政治と信頼1(意思表示の責任)

不確実性とは何か?要は相手が何をするか分らない・・下の者は何をすれば良いか分らない不安・信用出来ないと言うことです。
昔から政治には周辺者の支持が必須ですが、その支持は約束を守る信頼の上に成り立っているモノで、これ形式化・・「見える化」したの中国古代の韓非子・法家の思想であり、西欧近代の法の支配です。
現在で言えばマニュアル化でしょう。
法とは、国家・為政者の支配・命令の意思表示ですが、仮に一方的に制定されたものであっても、この命令に従った者に相応の恩賞を与えたり、処罰出来ない(罪刑法定主義)など君主自身の行動も縛られる・・国民との約束です。
国家が個別国民と個々に約束出来ないので、公布と言う形式で国民全部が拘束される約束・対世効があるのが「法」であり、個別意思表示でも相手方に対して法律効果が出る・・守らねばならないのでこれを法学用語で「法律行為」と言います。
民法
第五章 法律行為
    第一節 総則
(公序良俗)
第九十条  公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。
(任意規定と異なる意思表示)
第九十一条  法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。
(任意規定と異なる慣習)
第九十二条  法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。」
「法」とは国民が守るべきモノと言う意味であり、個人の意思表示に法律効果があると言うことは、意思表示したことは守るべき義務・責任が生じると言うことです。
企業が消費者の意見を聞かずに一方的に示す(民主的手続がなくとも)約款やレストランのメニューであっても予め示した取引条件・意思表示に企業自身が不特定多数の顧客に対する効果が出る・・縛られるのは「法」と個別「意思表示」の中間的場面です。
一方的命令・・通告であっても実効性を持たせるには、命令・ルール通りにしたことが褒められ、処罰されない・・しょっ中変えない・安定性・信用が重要です。
店舗も定休日や執務時をその都度変えると、せっかく行ってもお休みだったら困るので、客は安心てその店に行けません。
約束は守るが自分に不都合になると朝令暮改では、いつ変えられるか心配で国民や相手は安心出来ません。
議会制民主主義とは君主が勝手に国民に命令・約束出来ない・・側近に諮問していたのを民選の議会で作るようになった内部手続の問題であって、これを経ていない時代でも公布したり命令した途端に国民や官僚に対する約束になる点は同じです。
政治が機能するには、国民が法(政府の約束)に従っていれば大丈夫・政府を信用出来ることが大前提です。
「綸言汗の如し」言われて来た所以です。
これを世界規模に及ぼすと国際合意の重みです。
世界の覇者が法・・過去の国際合意を好き勝手に変更するのでは、民(世界の弱小国)は何を信じてよいか分りません。
アメリカは近年国力の衰えが見えるとは言え、今なお世界最大の強国ですし、アメリカの大統領は世界最高の権力者です。
この最高権力者がアメリカ主導で決めて来た過去の国際合意を自国都合で一方的に変更すると宣言しているのですから、今後アメリカ主導の国際合意をしても彼の気持ち次第で一寸先が見えないとなると、国際合意の価値が減少します。
トランプ氏は、「過去の合意をちゃぶ台返しするが、自分がした合意は守る」と言うのでしょうが、彼の任期は最長でも8年しかありません。
国際合意は長期間の行動指針ですから、大統領が変わる都度変更になるのでは、安心して長期的関係を築けません。
合意だから変更要請を断れば良いかと言うとそうは行かない現実があります。
アメリカの圧倒的影響力があって、高関税や輸入禁止、日米安保ももっと費用負担しないと撤収すると言われれば、日本は拒み切る力を持っていません。
戦前日本がアメリカの不当な要求に次々と屈服・受入れて来たのに対して最後にハルノートを突きつけられて遂に妥協の限界が来て日米戦争になりました。
戦後も自由貿易と言いながら繊維交渉、電気交渉、鉄鋼・半導体・プラザ合意などなどその他全て無理な要求全部受入れて来た歴史です。
日本は無茶な要求されれば、大方飲まざるを得ない弱い関係・・変更交渉に入れば思うままに変更出来る日米の力格差があります。
合意の変更を求めると言うのは一見公平そうですが、力関係に格差がある場合、強い方が言い出すのは一方的変更になり勝ちです。
これを横で見ている韓国がアメリカのように、日韓条約や過去の合意をスキなように反古に出来ると思うようになったように見えます。
韓国の主張や動きを見ると、オブラートで包んでいるアメリカやユダヤ系の本音をそのまま言って来る便利な存在です。
世界中が(3月11日に書いたように中国はかなりの抵抗力がありますが・)一強のアメリカから過去の合意変更を強要されると日本同様に拒み切れない関係ですから、過去の合意を変更したい・アメリカが高関税を掛けると言われるとみんな困ります。
関税を一方的に上げれば報復合戦になるとメデイアは言いますが、日本はとても報復する力を持っていません。
企業で言えば社長が変わる都度、弱い下請けに対して前社長時代の合意を下請けの不利な方向へ変更してくれと言って良いのかと言うことです。
世界最高権力者がこんなことを言い出せば、折角時間をかけて合意してもいつ変更してくれと言って来るか分らない・・権力者への信頼が失われます。
言わば事実上の強制ですから一方的に約束を破るのと結果が変わりません。
政治・権力は支配下の信頼によって成り立っているのですから、横紙破りの一方的なことを宣言すると一見権力誇示で強そうですが、アメリカ自らの世界支配構造をぶちこわす方向へ働くことになります。
国益・・王権維持のために王様は無茶しないのが鉄則です・・勇ましく荒っぽいことを主張すると一見強そうに見えますが、ヤクザがすごむのと同じでそのときの被害者一人に対しては強権を振るえますが、多くの人が眉をひそめる・・結果的に多くの信頼を失う結果になります。
アメリカにとっても長期的には損することですから、アメリカのメデイアは、国益を守るために政権の足を引っ張る方向よりは、政権を軟着陸させる方向へ協力すべきでしょう。
日本にとってもっとも危険な想定・・南シナ海や尖閣諸島問題放任政策への転換は単純レベル・アメリカンファーストの応用編でいえば、トランプ政権にとってあり得る選択肢です。

二国間交渉2(北方領土と自衛力)

経済関係についてのトランプ氏のアメリカ第一主義の実行は難しいとしても、アメリカ第一→国際政治関係から大胆に手を引く方向性は,アメリカの国力相対化の実態から見て正しい方向性ですから、実現して行くでしょう。
撤退縮小・・ある地域からデパートを撤退すると言う発表同様でその実行はそれほど難しいことではありません。
直ちに完全実行出来ないとしてもロシアに対する経済制裁関連は次第に緩むと見て(ロシアの国際孤立脱却の道が見えて日本利用メリットが減ったので)すぐに反応したのはプーチンで、時間をおかずに北方領土に関して対日融和路線を修正した印象の発言をしています。
トランプ氏の路線がそのまま実現出来るかどうかは別として地域大国の自由度(積み重ねて来た国際合意を踏みにじる権利・・横暴)を高めようとするものであり、アメリカ自身も出来れば無茶をやる仲間入りしたいと言うものですから、経済制裁解除〜緩和にも繋がるし既存ルール破りをしているロシアや中国に有利な展開です。
12月2日の日経夕刊一面には,トランプ氏が空調大手キャリアとメキシコへの工場移転中止合意したことを受けて同社工場を訪問して?海外に出て行く企業には高関税を掛けると演説した様子が出ています。
こんな脅しを露骨に受けた企業はスクムでしょうし・・こういう脅しがまかり通るようになると,中国で「共産党幹部にらまれたらおしまい」と言うことで裏で賄賂がはびこるのと同じ光景が始まるでしょう。
トランプ氏経営するいろんな傘下企業から,中国で大量の特許申請がていてみんな却下されていたそうですが,当選するとすぐに再審査されて,全ての?特許が通過したとの噂です。
このような動きが直ぐ出て来るでしょう。
アメリカは賄賂を厳しく取り締まっていますが,(ヒラリーは巨額献金していないと面会出来ないと言うシステムだったらしいですから・要は洗練されているかどうかだけで,既にアメリカは腐りかけているのです)名指して非難するのは・中国のように政敵だけ取り締まるようになるのと似た結果になりますから,余程国民がしっかりしないと一種の独裁・恐怖政治に移行して行きます。

中ロやエルドアン等の世界の独裁者にとっては、アメリカのトランプ氏が自分たちと同じ仲間に入ってくれると従来型欧米の批判が緩くなる期待で喜んでいることになります。
私の持論ですが、ロシアが謝って熨斗(長年の違法行為に対する詫び料)を付けて返して来るなら別ですが,そうでなければ北方領土返還にこだわる必要がない思います。
故郷は大事ですが、日本国内の他の過疎地同様で,実際にはふる里を捨てて都会に出るしかないのが現実・・ソモソモ元の住民が本当に帰島を求めているかさえ明らかでないのに、北方領土解決のためにどんな条件でも飲むような馬鹿げた返還実現にこだわる必要がないでしょう。
誰も戻りたくないとは表向き言わないでしょうが,北海道中で実際には過疎地を棄てて札幌等への移住が進んでいるのに、北方領土に限って逆に戻りたい人がいるとすれば,建前・政治的意図によるものでしょう。
過疎の島のために、返還後も沖縄のように膨大な補助金の垂れ流しになる上に、その後も不満ばかり言われるのでは御免です・・と言う本音をみんな言えないだけではないでしょうか?
不法占領を許せないと言うことで押して行くべきであって,頭を下げてお土産を出して返してもらうための運動が何故必要かの疑問です。
日本はソ連の条約違反の責任を明らかにしない限り戦争状態のママ・・受け取れない・・喧嘩状態で結構ですと言うべきでしょう。
韓国人に盗まれたお寺の仏像を返してもらうために,経済援助したり頭を下げてお願い行く必要があるかと言うのと同じです。
泥棒が盗んだ品を返すときには,返す方が「済みませんでした」と謝罪し示談金をプラスするのが普通の道義でしょう。
何故被害者がお金を積まなくてはならないのか理解不能と言うか,それでは犯罪者・侵略者が増える一方です。
隙さえあれば泥棒や強盗に入るチャンスを窺っているロシアと仲良くする必要をもともと感じません・・。
ロシアに返還の気がなくなったとすれば、もっけの幸いではないでしょうか?
ただし、トランプ氏の政策方向性による地域大国の違法行為誘発危険性・自由度が高まっていることは事実です。
ロシアの強気の変化で分るように,トランプ氏登場による実際に起こる大変化・・日本が国力不相応に最も弱い状態に置かれている軍事挑戦に対する備えコソが必要です。
アメリカ駐留軍は元々日本を防衛する気持ちはありません。
日米安保条約は占領軍の名称を変えただけであって,元々占領・植民地支配のための軍の性質はそのままでした。
独立国に「占領軍の性質剥き出しのママで居坐っているのははおかしい」と言う岸政権の努力でアメリカは仕方なし防衛条約に格上げ同意したに過ぎません。
物事の理解には由来が重要です。
仕方なしに「施政権の及ぶ範囲」の防衛義務を書いただけですから,本気で日本を守る気持ちは根っからありません。
ここで念のために日米安保条約の歴史(内容変遷)を見て置きましょう。
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/docs/19520228.T1J.html東京大学東洋文化研究所 田中明彦研究室
[文書名] 日米安全保障条約(旧)(日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約)によると以下のとおりです。
前文
 日本国及びアメリカ合衆国は、千九百五十一年九月八日に、日本国内及びその附近における合衆国の陸軍、空軍及び海軍の配備に関する規定を有する安全保障条約に署名したので、
 また、同条約第三条は、合衆国の軍隊の日本国内及びその附近における配備を規律する条件は両政府間の行政協定で決定すると述べているので、
 また、日本国及びアメリカ合衆国は、安全保障条約に基く各自の義務を具体化し、且つ、両国民間の相互の利益及び敬意の緊密なきずなを強化する実際的な行政取極を締結することを希望するので、
 よつて、日本国政府及びアメリカ合衆国政府は、次に掲げる条項によりこの協定を締結した。
第一条
 平和条約及びこの条約の効力発生と同時に、アメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍を日本国内及びその附近に配備する権利を、日本国は、許与し、アメリカ合衆国は、これを受諾する。この軍隊は、極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、並びに、一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じよう{前3文字強調}を鎮圧するため日本国政府の明示の要請に応じて与えられる援助を含めて、外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために使用することができる。
第二条
 第一条に掲げる権利が行使される間は、日本国は、アメリカ合衆国の事前の同意なくして、基地、基地における若しくは基地に関する権利、権力若しくは権能、駐兵若しくは演習の権利又は陸軍、空軍若しくは海軍の通過の権利を第三国に許与しない。
第三条
 アメリカ合衆国の軍隊の日本国内及びその附近における配備を規律する条件は、両政府間の行政協定で決定する。
第四条
 この条約は、国際連合又はその他による日本区域における国際の平和と安全の維持のため充分な定をする国際連合の措置又はこれに代る個別的若しくは集団的の安全保障措置が効力を生じたと日本国及びアメリカ合衆国の政府が認めた時はいつでも効力を失うものとする。
第五条
 この条約は、日本国及びアメリカ合衆国によつて批准されなければならない。この条約は、批准書が両国によつてワシントンで交換された時に効力を生ずる。
 以上の証拠として、下名の全権委員は、この条約に署名した。
 千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で、日本語及び英語により、本書二通を作成した。」

上記旧安保条約第一条はいわゆる内乱条項ですが,これを見ると日本の要請がなくとも米軍はアメリカに都合の悪い運動があれば,独自に鎮圧のために自由に出動出来ることになっていました・・マサに植民地支配軍そのものでした。
第一条は西欧諸国が植民地独立を認めるにあたって施行していた絶対的に譲れない条文(・・フィリッピンでも独立を認めるときにこの条文が入っているとのことです)です。
独立後の条約でありながら,日米安保条約は(日本独立認める条件として)占領軍の性質そのままの地位継続を保障する条約が(当然アメリカは日本の要請で駐留すると言う仕組みにしていますが・・異民族に占領を続けて欲しいとお願いする・・こんな酷い条約を望む国はあり得ませんから,)憲法の交戦権法放棄条項同様に事実上強制されていたことが分ります。
占領軍が好き勝手に国内鎮圧出来る条文がある限り、独立国とは名実共に言えません。
そこで、日本は独立後粘り強くこの条項の撤廃を求めていて漸く成功しかけたのですが,これが国会で批准しないと効力が出ない・・すなわち日本占領が続く仕組みでしたから,これに反対する勢力は日本が従来どおりアメリカ占領下にいた方が良いと言う主張をして大騒動を起こていたことになります。
日本の独立第一歩になる条約改訂を妨害して元の占領条約に引き戻そうとしていたのがいわゆる60年安保騒動だったことになります・当然アメリカが裏で糸を引いていたでしょうから,騒動が大きくなればなるほど良い・・鎮圧のための軍を出動しません。
(世界中の政変の多くはCIAの仕掛けだと言う陰謀論が普通に言われています・・日本では,戦後初めてアメリカ離れを画策した田中総理の追い落とし策として日本人を利用した「金脈人脈」の発表で退陣に追い込み,ロッキード事件はイキナリアメリカから証拠が出て来た不思議なもので,田中氏のとどめを刺すためだったことが知られていますし、ソ連崩壊儀日本が無用になった途端に日本叩きを受けている真っ最中に「アメリカ財務省証券の売却も出来る」のだと発言した橋本総理の急激な失脚もアメリカの意趣返しが言われています。)

世界の警察官から軍事同盟へ(太平洋二分論の基礎)2

トランプ氏に至っては、「相応の防衛費を分担していない」と今から日本に難癖つけているのですから、非武装憲法を押し付けた歴史を無視(または無知?)し、「日本防衛義務を果たしたくない」と選挙戦で公言しているようなものです。
ただし、その後の勉強の成果かどうか不明ですが対日批判をあまりしなくなったようですが,アメリカはこれまでのような負担をし切れないと言う点はどの候補者が大統領になっても変わらないでしょう。
アメリカ(トランプ氏)の戦略は、日本だけ標的と言うのではなく、「ニクソンショック以降のアメリカは中長期的目標としては自国に必要な範囲・・当面東太平洋さえ確保すれば良い→世界の警察官をやれない」と言う基本認識の一環としての話で、これが内々の話ではなく表に出さざる得なくなるほど経済的に切羽詰まって来たことによります。
以下は仮定の話ですが、戦後直後に圧倒的国力差を背景に世界各地の米軍駐屯地で必要経費の9割を負担していて、その後各地の経済復興を反映して現地政府負担率を引き上げてアメリカの負担率を減らして行き、今では半分を切っているとした場合、これが更に減って3割〜1割〜5%と下がっていくと、この負担率減に比例して地域安保に与えるアメリカの影響力が下がって行くのは避けられません。
北朝鮮問題も自国だけでは決められない・6カ国協議・・中国の出方次第になっている所以です。
ちなみに今の在日米軍経費については、日本が既に約半分以上を負担しています。
http://rick08.hatenablog.com/entry/2016/05/06/070000からの引用です。
ウオールストリートジャーナルで公表されたものらしいです。
「武器弾薬なんかの装備のお金に加えて、米軍関係者が約9万6,800人、さらに、日本人2万5,500人が事務員、消防士、医師などとして働いているそうです。これらの人件費と、基地の使用コスト、近隣の騒音対策費用などなどで合計年間102億ドルほどかかります。ざっくり1兆1千億円ほど。うち、米国が負担しているのが55億ドル、日本が負担しているのが57億ドルです。更に、日本は、グアム移転費用など、ときどき追加コストも負担しています。」
「アメリカの軍事費の総額は5,830億ドルだそうです(2017会計年度)。なんと日本円換算で64兆円!日本の軍事費の13年分!!これを毎年使ってるとか、勝てる気がしない。
 そのうち、在日米軍の年間費用は55億ドルは軍事費全体の0.94%にあたります。」
日本駐留経費の半分以上を日本が負担していますが、沖縄基地はベトナム戦争時の出撃基地だったことからも分るように、今でも中東までのアジア全域をカバーする基地ですから、日本安保のためだけの基地ではありません。
しょっ中米韓合同演習をしていますが、日本に基地がなければ大変・・遠くから出て行けば莫大な時間コストがかかるので演習する回数・規模が縮小します。
アジア全域にわたり(米軍の都合に合わせた)ヘゲモニー維持のための軍事費の半分以上を、日本が負担して(させられて)いることになります。
この少ない予算でもケチりたくて・・もっと日本に負担させたくてトランプ氏が大げさに騒いでいるし、米軍基地の沖縄からグアムへの移転計画も着々と進んでいます。
沖縄基地反対闘争を利用して移転費用を日本に負担させる形式ですが、自国防衛に必要なことしかしたくない・・戦線縮小計画・・長期戦略の一環でしょう。
上記データ紹介を見ると全軍事費の1%足らずしかアジアで使っていないし、戦力をグアムの内側へ下げ続けている現状を見れば、アメリカのアジア重視宣言は殆どジョークみたいなもの・・本気度が分かります。
アメリカが実際にやっていることは、当面グアムの線で守れば良いと言う・・マサに太平洋2分論の実践です。
これでは中国がグアムの外側では何をしても良いと言う態度・・アメリカをバカにしたような行動・・国際ルール無視の傍若無人の振る舞いをするようになったのは当然です。
比喩的に言えば、戦後直後には現地国同士の紛争があっても両国兵力合わせてもアメリカ駐留軍の1割しかないような場合、アメリカがどちらの味方するかの表明だけであっけなく勝負がついてしまうので、実際のアメリカ軍出動さえ必要がない状態でした。
「パックス◯◯」と言う状態は、圧倒的兵力差があってこそ成立するものです。
アジアでは、対中国関係で上記のような圧倒的兵力差がなくなっているどころか、そのうち中国に逆転(現在戦では兵器性能差が重要ですので、単に航空機や潜水艦等の数の差ではありませんが・・)されそうな気配です。
最早世界の警察官をやっていけないが同盟は維持したい・・アメリカの基本戦略からすれば、グアムの外側・・日本やフィリッピンがアメリカに従属してくれているのは有り難いがそれだけのことです。
日中,中台、中越の争いでどちらがその地域の覇者になろうとアメリカにとって死活的関係がない・・どうでも良い・どちらかに肩入れしてアメリカ人の血を流すメリットがないと言うのが、基本戦略と思われます。
と言うよりは圧倒的兵力差がなくなっているので、現地紛争に関わると自分も大きな損害を受けるリスクが高まっているからです。
せいぜい情報提供や兵器供給や訓練程度の協力をしても良い・もめ事が多くなって兵器の販路が広い方が良いと言うのが本音でしょう。
尖閣諸島や沖縄が中国支配になるより日本が支配している方がアメリカの安全にとってプラスと言うだけ、韓国でのサード配備も少し早めに中国の動きがつかめる程度のことです。
どちらかと言えば、韓国に対する「踏み絵」を迫った程度のことです。
沖縄基地や三沢基地から引き上げても、グアムや人工衛星でデータ収集するのと大差ない時代があっという間に来る・・それまでは日本に情報収拾させれば足りる・駐留コストを掛けたくないだけではなく・・近過ぎるリスクの方が大きいと言う意見ではないでしょうか?
実際に朝鮮半島で駐留米軍をドンドン減らしているのは、朝鮮戦争時には、数十km後方でも安全な後方基地だったでしょが、今の時代・・数百km単位の後方でもイザとなると前線基地とリスク・壊滅リスクがほとんど変わらないことによるようです。
南沙諸島が中国支配に入って・・海上輸送ルートが中国に押さえられて日本が困ろうとも、中国がアメリカと友好関係を約束するならアメリカにとって死活的重要性がありません。
ロシアのウクライナ介入やクリミヤ占領に対しても同じこと・・アメリカ国防に何の関係もない地域紛争に血を流すほどの関与したくない・・日本からグアムへの後退作戦も日本の(対中)戦争にアメリカが巻き込まれたくない意思表示・・沖縄にいながら防衛協力しないわけにはいかないでしょうが、沖縄にいなければその内応援に行きますと言う程度で済みます。
アメリカの長期戦略を・・合理的に考えて行けば、太平洋二分論・・グアムでの線引きは(中国が言い出したと言うよりは、)かなり前からのアメリカ自身の基本戦略であったコトを中国が確認しているだけ・・だから明白に否定出来ないのだと思われます。

世界の警察官から軍事同盟へ(太平洋二分論の基礎)

江沢民は1年間に4回もの訪問で相応の手応えを感じたので、これをはっきりさせておくためにだめ押しとして公衆の場で真珠湾演説を行なったと見るべきでしょう。
本当に信用出来る内諾があれば秘密にしておくのが普通ですから、アメリカが世界中が見ている場で否定出来ないと言う程度・・逆の押しつけをしたと見るべきかも知れません。
習近平がオバマとの初会談時だったかに強引に「太平洋二分論」を提案してオバマが否定出来なかったこともワザワザ公表されています。
(首脳会談は綿密な事前擦り合わせがありますが・・仮に唐突な提案であったとすれば・・)初会談では突然のことで想定していなかったのでどう対応すべきか決断出来なかった・優柔不断と言えないこともありませんが、今夏中国で開催されたG20でも太平洋二分論が習近平によって繰り返されたことが報道されていますが、オバマはやはり否定しませんでした。
いずれにせよ習近平の太平洋二分論に対してオバマだけではなく、江沢民の真珠湾演説時の日本敵視発言をブッシュも明確に否定しなかった点が重要です。
アメリカ歴代大統領の対応を見ると、中国が仮に日本を攻撃したり南シナ海が封鎖されても、アメリカが日本の自助努力がどうのと言って直ぐに参戦せずに、ぐずぐずしている事態が容易に推測されます。
南シナ海封鎖が実行された場合に封鎖されたままで「話し合い解決で・・」と悠長なことを言っていると、日本は日増しに不利になります。
中国の軍事基地が出来上がる前に実力で阻止しないで放置しておいて、出来上がってから実力で取り壊すにはイラクのクエート侵攻後の第一次イラク戦争のように圧倒的兵力差がないと無理があります。
「話し合い解決を期待する」と言うのは、一方が実力行使していない段階では合理的ですが、一方が実力行使しているのにこれを原状回復させないままで話し合い解決を求めるのは「実力行使を受入れろ」と言うに等しい無責任な態度です。
日本の非武装論者と同じで、相手が実力行使した場合どうするかの議論が抜けていて・・強い者がスキなように出来るルールです。
最近のアメリカのやり方はすべからく・・ウクライナ侵攻〜クリミヤ併合も・・実力行使を阻止しないで実力行使の結果をそのまま認める・・現状追認しかない最近の行動を見れば、・・内々その程度のゴーサインを出していた可能性の方が高いと見るべきでしょう。
これが今のオバマの優柔不断と批判されている裏事情です。
中国による南シナ海封鎖が実行された場合、日本が高額負担している日本駐留米軍が何か役に立つのでしょうか?
役に立つとすれば、今までの航行自由作戦のように時々行く程度でなく、アメリカ海軍がその海域に常駐して日本向け船舶を守ってくれるほどのことをしてくれないとどうにもなりません。
ただし、過去の同盟関係を見ても、(長篠の合戦でも信長の援軍が来るまで守り抜いたように日露戦争時の日英同盟も皆そうです)応援軍が来るまで一定期間自力で守り抜くのが現地軍(砦)の勤めでしたから、「ある程度自力で守って下さい」と言うアメリカの主張はあながち無茶な主張でありません。
実力行使阻止のためにアメリカ軍が介入するには時間がかかるので、その間くらいは自力で守る必要がある・・これが自衛軍の必要性論です。
このシステムがあると、空き巣狙いのような戦争開始の誘惑を阻止出来ますが、非武装論は短期間でも自衛の必要がないと言う意見になります。
初戦だけではなく、応援軍が到着してからでも応援を頼んだ軍が危険を顧みずに真っ先に戦う気持ち・・危ない戦闘を応援軍に頼りきりですと、応援部隊はイヤになってしまいます。
南シナ海封鎖の場合、アメリカに全面依頼するだけではなく当然日本海軍もアメリカ軍との共同作戦に従事する気構えが必要です。
ただしこれまでの自衛の定義では、船舶航路の妨害排除は含まれ難いような印象ですからこの辺・・自衛の範囲に関する法整備が必要です。
昨年制定したいわゆる安保法でもこの辺の出動要件がはっきりしない感じです。
全部を読んでいないので断定出来ませんが、「周辺事態」と言ってもこれまでの議論では米軍に対する援護論であって、自衛隊が先に出動する必要がある場合の要件が分りません。
アメリカが「世界の警察官をやれない」と言う意味は、アメリカが圧倒的経済力・軍事力を背景に現地常駐し,米軍が出ると周辺が従うしかなかったのでこれが普通のように期待していただけであって、これが出来なくなっただけです。
世界の警察官と軍事同盟の違い・・警察の場合、市民は丸ごと治安をお任せ・・丸腰ですが、軍事同盟の場合、同盟国間で力の強弱があるとしても、応援を頼まれてから駆けつける・・一定程度までは自力で守るのが原則です。
ニクソンショック以降アメリカの基礎体力が落ちる一方ですから、具体的な応援要請もないのに日常的に警察官役を果たすのは無理が出て来たことは確かです。
まして同盟国に自国軍を常駐させて日常的に守ってやるほどのコストを負担する関係ではありません。
アメリカでは◯◯違反と言っては、毎年のように欧州企業から何兆円規模の懲罰→和解金をとっていてこれが欧州の不満のタネになっていますが、(いま話題になっているのはドイツ銀行に対する懲罰金の巨大さです)これでは財政難に苦しんでいた徳川幕府が時々豪商を取りつぶしていたのと同じやり方です。
これを繰り返し発動するしかないこと自体に、アメリカのジリ貧・・資金不足・・政権(国際的発言力)末期到来を表しています。
この数年タクスヘイブンが大テーマになっているのも、全てアメリカの資金不足に由来しています。
上記のとおりアメリカは今後警察官役を無償で果たせないが、同盟関係(相互関係ならば)はまだやりますと言う段階です。
これが相互防衛条約=集団自衛権が必要になって来た我が国の事情です。
※ただし日本の場合「アメリカが非武装を強制してその代わりアメリカが守ると言う約束です」からこの辺が他国とは条件が違います・・念のため・・。
平和憲法の根幹は、市民と警察のような関係・・アメリカ軍が駐屯して日常的に平和を守ってくれることが前提・・「警察が犯罪を制圧する前提であって、国民が自力で警察官が来るまで強盗犯と渡り合う関係」ではありません。
アメリカが世界の「警察官役をやめて普通の軍事同盟関係に戻る」と言えても、日本に対しては、平和憲法を強制した以上・・あるいは核武装を禁止している以上は核の脅威から守る義務がありますから丁寧な擦り合わせが必要でしょう。
「核の脅威から守らない・・自力で守れ」と言いながら、核兵器所持を禁止・・核不拡散条約遵守を求めるのは矛盾してしまいます。

米軍占領政策2(二重支配)

今回は前回書いたアメリカが占領当初朝鮮人を使って間接支配しようとしていたという情報が真実であったとした場合の話です。
人望のない少数民族に支配させるとそう言う民族は公正な政治が出来ず、無茶をやることが多いので、政権は民衆の支持を永久に受けられないので、しょっ中国内が揉めます。
・・たぶん朝鮮人が日本の支配層になって今も君臨している状態を想像すれば分りますが、専制君主制しか知らないので、今の北朝鮮みたいな絶対服従政治を強制していたでしょう。
その結果、国内はしょっ中揉めて大変な社会になっていた筈です。
裁判所もみんな朝鮮人で固められていると公平な裁判が期待できず、不満がたまって来ると米軍が出て来て超法規的に救済してくれる・・占領軍のアメリカは格好いい役回りです。
仲裁役としての植民地軍・・正義の味方のように裁いてくれる植民地軍の影響力が強くなって、日本人は朝鮮人の横暴から救ってくれる米軍の駐留を望むので、植民地支配が永久的に安泰だからです。
何と恐ろしい計画だったでしょうか?
「日本人を奴隷にするにあらず」わざわざ明記したポツダム宣言を紹介して、本当はどうやって奴隷支配しようかと計画していたのではないかとの疑いがあると11/30/06「ポツダム宣言」前後で連載し「米国の残虐行為と歴史ねつ造1」Published October 26, 2012でも書いたことがありますが。
もしも朝鮮人を支配者に据えようとしていたとすれば、本気で日本民族を他民族の支配下に置いて隷属化を固定すること・・事実上の民族奴隷化を計画していたことになります。

[年月日] 1945年7月26日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),73‐75頁.条約集第26集第1巻,5‐7頁.
1〜8省略
九 日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルベシ

十 吾等ハ日本人ヲ民族トシテ奴隷化セントシ又ハ国民トシテ滅亡セシメントスルノ意図ヲ有スルモノニ非ザルモ吾等ノ俘虜ヲ虐待セル者ヲ含ム一切ノ戦争犯罪人ニ対シテハ厳重ナル処罰加ヘラルベシ日本国政府ハ日本国国民ノ間ニ於ケル民主主義的傾向ノ復活強化ニ対スル一切ノ障礙ヲ除去スベシ言論、宗教及思想ノ自由竝ニ基本的人権ノ尊重ハ確立セラルベシ
ビルマで今に残る少数民族問題はこうした英国の手先に使った残党が、英国軍が日本軍に追い出された後にも未だに根強いことから起きていることです。
独立を果たしたビルマ軍は当然英軍の手先だった少数民族をそのまま優遇する訳がありません。
少数民族圧迫政策が米英の癇に障って、(アメリカの息のかかった軍事政権は世界中に一杯あるのに)軍事政権を言いがかりにしたミャンマーイジメになっているのです。
中東諸国では何故かシーア派等少数部族や宗派が支配階級についていることが多く、(逆にシーア派の多い国ではスンニ派が支配層になっている)国内紛争が絶えないようになっているのは、こうした英国の植民地支配の常套手段の歴史・・置き土産に由来します。
アフリカではインド人を連れて行って間接支配して現地人の憎しみをインド人に向けさせて東南アジアでは華僑を利用して支配階層にして憎しみの矛先を華僑に向けさせる・・何か暴動があるとまず華僑商店が焼き討ちに遭う光景を戦後何十年もインドネシア等で報道されて来た構造要因です。
アメリカは日本国内の紛争の種を在日朝鮮人という形で残しましたが、支配階層という変則な形では残すのには失敗したことになります・・。
支配させるのに失敗してしまったので、今度の反日運動の激化がないと70年近くも前のことで・・戦後朝鮮人が威張っていたことすらみんな忘れかけていました。
その代わり、今で言えば、極東という大きな地域では一番将来性のある日本を中韓と反目させておく戦略・・竹島紛争と尖閣諸島の紛争を敢えて残しておく・・中韓と日本を揉めさせておいてアメリカが正義の味方のごとく仲裁しようとしています。

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