いろんな分野での高度化・高収益化が進めば、同じ生産額・輸出額でも必要労働力数が限定されるので他所の国よりも高度化・生産性の向上で差を付ければつけるほど、労働力過剰にならざるを得ません。
元々、近隣国と同じレベルの産業構造であっても貿易収支の均衡=自国の需要以上に製造出来ない時代が来れば、それまでの黒字分だけ過剰労働力になるのですが、高度化で均衡すればその分だけなお過剰になります。
将来的に貿易収支の均衡は避けられないとすれば、(日本だけが永久に黒字を続けることは不可能でしょう)明治以降人口を増やし過ぎた結果今の人口は多すぎるので、一刻も早く人口減少策を採用するしか解決の道はあり得ません。
(人口増政策に関しては第二次世界大戦の遠因に関連して11/05/06「人口政策と第2次大戦1(ねずみ講の元祖)」以下で連載しましたし、その他のテーマでも繰り返し書いていますので人口政策で検索して下さい)
この段階でも、なお安値な外国人労働力導入を唱えて国際競争力維持を主張するマスコミ人が多いのは狂気の沙汰と言うべきでしょう。
過剰人口・労働力減小策をとらない限り、輸出入が均衡すると失業者が増えてしまう関係ですが、失業増を防ぐために技術高度化に頑張る限り黒字が集積してしまうので一定周期ごとに来る円高=デフレの進行は、経済策の成功の結果として有り難く受入れるべきです。
デフレは円高によるばかりではなくその他の理由(低賃金国からの廉価製品の輸入圧力)によっても生じますが、デフレ経済の進行が止まらない限り国民に抵抗の多い政策を受入れさせるしかありません。
インフレならば、放っておいても実質賃金が下がり他方で累進税率下では実質増税が進むし、年金のその他の社会保障給付も実質的に下がるので政治・企業経営者は気楽なものです。
(タマタマここ1週間〜10日ほど円安に振れ始めて今では80円で安定していますので、輸入物価が少し上がり一息付けることになりそうですが・・・)
円高・デフレ(物価下落)の場合この逆ですから、政治や経営者が無理にして何かしない限り、円高になった分だけ人件費や社会保障給付が実質上昇しますので、政府や企業の経営が成り立ちません。
この結果を防ぐには、名目上増税して行かないと政府・公共関連のコストが不足する一方になります。
企業や組織経営者も同じですが、一定規模以上の経営者の場合従業員に痛みを強いなくとも、低賃金国への移転・逃げる方法があります。
今朝の日経朝刊の「蘇るメードインUSA」を見ていると、アメリカの人件費が時給20ドルに下落したことによる中西部での工場進出ラッシュが書かれていましたが、アセンズに進出したキャタピラーはカナダの工場閉鎖による移転でした。
その記事によるとカナダの工場では賃下げ要求に応じないので、閉鎖してアメリカに移転立地したということです。
(話題はそれますが、先日アメリカの人件費がリーマンショック前の4分の1に下がっていると報じられていてこのコラムでも紹介しましたが、今朝の記事によると時給20ドル=円換算で1600円ですから、日給1万2000円前後で、わが国の底辺・現場労働者の日給とほぼ同じです・・これで何故4分の1か不明ですが・・・GMの場合、高額保障の年金負担などの過去の債務の切り捨てが出来たことを加味した比率でしょうか?
今日の記事では、それでも中国で作ってアメリカに輸送するコストなど考えるとペイする(カントリーリスクもありますし)ということで中国からアメリカ国内生産回帰が進んでいるらしいです。
このように企業経営者の場合人件費その他コストの安い方へ移転出来るのである程度気楽ですが、政治の方はそこにいる住民を相手にしているので大変です。
政治家が引っ越しする訳には行かないので、デフレ下の政府財政収支の赤字解消に取り組まねばなりません。
平成24年2月19日記載の比喩で言えば、デフレの場合、政治や経営者は生身の人間が吐き気に襲われて吐き続けているようなもので、これに対応するのがやっとでマトモなことが何も出来ません。
これだけの危機に見舞われているギリシャでは、なお賃下げあるいは公共サービス低下に対する反対デモが続いているので民意に縛られる政治家が政権を手放して、経済実務家による実務家政権になっている状態です。
我が国戦前の経験によれば政治家は駄目だ・・と言うことで軍部政権になったのと根底は似ています。
こういう時代には、政治権力を握った方は(「気持ち悪いなら早く吐いてしまいな・・」と言うはやさしいですが、実際吐く・・逆流の実践・・増税や賃下げの実施は辛いものです・・)嫌われる政策・・企業はリストラの継続、政治は消費税増・医療や保険等の各種負担増政策など・・を続けるしかないので、どんな政党が政権を取っても誰が党首になっても何かやろうとすれば不人気になります。
(今の政治を見ていると何もしないで、成り行き任せをしている無責任政治家・政党が一番長持ち出来そうです。)
最近不人気政策の採用に努力した結果、党内分裂気味に推移する政党が多いのは、トップに立った以上は身を捨てても国のために頑張ろうとする国士が多い・・政治家も捨てたものではないと評価出来ます。
しかし、今回の消費税その他国民に苦い政策決定が失敗に終われば今後もう一度挑戦する政治家が現れなく危険があります。
そうなると後は無責任に流れて行くばかりなので、今のギリシャ危機問題同様に行き着くところまで行くしかないでしょう。