マイナス利回り1

ちなみに、年金運用利回りは長期で考えればマイナスを予定するくらいが正当・運用としては手堅いところでしょう・・。
明治維新以降ホンの100年あまりほど投資用資金不足時代が続いたのでプラス金利がつくのが原則になっていますが、元々物を貯蔵保存すれば劣化するのが原則です。
明治まではお金持ちは金貨で貯蔵しておく(幕府の御金蔵という言葉がありますが・・)のが普通で、金利など気にしてませんでしたし、欧州ではまだ金志向が強いと言われています。
(食料品の劣化は言うまでもなく、ウランやセシュウムでさえ半減期がありますし、岩石でさえ割れたり欠けたりします。)
貨幣は物を価値化した抽象的なものですから、貨幣に変換された途端に物の価値が増え続ける訳ではありません。
物は置いておいても(減ったり腐ったりすることがあっても)増え続けないのに、物と価値が同一である筈の貨幣だけが利殖(増殖)を続けるとバランスが崩れてきます。
一定周期で貨幣価値を下げてバランスをとる回復運動が、インフレ現象と理解出来ます。
日本や中国が貿易黒字で儲けた分をせっせとアメリカ国債に投資していますが、アメリカは、これを国内インフレの亢進=時々ドルの下落(目減り)で調整しています。
どんなものでも長期保存すれば何割か目減りするくらいの覚悟がいるのが本来で、食料品に限らず工業製品でも、殆どの製品が10年〜20年すれば劣化する・・巨大建造物・・橋梁等も一定期間経過による劣化が問題になる点は変わりません。
その資金利用で新たな生産・・価値を生み出し続ける場合だけ、プラス金利が整合していたに過ぎません。
資金利用で新たな価値を生み出さない場合、物が化体したに過ぎない貨幣価値も物の劣化に合わせてマイナスになるべきです。
置いておけば増え続けること・・利回りがプラスになることを期待するのが普通だったのは、産業革命以降投資資金次第で生産力上昇が期待出来た・・投資資金不足時代が続いた例外現象だったことになります。
新興国ではまだ投資してくれさえすれば、経済が浮上出来る・・これから産業革命が始まるので資金需要が旺盛で・・ベトナムその他が日本からの投資を期待しているのはその例ですし、中国では今でも日本からの投資がなくなると大変なので、強面の一方で日本に対して神経を使っているのはそのせいです。
先進国では既にインフラその他の成熟の結果、投資による生産性上昇余地が乏しくなっていて投資資金が有り余っている・・資金重要が下がっているので、利回りは低下して行くしかなくなっています。
利息については、税の歴史で出挙に関連して02/23/06「出挙から租税と貸し金業(銀行とは?9)」以下で少し書きました。
稲モミが約1年(当時は今の夏を中心とする半年間を1年と言っていたようであることを以前書きました)で何倍にもなるので増えた子の一部を返すという意味から始まったものです。
利子を払うのは上記のとおり生産活動に利用してこそ、生産増加分の分配として意味があります。
消費信用の場合、そのお金は消費するだけですから、満期が来ても借りたお金が増える理由がありません。
何も増えないところに貸せば目減りしかない(物はすべて時間の経過で目減りして行く)筈ですが、逆に金利を付加して返してもらうのは自然の原理に反して無理があります。
このために金利を払うための借り換えの繰り返しで、借金が雪だるま状になって結果的に金利を付加する矛盾が明らかに・・先送りの限界が来たときに踏み倒し・破綻となります。
資金あまり状態の先進国では生産投資向け需要が少なくなってきて、資金需要は不健全な借り手・・すなわち資金繰り(借り換え)目当てや消費信用が中心になって来たのは必然です。
今朝の日経朝刊を第1面トップにトヨタ(今年の収益の中で金融収益が3割・・昨年では車の売上減で8割)その他の自動車業界が収益の何割も金融事業で占めている実態が出ています。
本来の金融機関の融資先が細って国債にシフトしている中で、車販売のローンを手がける業界で大もうけしている様子です。
車の場合、純然たる消費信用と投資資金融資の中間的金融に位置するから儲かっているのでしょう。
生活費の借金と違って、車ローンの場合、事業用もあれば、個人が買う場合でもその分タクシー代やバス・電車賃が節約出来るなどメリット分もあるから金利を付加する意味があります。
住宅ローンもその間それまで払っていた家賃が要らなくなるなどのメリット抱き合わせですから、一定の金利を支払う合理性があります。

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