我が国では茶道や華道・能狂言・お寺の行事等全ての分野で、一旦様式化されると500年でも千年でもこれを守って行くのが尊いという意識が濃厚です。
憲法であれ民法であれ、一旦出来ると不磨の大典という扱いになります。
我が国では、小さな集落の祭りその他伝統行事は自分の代で絶やすことは出来ないという意識が強く、これがために全国あちこちでいろんな物や行事が残っていて、それ自体は良いことです。
時々思い出すための行事として先祖の営みを残すことと、日々の生活ルールあるいは新たな技術変化に応じてその運用・・規制を変えないでそのまま残していくのが良いかは別問題です。
洗濯機その他の家電製品1つとっても分りますが、新しい家電製品を買えばこれに応じて洗濯機や掃除機・テレビ等の使い方が変って行くのが当然で、古い機械の使い方(ルール・マニュアル・操作方法)と違うからと言って、新機械導入をやめるのって滑稽ではないでしょうか。
新しい家電製品を買えば、古い機械の使い方にこだわらず新しい機械の使い方に慣れれば良いことです。
二階以上に上がるには階段で上がることは当然でしたが、これがエレベーターやエスカレーターが出来ても階段にこだわる人はこだわればいいことですが、親の教えと違うと言ってエレベータに乗らないで30〜40階まで歩くべきだと言えば笑い者です。
障子がガラス戸になり、薪を燃やしていた風呂等の火力がガスになるなど全ての分野でいろんな操作手順が変わっても誰も怪しみません。
親の教えた仕事の手順が口頭で教えられていたのが、今では法律や法に基づく規則や基準になったために変更が難しくなりました。
生活のしきたりに代えて文書化されている上に、親の教えという個人的なものから集団意思・ルールになっているので、個人が勝手に簡単に変えられなくなったのが厄介です。
親の教えを変えるかどうかは個人が決断するだけですが、社会の意思になると個人の思いつきで変更出来ないのですから、ルール変更のルールを作る必要が出て来ました。
ただ、畳・障子文化が失われるのは悲しいと思う人がいても日常生活の便利さには代えられないので、古い生活様式・用具はなくなって行くばかりですが、懐旧の情に浸りたい人が増えれば・・これに比例して古風な旅館等が商売になるので、この種の和風高級旅館が繁盛するのでそんなに心配が要りません。
商売にならない分野に関しては・・各地の民族博物館等に残して行くしかないでしょう。
先日佐倉の歴博に行ってみたら、デパートごとで売っていた正月のおせち料理の変遷が展示されていましたが、ホンの数十年前のことでも目の前から消えて行った物が多いのに驚かされます。
お祭りは伝統行事保存の最たる物ですが、元々始まった当時は伝統保存のために始まったのではなく、その当時最先端のイベント・・庶民を楽しませるために始めたものでしょう。
現在のサッカーや野球大会あるいはソーラン大会みたいなものだった筈です。
数百年後にはソフトボールやテニスや野球・ボクシング等や、「◯◯をお願いします」と候補者の名前を連呼して走り回る選挙活動なども懐かしい古典行事として残って行くのかと思うとおかしな気がします。
ネット選挙になれば、今までの選挙カー+ウグイス嬢による選挙活動が意味がなくなって行くでしょうが、どうしても残したければ新しいことに反対しないで、伝統行事保存活動に精出せば良いように思います。
薬局の対面販売問題も同じで、過去の良き伝統として博物館に残すのに協力しても良いと言えば、反対論が下火になネット販売解禁になり易いように思います。
今後新基準規制変更新基準を導入したい勢力は、いろんな旧基準を伝統技術として保存することに協力しますとバーター取引を申し出れば、守旧派も軟化して新基準採用が進み易いのではないでしょうか?
郵政民営化したい勢力は、公営当時の郵便局専門の博物館を作って公務員的対応技術を伝統技術として残してやると言えばどうでしょうか?
国鉄民営化のときも博物館化して昔の横柄な国鉄マンの応接技術を残しておけば、面白かったように思えます。
そうすれば、JRに移籍出来なかった昔気質の(横柄な)国鉄マンでも、一定数の雇用が確保出来て解雇無効裁判が起きなかったかも知れません。
日本古代では大和朝廷が出来るときに八百万(やおよろず)の地方神を、必ず祭ることにして平和裏に大同団結・国ゆずりが成立)出来ました。
単に弱い者・・時代遅れな物を打ち壊すのではなく、大切に祭る・・この精神でやれば良いのです。
社会発展に必要なことは、緩和だけではなく新時代に適合した新たな(もっと複雑な)規制に変更することですが、これを何故か「緩和」と言うから誤解が生じます。
(ネット選挙を解禁すればその面では緩和ですが、解禁以前よりもっと複雑な規制が必要になるでしょうし、ラジオ→テレビ→ビデオ→パソコン・・何ごとでも新技術の方が多機能な分、操作手順が複雑化する傾向があります。)