条一項所定の正当事由を補完する立退料等の提供ないし増額の申出の時期
裁判要旨
借地法四条一項所定の正当事由を補完する立退料等金員の提供ないしその増額の申出は事実審の口頭弁論終結時までにされたものについては、原則としてこれを考慮することができる。
参照法条   借地法4条1項,借地法6条2項

判例さえあればいいのか?となるとそこは大違いです。
上記判例があっても、「相応の立退き料を払うので出てもらって跡地にマンションを建てたい、デパート用地に売りたい、工場用地に売りたい」と言う理由では(上記旧法の自己使用その他必要条件にあたらないので)長期裁判を經ないと(上記の通り1審判決から最判まで膨大な時間がかかっています)どうにもならない・・判決時期等が不確定過ぎて計画的進行を重んじる企業用地としては手を出しにくくなります。

継続契約保障と社会変化1(借地借家法立法1)

今になれば夢のような昔のことになりましたが、私は昭和30年代に高校〜大学と池袋東口に住んでいましたが、(生まれたのは戦時中でしたので戸籍謄本では「東京都」ではなく「東京市」豊島区池袋〇〇で出生となっています)昭和35〜6年頃に木造の豊島区役所が4階建てのビルになったのが地元に住む高校生としては誇りに思っていたものでした。
そのころに池袋付近にあったビルと言えるのは、西武、三越、丸物(その後パルコに)百貨店、西口の3階建ての東横(その後東武デパート)百貨店くらいでその他集積していた映画館も皆木造の時代でした。
その後急激にマンションやオフイスビルが建つようになり、いつの間にか巣鴨の拘置所がなくなり、跡地にサンシャン60ができるなど東京中がビル化のラッシュになりました。
余談ですが3年ほど前にサンシャイン60に用があって行ったついでにサンシャイン60の展望台に登り、見渡すとその自慢の区役所の老朽化手狭のせいか?新庁舎が雑司が谷のあたり(上から見たので地名はわかりません)に新築中で移転予定だったのに気付いて(高校時代の記憶がいきなり蘇って)まだあったのか?と驚きました。
区役所は明治通りからちょっと入ったところにあったので、池袋に住まなくなってから池袋に行っても路地の奥まで用がないから行ったことがなかったのです。
このブログを書くために念のために豊島区役所旧庁舎の写真をネットで見ると昭和30年代に出来たばかりの頃に目に焼き付いている建物の写真が出ていました。
上記の通りで、昭和30年代末ころにはまだ木造家屋中心であった都内の繁華街・・渋谷、新宿、池袋周辺では中高層ビル化が始まり、古い建物のトリ壊しが必要な時代が来ました。
都市の大変革が始まると、長期契約の代表例であり都市再開発のインフラである借地法、借家法分野での改正議論が昭和60年から公式に始まりました。
借地・借家法分野の改正機運が起きて、平成の初めになってようやく定期借地権などの契約が公認される新法が成立しました。
借地法&借家法分野での改正議論の経緯については、現在の最高裁長官が中堅判事のころに書いた論文が見つかりましたので以下紹介します。
借地借家法の制定経緯を以下の引用により紹介します。
http://seitojiyu.com/wp-content/uploads/2015/10/acade166cdf0cadbfc1e4f0aa7a55f8a.pdf

借家法の運用と実務判例タイムスNo.785 (I992 7 20)
新「借地借家法」の概要 寺田逸郎
・・・・その後は、今日に至るまで借地・借家法の改正はなく、基本的には、存続保障として、昭和一六年改正による正当事由がなければ契約は更新されていく」という枠組みが維持されている
2 借地・借家法制の見直し
我が国の経済は、今日までに戦前とは比べものにならない進展をとげ、これに応じて社会も著しく複雑化した。それに伴って、不動産の利用形態、特に土地の利用形態が多様化してきている。このような変化を前にして、現行の借地・借家法が当事者聞の
利益の調務のために適当であるとしてとっている方策と現実の要請との聞にずれが生じてきている面があるのでないか・・・中略・・なお、昭和五0年代後半からは、土地の供給促進の観点から法制度としての借地・借家法の見直しが主張されてきた・・
全面的な見直しをはかることは、難しい情勢にあった。
しかし、高度成長期を経て経済規模が拡大し、都市化がすすむと、借地・借家法が画一的な規制をしていることによる弊害が一層明らかになってくるようになった。
戦前・戦後の住宅難の時代には重要な役割を果たしたと評価されているが、その後は、むしろ現状維持に働きすぎ、社会・経済情勢の変化に対応せず、硬直的になっているとの批判もみられるようになっているのである。このことは、このことは、特に借地において顕著で、借地権の新たな利用は、目にみえて減少していることが、ひとつの裏書きとなっている・・・・・以下略。
法改正に至る経過
法制審議会の民法部会(加藤一郎部会長)は、以上のような問題意識から、昭和六O年一O月に現行法制についての見直しを開始する決定をした。具体的な・・・・・以下略

上記によれば私が抱いている関心の通り・・・継続関係の保護→現状維持政策では社会変化に適応出来なくなると言う私の意見同様の立法経過であったことが分かります。
いわゆる日支事変以降(軍需産業拡大に伴う人口の都市集中により)空前の住宅不足が生じ賃料高騰したことから、家主が期間満了を理由におい出すような事態が頻発した実情を受けて昭和16年改正で正当事由がない限り契約満了しても更新拒絶できないという法改正ができています。
この辺の経緯については、昭和16年2月3日の貴族院での議事録を読むと(急激な都市集中により6畳一間に8人が交代で寝起きするなどのすさまじい)当時の社会実態が如実に出ています。
借地借家で借主借地人保護の運用が支持されたのは、戦時中〜戦後焼け野が原で始まり住む家が絶対的に不足している時代を背景にすれば借家を追いだされれば野宿するしかない状態であれば「余程のことがない限り、家主の都合で追い出されない」という運用も合理的だったでしょう。
しかし昭和50年頃から住宅事情が緩和されて空き家が目立つようになって来たし、日本の国力復活に合わせて都市再改造が必須になってきたのですが、借地人等への過保護?が都市改造や新規工場立地などに支障を支障をきたすようになってきました。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/uhs1993/1993/4/1993_30/_pdfによると、以下の通りのせめぎ合いがあったことわかります。

借地借家法改正と土地の有効利用―賃貸住宅政策における意義ついて―大阪市立大
学法学部生熊長幸
2 借地借家法制定の経緯と概観
・・・・市街地再開発のあり方の問題およびそれに関係する業界の利害と深く結びついていた点にあった(水本浩「都市再開発と借地・借家法ジュリスト851号13頁)。1985年7月に公表された臨時行政改革推進審議会の「行政改革の推進方策に関する答申」は、新規借地・借家の供給促進とともに、都市再開発のための既存借地・借家契約の解消も企図したものであった。
・・・・問題は、正当事由の内容において旧法と新法とで実質的変化が見られるかである。
・・・中曾根内閣の公的規制緩和・民間活力導入路線のもとで、「借地・借家法改正に関する点」は、「土地の有効利用の必要性及び相当性」を正当事由の要素とすべきかを問うた。
これに対しては、民間ディベロッパーや不動産業界の意に沿うものであり、私人間の権利関係の調整を図るべき借地借家法の範囲を超えることになるといった批判が強かった。
中曾根内閣の公的規制緩和・民間活力導入路線のもとで、「借地・借家法改正に関する問題点は、「土地の有効利用の必要性及び相当性」を正当事由の要素とすべきかを問うた。
これに対しては、民間ディベロッパーや不動産業界の意に沿うものであり、私人間の権利関係の調整を図るべき借地借家法の範囲を超えることになるといった批判が強かった。
・・・・このような経緯を経て、新法6条が成立した。
・・・・(2)国会審議において繰り返し強調されたように、借地借家法6条の正当事由の内容は従来の判例を整理して法文化したにすぎないのであって、従来の正当事由の内容と変わらない。
・・・・(4)補完的要素は、限定的に列挙されているのであり、これ以外の「土地の効利用」、「市街地再開発の要請」などは、補完的要素に入らない(広中編・注釈借地借家法§61皿〔内田〕)。もっとも、立案担当者は、これらも「土地の利用状況」背景になる事情として考慮されるとされる。
(5)本条は、新法施行前に設定された借地権の契約更新に関しては適用されない(付則6条)。

政治の世界では社会党が、理論面では主に日弁連が反対意見の論陣を張っていたように記憶しますが、今になるとネットで意見書などが発見できないので、事実はよく分かりません。
以上の結果、正当事由に関しては新法制定前の契約に適用がないばかりか、新法制定後の契約でも実質的改正をしない方向で決着がついたとされています。

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