社会保障制度が機能するには長年の蓄積が必須ですが、この分野では韓国や中国では(勿論韓国と中国とでは時間差がありますが・・)どちらもまだ始まったばかりで殆ど蓄積がありません。
蓄積が間に合わない期間は、我が国の年金制度のように蓄積によるのではなく、現役世代の納付金で高齢者の年金を賄う緊急システムに頼るしかありません。
このやり方は、人口ボーナスのある一時期だけに妥当するシステムであって、高齢化社会が始まると逆に破綻してしまいます。
ですから、我が国の場合も人口ボーナスのあるうちに徐々に蓄積型の比率を引き上げて行く方向に制度設計しておくべきだったことになります。
韓国や中国の場合、経済成長が我が国よりも何十年も遅かったにも拘らず高齢者社会は日本とそれほどの期間を空けないで始まっています。
我が国の高齢化の進行に比べて韓国や中国の進行は後追いである分、いろんな分野でイキナリ始まった・・北国の春に一斉に花が咲くようなものです。
高齢化の進行が早すぎるので、広州等中国国内先進地域の工場労働者賃金でさえ、まだ日本の約10分の一に過ぎないのに、(近代工業化にまだ関与していないその他大勢の中国人の平均水準はその3分の1と日経朝刊6月1日では報道されています)直ぐにも高齢化・労働力減少が始まりそうです。
この種の議論はうろ覚えでは迫力がないので、2010年11月現在の統計に基づく2011年8月の人民日報の記事から転載しておきましょう。
(ただし、データは1年以上経過して集計されるのでデータに頼ると2年くらい実態に遅れますので、本日現在ではもっと高齢化が進んでいるでしょう)
中国の高齢化社会、6つの特徴–人民網日本語版–人民日報17:09 Aug 26 2011
「全国人民代表大会常務委員会副委員長兼秘書長の李建国氏は24日、中国の高齢化社会の特徴として以下の6つを挙げた。
(1)高齢者人口の基数が大きい。第6次国勢調査のデータによると、2010年11月1日現在、60歳以上の人口は1億7800万人に達し、総人口の13.26%を占めた。うち、65歳以上の人口は1億1900万人で、総人口の8.87%を占めた。中国は1億人以上の高齢者人口を抱える世界唯一の国となった。
(2)高齢者人口の増加スピードが速い。国家高齢化対応戦略研究課題グループの予測によると、中国の高齢者人口は2014年には2億人を超え、2025年には3億人に達し、2042年には高齢者人口の占める割合が30%を上回るという。
(3)生活に困難を抱える高齢者が多い。ここ10年、80歳以上の高齢者が約2倍に増え、すでに2000万人を上回っている。2010年、寝たきり・半寝たきり状態の高齢者はすでに3300万人以上に達している。
(4)工業化実現よりも先に高齢化に突入した。先進国を見ると、高齢化社会に突入した頃にはすでに工業化が実現し、ポスト工業化時代に入り、1人あたりGDPが5000-1万ドルに達していた。現在は2万ドル前後に達している。一方の中国は、現在まだ工業化・都市化の真っ只中にあり、高齢化社会に突入した1999年には1人あたりGDPはまだ1000ドル未満だった。中国の1人あたりGDPは2010年に4000ドルを突破したばかりだ。
(5)高齢化と家庭の小規模化が同時進行。第6次国勢調査によると、現在中国の平均世帯人員は3.1人で、家庭の小規模化により、家庭における高齢者扶養機能が明らかに弱化している。
(6)高齢者扶養比率(労働力人口に対する高齢者人口の比率)が急速に高まりつつある。2010年の高齢者扶養比率は19%で、労働力人口5人で高齢者1人を養う計算になる。最新の予測によると、2020年には労働力人口3人で高齢者1人を、2030年には労働力人口2.5人で高齢者1人を養うことになるという。 」
上記の通り65歳以上人口が11900万人で寝たきり半寝たきり人口が3300万人以上・・27、7%とは驚異的数字です。