交付金の使途2(積み立てていたら?)

福島第一原発周辺市町村では、標準計算通りとしても約5400億円を当初から全部受け取った訳ではないので、その関係のおおざっぱな運用計算をするために福島第一原発の時間軸を紹介しておきましょう。
2011年6月11日掲載のウイキペデイアの福島第一原発に関する記事・年表では

「1964年7月には最初の60万坪については交渉を妥結、・・」(全部で90万坪予定)
「1970年(昭和45年)11月17日 :1号機の試運転を開始、1971年(昭和46年)3月26日 :1号機の営業運転を開始」
「1974年(昭和49年)7月18日 :2号機の営業運転を開始」
「1976年(昭和51年)3月27日 :3号機の営業運転を開始」
「1978年(昭和53年)4月18日 :5号機の営業運転を開始」
「(同年)10月12日 :4号機の営業運転を開始」
「1979年(昭和54年)10月24日 :6号機の営業運転を開始」

となっています。
2011年6月9日に紹介したように交付金の支給は原発施設の完成稼働後ではなく、立地計画決定後・用地買収開始・・竣工・・運転開始10年前からの支給開始です。
一基当たり(標準計算)では、運転開始10年前から運転開始までに391億円、運転開始後10年間で502億の交付で合計20年間で約900億円弱の迷惑料が支払われます。
福島第一原発の上記年表によると、福島第一原発立地市町村では、標準計算によると1号機に関しては合計900億円弱を1981年までに貰っていて、1989年までには6号機まで合計約5400億円弱全部を貰い終わっていることになります。
最後の6号機運転開始の1979年までに交付された金額は、運転開始前に払われた金額・・6×391億円=2400億弱ですが、この時点では1号機は運転開始後9年も経過していて約500億がほぼ貰い終わる直前ですし、2号機だって5年も経過していますので約7割の350億を貰っているとすれば(支給は10年均等割ではなく、最初が大きく次第に減って行く形式です)これらを順次プラスして行けば、1979年には3000〜3500億円前後は貰い終わっていたことになります。
1979年から今回の震災までの期間は32年弱ですから、仮に30年間の運用益としてみれば莫大な金額になっている筈です。
仮に年5%の単利運用でも20年で100%、(元利合計6〜7000億円)30年だと150%(元利合計7500〜8250億円)です。
実際には単利運用はあり得ないので、仮に5年に一回利息を元金に組み込んでも巨額になります。
今でこそデフレ下で金利運用益は低いですが、バブル崩壊の1990年前後までは10数%の運用が普通でした。
以下は、平成12年度会計検査院の決算検査報告の一部です。
「昭和51年1月から59年12月までの9年間で平均0.054ポイント(政保債平均利回り7.667%)と、変動もほとんどない安定した発行環境が続いた。・・」
政府発行債でもこんなものですから、(上記0、054と言うのはこれに上乗せするスプレッドのことです)資金需要の旺盛な民間の公社債・・投資信託で運用すれば、我が家の経験では年利15%前後の利回りが普通でした。
信託銀行の貸付信託に預けると、年利7〜8%で複利計算してくれるので5年でⅠ、5倍、10年でちょうど2倍になると言う触れ込みでしたし。
(20年で4倍ならば1兆4000億以上30年で2兆7000億になっていますし、信託銀行に預金するしかない庶民と違ってもっと有利な運用があった筈です)
土地の値段はあっという間に2倍に上がる時代でしたから・・・債券の利回りも高かったのです)
もしもの災害積立資金に充てるために前金で貰っていたとすれば、一定割合は積み立ててておくべきですから、このうちの元金部分だけ全部を今回の具体的被害者に分配しても、なお地元には、貰った元金の何倍もの資金が残る勘定です。
ちなみに福島第二原発は、第一原発のある大熊町に境界を接する富岡町と楢葉町の境界に以下の通り設置されています。
1号機 – 1982年4月20日
2号機 – 1984年2月3日
3号機 – 1985年6月21日
4号機 – 1987年8月25日
一基当たり約900億円の交付金は立地市町村だけはなく周辺自治体にも一部分配されていたとしても、これら4基に対する交付金の一部も双葉町と大熊町は隣接自治体としてもらっていたことになります。
おおざっぱな計算としては合計10基分約9000億円がこの地域に交付されていたとして計算するのが妥当でしょう

交付金の使途1

迷惑料とは言え、これほどの巨額資金が何の被害補償も予定・含まれていないとは考え難い・・実際の被害を想定考慮せずに不安感に対するだけの補償金に過ぎない・・貰った迷惑料では何の被害対策もしないで海外旅行や温泉物見遊山で使ってしまい、被害が出たら、国民全部の負担で更に100%被害補償してもらおうと言うのは虫がよすぎる感じではないでしょうか?
原発は金になるし普段何の実害もないのですから、(その点日々騒音被害や米兵の犯罪に悩まされている沖縄の基地とは違います)6月9日に書いたように自治体が新設誘致決議をしているのが実態です。
実害を受ける時にはお金をもらっていないかなり遠くの住民にまで迷惑をかける放射能被害は、前回比喩的に書いた地主がお金欲しさに暴力団や産廃業者に土地を貸してゴミの山にしたり暴力団員がしょっ中出入りして近隣住民に迷惑をかけているのとあまり違わない構図です。
近隣住民にとっては、放射能が飛んでくると避難しなけばならないのは5km以内も10〜20km以内も同じなのに、産廃投棄地や危険物扱いの土地を貸して近所に迷惑をかけて自分だけ大金をもらっている地主と似ていませんか?
依頼主が暴力団とは違い国策に副っていると言うお上の威光が背景にあるだけの違いでしょう。
こんなことを書くと被害者に対して気の毒に思わないかと言う非難を受けそうですが、気の毒な現状の事態の多くは地元市町村を含めて地元住民に至るまで、危険だ不安だ不安だと反対して巨額補償金を貰いながら、上から下まで誰もが危機管理・事前準備に気を配らずにいた結果に起因していることをこの際明らかにしておくべきです。
今後準備不足による被害拡大の繰り返しを防ぐためにも、「これまで貰っていた巨額資金を何に使ったのか?」過ぎたことは仕方がないとしても・・私は過去の政治家の責任を追及しましょうと言うのではなく、今後も迷惑料として巨額資金を貰う以上はその資金を活きた使途・・活用して欲しいと言う意味で書いています。
ちなみに福島第一原発が直接立地している双葉町(ウイキペデイアによる2月1日現在推計・6,884人)と大熊町(11,574人・推計人口、2011年2月1日)住民は合計しても2万人に足りません。
両町だけで20年間5400億円(ただし標準計算によります・以下同じです)を独り占めしないで周辺にも少しは行き渡っているのでしょうが、今回の30キロ圏避難対象地域住民全部で14万人前後らしいです。
住民登録数の合計を出せば、後は小さな誤差の問題ですから、先ずコンピューターで即時(2〜30分もあれば4〜5町村の合計は集計して発表出来る筈ですが、政府は何故かこれを秘密にして発表しないので不明です)彼ら全員に5400億円弱(過去約40年のうち20年分だけです)でも分配すれば一人当たり(赤ちゃんや病人高齢者を含めて)約385万円あまり・・3人家族で1157万円配れることなります。
上記計算は、1989年までの20年間に貰ったであろう補助金の元金だけを配る計算ですから、資金運用益を加えれば膨大な資金準備ができていたことになります。
(補助金だけではなく、用地買収費・・原発敷地(90万坪)や道路拡幅用地買収・港湾改修費による漁業補償金等が個人に入ったお金だけではなく、建設後の固定資産税その他市町村への税の入金も莫大でしょう・・・6月9日に紹介した通り一基当たり建設コストが4500億円×6=2兆700億円?とされていますが、GEその他大手企業への支払が多く地元に落ちる資金は少ないかも知れませんので計算は出来ません・・・ここでは無償で支払われた交付金だけで書いています)
この交付金は20年経過したらゼロになるのではなく、その後も交付されていますので貰った資金はもっと多いのです。。
20年(運転開始後10年)経過後も立地市町村は補助金を貰い続けているのですが、そのモデル計算例が出ていないのでこの辺は後に別の角度から一応推計して見ることにして、ここでは運用益計算に入れませんから、実はもっと元手があるのです。
実際には資金運用のために交付金(迷惑料)を貰った訳ではないので、運用益を計算するのは机上の空論かも知れませんが、イザと言うときのために前金で貰っていたとすれば、マンションなどの修繕積立金などと同じで、ある程度積み立てておくべきだった・あるいは(個人が火災被害に備えて積み立てるのは現実的ではない代わりに火災保険に加入するように)保険加入しておくべきだったのではないかと言う前提で次回コラムで一応の推計をしておきましょう。

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