味方してくれるか否かはっきりしないからイヤになるのではなく、(外に頼るべきところがない以上は)このときにこそ、こちらに引き寄せる努力が必要です。
アメリカが同盟国保護よりは、(同盟国から受けられる用心棒料・ミカジメ料が少なければ)中国での儲けにつられて中国寄り発言が増えて行きます。
フィリッピンや日本等からアメリカは頼りにならないと思われても、日本や東南アジア等は露骨にアメリカに嫌がらせ出来ませんから、アメリカは失うものは殆どありません。
世界のヘゲモニーを握っているアメリカに少し交渉ごとで譲っておいても、イザというときに後ろ盾になってくれるからということで,交渉上いつもアメリカがおいしい思いをして来た有利な立場・・上乗せ利益(用心棒料/ミカジメ料)が減る程度でしょう。
例えばアメリカが南沙諸島や西沙諸島を守ってやっても自国防衛には関係がなく(フィリッピンが恩に感じるだけですが)、中国と仲良くした方がもっとメリットがあるとなれば、アメリカがそちらになびく危険があります。
アメリカの言うとおりにしても、イザというときに何の役にも立ってくれないとなれば、(後ろ盾どころか中国の主張に「お前譲れ」と言い、譲らないと「失望した」というばかりではどちらの味方か分りません)どこの国もアメリカに都合の良い条約を結ぶのには二の足を践みたくなります。
こうなるとアメリカも同盟国に義理立てするメリット(用心棒代)が余計少なくなりますから、悪循環に陥ります。
TPP交渉の成否は、アメリカが同盟国を大事にするメリットを考える分水嶺になる可能性がありますから、アメリカを引き止めるにはTPPでアメリカにかなり良い思いをさせる度量が中韓を除くアジア諸国にあるかどうかでしょう。
今後アメリカを中心とした国際決めごとは、アメリカのご威光低下に比例して参加国にとってはアメリカの言うとおりにするメリットが減って行くのですから、これに比例して、アメリカに都合の良い意向が通り難くなって行きます。
アメリカが自分の威光低下に比例して既得権を譲る気持ちがないと次第に決まりにくくなる展開が予想されます。
(本来は5分5分のところをアメリカの警察官的役割のお礼を含めて有利に7対3で決まっていたとすれば、今後はその比率を下げて行くしかない展開で、これにアメリカが我慢出来るかになります)
依頼者が自分の実体的能力以上の要求をしていれば、誰が交渉担当になってもうまく行きません。
アメリカ国民や政府が自分が対外約束を守れなくなっているのに、従来どおりアメリカに何割も有利な約束を獲得しろと交渉担当者に命じてもうまく行きません。
名交渉家と言われるようになるには、まず依頼者に対して自己のおかれた状況説明能力が必須です。
例えば敗訴が確定した事件を相談された場合、交渉出来る範囲が限定されていますのでその限界を良く説明して納得してくれた範囲で受任しますが、その他の訴訟前の交渉も彼我の戦力分析をして見通しを立てて受任するのですから、我々弁護士業務と政府間交渉も似たようなものです。
TPP交渉がまとまらないのは交渉担当者の無能力によるのではなく、アメリカが従来全面的に「俺に任せておけ」と言えた時代に比べて、どこまで要求レベルを引き下げて良いのかが決まらない・・アジア諸国もあまり当てにならなくなってるので、今まで通りは譲れないが、どこまでアメリカに譲って対中戦線の仲間に引き止めるかの軸が決まらない・・お互いに初めての交渉になっているからではないでしょうか?
日本もアメリカを自陣営に引き止めるにはそれなりのミカジメ料の負担が必要ですから国内利害調整ばかりを理由にしていられない高度な政治判断が求められます。
風俗や料飲店で変なヤクザの嫌がらせを受けないために、特定のヤクザにミカジメ料を払うような関係ですが、国際社会にはまだ統一国家がない以上は仕方がないのが現状です。
折角頼んでいるヤクザAが隣のヤクザBに対抗してくれるかどうか分らないのでは、意味がないのでミカジメ料の払う相手をヤクザBに乗り換えようかと言うのが韓国の動きです。