底辺層・都市住民内格差の多くが親の住宅が同じ生活圏内にあるか否かにかかっているとすれば、相続税で締め上げて等しく貧しくするのではなく、低廉な公営住宅の供給拡大で対応すべきです。
しかも相続税で没収するのは親が死亡してからですが、January 31, 2011「都市住民内格差5」に書いたように親が生きているうちから、親と同居出来る人と出来ない人の格差が大きいのですから、長寿時代の現在では相続税の重課だけでは格差是正になりません。
ここ20年ほどは世帯数を住戸数が上回っているので、公的住宅の供給事業は不要になったかのように言われていて、千葉県でも住宅供給公社の事業は大分前から店じまい・・残務整理に方向になっています。
しかし、余っているのは、不便なところに建てていることと、ファミリータイプが主流で単身用が殆どないこと・・ミスマッチによることが大きな原因です。
どんな商売でも客の好みが変わる都度、客が来なくなったからと言って廃業している企業はない筈です。
客の好み・・需要動向が変わればそれに向けて供給内容を変えて行くのが必要です。
中高年女性が離婚した後に生活苦のために公営住宅の募集を調べたところ、単身用の一般募集はありませんと断られたと言っていました。
単身用は障害者と高齢者向け優遇枠で一杯(それだけで順番待ち)で健常人向けには存在しないと言うことらしいです。
子連れの母子家庭用は申し込むとすぐに入れる人が多いようですが、子供が育ってからの離婚の場合、今のところ受け皿がないようです。
しかし40代後半〜50代でパートあるいはこれに類する仕事しか出来ない離婚女性の場合、民間アパート家賃を払いながら自活するのは容易ではないので、何らかの下駄を履かせる必要があります。
ところが、単身者用公営住宅は一般向けの募集すらないと言うのですから驚きです。
この女性に限らず、男性でもコンビニの店員やハンバーガーショップやフードコートなどで働いている独身若者にとっても親のスネをかじれない人にとっては家賃負担が大変です。
ところが、公的住宅では上記のように4〜50年前の制度設計・・需要予測を元にファミリータイプを中心に品揃えしたままになっていて、単身者増加時代に対応していないで余っているとして新設をやめてしまい放置しているのです。
ファミリーレストランが下火になれば単身者用に切り替え、総菜関係も単身者が増えてくれば食材その他を単身用にどんどん切り替えているように住宅供給もその方向にシフトすべきです。
まして家族持ちに比べて、単身者あるいは結婚予備軍の内、経済弱者で住宅に困っている人が多くなっているとすればなおさらです。
一昨年の年越し派遣ムラ騒ぎも、単身者の多い非正規雇用者でも都営住宅などに入居出来るようにしていれば、そもそもそういう問題が起きなかったのです。
彼ら非正規雇用の中の最弱者は自分でアパートを借りることも出来ないので、住の保障される飯場その他宿舎付きの非正規雇用が多いのですが、このやり方ですと失職するとたちまち住むところに困ってしまうのは当然です。
セーフティーネット・最低の生活保障として一定規模の公的住宅を用意するのは国家の責務ではないでしょうか?
どんな職業の人でもあるいは単身でも一定の住居が保障される生活・・これこそが文化的先進国と誇りうる社会ではないでしょうか?
文化的生活の最低保障としての公共住居があって、その上にもっと良い生活をしたければ、民間賃貸又はマイホームを持つ社会に区分けして行くべきです。
言わば生活保護や年金は現金供給システムですが、住居に関しては最低保障として誰でも(失業しているか病気で働けないかの理由なし・・審査不要)一定の住居が供給される社会です。
年金制度に比喩すれば、公的年金で高齢者の生活が一定水準で保障されるのが公的住宅に該当し、その上の生活をしたい人は適格年金や民間保険会社の年金に加入したり自分で貯蓄しておくのと同じです。
公的住宅保障制度が仮に機能するようになると国民は安心して生活出来るし、(失業しても食べるだけならば、かなりの期間やりくり出来るし、周辺が援助するにしても僅かな金額で済みます)高齢化しても現行の国民年金程度の支給(月額6〜7万円)でも生活して行けます。