ブラジルやベネズエラのような破綻が起きるのは、国債発行額の多寡によるのではなく、国際収支上の総合的パフォーマンス悪化によるものです。
ジョージソロスのような為替マフィアは国債を予め取得しておいて売り浴びせる必要はありません。
国際収支パフォーマンスが長期的に悪化していて、その国の通貨が実勢より高過ぎると見れば、この落差を狙って先物取り引きを利用して通貨自体の空売りを仕掛けられる→通貨の大幅下落=下落分=輸入物価上昇→輸入資金不足→輸入減少→品不足=国内物価急上昇になることによるものですから、既発行国債の量に直接の関係はありません。
ベネズエラの危機状況は以下のとおりです。ww.cnn.co.jp/business/35093870.html
2016.12.16 Fri posted at 15:48 JST
「ベネズエラ政府は先ごろ、現在の最高額紙幣である100ボリバル札と新しく発行される高額紙幣(額面500~2万ボリバル)との交換を15日に始めると発表。またマドゥロ大統領は11日のラジオ演説で、72時間に限って100ボリバル紙幣と同価の新硬貨の交換を行うと述べていた。
・・ベネズエラが直面している経済的混乱を象徴している。為替相場は暴落し、インフレが急進。食べ物や薬は不足しており、買う場合にも山のような札束が必要だ。
国際通貨基金(IMF)の予測では、今年のベネズエラのインフレ率は470%で、来年には1660%にも達するという。11月だけで通貨ボリバルの価値は約55%も低下した。国民は買い物の際も、札を数えるのではなく、札束の重さを量って支払いをしている状態だった。」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49059
(英エコノミスト誌 2017年1月28日号)
この1月にロイター通信にリークされた中央銀行の推計によれば、ベネズエラの経済規模は昨年1年間で18.6%縮小した(図参照)。インフレ率(消費者物価上昇率)は800%に達している。
これらは速報値であり、改定される可能性がある。永遠に公表されない可能性もある(中央銀行は1年以上前に、完全な経済指標を報告するのをやめてしまった)。上記のインフレ率の推計値は、国際通貨基金(IMF)による試算に近い。そのIMFは、今年のインフレ率が2200%に達すると見込んでいる。
ベネズエラの進行を見れば、紙幣発行増によってインフレになっているのではなく、経済パフォーマンス悪化→通貨暴落→輸入縮小による供給不足によってハイパーインフレになっている・・もの不足を糊塗するために、政府が紙幣を大量発行するしかない・・あるいは高額紙幣に切り替えるしかない・・その結果紙幣発行がインフレを起こしているように見えることが明らかです。
世の中には、これを逆に主張する・・紙幣の無節操な発行がハイパーインフレを起こすと言う論説が一般的ですから不思議です。
日本でいくら異次元緩和・紙幣大量供給しようともインフレにならないのは需要あれば直ぐに増産出来ますし、中国から入って来る・・供給が余っている・・買う金があるからです。
金あまり国にインフレが起きようがないのは理の当然・日銀の2%物価序章を期待する政策などは私の素人的意見で言えば、噴飯もの・・無い物ねだりです。
金まり国とは国際的両替出来ない紙幣の量ではなく、国際的にきちんと両替出来る紙幣のことですが・・両替出来る→いくらでも不足資材を輸入出来るの物価が上がりようがないのです。
紙幣が多過ぎてインフレになるのではなく、購買力のある紙幣=外貨に両替出来る紙幣がないから「回りの国が売ってくれない」のでインフレになるのです。
ハイパーインフレの原理は貿易収支悪化→自国通貨暴落にあることが明らかです。
ところで、国債や社債を日本人が持っていようと外国人が持っていようと、円相場が急落すると円資産保有者(国民の多くが円資産保有者です)が損する点は同じです。
結局は自国通貨が暴落するかどうかであり、国内発行の紙幣の量ではありません。
ただし同じ記事を読んでもそれに対するコメントを見ると・・だから「日本の赤字国債発行の危険性がよく分った明日の日本だ」と反応する人がいるのには驚きます。
中韓と交流が必要とは言うものの、どんな眼前の事実を見ても思い込みのある人はねじ曲げて解釈する傾向がある・・「分りあえないのだなあ!」と言う印象です。
勿論逆の立場から言えば私をそう思う人がいるのでしょう。
ただし、今の日本は世界トップの対外純資産国で対外債権保有の方が多いので、円が下がると対外保有資産評価が上がる上に交易条件が有利になる有り難い国です。
逆から言えば通貨下落・デフォルトリスクに関する議論は、経済の底が浅い純債務国に必要な議論であって、対外純資産世界トップの超優良国家日本には、意味のない議論です。
円の対ドル相場が下がると貿易上有利・貿易黒字がもっとたまる・・日本有利になるばかりですから、日本敵視国では、口惜しくとも?円を下げたい国はどこにもないでしょう。
日本攻撃には円を上げさせて貿易赤字に追い込むしかないるしかない・・これがプラザ合意の肝でしたが、市場に委ねておいて自然に円を上げるには日本より金利下げるしかありません。
貿易黒字がたまれば為替変動による調整弁→黒字分だけ円高になる筈ですが、黒字国=金あまりですから資金需要が少ない→低金利化します・・これは日銀政策によると言うよりも自然の流れです。
貿易赤字国→資金不足国は資金不足に比例して高金利・・調達金利が高コストになるので金利の安い日本で借りて自国に持ち込む方がコストが安くなります。
この結果、金利の低い日本から自然と貿易黒字でたまった黒字分をそっくり対外投資に振り向けるようになると円の為替相場が上がりません。
アメリカは長期間貿易赤字が続いていたのに、資金環流システムによってドルが一向に下がらなかったのは、アメリカの強いドル=威信を維持するには好都合だったでしょうが、いわが借金で贅沢していたようなものですからいつかは無理が来ます。
一般の国の場合借金を膨らませる一方ではギリシャやベネズエラのようにいつか破綻するのですが、アメリカは基軸通貨国の特権でドルを刷れば良いので、破綻しないと言われて来ました。
基軸通貨国と言っても本来突出した財力に裏打ちされてそうなっただけで、裏付ける財力がなくなって来ると自然にドル決済取引が減って行きます・・江戸時代の幕府みたいな権力さえあるか怪しいものです。
円ユーロだけではなく今後ビットコインその他仮想通貨時代になって来ると軍事力・権力の裏付け不要の時代が来る可能性もあります。
江戸時代の為替交換は・・信用で成り立っていたように権力がなくとも商人間で信用を失うと商売出来なくなる時代が来るように思えます。
アメリカの金利が対米貿易黒字国よりも高く維持出来ていれば論理上無理がありませんが、中国のように金利逆ざや国がアメリカに義理立て出来なくなると資金還流システムが機能しなくなる・・ある日アメリカドルが暴落する日が来るかも知れません。
中国の場合、対米黒字が年間6000億ドル以上にも達していてこの資金の大部分をアメリカ国債を買わされている・・還流しないとアメリカが承知しない(45%関税を掛けると)・・中国もイザとなればアメリカ国債を市場で投げ売りすればアメリカの威信は大暴落・・と脅かす関係・・お互い強迫関係で来ています。
中国に取っては自国金利が基準金利でさえ4〜5%で市中金利はもっと高いのにアメリカの0、5%前後の低い債権を買わせられるのでは、経済原理もあったものではありません。