赤字国債の問題は、我が国では国内保有が殆どですから、一緒に生活している親が生活に困って同居している息子や娘に生活費の分担を求めたときに、息子や娘が一々借用証を親からとっているような関係です。
黙って(借用証などとらずに)分相応のお金を出すべきではないでしょうか?
民主党代表選(前哨戦)でも増税路線は不人気のようでしたが、これを見てこれでは破綻に確実に近づいてると見た格付け機関が8月24日頃に日本国債の格付けを「Aa3」に下げたのは当然です。
ただし増税を必要とする野田氏が代表戦で当選した(8月30日国会指名)ことは、ほんの少しでも期待が出来る結果になりました。
「今回は特別だから」と言っては、借金で賄う傾向が続けば、将来的には日本国債・借金は膨らみ過ぎて払えない事態が来ることは明らかですが、国民金融資産の合計と国債残高の数字が逆転するときまではさしあたり危機でも何でもないでしょう。
親子関係のない国債を差し引けば、=海外が保有している純粋な海外借金は約5%しかないことになります。
これがGDP比何%かこそを議論すべきです。
家計で言えば、お父さんが息子達に800万円借金しているが息子達の金融資産が(親に対する貸金を含めて)1400万円もある関係ですからお父さんの年収の何倍かを基準にしても始まりません。
お父さんが高齢化して年収がじりじり下がって息子からの借金残高が増えて行っても、息子の収入・貯蓄の範囲で息子から借りている限りその残高がお父さんの年収の10倍でも20倍でも関係がないことです。
息子の金融資産が目減りして行って1000万円に下がり、息子の親に対する貸付金が1000万円に近づくとネットの資産がほぼゼロになります。
これが逆転したときが危機感の第一段階ですが、この段階では貯蓄がなくなったというだけですから、まだ飽くまで「感」に留まります。
息子あるいは親世代合わせた一家の総収入が一家総支出よりも多い・・家計トータルでの収支が黒字である限り対外的には危機でも何でもありません。
とは言え、総収入の方が支出よりも多くて何故総貯蓄が減るのか?と考えれば、貯蓄減少が続き、収支ゼロになったときにはフローの家計収支も大分前からマイナス)になっているでしょう。
しかし、国際経済で見れば経常収支の黒字は家計部門の収支だけではなく企業活動による法人名義収支も含まれますので、個人金融資産が国債残高と均衡しても直ちにどうなる訳ではありません。
個人ではトントンでも企業や組織が海外に膨大な蓄積をしていることが多いのですが、(世界企業の海外投資残高)これをどう考えるべきでしょうか?
企業・法人資産は、煎じ詰めれば個人金融資産に収斂して行くべきであって、それ以上のことはありません。
トヨタやソニーその他大手企業がいくら海外に巨額資産を保有していても、その実質的権利者はその株主に帰属しますので、日本人がそれら会社の株式をどれだけ持っているかに帰することになります。
会社が海外に1000兆円の資産があってもその株主の殆どを外国人投資家が持っていて日本人はその1%しか持っていなければ、日本の海外資産はその1%しかない事になり、且つまさにこれは個人金融資産として既にカウントされていますから、結局は国の財産は、国の機関が海外に直接保有している資産(これも国民の預金・投資等をベースにしているとすれば、その分はゼロです)と個人金融資産の合計と同額でしかありません。
また法人の本社が日本にあっても法人は何時でも本社を海外に移転出来るので、何らの基準にもなりません。
金融資産残高で議論するならば、外貨準備と国債の海外(国内保有者外の国債残高)保有額の比較・・ひいては対外純資産がプラスかマイナスかの議論であるべきでしょう。
国際収支の黒字が続いている限り個人金融資産のプラス分がなくなっても大丈夫とも言えますが、国際収支の黒字も今後5〜6年持つかどうからしいとも言われています。
家計の収支と貯蓄の関係で書いたように、同期間のフロー収入よりも支出が多いから国全体の金融資産が減少して行くのですから、国内金融資産減少局面=国際収支の赤字が先に続くときですから、実際には、国内金融資産を国債が上回るようになると重大事態です。
国際収支の赤字化を防ぐには、収入以上の生活をしない・・家計同様に借金してまで消費しないことが肝要です。