データの避難準備1(空襲)

今回は自治体データの内戸籍関係だけは法務局に書類が移送される仕組みでしたから、偶然無事だったようですが、第二次世界大戦時にも同じような問題があって、町役場と同一地域にある法務局も米軍の空襲によって焼けてしまい、戸籍関係が焼失してしまう例が多くありました。
ただし、敗戦時に焼失した戸籍簿や不動産登記関係書類は日常的に必要とするデータではないし自治体側から、行政目的に積極的にこれを利用しているデータではありません。
各関係者が必要とする都度、届出て復元すれば足りたようです。
いまの時代住民登録の整備があれば、戸籍簿整備は不要ではないかと言う意見を April 17, 2011「不正受給防止(超高齢者)」まで書いて来ました。
言わば不要な記録だけが、今回の津波被害から助かったことになります。
津波被害では、タマタマ法務局と役場が離れていたから良かったに過ぎず、同じ地域に集中するのは、津波に限らずどのような種類原因による被害があるか分らないのでリスク分散としては危険です。
遠隔地に用地取得して置いて、そこの管理事務所併設倉庫に(紙記録など)バックアップしておくべきだったのです。
私は戸籍簿の喪失に関しては職務上今までいくつか経験していますが、空襲の場合、津波と違って一族・一家あるいは集落構成員根こそぎ死亡することが滅多にないので、生き残った家族らからの聞き取りや届け出及び集落関係者の報告等で戸籍の復元が大方出来ていたようです。
土地台帳・登記所が燃えても、各人が持っている権利証や隣近所の人の持ち寄った公図写しなどで何とか復元出来ていたのです。
(津波のようにムラごと流されて全員なくすようなことはなかったので・・)
何しろ自分の耕している土地や自宅敷地を知らない人はいません。
しかも当時の役所のデータの殆どは現在の膨大な技術的行政文書と違い長期間掛けて関係者が必要とする都度復元すれば足りる・・どちらかと言えば、記憶に頼れる原始的文書でした。
(親や兄弟の氏名生年月日、何時結婚したか姪が何時生まれてどう言う名前か等は正確に知っていることが多いものです。)
現在の行政文書は自分のことでも保険番号や建築確認書類その他を役所に問い合わせないと分らないような・自分で記憶しきれない・管理しきれないデータが殆どです。
行政も国民を管理するだけではなく、今ではデータに基づいて積極的にいろんな施策をしなければならない役割ですから、(介護や生活保護でも細かなデータが必要です)細かなデータがないと自治体も動きがとれなくなってしまいます。
公的資産の管理を考えても詳細設計図書がなくなれば、ちょっとした修理をするにも大変なことです。
土地権利証などと違い今では年金記録その他すべての分野で詳細なデータ化しているので、そのデータ自体を国民が所持している例は少ない筈ですから、一旦消失すると各種行政文書の復元は困難を極めます。
ここでの関心は、これまで書いて来た住民個々人の避難準備不足による被害拡大だけではなく、自治体自身の避難準備・危機管理がなかったことによって、これから徐々に明らかになる損失拡大・事務処理効率のロスに対する懸念です。
ただ、敗戦時の記録復元が簡単だったとは言え、聞き取りに頼る場合正確な漢字表記などに誤りがある事件があって、本人にとっては自分の名前の漢字が違っているのは落ち着かないままで来たのですが、死ぬ前に訂正したいと言うことでした。
そこで、兵役従事中の関係文書や応召前の学籍簿などを証拠に、戸籍上の名前・漢字表記の誤りを訂正するための手続きを昭和50年代にやったことがあります。
ま、こんな程度の誤りは国全体の施策には影響がない程度ですが、現在の行政文書のデータは膨大ですし、膨大な行政文書がないまま行政を執行して行く・・あるいは前向きの施策をするにしても、前提となるデータがまるでないのでは眼をつむって走り回るようなもので、大変な事態になることが明らかです。

データ公開(秘密体質1)

話がそれましたが、民主党政権(参議院議長は民主党出身です)でも根回しの必要性を正面から否定して新たな社会にしようとする人ばかりではなく、自分たちが根回し能力が低いだけであって自分に対しては根回し無視,事前相談がないと怒る人間が多いことが分ります。
それどころか防衛大臣の判断が本当だったとすれば、危急時の価値判断が現場の方が優れていて政治家の方が大きくずれていることになりそうです。
自衛隊現場では、東電社側による「原発が大変なことになっているので、緊急に帰京する必要がある」と言う説明を聞いて判断したのに、現場から防衛大臣への報告ではそこを端折って報告したので、大臣は単に民間人の搭乗だと思ってそんなことより災害救助を優先しろと言った可能性もあります。
地震発生直後数時間の段階ではまだ原発問題は大きな関心を呼んでいなかったので、東電関係者以外は危機感が広がっていなかった可能性があるからです。
別の件では,原発問題専門家として内閣府参与に登用されていた人が自分の意見が通らないことに政府の対応は場当たり的だ(指導力がない)と腹を立てて3〜4週間くらい前だったか?辞任しましたが、自分の意見が通らないことを理由にトップに指導力がないと言うのも変な論法ですが,我が国の正義とはそんなものです。
ついでに書いておくと、学者は自分の意見を通さねばならない立場ではなく、自分の意見を臆さずに主張することに意味があるのであって政治家は多種多様な意見から政治責任を持って取捨選択あるいは止揚して創造的な決断をするべきものであって立場が違います。
学者生命にかかわると言うならば、自分の意見を政治家に遠慮して主張しなかった場合だけであって、きちんと主張した結果政治家に採用されたかどうかではありません。
学者である以上多様な意見があり得ることくらい分りそうなものですが、自分の意見が政治家に採用されないことを怒るとは不思議な主張です。
政府決定に連帯責任を負うのが嫌だと言うならば、議事録の公開を求めるべきかどうかの問題です。
今回の震災対応の問題点は政府の秘密主義に大きな問題があり、これが却って世界中から日本製品閉め出し、対日観光客の激減などの2次被害に繋がっているのです。
何ミリシーベルトで危険があるかどうかの議論経過・・前提事実・・客観的データを、政府が国民に隠す必要性がありません。
あるいは風向きによる放射能飛散状況の動態図(スピードとか言うものらしい)を何故隠していたのかも疑問です。
何故日本でそういう科学技術がないのか(日本は本当に先進国かな?と)疑問に思いながら、仕方なく私の場合ドイツが公開していた動画を見ていました。
後でそういうシステムを日本も動かしていたのに、国民には隠していた(隠すつもりがなかったかも知れませんが公開していなかった)ことが分かりました。
議論経過・科学的データをオープンにした上で、政府がその中のどの意見をどの理由で採用したか、それが政治決断として妥当だったかを国民の審判・あるいは世界中の批判に委ねるべきです。
辞任した原発学者が記者会見で政府判断の不当性を暴こうとしたら、政府から公務に関しては守秘義務があると注意されて記者会見が取りやめになったと言う報道です。
議論経過を何故秘密にする必要があるのか疑問です。
ただし、彼は政治家ではないならば、誰がどう言ったかではなく自分の意見論文を書けば良いのであって、政府判断の不当性を力説する必要性はありません。
実践的にどの意見を選択するのが正しいかは政治判断の領域で、学者・専門委員の職分を越えています。
とは言え、政府(後に書きますが官僚)は科学の領域に関することまで何故オープンな議論を怖がるのでしょうか?
国際交渉では、相手のあることですからすべて手の内をさらす訳に行かないので国家秘密性があり得ますが、国内の原子力事故で、何がどうなっているのか国民に知られると、あるいは外国に知られるとどんな不都合があると言うのでしょうか?
コチラの対処方法が予め伝わると、原子炉の方で予め反応して別の事故を起こし、裏をかかれると言うのでしょうか?
相手は生き物ではないのでコチラの動きを知られても困ることはない筈ですが・・・。
データを開示するとそのデータなら別の方法が有効であるのに、政府の対処方法は誤りだと言う批判を恐れている・・政府・官僚は自分のやっている事に自信がないからでしょう。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC