トランプ旋風(アメリカのプレゼンス縮小)

国民のいらだちを利用して選挙に勝ってもモノゴトがそのとおり解決出来る訳ではありません。
例えばフィリッピンに駐留しベトナムに寄港して何のメリットがあるんだ!と国民を煽ってもコストに比例して中国が引っ込む義理がありません。
勿論中東地域のテロ組織もアメリカに対する義理で引っ込む訳がありません。
結果的に駐留・巡回経費を現地政府が何%まで負担するかの交渉しかないでしょう。
駐留軍と同じ規模の軍を維持出来ないから大国の応援を求めているのが小国ですから、全額自分で必要な軍事力を持てるならば応援が要らない理屈です。
ただ常備軍を維持するよりは必要なときだけピンチヒッターで来てもらう方がコストが安く済む非正規雇用的メリットがあります。
人質的にアメリカ軍がいると攻撃され難い利点もありますが・・・。
韓国に配備したにMDA(ミサイル防衛システム)は韓国防衛に役に立つのか?アメリカ防衛のためにあるのかの議論も出て来ますし、沖縄駐留軍は太平洋艦隊全部の後方・・基本基地ですから、日本の負担割合はどうあるべきかの議論も起きてきます。
ソモソモ日本防衛だけならばそんな大きな基地は要らないと言う議論もあり得ます。
現実的解決には、駐留経費負担増など・・複雑な交渉力が必要になり(交渉しているといつの間にか負けてしまうので)アメリカ国民のストレスが溜まる一方になります。
旧ソ連が保持していたベトナムのカムラン湾寄港権益をロシアが放棄?しているように維持経費が負担になればやめるしかないのが経済原理です。
トランプ氏であろうとなかろうとアメリカの国力低下に合わせて、無駄な費用負担出来ない・・結果的にアメリカのプレゼンスが下がる一方になって行くしかないでしょう。
トランプ氏の乱暴な主張が支持を受けるようになったのは、元々シリア情勢の複雑化・中国の挑戦・ロシアによるウクライナ問題に象徴されるアメリカ政府の国際的指導力不足・・アメリカ自身が主導して始めた来たTPPもいつの間にか日本に良いようにやられてしまった気分・・複雑な交渉に対応出来ないことに対する国民のいらだちが基礎にあります。
複雑交渉に達しない能力を国力でごり押しして来たのが(国力低下で)今まで通りに行かなくなっただけです。
第二次世界大戦も「欧州情勢は複雑怪奇」と日本の平沼総理が言ったように、アメリカも手に負えないので複雑な情勢から身を引いていたところにイギリスのたっての救援要請に応じて最後に腕力だけで介入したに過ぎません。
これまでアメリカがやれたのは問答無用の単純な腕力行使だけでした。
複雑な政治交渉が必要な戦後処理では結果的に良いようにスターリンにやられてしまったことは既に書いたとおりです。
世界支配力がジリ貧になって来た以上は、本来ならばもっと巧妙複雑な駆け引きが出来る指導者を選ぶべきと選挙戦では主張すべきところ、それに対応する国民レベルにないことを知っているから単純明快な二択的主張になっているのでしょう。 
第二次世界大戦同様に複雑な途中経過には(能力に余るので)関与しないで、最後に出て行けば良いと言う主張でしょうか? 
第一次大戦後ウイルソン大統領が提唱しておきながらアメリカが国際連盟に入らなかったり、今回もアメリカ主導で始めたTPPが思うようにならないのに業を煮やして?反対しているなど戦後はユネスコの運営が気に入らないと直ぐに費用負担を停止するなどやることなすことが単純な「ちゃぶ台返し」ばかりです。
トランプ氏の主張は、モンロー主義で知られるようにアメリカがこれまで繰り返して来たボイコット・・ちゃぶ台返しを繰り返してきたことの再現主張であって、別に目新しいことではありません。
第二次世界大戦での軍事貢献が大きかったので、おだてられて能力を超えて重要な役割を担い、口を出し過ぎていたことを反省しているのならば「分際」に気が付いた意味で合理的です。
ただ、過去にはまだ新参・青二才扱いであまり複雑なことにコミットしていませんでしたが、今はあまりにも世界中にコミットし過ぎていますので、イキナリボイコットするのは無理があります。
ボイコットするにも(やりかけた仕事を途中で投げ出すことは出来ないのが世のルールです)軟着陸の過程が必要ですが、その能力があるのでしょうか?
撤退縮小戦略ほど難しいことはないと言うのが私の持論ですが、これを無茶苦茶・例えば相手を脅して強引に妥協を引き出す・・トランプ氏はこれが得意なようですが・・イエスORノーの二択・乱暴なやり方で来ると・日本だけでなく世界中が混乱します。
いずれにせよ、アメリカのコミットを減らすべき方向性は実態に合っていることは確かですし、アメリカの腕力の恩恵を受けて来た国にとっては一大事です。

日本のプレゼンス拡大と反日暴動1

日本で中国寄りの民主党政権になってから起きた中国漁船による尖閣諸島での漁船体当たり事件は、せっかく中国寄りに舵を切り始めていた民主党政権の日本をアメリカに押し返してしまいました。
しかもこの暴挙はその他の東南アジア諸国と日本の対中連携を生み、アジアでは中国は孤立化の道になって戦略的に不利なことですから、政治的決断としては損得勘定が未熟過ぎて不可解な行為でした。
尖閣諸島周辺に地下資源があるとしても、中国にとって尖閣諸島の領有主張さえすれば直ぐに自国領土になる訳ではないし、当面これと言った経済メリットがなく当面は周囲から警戒される損失だけです。
May 25, 2012のブログで尖閣諸島上陸問題は、中国に対してアメリカ筋によるささやきがあってアメリカに嵌められたのではないかという意見を書きました。
このときは中国がアメリカにうまくはめられて国際孤立を招いているという視点で書いたのですが、嵌められたとするにはあまりにも単純な嵌められ方ですので、(中国は国が新しくて政治経験が乏しいとしても、あまりにもお粗末過ぎるので)アメリカに嵌められたと見るのは無理がありそうな気がしてきました。
もしも中国がアメリカに嵌められた結果アジアで孤立してしまった・・失敗したとするならば、軌道修正して前回の漁船体当たり行為を、個人の跳ねっ返り行為だったということにして終わりにすればいいことで、続けて今夏の大々的上陸決行や反日デモや日系企業施設の打ち壊しまで国策でやる必要がなかったことになります。
マスコミ報道では中国国内不満の吐け口に使っているというのですが、経済停滞による不満は日々蓄積して行くものですので、一過性の暴動演出ではガス抜きとしての持続性が足りませんから、マスコミの大方の意見は誤りではないでしょうか?
まして日系企業だけで約1000万人の雇用をしているというのですから、(その他日本人相手のホテルや不動産業・駐在員向けマンション、飲食業などの膨大な関連産業があります)日本製品不買運動による経済停滞下での雇用不安の拡大は半端なものではありません。
反日暴動がなくとも元々放っておいても経済停滞が始まっていて雇用が縮小しているのですが、この縮小分を日系だけにしわ寄せすれば、日系関連者だけが困るのでその他の業界は日系企業の売上縮小分の穴埋め埋め特需で潤う・・成長したような気がするメリットを狙ったものでしょうか?
日系企業関連者の・収入減や不満に対しては、愛国心に訴えて我慢させれば良いということでしょうか?
日系自動車の販売減に乗じて欧米や中国国産自動車販売が伸びているようですが、伸びたと言っても日系自動車半販売減の100%補充出来ていないないようですから、全体としての経済縮小が始まっていることの隠蔽にはなっているでしょう。
それにしても日本からの投資勧誘(日中対立中にもこそこそと投資勧誘要員が日本企業を回っているとのことです)を平行して続けながら(日本からの投資がないと上海株が下落したままになってしまいます)、一方で反日運動を継続する中国政府の態度は不可思議です。
中国政府はどう言う成算・意図があって、未だに領海侵犯・挑発行為や反日不買運動を続けているのでしょうか?
江沢民がアメリカで第二次世界大戦中の米中同盟を強調した演説(日本敵視)をOctober 26, 2012に紹介したことがありますが、その後日本の経済進出が進み過ぎていることに対する中国側の危機感(欧米のやっかみ)が背後にあるのでしょうか?
特に今回の欧州危機発生後世界から中国への投資が激減・・むしろ回収が進んでいるために2012年11月12日日経夕刊記事によると上海株価指数は07年頃の最高値から3分の1に沈んだままです。
中国では資金不足に陥っていて・・景気対策として鉄道その他の投資は計画発表だけで一向に現実化していないとも以前から言われています。
この状態下で日本だけが逆に前年比増で対中投資・・資金投入にのめり込んでいました。
日本だけの集中的・洪水的対中投資に対しては、日本国内では右翼系経済人が「危険だ、リスクが大きすぎる」と以前から反対していただけではなく、中国自身にとっても一国に頼り過ぎることに対する危機感を持った可能性があるし、欧米にとってはなおのこと巨大な中国市場が日本の独壇場になることに対する危機感が強まっていたでしょう。
要するに日本国内右翼も含めて世界中が、日本経済界の中国集中投資に危機感を抱いていたことになります。
この後に書く予定でしたが、話の勢いでここで少し書いておきますが、太平洋戦争の遠因は第一次世界大戦後における日本の中国市場寡占状態に対するアメリカによる対支門戸開放・機会均等要求に端を発したものだったことを忘れてはならないでしょう。
日本が他国を引き離して中国での存在を大きくし過ぎるのは、歴史経験から言ってもアメリカの嫉妬を招く危険が大き過ぎます。
(日本の国際孤立の下地になった日英同盟の廃棄も、第一次大戦後の日本の中国市場寡占に原因があったのです)

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