ストックの大きい国では、フロー収入だけで社会構造を見ていると、金融資本その他ストック格差による修正がある点を無視する議論になってしまい、実態を直視しない・・ずれた意見になります。
要はストックのある社会か、ない社会かによって統計の意味を変える必要があると言うことでしょう。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20101124/217255/?rt=nocntの(日経新聞電子版)「韓国は「非正規大国」って本当?
高安 雄一
>>バックナンバー2010年11月29日(月)1/4ページ
「雇用者の非正規化によるコスト削減が成長の理由か」
の意見では、日韓共に非正規雇用率は大差ない・・どちらも30%台後半で統計の取り方の違いだという趣旨を書いています。
現在ではどこの国でも社会構造が似ていますので、どこの国もホワイトカラーや正規社員は減り、非正規雇用が増えて行く・・似たような構成率になる趨勢です。
とすれば、意外にこの日経電子版の意見が正しくて、韓国庶民・・・非正規雇用労働者や老人の苦しみは、非正規雇用率の差ではなく、親世代の蓄積差である可能性が高いように思われます。
以前都市住民2〜3世と地方から出て来たばかりの1世とでは、同じ20万円の収入でも(親の家から通える場合と自分でアパートを借りる場合)生活格差が半端ではないと言う意見をOctober 6, 2012「最低賃金制度と社会保障2」前後で書いたことがあります。
日本の若者は親世代の巨大な蓄積があって、2〜30万円の非正規収入でも、親の家に住んでいる場合、食費程度入れれば残りは全部小遣いに使えるので、豊かな生活が出来るから幸せです。
高齢化すれば少子化の結果、親の家や金融資産を少人数で相続できるので老後の心配もありません。
少子化で次世代の負担が大きいとマスコミが煽りますが、少子の方が相続で得るものが多くなります。
日本の老人は自分の働いていたときの蓄積が大きい・・1600兆円の個人金融資産の大方を老人が持っていますので、老後の不安どころか、非正規率が上がって生活力のない現役世代を助けてやっているのが実情です。
この実態を直視して、孫の教育費や子供世代の自宅取得等に対する贈与税等を次から次へと非課税化する政策が進んでいます。
政府負債の相続よりは1600兆円の金融資産と自宅との資産を相続できる方が大きいのに、マスコミが次世代が損すると長年キャンペインを張っていますが、誰も呼応しないのはマスコミが実態に反した主張をしているからです。
韓国では、若者も老人も苦しいのは、日本のように長年の蓄積(年金積み立て)がないうちにフロー収入の少ない非正規雇用時代や高齢化時代が来てしまったからであって、非正規雇用によって格差社会が進んでいるからではありません。
韓国は中国よりもっと近代化=高度成長期に入るのが早かったのですが、通貨危機で一旦ご破算になったので、このとき社会の蓄積がほぼゼロになってしまい、蓄積が2000年ころから始まった点は中国とほぼ同じです。
中国の場合当時まさに高度成長真っ盛りでしたが、韓国の場合は通貨危機以降高度成長が終わって中成長になっていましたので、フロー収入アップ率(蓄積できる儲け)が中国よりも低かったし、国の基幹産業を外資に抑えられている点では、基幹産業を国有企業としている中国より基盤が脆弱かも知れません。
我が国の外貨準備がほぼ真水であることを書こうとしていて、25日以来韓国の個人金融資産にそれてしまいました。
ストックの重要性と言う意味で中国の外貨準備に戻りますと、我が国と違い外貨準備の内実は外資の付け替え部分が大きいので、経済失速して外資の資金流出が始まると外貨準備の水マシ部分がはげ落ちます。
賃金上昇で競争力低下が始まると一人っ子政策を改めたり、金融引き締めでバブル拡大を防ぐかと思えば無駄な工事を再開して、だぶついている鉄鋼在庫に困っている業界を救済したりするなど、客観的に見れば「場当たり政策の典型」・・政府の体をなしていない・・(軍の統制を含めて)収拾不能な状態に陥っていると解釈することも可能です。
逆に中国贔屓スジから見れば、深謀遠慮・柔軟対応で素晴らしい国とも言えます。