この後で先送りになっているコラムで貿易黒字と出血輸出の関係(国民を餓死させてまで行なったスターリンの穀物輸出など)を書きますが、採算価格の半値=赤字で売っても、輸入原材料・鉄鉱石価格等をうわ回ってさえいれば貿易収支としては黒字になります。
500億円で輸入した原料に付加価値をつけて1000億円で売った場合500億円の貿易黒字ですが、この付加価値をつけるのに国内で700億円のコストを投入していると200億円分実質赤字です。
この200億円は製造に従事した人件費や納入業者に払えないだけですから、国威発揚には響きません・・倒産・夜逃げされて踏み倒される国民が泣きを見る仕組みです。
表向きGDPを押し上げる・・国威発揚のために需要を無視した行け行けドンドンのやり方は、就職先のない大卒の大量化政策も同根です。
現在年間大卒が700万人位とも言われていて、その35%が就職先がなくて「アリ族」と割れる悲惨な状態になっていることをMay 3, 2014「日中の制裁合戦4(バブル崩壊1)」に書きました。
不動産バブル崩壊を先延ばしするために、次々と新たな業種を選別して?需要無視の大増産を繰り返して来た(これは独裁政権・国有企業中心だからこそ出来ることです)結果が、自動車産業に行き着いたようです。
今朝の日経新聞朝刊第一面には、4月の乗用車を含むクルマ販売が0.何%マイナスになっていて、景気の先行指標である商用車(トラック等は産業界全般的景気・・実需動向に左右されます)は実に17、6%減となっている・・この部分は目立たないように記事の中でこっそりと書いていますが、これが重要です・・と報道されています。
産業界では17.6%の比率で半年〜1年前からマイナス成長になっていることが明らかですが、中国政府発表どおりに日本マスコミは7%弱の経済成長しているとはやし立て続けています。
建設等需要が減って製鉄量が減ると運送需要減→トラック等販売減少となるので、実は商用車需要減は実体経済に1年くらい遅れますが、消費者・従業員は製鉄量等が減っても製鉄会社従業員給与が(非正規は減るでしょうが・・・)正規社員はイキナリ下がらないし、(以下に書く株相場のようにもうすぐアメリカを追い越すなどと言う)政府・マスコミの煽りに乗せられ易い傾向があるので、乗用車販売減少率等消費支出減少になるのはかなり遅れるのが普通です。
上記のようにクルマの増産を煽るのも限界になって来たので、不景気打開のための金融緩和をするしかない→株式相場が上がると人民日報が積極的に奨励し煽っている様子が勝又壽良氏の「経済時評」2015-05-06「中国、人民日報推奨の株式投機「株未亡人登場」する爛熟相場」のテーマで報じられています。
文章の一部を引用します
「中国では明らかに、ちぐはぐなことが起こっている。住宅投機が失敗した後、投機マネーは株式市場へ向かっているからだ。肝心の企業収益は悪化しており、格付けが相次いで引き下げられるほどである。折角の金融緩和でも、金利引き下げの恩典と無縁である。それが、中国企業の実態である。
政府系メディアは、こともあろうに株式投資推奨記事を掲載している。満足に小学校も卒業していない人々が、一攫千金を夢見て株式市場へ群がっているのだ。この情景は、「爛熟相場」と言っておかしくない。中国経済は株式投機に失敗すれば、もはや「その後」がない崖っぷちに立つ。その認識もない政府系メディアは、いったい何を考えているのか。」
「しかも悪いことには、政府系メディアが株式投資を煽っていることだ。「個人投資家の間では、『勝ちたければ人民日報を読め』が合言葉。政府系メディアが論じる通りに株式を売買すれば、外れはないと信じられている。昨年9月、新華社は連日で株高の必要性を訴える記事を掲載。中国本土市場はその約2カ月後に、本格的な上昇相場に入った。『構造改革が進むなか、政府は株式相場による景気の下支え効果を重視している』という見方があるほどだ」(『日本経済新聞』4月22日付け)。」
「住宅バブル崩壊をカムフラージュするべく、中国政府は株価を煽っている。私には、そうとしか読めないのだ。肝心要の企業業績は下降に向かっている。株価上昇の背景には唯一、金融緩和期待しかない。だが、バブル経済崩壊という歴史的な事件のなかで、金融緩和が企業業績の回復に資するのか。そう考えるのは、余りにも無謀である。」
実際5月11日紹介したように産業界の期待・悲鳴に応えて金利引き下げが続いています。
バブル崩壊が近いから、政府が放置出来ずに金融緩和するから、株が上がると言う政府系宣伝もおかしなものですが、(金利引き下げによる外資流出を阻止する目的でしょうが・・)最後の大相場を期待して貧困農民までが殺到していると言うのですから驚きです。