TPPと主権6(地方自治体の条例1)

今年は北京を中心にした公害によるスモッグPM2・5が世界中で問題になっていますが、遂に春風に乗って来たらしく、3月10日午後2時半ころ千葉市内(22Fレストラン)で家族で食事中に窓外を見ると黄砂らしいもので視界が遮られるようになり数kメートル先にある稲毛駅付近の高層ビルがかすんで見えないほどになりました。
中国に遠慮しているマスコミはこれは黄砂によるものではないと言うようですが・・国民はマスコミ不信ですから簡単に信用しないでしょう。
群馬に行っていたある人の話では、車の上につもった粉末に手を載せると指紋がくっきり分るほどの細かい粒子だったと言います。
日本の土埃ではこんなことはあり得ませんから誰もが黄砂の飛来だと思っているでしょうが、どうして気象庁は煙霧と言い張るばかりでpm2,5濃度など発表をしないのか不思議です。
(こう言う現象を煙霧と言うのが正しいとしてもその中にどう言う物質が混じっているかを国民は知りたがっているのですが・・)
韓国では全く中国の公害報道はしていないようですから、韓国人は北京のひどい公害を全く知らないようですし、一般人の意見と言ってもマスコミの方向性次第ですが、幸いネット報道が発達したので、マスコミ以外に知る方法が出来てきました。
こうなって来ると「公害で苦しむのは自国民だけだから中国の勝手でしょう・・」という中国政府の独りよがりに対する憤りは反中国意識の低い国民にも激しくなってきます。
反日運動による被害ならば、中国への投資した者の自己責任(リスクをとるのは当然)とも言えますが、公害被害の方は逃げることも出来ない・・自己責任でもないので、許し難いこととなってきました。
酷い自然破壊をしていることに対する国際世論が盛り上がって来ると、さすがの唯我独尊的中国も公害対策に徐々に腰を上げざるを得なくなって来るでしょう。
あらゆる分野での世界標準化でいろんな分野での条約締結をせざるを得なくなって来ると法制度の画一化が進んで行きます。
2013/03/08「TPPと主権2(ハーグ条約3)」で子どもの連れ去りに関するハーグ条約を紹介しましたが、いろんな分野で国際標準化が進み条約締結をせざるを得なくなって来ると条約加盟国の国会ではその条約に合うように法律を改正するしかありません。
主権国家と言っても条約に反しない範囲内で法を制定出来るに過ぎなくなって来ると中央政府の制定法の範囲でしか条例を作れない自治体に似てきます。
現在国家が出来たときから条約と国内法の関係は同じですが、従来条約などはホンの限定した分野での約束事に過ぎなかったので、国民の日常生活には関係のないことでした。
現在は個人的な親子問題にまでハーグ条約のようにズカズカと踏み込んで来て庶民の日常生活まで条約で規制される時代です。
租税条約、国際会計基準・金融機関の自己資本率その他日々の商取引にも大きな影響を与えていていろんな分野で自国だけで自由に決め切れなくなっています。
結果的に自由に法律を制定出来る分野が縮小する・・TPP に加盟しなくとも、主権がどんどん縮小しつつあるのが現在社会です。
条約まで行かなくとも、事実上拘束される分野が多くなっています。
例えばイラン制裁をアメリカが決めると、イランと取引している日本企業はアメリカ国内法に違反することになるので、アメリカ国内で金融や車の販売その他の取引が出来なくなります。
そこでアメリカに輸出したりアメリカで操業している企業は、日本からのイランとの取引さえ出来なくなるのが現実社会です。
アメリカに進出しているソニー・オリンパスが、今になって、何年か前にブラジル人医師に対するオリンパスの医療用品に関する研修のための対日渡航費用等をオリンパスが実費負担していたことが、アメリカ法の賄賂にあたるか否かが大問題になっているようです。
ブラジルや日本で汚職にならない程度でも、アメリカで汚職になるとアメリカで操業や販売が出来ません。
このようにそれぞれの国の汚職の基準が違うと、条約を結ばなくとも大国の市場で閉め出されるのが怖いことから、実際には大国の基準が幅を利かせることになります。
世界標準化の進行・画一化の進行に比例して企業にとっての海外展開コスト縮小→地場産業がマトモに風圧を受けることになりますが、この保護のためには関税を高くして自国内企業保護を図る方法があり、従来はグローバル化と言っても関税率の引き下げ程度で満足して来ました。
逆から言えば、後進国は自国産業が離陸するまでの時間稼ぎ・・保護のために、関税自主権こそが必須・・独立・主権国家の証(あかし)でした。
幕末に結んだ不平等条約撤廃に明治政府が苦しんだことを誰でも知っているでしょうが、まさに関税自主権の回復こそが明治政府の悲願でした。
TPPやFTAは関税による障壁を撤廃・縮小するだけではなく、お互いの懐に手を突っ込んで国内規制まで共通化しようとするのですから、言わば丸裸でつき合うことになり・・参加国全体で一種の国内市場化します。
人口2億の国にとって人口300万の国の市場が増えても大した効果がないのですが、300万の市場しかない国の企業にとっては、イキナリ2億の市場が一体化するのは大きな利益があるかのように見えます。
ところが実態は逆で、小国の企業は余程良い物をもっていないと大国の大規模な企業に負けてなくなってしまうのが普通です。
東京と周辺都市との交通の便がよくなると、地元老舗商店が衰退して東京の有名店の支店が進出するのと基本構造が同じです。
(大方の地方で地元資本百貨店・・元は地元の老舗がほぼ消滅してしまったし、過疎化に関しては、便利になると余計進む・・ストロー現象が原則です)

TPPと主権5(国民の需要)

国際標準化の進行に関しては大企業のごり押し・要請によるのではなく、国民の便宜に応える形で発展して来た側面があり、大企業が規模拡大・海外展開出来たのはニーズに適応してきた結果ではないでしょうか?
人の移動が活発化したことによって広域化・世界標準化が進んで来た結果、これに適応出来た企業が大規模化出来たと見るべきかも知れません。
商人は自己利益のために共通化を期待して来た面もあるでしょうが、それよりは消費者の広域移動のニーズに適応して来た結果の方が大きいように思います。
(製造業が出て行くと、関連下請けや金融・サービス業も現地進出するのは出て行った企業のニーズに応じるためです)
法律家も海外進出企業の需要に応じられる人だけが国際化出来るのであって、国際化したいから国際化した人がいたとしてもそれは例外です。
世界中で国民の移動拡大が常態化している現在では、製品に限らずいろんな分野で世界標準化が要請されています。
海外でも使える携帯や各種カード類の利用・・スポーツのルール、観光施設も世界標準でないと困りますし、(タオルくらいは最低あると思って行くでしょう)工業製品でも医薬品や食品あるいは公害規制・会計基準や税制その他いろんな分野で規制が画一化する=国際標準化が期待されています。
(日常的に服薬・所持している医薬品が入国先の許可薬品でないという理由で空港で没収されるのでは困ります)
商人は域内で成功すると域外に進出したい欲望が強いことも事実ですが、それだけではなく、消費者のニーズに報いたい欲求もまた本質的にもっていて、この本能こそがが商売成功の秘訣です。
農家基準で言えば、「自分たちは田舎者でお人好しだが、都会の人は信用出来ない」という言い方を子どもの頃に耳にタコが出来るほど聞かされましたが、実は逆です。
商人・・商工業の基礎をなす職人・特に我が国の職人は人のためになること・・良いもの物を作るのを生き甲斐・誇りにしている人が多いことを、日米半導体協定によって腕の振るい場がなくなって優秀な職人が韓国台湾へ逃げてしまった事例を2013/03/06「円安効果の限界3(アメリカの場合1)」で紹介しました。
職人に基礎を置く商工業者はいつも消費者の便利を考えて役立ちたいと思って、日夜商品開発努力をしています。
その努力の結果、海外に行っても使える携帯や金融商品カード類の開発に繋がっています。
ニーズのあるところに新商品やサービスが生まれるのですから、これを国ごとに違う規制を主権の名の下に墨守して国際商品化するのを妨害するのは感心しません。
明治維新・日本列島統一によって300諸候の領域内の警察権や統治権が失われましたが、これによって国民は移動の自由その他すごく便利になりました。
300諸侯時代には各地の方言や固有文化が今よりも色濃く残っていましたが、国語として次第に統一化され、各地の芸能などは保存対象になっていて、現役色がなくなっています。
主権維持・固有文化の維持の主張は尤もな主張のようですが、今でも300諸候ごとに別の法律や交通法規で生きて行く方がよかったとは、殆ど誰も思っていないでしょう。
各藩が、廃藩置県で県となり、更に統廃合されて今の地方自治体になったのですが、地方自治体に格下げされてもどこも文句を言いませんでした。
各大名家でどのような政治をしようとも自由であったとは言っても、事実上徳川家の決めた基準に準じて政治をしていたので、幕末ころには今の地方自治体程度の裁量行政しかしていなかったことによります。
吉宗が命じて大岡越前守が編纂した判例集積集である「御定書」については12/16/03「公事方御定書1(刑法4)(江戸時代の裁判機構1)」以下で連載をしたことがありますが、これは元々徳川家の内規で外部秘だったのですが、いつの間にか各藩に写しが出回るようになってこれを参考に各地で裁判していたことをどこかで書いたと思います。
この実績があったので、明治新政府が各地に裁判所を設けても直ぐにきちんと運用出来たのです。
人の移動・交流が交通・通信機関の発達もあって広域化・頻繁化する一方ですし、(民族混在を望みませんが)交流や広域移動・海外の商品が簡単に手に入ること自体は人が豊かに生きるには良いことです。
主権維持・固有文化を守れという超保守の情緒的訴えや観念的要求で、あるいは強者の論理は許せないという進歩的知識人の好きなスローガンで、広域化に伴う世界標準化の進展をぶちこわそうとするのは、産業革命時に起きたラッダイト(機械ブチこわし)運動同様に時代錯誤の恐れはないでしょうか?
新自由主義反対や超保守行動は、根を同じくする左翼右翼共通の行動形態のように見ます。

TPPと主権4(商人の立場1)

産業界では、主権・・沽券にこだわっているよりは市場が大きく広がる方が利益ですから、どこの国が主導して作ったルールでも構わないから商業ルールを統一してくれた方が商売し易いから歓迎となります。
(千葉県や埼玉県で作ったルールであっても東京が作ったルールでも両方の都県で共通ルールで商売出来た方が便利です)
商人はルールが第一ですから、統一ルール適用範囲が大きければ大きいほど活躍し易いことになります。
100キロメートルごとに違うルールの地域があるよりは、200km〜300km〜1000km〜5000km先まで同じルールの方が商売し易いに決まっています。
(100k走るごとに右側通行から左側に変わったり、そこまで乗って来た車が隣の国では無許可だから走れないとなったら戸惑うでしょう)
中国が現在社会で異端視されるのは、長年世界中で暗黙裏に培って来た商道徳を守る習慣がなくてみんな戸惑うからです。
農業社会から商業社会化への変化に連れて、世界的にルールの共通化が進んで来たこと・商人はルール統一=権威を必要とすることを、03/09/06「商人と規制の親和性2(左翼と極右の発達の土壌2)」前後の連載や09/11/05「商業社会(王権)から農本主義へ2(権力不要社会へ1)」〜09/18/05「唯一神信仰の土壌(商業の発達と画一化・・・信教の自由2)」前後で連載してきました。
他民族間の共通ルールの必要性がイスラム教の発展につながった・・ダウ船の発達に連動していたことや、商業社会化との関連で佛教にも戒律がない訳ではないものの、個人の悟りに重心を置いているので、商業社会向き他民族間ルールになり得ないこともその頃に書いています。
愛国心旺盛な企業家でも、企業の発展のためには市場が大きな範囲で画一ルールになる方が便利に決まっています。
トヨタで言えばいくら経営陣に愛国心が強くとも、日本とアメリカで排ガス規制や認証を受ける基準が違うよりは、統一してくれた方がコストがかからないでしょう。
医薬品・食品でも国ごとに要求する実験を新規に繰り返すのでは、2重3重手間です。
いま流行の企業買収・合併でも、世界中の国で認証を受けないと日本国内での合併すら出来ないで何年もかかるのでは困ります。
(新日鉄・住金の合併に限らずパナソニック/サンヨーでもオリンパスとソニーの買収・・などの合併では、日本企業同士なのに進出先の中国でも許可が必要・・嫌がらせされるといつ実際に合併出来るか分らないリスクが以前報道されていたことがあります)
行く先々で、納品する車の規格が違ったり、ある国で許可を受けた薬品や食品が隣の国では手直しして再実験しないと売れないのでは不便・コスト増です。
商人は元々国ごとの違いに合わせて製造販売しているし、法的対応しているのですから、どこの国が主導して決めたルールであっても、商品の許可基準、物の単位(メートルかヤードポンドなど)や会計基準・係争ルール(どこまでの接待・・研修費用負担が汚職になるかなど)が統一されている方が商売し易いことになります。
海外進出しようとすると行く先の国ごとに新規許可基準を研究して新たに膨大な許可を取らねばならない・・・海外進出企業にとってはコスト増加要因ですし、参入障壁が高ければ高いほど、地場産業にとっては下駄を履かせてもらって競争できる恩恵を受けます。
海外展開するには言葉の壁、商習慣の壁、その国の会計基準や判例・運用でどの程度まで許されるか、汚職になるかなどなど、その土地の法制度理解の壁・現地法律家・税務・会計関係者との提携が必要になるなど事前仕入れ項目が多くなって、進出自体に多くのハードルがありますので、その分地場産業が保護されていたことになります。
言語や法律制度、商品規格・許可基準等の共通化が進むことによって共通化が進んだ限度で、参入コストが縮小します。
国ごとに法制度が違う部分を多く残すか否かの選択は、大企業よりか中小企業寄りかの視点で見れば、結局は大企業優位か地場産業保護かの二項対立問題に行き着きます。
グローバル化・関税撤廃の思想は、より強い企業がより自由に広域行動出来るように便宜を図ろうとする思想となってしまいます。
この種の理解の仕方はこれまで共産主義者や進歩的文化人の得意とする思考方式でしたが、右翼も同じ発想になっています。
右翼というのは根本的立場は左翼の反射であって、元同根だと03/09/06
「商人と規制の親和性2(左翼と極右の発達の土壌2)」その他で書いたことがあります。

TPPと主権3

03/29/06「法の支配と被支配2(ローマ法支配の意味)」で法の支配について書いたことがありますが、ある国の法の精神枠組みが別の国で適用されると国民はその法を学び且つ行動規範をそこに求めるしかなくなります。
その国の法を学びその法で規制する・・行動様式を決めて行くようになればその国の思考方式を生活の基礎にする・・その国の思想や道徳律を受入れることです。
支配とは自分の意思を他人に強制することですが、腕力による強制はなく法で強制するのが現在国家ですから、アメリカの法の殆どがTPP参加国で共通法化するようになれば、アメリカ支配・・アメリカ議会の決議を自国の法として受入れるのと同じです。
属国の場合は間接支配ですが、TPPの場合かなりの分野で直接支配になります。
TPP参加表明するか否かはアメリカによる囲い込み・・現在版植民地支配に入るかどうかの踏み絵を迫られていることになります。
私がJanuary 7, 2013前後のコラムで、TPPに参加しない限りアメリカは尖閣諸島問題で良い顔をしないだろうと書いていたのは、この意味になります。
自分の版図に囲い込めるなら一緒に防衛もするし、参加しないでアメリカ支配領域外に出て行くのなら防衛する必要がなくなるのは当然です。
EU条約は英独仏3カ国の大国グループとベネルックス、北欧諸国などの中間の国々と南欧や中東欧の周辺諸国からなる同心円的関係ですが、それでもドイツの支配力が強まってることが最近問題になっています。
TPPの場合、ダントツのアメリカを牽制する対等者のいない組織ですから、アメリカ唯一支配を貫徹する道具立てになる可能性が高いでしょう。
EC→EU成立時にイギリスの参加が拒否された事例を想起するべきです。
当時ドゴール大統領はイギリスはアメリカの手先だから内部に入れるとトロイの馬の役割になると言って拒否していたのでした。
TPPはトロイの馬どころか、アメリカそのもが内部で直接支配するのですから、民主的運営をするには、アメリカ以外の諸国の団結・協議機関設置が必要です。
我々弁護士の世界で言えば、関東弁護士連合会というのがありますが、マトモに一対一で議論していると巨大組織である東京3会に叶わないので、東京3会を除く10県会という内部親睦組織が別に造られています。
弱小10県の単位会が集団で東京3会に対してもの申すことになっていますが、こうした運営方法も参考になるのではないでしょうか?
組織面の工夫がないまま、自国の主張を遠慮なくすべきだと言っても、絵に描いた餅になります。
(・・労働者は遠慮なく意見を主張すれば良いというよりは、団結権・団体交渉権保障の方が意味があります・・・)
主権問題に敏感な右翼系が概ねTPP反対論を展開している根源的理由は、主権が損なわれる恐怖にあるのでしょう。
ところで商品規格の画一化・・許可基準は(車等の規格・食品衛生・排ガス規制や公害基準その他)すべて法律で決まるのですから、欧州議会のようにアメリカが主催する会議でいろんな基準をドンドン決めて行くと、文字どおり日本の国会で独自に決める国内法・・はこれに整合するように手直しする仕事しかなくなって行く・・主権制限になるのは当然です。
ハーグ条約を3月8日に紹介しましたが、条約で決めても已むなく受入れるしかない以上は同じことになりますが、個別の問題ごとに条約を結ぶかどうかが国会で議論になって、分り良い点が違うと言えるでしょうか?
包括的なTPPの場合、参加後は個別品目別基準造りは政府の恒常的な交渉になって国民には見え難い点が難点です。
これまでの国内的分類で言えば、国会で作る法律よりは官僚の作成する政令、省令あるいはガイドラインみたいな細かいレベルの交渉になって来ます。
建築基準や防火基準、レストランの保健衛生基準などのガイドラインの作成等は優秀な官僚にお任せで、関心を持たない・・マスコミは詳しく報道しないし政治家も関与しないのがこれまでの国民の習慣でした。
この結果TPPは密室的交渉になっているので、これだけの大問題になっているのにマスコミは詳しく報道しないし、何が問題で何を揉めているのか国民には未だに訳が分らない印象になっています。

TPPと主権1

3月6日に紹介した日米半導体協定はホンの一例ですが、アメリカの日本つぶしの謀略こそ恐るべしと言うところです。
今回TPP参加に右翼系評論家を中心に慎重意見が多いものの、具体的に何のどこにが反対かよく分らないとJanuary 5, 2013「密室外交と情報開示1」前後あるいは昨年末頃に書いたことがありますが、もしかしたら、彼ら自身具体的にはよく分らないものの、国という垣根なしにつき合うと巨大なアメリカに絡めとられてしまう恐怖感が、本能的な拒絶反応を引き起こしている面を否定出来ません。
TPPの本質的問題点は、主権がもの凄く制約を受ける・・実質的植民地支配を受けかねない側面です。
TPPはEUのアメリカ版と言えるような気がします。
EUは周知のように戦後の1951年パリ条約で成立した欧州石炭鉄鋼共同体から経済共同体(EC→EEC)へと順次発展して漸くEUに結実したものですが、それでも南欧諸国が良いように搾取される内部矛盾に苦しんでいて、主権縮小して一体化をより強力に進めるか、あるいは解体(弱小国が離脱)するかの危機に揺れています。
これに対して何らの歴史的共有経験もないのに、太平洋に面しているというだけの地理的条件だけで1つの共同体をアメリカの強引な勧誘・イニシアチブで実現しようとしています。
国際社会というものがある以上はその範囲で国内主権が制約を受けるのは当然ですが、それでも一定の信義を守ったり、個別の条約を結んだ範囲で条約遵守義務という個別制約が働くだけでした。
隣近所がある以上は適当な礼儀が必要ですが(町内会の付き合いや自宅周辺掃除に協力するなど)自宅の中の掃除その他どのように生活していようと個々人の勝手です。
TPPの場合、家の中の掃除の仕方、朝何時に起きるか食事の仕方、食物の内容(無農薬食品にこだわろるか否か)まであらゆる分野で干渉されるようになりかねないところが不安です。
当初は、当然自制的・緩やかでしょうが、徐々に大国の思惑によって干渉品目、分野が膨らんで行くのを止める力が弱小国にはありません。
TPPのルール造りに参加して自国の主張を通せば良いだろうと言うはたやすいですが、アメリカと言うライオン一頭の外は対等にもの言える国がない・・その他は馬やウサギや鹿みたいな弱小国の集まりですから実際には至難です。
TPPで決めるルール内容は、殆どの分野でダントツの発言力を持つアメリカの言うとおりになってしまい勝ちですから、従来の主権や固有文化を大切にする立場(主として右翼思想家がこれに一番敏感です)からすれば、尖閣諸島をとられるどころの話ではありません。
隣の家との境界争いで境界30センチ幅ほどとられるのを防ぐために、ヤクザ・助っ人と半永久的に同居するのとどちらが良いかの話です。
日本の軽自動車の分類は(アメリカにはそんな分類がないので)非関税障壁だというのですが、(アメリカも同じ分類を作れば良いでしょうとは言えないのが日本の現実です)一事が万事こんな具合でアメリカの基準以外は認めないのがアメリカの流儀ですから、内政干渉どころの話ではなくなってきます。
車の排ガス規制や公害規制や薬・金融・食品で言えば遺伝子組み換え、狂牛病その他全ての分野でアメリカの決めた基準に反する規制があれば、殆どすべてTPPのルール違反になると思っておいていいでしょう。
ルールに採用された以上は、日本独自の公害規制・排ガス排水・安全基準などは、違反になり兼ねませんから、内政干渉どころの話ではなく直接支配を受けるような感じになります。

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