消費社会と指導者視点のリスク

指導者の号令一家の経済運営は勢いがありますが、一斉型発展型経済で人件費が一斉に上がった場合・・・全産業一斉に競争力を失うので、入れ替わりに新たに伸びて行く産業がないので大変です。
低賃金を武器に国際競争上優位になっていた点では重工業も軽工業も全ての分野で同じですから、各業界で中進国の罠にはまる前に技術力アップに成功していたホンの何%かの企業以外は賃金アップについて行けなくなります。
例えば全産業で技術アップに成功していた企業が5%平均(しかない)とした場合、残り95%の企業がギブアップになります。
深圳などではバングラディシュやベトナム等との低賃金競争に負けて数年前から何千人規模の大工場の閉鎖ラッシュと言われますが、規模が大きいからマスコミ対象になっていますが、実はいろんな分野での整理・失業が始まっているものの、大量失業者の多くを吸収出来るほどの転職先がある訳がないと思われます。
輸出型産業を縮小して内需型に転換するしかないのですが、未富先老が問題になるのとと同じで、まだ内需が育っていない・・庶民の懐がまだ豊かでないので購買力の厚みが足りない・・不足します。
イキナリ内需転換と言っても生産品の大部分が輸出目的であった結果、輸出を縮小すると企業淘汰が早く進み過ぎる・・膨大な失業が予想されます。
日本が中国など低賃金国の挑戦を受けたときには日本にマザー工場を残して現地生産・・現地工場への部品輸出が残った、・例えばクルマや白物家電工場で言えば部品輸出や技術指導などの仕事が残りました。
中国の場合、自社技術がなく先進国からの技術導入なので、日本企業が第2〜3工場をベトナム等に造れば日本から部品輸出になるだけで、中国工場から輸出するべき独自技術が滅多にありません。
ベトナムやバングラデシュで生産→輸出が始まるとその分100%輸出・生産が減る関係です。
鉄鋼・石炭産業の整理だけで約600万人の失業が予定されていると言われますが(前回2月のG20で大見得を切った?)過剰設備整理公約を実行出来るかが見ものでした。
上記のとおり失速しているのは鉄鋼石炭石化製品等目につく企業だけではないのですから、日々発生している暴動に対する政府の危機感は半端ではないでしょうから、つい我慢出来ずに過大設備廃棄をちょっと進めては、こっそりテコ入れするしかないのが実情です。
実際に耐え切れずに直ぐに金融緩和した結果、5月初めには休止中の鉄鋼業などの操業再開・マンション価格暴騰などの副作用が国際的に(7月23日「中国の権力闘争激化1」に勝又氏の紹介しているフィナンシャルタイムズの記事を紹介したように)取りざたされています。
内需拡大・サービス業への人員誘導と言っても、石炭産業や製鉄所で働いていた人(現場工員)がサービス業(にこやかに接する)に転換するのは容易ではないでしょう。
急激な人員整理を避けるために?国有企業の赤字企業救済と兼ねて(金利下げは人民元下落に繋がるのでこれを防ぐために)この数ヶ月紙幣増発(・・中央銀行への準備預金率引き下げ)マネタリーベースに留まらず社会融資総量(7月28日のコラムに記載)の増加で対応して来たようです。
紙幣増発すると近いうちに人民元が下がると思うのが普通ですから、資金余力のあるコクミン・企業は損しないように急いでドルに変える動きに出ます。
(何千年といたぶられて来た歴史の結果、政府を信用していないので、こうした人民の自己保身能力が極めて高いのが特徴です)
その分外貨準備がザルの底から水が漏れるように減って行きますので、金利切り下げほど直接的ではないですが、時間経過で人民元下落圧力になっています。
中国の金融緩和分(社会融資総量)の大方は、債務の借り換えに使っているので債務が急激に増加していると言われます。
5月15日日経朝刊朝刊4面には、中国政府は景気テコ入れ政策?で、4、7兆元(リーマンショック時に4兆元投資で世界をあっと言わせたので同規模以上)の鉄道・飛行場等の公共投資計画を発表しているものの、不動産投資中心にバブル効果が出ていて、不透明な地方政府債務+融資平台(シャドーバンキング)の債券発行が急膨張している状態が始まっている。
しかし、民間投資は減速していて民間には影響が及んでいない・実需がない・・不動産バブル再燃期待政策?・・「不動産投資依存中国で強まる」と言う大見出しになっています。
中国では、バブル崩壊を先送りするためにミニバブル再燃に持ち込もうと言う魂胆でしょうし、利にさとい国民は政府がテコ入れするならば、株式相場と同様に半年〜一年は相場が続く筈だから、その間に一儲けして売り逃げしようとして再投資に踏み切っている人が多いようです。
恐ろしい国民と言えば言えますが、中国では政府主導によってサブプライムローンの拡大版が起きていてこれが破裂したときに世界にどのように激震を走らせるかが現在世界の重要課題です。
リーマンショックは・・・サブプライムローン利用者と不動産業界→金融業界だけが直接の関係者でしたが、中国の場合、多様な分野の国有企業の一斉過剰生産力→破綻と一緒になっている分が戦前のアメリカ大恐慌とメカニズムが似ています。

南シナ海封鎖リスク2(大義と小義1)

中国の南シナ海の利用方法は、当面通行許可申請を要求する程度から中国向けの船だけ通行許可するが日本へ行く船の通行許可しないなどいろんなバリエーションがあり得ますが、ドンドン強化して行き最後に無許可航行船舶を拿捕するところまで行くとどうなるでしょうか?
アメリカが中国の領海を認めない・・ここは公海だと言って、従来のように年に1〜2回だけ自国海軍が強引に通行する・・「航行の自由作戦」を実行するだけでは、日本向けの船が日常的に航行出来ない状態が変わりません。
中国が違法に南シナ海を占拠して好き勝手に通行妨害するようになれば、法的にはソマリア沖で跳梁した海賊グループと同じことですが、タマタマ大国が公然とやっている点が大違いです。
ゲリラ勢力は神出鬼没・・警察が来たら逃げ回るのが本領ですが、ついにISと言う国家?を樹立したようなもの・・公海に海賊の基地を公然設営していてこれを黙認している状態です。
この無法状態を解決するために年に1〜2回米軍海軍艦艇がデモンストレーション行為をするだけでは、フィリッピンやベトナムの漁船が怖くて現場に日常的に近づけていません。
中国が南シナ海=公海を自国領海と勝手に決めて軍事基地を設けているのですが、これを利用して気に入らない国だけ航行妨害をした場合、ソマリア沖の海賊対策のように公海の自由航行権を守るためにはどうするべきでしょうか?
日本は自国領土領海を侵されていないので、従来型(日本特有解釈?)自衛権の範疇に入りません。
今の(過去の?あるいは戦後の)法理論では、対応出来ない事態が始まっています。
日本がソマリア沖に自衛隊を派遣したのは、自衛権発動ではなく公海航行の自由を守るための国際正義実現(自警団参加?)の活動だったように思われます。
湾岸戦争に大義があったかどうかは別として(私はなかったと思っていますが)日本独特の狭過ぎる?自衛権概念の結果、日本だけ参加出来ずその代わり莫大な金額の拠出をさせられたのですが、国際的には「日本が貢献しなかった」と言う評価を受けました。
非武装論によれば、自国侵略軍に対する自衛の武器・準備すらもいらない・・戦うことが許されない前提ですから、公海上の安全を守るための出動などは論外になるのでしょうか?
ソマリア沖のやり方・・国際合意を得てから海賊排除すべきと言うのは一見綺麗な形ですが、関係国一致しないと実現出来ないので、一定の力のある国が違反している場合、元々実現不可能な条件・・無秩序状態放置・・強い者が何をしても良い社会・・「万人の万人に対する闘争」と言われる原始社会復帰を前提にしています。
一見平和解決の理想論を言う人は実は理想と反対の力の強いものの実力行使を誘発し、是認する意見・・・結果を期待している場合が多い一例です。
戸締まりしているから泥棒に狙われるのか開けっぴろげで出かけた方がいいのか…信用して無防備な人を襲うのは恥ずかしいと思って被害を受けないか逆に犯罪者を増やすのかは、人によって意見が違いますが、物語の世界としては「恥ずかしいことをしない」生き方が素晴らしいですが、この種の話は1万人の内一人でも恥ずかしくない人がいると社会が成り立ちません。
物語では百万人一人でも素晴らしい人がいれば主人公・ヒーローになりますが・・現実世界では、一人だけ善人では、廻りが犯罪者だらけになってしまいます。
今の常識では普通に施錠するだけではなく、金をかけてもセコムや防犯カメラを設置する人が増えています。
非武装平和論も同様で結果的に善人が少ししかいない現実を前提にした場合、侵略誘発論になります。
圧倒的強国・・覇権国があってこそ・ヘゲモニー・指導力発揮出来る国を覇権国と言う以上当然です・・・・国際合意が形成されて世界秩序が守られますが、まとめる力が衰えると全会一致など無理・・不可能になるに決まっています。
覇権国の意向で決まる社会・・パックスアメリカーナには、覇権国〜ムラの有力者に至るまで采配を振るう地位に応じて采配権者に都合の良い(役得)秩序が混入するのが避けられませんが、これも程度問題で、無秩序・大混乱よりは良い(ある程度の役得が生じるのは目をつぶる)と言うのが、これまでの歴史経験です。
(業界団体の会長企業が事務局負担を無料で引き受ければ情報が速く入るメリットもります)
この程度を超過したり、覇権国であることによるうまい汁を全く吸わないで、持ち出しばかりになると覇権国自体がこれ以上警察官役をやっていられないと投げ出すようになったのが現在のアメリカであり、中国が太平洋の半分は引き受けると言い出してアメリカはだんまりで日本が異を唱えている図式です。
覇者がその役割を果たせなくなり、その後の棲み分け・区割りがはっきりしないときに王朝末期の大混乱発生・・新秩序形成までの戦国時代に入って行きます。
現在は覇権国アメリカが覇権者の地位を維持したくないと言い出したので、(アメリカ国内でも大統領になるのはマイナスばかりでイヤだと言う風潮が数十年前からあるようです)世界中で強い者勝ち・・ISやロシア、トルコその他地域大国が色めき立って来た・・言わば群雄割拠時代・・山賊、海賊などやり放題時代が来たということでしょう。
公海での規制は諸外国一致が必要と言うルールでは、圧倒的力を持つ覇権国がない状態では、一定の力のある国は、周辺弱小国に対する個別撃破による切り崩し能力も高い(先秦時代の合従連衡の故事によって証明されています)のでやりたい放題になります。
中国が頻りに利害関係ある国同士のこ別交渉で決めれば良いと主張し、他所の大国(日米)が口出しするのを嫌う所以です。
折角司法判決が出てもフィリッピンやラオス、カンボジアそれぞれの国に対して輸入制限するなどの強迫で、個別に切り崩して行く戦法が実際に成功しています。
日本固有の自衛論や非武装論は、強大な権力下で安全が保障されている特殊状態下で偶然に成り立つ議論であって、国際警察力が衰えて、市街(自国)を出ると護衛が必要あるいは暗闇では危ないとなれば、自宅の施錠だけでなく、状況に応じて護衛を連れて歩くことも自衛権の行使です。
護衛の必要があるとすれば強盗が襲いかかって来れば護衛隊が応戦する権利があるのも当然です。

南シナ海封鎖リスク1

南沙諸島が中国支配に入って・・海上輸送ルートが中国に押さえられて日本が困ろうとも、中国がアメリカと友好関係を約束するならアメリカにとって死活的重要性がありません。
ロシアのウクライナ介入やクリミヤ占領に対しても同じこと・・アメリカ国防に何の関係もない地域紛争に血を流すほどの関与したくない・・日本からグアムへの後退作戦も日本の(対中)戦争にアメリカが巻き込まれたくない・・守る気持ちがない意思表示です。
・・沖縄にいながら防衛協力しないわけにはいかないでしょうが、沖縄にいなければ「その内応援に行きます」と言う程度で済みます。
アメリカの年間軍事予算が日本の約13年分=13倍であることを昨日引用で紹介しましたが、アメリカの経済力が日本の13倍もないのですから、その差額分だけ国内政治に無理(長年の蓄積は大変な額です)が来ています。
大統領選の争点はアメリカ自身が世界に展開している巨大な軍事費に耐えられなくなっているのでしょう。
日本駐留経費が全軍事予算1%以下しかないと言うのですから、日本の防衛分担金を1割上げても全予算から見れば0、1%の財政改善効果しかありませんから、アメリカ得意のスケープゴート的アッピールしているだけです。
軍事費削減がテーマならば、99%を占める欧州・中東方面の軍事費を削減する議論をする方が先であるべきでしょう。
全軍事予算の1%足らずしかない軍事費を槍玉に挙げて大統領選のテーマになるコト自体、アジア軽視を態度で示していることになります。
アジア軽視と言うより、太平洋が広過ぎる・グアム・・これも遠過ぎるならば、将来ハワイを外郭拠点として守れば充分でないかと言う戦略的要素も無視出来ません。
中国が古来から西域の広大な砂漠の先まで拠点を常設する必要を感じていなかったのと同じ発想です。
アメリカの経済力に見合った長期戦略を合理的に考えて行けば、太平洋二分論・・当面グアムでの線引きは(中国が言い出したと言うよりは、)かなり前からアメリカ自身が決めていた基本戦略であったとみるべきですし、これを中国が再確認しているだけ・・だから明白に否定出来ないのだと思われます。
「否定も肯定もしないなら、態度を見てやるからどうするの?」と南シナ海で埋め立て強行してアメリカの出方を見ているのですが、やはりアメリカの態度は煮え切りません。
それどころかアジアでの現地政府の負担率アップの主張=アメリカ自身の軍事費削減まで大統領選のテーマにのぼっているのです。
ここまで来れば、アメリカは太平洋二分論を事実上認めている・・言わなくとも分るでしょう「行動・態度で理解して下さい」と言う段階です。
次に日中紛争が起きた場合、・・自然に起きるのではなく、中国がアメリカが手を出さないと見極めて・・タイミングを見計らって仕掛けて来た場合のことです・・。
前回のレアア−ス禁輸のような緩いやり方とは違い、今度は中国が軍事基地を設けて実効支配してしまった南シナ海の有効利用が当面の焦点になります。
「南沙諸島海域が中国の領海であるから、日本向けの船舶を通さない」と来れば大事件ですが、すぐに航行禁止しないで「領海通過許可申請をしろ」と来るのが第一段階です。
日本はこれ(中国領海)を認めるとその後全面通行禁止されても、異議を言えなくなるので、応じられないと言う政府の立場になるでしょうが、そうすると中国進出企業・・伊藤忠の日本国内向け船舶が中国の許可を取らないで南シナ海を航行すると喩えば、伊藤忠商事が中国で不法入国した企業として処罰や賠償金をとられてしまいます。
かなりの企業が中国に進出しているので、中国の要求に従ってしまうのではないでしょうか?
この辺の対策研究がどうなっているのか知りませんが、重要なことです。
南シナ海での埋め立て軍事基地工事は、フィリッピンやベトナムを相手にした行動ではなく、日本攻撃を主目的にしていることが明らかですから、安倍総理が必死に非難しているし、中国は「関係ない外野は黙ってろ」と無礼な発言を日本の外相にする訳です。
フィリッピンなどは漁船が行けない程度ですから、バナナその他の禁輸との天秤に掛ける程度で、フィリッピン大統領があまり問題にしていませんが、日本も尖閣付近の漁業損害程度ならば大した問題ではありませんが、船舶が通れないとなると大被害になります・・中国は尖閣諸島を直接軍事占領するのは国際的に難しい上に日米に反撃されると勝てそうもないリスクがありますので攻め口を変えて、無人の南沙諸島で埋め立てを始めたのです。
南シナ海は日米の領海でもないところですから、中国が一方的埋め立てを始めても、直接被害当事国を応援することが出来ても、当事国の応援要請がない限り軍事反撃する名分がないので直接打つ手がなく、せいぜい「公海で違法なことスルな」と言う非難をする程度しかありません。
中国は国際ルールでは勝ち目がないので次期政権抱き込み作戦に集中していて、筋金入り親中のドウテルテ大統領が今春就任したのは大成果・・作戦勝ちでした。
新大統領はは折角前政権が勝ち取ったフィリッピン有利な国際司法裁判所判決を一顧だにしない方針変更は、(アメリカ・・オバマが人権その他余計なことを言って中国寄りに追い込んでしまった失敗です)日本にとって死活的マイナス環境になったし、中国にとっては大逆転勝利と言えるでしょう。
インドネシアでも日本の新幹線採用がほぼ本決まりとして進んでいたのに、新大統領になるとイキナリ中国の新幹線に変更してしまいました。
権謀術数の凄まじさと言うべきか?道理も何もない・・抱き込めば勝ちと言う・・古代からのやり方を世界中で実行しているのが中国政治です。
日本にとっては南シナ海での通行遮断リスクは死活問題ですから、実は南シナ海の中国軍基地建設を巡る攻防は日中紛争の最前線なのですが、自国領海が侵害されていないので、直截打つ手がないのが最大の弱点ですので、フィリッピンの応援と言う形をとっていたのですが、トップの交代があり・・アメリカが人権問題で非難したり刺激して中国寄りに追いやってしまったのが大誤算です。
個別の人権も重要ですが、国家の違法行為放置の方がより大きな・・質的に違う人権侵害ですから、主権のある外国の内政に口出しするよりは国家の力で外国に対して違法行為をしている場合、こちらを先に解決すべき・・優先順位が違います。
このためにフィリピンと協力すべきときに内政干渉して敵方に追いやってしまったのは愚策です。
大義のためには戦死者が出る・小義を犠牲にすることすら厭わない・・兵士の戦死も人権侵害ですが、個々の人権より大きな大義があるからです。
オバマはこの優先順序を間違ってドウテルテ大統領を非難してしまったことになります。

日弁連と政治8(弁護士自治破壊リスク5)

弁護士会執行部の行動があまり行き過ぎると(今行き過ぎていると言う意見を書いているのではなく徐々に行き過ぎるようになると・・と言う仮定の議論です・)・・独占のない健全な市場競争下では、不買・客離れに発展するのと同様に、多数派の横暴に対して脱退気運が盛り上がって来るので、脱退を防ぐために相応の抑制機能が働きますが、(弁護士である限り)脱退が法的に禁止されていると、この最後のブレーキが利きません。
言わば、1党独裁体制下に国民を縛り付けている国家の国民同様になります。
権力規制=裁判では政治活動の是非が不問にされるとしても、政治活動が活発になり過ぎると世間からの批判も起きて来るでしょうし、こういうことが続くと会の公式意見と合わないグループが、会・組織とは別の独自組織・・「◯◯を考える会、◯◯を実現する会」を作る動きが出てくるのが普通です。
この辺が第二組合が出来難い・・いやなら脱退すれば良いし、新規加入が減って行く一般の労働組合や同好会とは違う点でしょう。
少数意見者がグループ結成をするようになると、会の政治運動を牛耳っているグループが強制的に徴収した会費を利用して政治運動しているのに対して、少数意見グループは自費で運動しなければならない・コスト負担の不利益がある上に、自分たちの思想に合わないどころか、自分の意見に対する反対運動のために自分の納付したお金を使われることに納得出来なくなりますので、会費納入に抵抗するようになります。
会費納入に抵抗して会費を払わないと懲戒処分を受けることから、反対運動するしか方法がありません。
強制加入団体とは、会費強制徴収権・・国の場合税金徴収権・・があることと同義であることが分ります。
租税滞納程度では国外追放されませんが・・弁護士の場合、会員資格=弁護士資格がなくなる点で大きな違いがあります。
・・いくら反対運動しても少数派である限り否決されますが、その運動の広がりに反応して多数派が政治活動を自制するようになれば大人の関係です。
「いくら反対しても否決すれば良いのだ」と言う強硬な姿勢を多数派が貫くと、少数派は我慢出来なくなって、外部勢力に頼ることになって来る→外部政治勢力を巻き込んで強制加入方式の否定論=法改正論の盛り上がりへつながり、弁護士自治弱体化に繋がる危険があります。
これが諸外国で国外勢力の応援を得て頻発する反政府運動・内戦やゲリラ・テロ活動の図式です。
政権が強行策をとれば取るほどテロが激化するのはこのためですが、我が国では、古代から敗者の言い分を良く聞く社会ですからこんな大人げないことになったことはありませんし、(明治維新も外国勢力の介入を防いで解決しました)まして弁護士会は大人の集まりの筈です。
ただ、モノゴトには作用反作用の関係があって、世論が特定思考様式を受入れなくなるとこの支持者が世論に歩み寄れば良いのですが、危機感から従来より一層主張が先鋭化し、活発化して行く傾向がありますから要注意です。
(妥協しない人材だけ残って柔軟タイプが脱落して行くのかな?)
政治活動が許されるかの議論の1つとして、政治活動の程度問題があります。
会費を使い、会の名で行動する程度であって、「集会や街頭行動等への参加強制しないのだから・受忍限度じゃないか」と言うのも、程度問題の一種でしょう。
ただ弁護士大量増員によって収入レベルが下がって来て、高齢者会員その他会費負担のウエートが上って来る時代には、参加強制しないで「会費を使うくらい良いじゃないか」とは言えない時代が近いうちに来ると思います。
大きく分類すれば、執行部意見に賛成するグループと反対するグループが両端にあって、意見は是是非で右でも左でも、どちらに使おうとも構わない人から、政治運動するための会費を払うのはイヤだと言うグループ(会費値下げ要求)の4つに分かれるのでしょうか?
この先弁護士の収入減少が続き、世知辛くなる一方とすれば、「会費の使い方などどうでもいいや」と言う中間層が減って行くように思われます。
他方で世論の傾向に反発する最後のよりどころとして政治運動を活発化して行くと中間層の反発も大きくなります。
行き着くところ「強制加入制を撤廃すべきだ」と言う意見、またはどこかの会に加入するべきだと言う強制加入制を残すならば、府県ごとに1つしかないのではなく、「一定数が集まればいくつでも府県内に自由に設立出来るようにしろ」と言う政治家を巻き込んだ運動が出て来るでしょう。
あるいは「関東のどこの会に入っても良いようにしてくれ」と言う案も選択肢になります。
国政選挙では今の県単位選挙区割りが合理性を失っているように、都道府県別に1つの単位会を強制するのは実態に合わなくなって来たように思われます。
私が弁護士になったときに千葉県弁護士会の会員数は90人台から漸く100人突破したものですが、今では750人弱になっています。
もっと地方の県では当時数十人規模が普通でしたし、今でも100人前後から未満の県がいくつもあります。
まして弁護士法が出来た戦後直後には千葉県全部で数十人いたかいないかだった時代でしょうから、こう言う時代には、自治と言っても一定規模がないと自治能力に疑問符が付くし、5〜6人規模の会が乱立すると発言力がなくなる心配があったでしょう。
何人規模以上が必要かの議論よりは、県単位と言う切り方が問題解決に合理的だったと思われます。

日弁連と政治7(弁護士自治破壊リスク4)

日弁連や単位会が裁判所(権力)の自己抑制を良いことにして、政府のお墨付きがあるかのように振る舞うのは間違いです。
政府権力は弁護士会に自治権があるから何をしても良いと言うのではなく、自治権がなくてもマスコミにむやみに干渉しません・家庭に法律は滅多に入りませんし・いろんな場面で謙抑的行動するのが権力と言うものです。
これを逆用して際限なく・自制心なく特定勢力に偏った政治活動をするようになって来ると、少数意見弁護士には不満がたまってきます。
少数意見だから無視すれば良いと言うスタンスで、しかも強制加入のために脱退する自由がない・・一種の独裁政権にとらわれている国民のような関係です。
独裁政治がイヤなら国民は国外逃亡すれば良いと言われても、仕事を棄てて海外逃亡すれば生活苦が待っているので、国外逃亡出来る人は滅多にいませんし、弁護士も弁護士会の政治意見とあわないならばやめたら良いだろうと言われても、イキナリ別の仕事で食って行ける人は滅多にいません。
独裁政権が専断政治を続けると、海外逃亡よりは政権打倒運動が起きて来るように、弁護士内部から弁護士自治はいらないとは言わないまでも・・分派活動が出て来るリスクがないかの心配をしています。
町内会で言えば、会長や役員が暴走すれば会費を払わなくなるでしょうが、会費の強制徴収方式はこのような暴走を阻止し難い性質を持っている点が、制度的弱点です。
2015-2-6「マスコミの役割・・情報紹介業3」で民放と違いNHKの場合、強制徴収権があるのでブレーキが利き難いと書いたのと同じ現象です。
そもそも強制徴収制度・強制加入制度が何故あるかと言えば、戦後イキナリ弁護士自治制度・・権力の干渉を許さない制度を創設しても強制加入性にしないと分裂を繰り返して組織を維持出来なくなる可能性がある・・一種の補助的制度だったと思われます。
アラブの春以降書いてきましたが、民主主義と言い、言論の自由があればうまく行くとは限らない・・新興国では国民レベル・能力に応じて民主化して行く必要があると何回も書いてきました。
チトーやリークアンユーその他大政治家があってまとまって来た国々がいくらもあるのです。
自治を守るための会費強制徴収権が、(不満な人が会費を払わない・・抵抗する権利を封じていることから・・脱退による対外的分派行動を起こせない面では、組織維持にはいいことですが・)逆に会内民主主義・一体感を阻害してしまうリスクになりかねません。
民主主義とは多数決で良いのだから多数派が何に金を使おうと勝手だと言う意見もあるでしょうが、究極の自由な意見開陳権はイザとなれば脱退の自由があってこそ保障されるものです。 
どんな組織でも、あまり脱退が簡単ですと離合集散ばかりではやって行けないので一定の絞りが必要ですが、要はどの程度の絞りが妥当かと言う問題になってきます。
(世の中の組織で・・夫婦でさえ離婚権があります・・完全否定は弁護士会くらいではないでしょうか?)
政党の場合、脱退は法的には自由としても、選挙資金上の不利を乗り越えなければならない・・(政党交付金の比重が上がっているので基準日をにらんだ年末の分裂・新党結成が普通になっています・・外に、国民の支持を受けない脱退は次の選挙で落ちてしまう洗礼が待っているので簡単には脱退・分派行動が出来ません。
この点株式会社の場合、お金目的で集まっただけの組織ですから、企業経営方針が気に入らなければ、上場企業の場合、自己保有株式を市場で売り払えば良いし、譲渡禁止会社の場合でも、会社に対して適正価格での買い取り請求を出来ます。

会社法(平成十七年七月二十六日法律第八十六号)

(反対株主の株式買取請求)
第116条 次の各号に掲げる場合には、反対株主は、株式会社に対し、自己の有する当該各号に定める株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。
一 その発行する全部の株式の内容として第107条第1項第1号に掲げる事項についての定めを設ける定款の変更をする場合 全部の株式
二 ある種類の株式の内容として第108条第1項第4号又は第7号に掲げる事項についての定めを設ける定款の変更をする場合 第111条第2項各号に規定する株式
三 以下省略

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