民度6(イギリスの経験論)

観念論体系にこだわる場合に社会が変化して行くときの現実との矛盾相克に戻ります。
日本では江戸時代に儒学採用後半世紀ほどですぐに矛盾が出たのすが,中国で言えば前漢時代から約2000年以上も延々と採用していたのに,西暦2000年頃まで社会矛盾が出なかった・・余程変化しない・・停滞社会であったことが分ります。
実際には、いろんな矛盾が起きていたのにエリートの教養優位を維持するために,強権で押さえつけて来た結果停滞していた相互作用でしょう。
専制支配社会では処罰の合理的根拠不要なので、赤穂浪士処分のような矛盾相克が起きないということでしょう。
韓国も「反日無罪」の論理で国内的には一貫できる点は専制支配の現在版ですが、安倍氏に国際合意にされてしまった結果(慰安婦像設置と国際合意の相克)国際ルールとの関係をどうするの?と言う矛盾に今頃になって初めて気が付いている状態です。
韓国では民主国家になったと言っても精神レベル、民度が専制支配状態のままですから、君主専政の代わりに人民が激昂すれば論理・正義無視でなんでも出来る社会意識でやって来ました。
何かある都度興奮して大集会を開いては特定人物を糾弾する・・・大統領を失墜させるなどを繰り返して来た精神風土です。
専制君主一人の無茶苦茶から、飛行機を止めたピーナッツ事件で分かるように財閥親族の横暴や個々人では弱い人民でも大集会開催まで成功すると同じく論理無視の無茶が通る社会に変わった・・マスコミの応援があれば無茶をみんなが言えるようになっただけです。
民主主義社会には一定の民度がない社会ではタガが外れると衆愚政治→大混乱になりかねないと書いて来ましたが、個人の弱い社会では被害者と(マスコミに)公認されるとイキナリ怖いものなしのモンスターに変身する・・集会激昂主義もその一態様でしょう。
国内的には無茶苦茶でもその都度興奮してちゃぶ台がえしをするのも民族の勝手でしょうが、対外約束をしてしまった慰安婦合意も国内集会さえ派手にやれば反故にできると誤解した結果が表面化したチャンスを逃さずに安倍政権がスワップ交渉中断等を発表したので、韓国は国際社会で一人前に生きて行ける民度レベルに達していないことが国際社会に露呈してしまいました。
これまでいつも日本が折れてやって尻拭い的にカモフラージュしてやっていたからこそ,一人前であるかのような顔を出来ていたに過ぎないコトが露呈しました。
日本では、綱吉から家宣父子の時代・・10数年を経て、吉宗の御定書シリーズで紹介したとおり、観念的儒学では実務処理出来ないコトを理解し・実生活に即した判例集の編纂・・判例主義・・薬学その他実用学問奨励へ傾斜して行きます。
そして儒学は朱子学の高尚な哲学から・実践倫理である陽明学の「知行合一」(幕末の大塩平八郎の乱で知られるとおり現実重視)に移って行きますが、朝鮮半島にも陽明学が先に入ったのにその後朱子学中心になってしまい,衰退して行く点では日本と進行が逆です。
(ローマ帝国が一神教のキリスト教を国教化してからダメになって行ったのと似ています)
朱子学オンリーに固定化したから・・社会が停滞したと言うよりは,硬直化する下地があった・・日本では約50~100年経過で重視されなくなったのと比較すると社会構造・・実態社会が日本と違っていたからでしょう。
実学中心に日本人の知的営みを変えて行った吉宗は,(旧思想界からは「御文盲に御座なされ・・」と室鳩巣に書かれるほど伝統文化・・和歌などを軽視していましたが)日本の知識・思想界主流を実学的・近代合理主義社会へ変えて行った大功労者ですし、古来から連綿として変化し続ける社会の要請があったからと言えます。
ウイキペデイアの引用です。
「室鳩巣が、吉宗の教養について「御文盲に御座なされ候」といい、6代家宣の正室天英院の父・近衛基煕も「和歌については尤も無骨なり。わらふべし〃」と酷評しています。」
文化発展に戻しますと,立派な観念論体系が完成した社会または先進社会から導入した社会では・・有り難いものの解釈学中心人材・・老舗大企業で言えば新規事業や・製品開発能力よりは,有能な秘書向き能力ですが・・こう言う能力ばかり重視する社会では,別の観念体系・・枠を越えた自由な発想が育ち難くなり、企業で言えばジリ貧になりますしクニも同じです。
現在でも,後進国が先進国の知財輸入または剽窃利用する社会では,導入技術の解読が中心作業になります。
既存観念の解釈学が幅を利かす社会では,専制・絶対支配に馴染み易い・・これが中国朝鮮の歴史であり現在の状況であるのに対して,日英のような経験論・実務に即して工夫して行く社会は無理な論理一貫性を強制しない分,大陸の観念体系が入っても参考にする程度で発想の自由性があります。
日英でも既存枠内の整合性を追及する解釈学も当然必要ですが,それ程重視されない程度差がありますが,社会内には観念にこだわる・原理主義者も一定数いても,主流にはなり得ません。
イギリスがローマから見て辺境の地にあったことが幸いして,ローマ法やキリスト教ドグマの浸透が緩かったことを書いて来ました。
勿論これに加えて海洋民族性が,大陸的強固な神学大系に違和感があった面が大きかったでしょう。
ローマとの関係が緩かった・これが絶大なキリスト神学の権威を低めて自民族意識・習慣にあったコンモンローの発達促進に効果があったと思われます。
コンモンロー裁判制度はノルマンコンクエラーで知られる異民族支配の結果,却って同族による裁判の要請・陪審制が発達したと言われています。
陪審制とは庶民による裁判保障・・あるいはいわゆる人民裁判・吊るし上げ制度ではなく、異民族による裁判拒否、自民族による有罪の支持がないと処罰出来ないとする制度です。
ローマから遠かった結果、成分法体系(ローマ法の解釈ではなく)よりは実情に応じた解決・・漸進的判例法の発達を促し、更に法解釈ではどうにもならないようなときのために別途「衡平法裁判所」と言うものが生まれて来ました。
このように独自の法制度が成立する土壌があってこそ,ヘンリイ8世のわがまま・無茶苦茶?に端を発したとは言え,ローマンカソリックからの国教会独立を容易にした原因でもあり,(異民族王朝・・抑制が必要な歴史があったのにイキナリ王権神授説で権力を振るったので反発を招き易かった)絶対王政を倒し,自由な発想が保障されていた英国で先ず産業革命が始まった基礎でしょう。
英国は大陸との関係では,我が国と地理的条件が似ていますが,我が国の場合思想統一になる科挙制度を古代から意識的に除外して来た点が英国と一歩どころか何歩も違っています・・念のため・・。
英国はEUに一旦参加していましたが、ついに気が合わずに離脱方針を決めましたが、日本人にとっては一旦でも中国と合併したいと思う国民は100人に1人もいない・・その違いです。
この違いの基礎は、日英の海洋民族性に関する濃度の違いではないでしょうか?
日本人のルーツは南洋諸島や東南アジアの諸島からはるばる流れ?て来た海の民が祖先の大多数でしょうが,(DNA研究によれば大陸からの移住者はごく少数らしいですから気が合わないのです)英国の場合,周辺・・南方にこのような人口供給源になるような諸島がありませんし、海の幅・対馬海峡とトーバー海峡の差もあります。
結局は大陸からの移住者中心社会である以上は,大陸の人と元は人種的には同じになります。
長年、英国人は島で暮らしていた結果徐々に生活習慣の違いが出て来た程度に過ぎないのですが、日本の場合大陸の人たちとは,ルーツからして違っている点が大きな差です。
話題がそれましたが,ついでに韓国で文学芸術系で何かあるかを念のために調べてみると以下のとおりです。
ウイキペデア(対して信用性がないとしても・・)で「朝鮮文学」で検索すると,いろんな物語があったらしいと言う想像的書き方ばかりで、具体名があるのをクリックしても多くは「編集中」で全く具体性・根拠がありません。
最も古そうな人名でさえ下記のとおりです。
『春香伝』『沈清伝』ともにその発祥は定かではないが、申在孝(1812年‐1884年)が『春香伝』『沈清伝』を基にパンソリの台本として『春香歌』『沈清歌』を作ったとされること、様々な文献に『春香伝』『沈清伝』の原型が見られることから、古くから伝えられている説話である//」
以上のとおりで1884年までの作家の名が初めて出て来ますが、それさえも,「・・が作ったとされる」と言う程度で伝説的噂の域を出ていません。
19世紀中期〜末頃でこれですから、源氏物語などのある日本に比べて上流階級は何をしてたの?と言うレベル(文化を楽しむ・顧客層が一定数が育たないと文化人が育たないでしょう)・・清や明から来た外交文書を理解出来,返書を何とか書ける程度で満足するエリ−トだったのかも知れません。
ただし朝鮮人の名誉のためにちょっと書いておくと、李氏朝鮮での朱子学の解釈学はそれなりに進んでいたようですが,繰り返し書くように解釈だけいくら掘り下げてもその先がありません。
比喩的に言えば「韓国人は日本人より何故優れているか?」「歴史が日本より古い」「日本技術の解読」と言う予め決めたテーマの研究中心社会では,発展性がありません。

イギリスEU離脱3(冷静対応とマスコミ・識者の役割)

観光客はその都度食費や交通費その他対価を払っているとしても、国民の負担で作った良好なインフラを無償利用している・・綺麗な街は税金で道路掃除したり植木の維持などしています・・千葉市美術館で言えば維持運営資金として巨額市税を投入しています・・入場料さえ払えば良いと言う関係ではありません。
移民や観光客に入国税(会員制の入会金)を課すべきですが、逆に消費税を免税すると言う変な習慣があります。
私はただ乗りの観光客誘致論はおかしい・・結果的に日本経済が細って行くばかりだと言う観光立国論を繰り返し批判して来ましたが、移民に対しても社会保障などの現物給付さえ減らせば良いのではなく、インフラ負担が重くなっている先進国では、インフラただ乗りも許さないと言う(マスコミには出ませんがイギリス国民の意思はこの)段階に来ていると理解すべきです。
これまで書いて来たのは格差論に関連して移民に対する不満について想像を逞しくしているだけであって、その他何が実際に不満になっていたのか(マスコミは残留派の言い分しか報道していないので)私にはよく分っていません。
イギリス国民の不満が仮に具体論になっていなくとも、大陸と海洋国の価値観の違いが数の力で押しきられていくことが多かったり、EU拡大によってEUの組織が大きくなり過ぎて官僚主導で合理的に割り切れない微妙な国民意識の吸い上げが出来なくなっていることなどの複合要因でしょう。
規模拡大やグローバリズムの不都合を分析して研究することこそ学問の自由を保障された学者の仕事ですが、金融資本を中核とするグローバリストがマスコミ支配しているため、金になる仕事=マスコミ主流に迎合するしかない実態があります。
結果的に・・最近の学者の意見は、左右を問わずマスコミ意見にオモネているだけ・・マスコミに反する意見は発信出来ない・・幅広く出られなくなっていますし、マスコミを敵に回せない政治家の場合なおさら太鼓持ちするしかない状態が長年続いています。
イギリス国民投票結果で驚くのは、与野党共に離脱を主張していない・・国民過半の意志を代弁する政党がまったく知られていない(英国独立党あるらしいですが全く報道されていません・これも日本マスコミの偏頗性の象徴?)事自体が、国民意思を無視した政治が普通に行なわれている・・エリート社会・「マスコミさえ支配すれば勝負あり」みたいな社会の限界を表しています。
独仏では、国民の過半数支持に遠く及ばないのに反EUやグローバリズム反対を標榜する政党(日本マスコミは彼らを極右と翻訳していますが・・)があることからみると、国際的に知られる政党すら育たないイギリスの方が金融・マスコミ支配が強い・・言論の不自由な状態になっている現実を表しています。
金融資本の強いイギリスの場合、政党も学者も全てグローバリズムに表立って反対出来なくなっている結果、マトモな批判論(移民が増えることに対する庶民の不満を吸収する意見)を展開するプロがいないから、投票者の多数を占めている幅広い不満を社会が合理化出来ず、結果的に折角国民投票で国民意思を表現してもマスコミによってナチスになぞらえたり感情論だと非難されても黙っているしかない状態であることが分ります。
今の時代に左右対立・保守党か労働党かの2大政党制など殆ど意味がない・・今はグローバル化進行が良いかどうかのテーマこそが世界的な重大テーマですが、グローバル化反対意見を代表する政党すら存在が殆ど許されない状態になっている・・問題提起することすらを人道主義違反・ヘイトとして許さない・・パッシングして葬る運動をしている中心勢力が言論の自由を主張するマスコミでは矛盾が激化する一方です。
ところで、西欧かぶれがフランス革命を賞讃し学校教育でも賛美していますが、革命が起きるまで矛盾・不満を放置する社会こそ遅れた社会の象徴であると繰り返し批判してきましたが、日頃から弱者の気持ちを汲み上げる政治風土が育ってないから今回も国民投票で「革命的に」ひっくり返ったと言えます。
欧米の民主主義とか人道主義と言うのは底の浅いものです。
日本は古代から庶民意思を汲めない政治をしているのは「恥」「支配者失格」と言う基礎意識でやって来たので革命まで行く必要がない社会です。
赤ちゃんが泣きわめく前におむつを取り替えてやる母親は良い母親です。
グロ−バリスとが握っているマスコミがこぞって「移民は良いぞ!」と囃し立てても裸の王様みたいなもので、言語表現能力のない国民は生活実感で寒がっているのです。
フランス革命の流れを封じ込めるためにオーストリアを中心とする介入がありましたが、離脱を決めたイギリス国民をバカにして封じ込める動き・・マスコミの煽動に乗って厳しい条件を突きつけると大変です。
マスコミ論調は相変わらず「離脱するとこう言うリスクがある」と言う脅しの強調ばかりですが、これは「王様が裸」と本当のことを言うと「どんなひどい目にあうか知っているのか」と脅しているのと同じで逆効果リスクがあります。
移民増加に対する不満ががEU域内に広がっているにも拘らずイギリス国民だけの特殊性として強気で圧して行く・・EUが謙虚に自戒しないでマスコミ支配さえすればどうにでもなると離脱派をバカにし、合理的代弁者が育つのを阻止してバカにして脅迫していると移民反対運動が過激化して行く・・移民迫害の実力行使に走るようになるでしょう。
逆から言えばマスコミがグローバリズム進行を止めたくないために、EU首脳や独仏等の政治家に「ここで譲るな強行突破しろ」と厳命しているのかも知れません。
マスコミがグローバリズム進行・停滞阻止に何故必死になるのかですが、それは憶測に留まるのでまたの機会にします。
政党や学者の応援がないのでどのように自己を合理的に表現して良いかよく分らないイギリス国民・・政治家が国民意思を代弁してくれない状態のイギリス人が大陸諸国・・しかも官僚の多数決で決められるのは「兎も角イヤ!と言う程度しかないのが今のところの意思表示でしょうが、人生は言葉やスローガンだけで表現し切れないことが多いのですから、これを合理的に理解する努力を怠り「不合理だ・底辺層の感情論」だとバカにするのは間違いです。
庶民と国家意思の間に代議士が介在するだけの間接民主制ならばまだしも、国家意思の上に君臨するEU官僚の「合理的』決定でドンドン進むようになると庶民意思との乖離が半端ではなくなります。
これに対するもやもやした庶民の不満を代弁する政党・学者がいないのが、イギリスだけでなくフランスその他あちこちで不満が広がって来た原因です。
勿論アメリカのトランプ現象もその一つです。
成熟した社会であると思っていたイギリスが過激?(赤ちゃんがいきなり泣くように見えても実は合理的な理由があるように、政治家が無視して来たから突然の意思表示に見えるだけですから穏健な主張かも知れません)な反応をしたことを驚き、バカにする意見が(今の日本マスコミで見る限り)大方ですが、成熟した民主主義社会とは日本のように民意をスムースに汲み上げられる社会のことです。
イギリスの決断は逆に民主社会の老舗として民主主義の形骸化(2大政党が2派に分かれている国民利害を代表していない)に対する草の根の不満・・現在の「マグナカルタ」の創設として世界史に残る偉業の始まりになるかも知れません。
混乱の始まりになるかは、今後の動き次第です・・この辺は元ロンドン市長の落ち着いた発言「離脱を急ぐ必要がない」が期待を持たせます。
双方感情的にならずにしたたかにやって行ければ・・EUの抜本的改革(急進的統合進化に対するブレーキ・・1歩後退2歩前進)になり、これを評価した上で結果的にもう一度国民投票して離脱をやめる方向に持って行ければ、それこそ老舗の貫禄です。
また中島嶼国とは違う西欧社会の成熟度を示すことになるでしょうが、EUが強気一点張りで対応すると混乱が待っています。
マスコミ意見にあわない選挙結果が出ると「ポピュリズム」は困ったものだとマスコミ人は形式的評価に終始していますが、EUがいわゆるグローバリストの言いなりに下手な出方をすればイギリス国民が硬化してしまうだけではなく独仏国内の離脱派を勢いづかせて、低レベル応酬になって行くと世界の不幸です。
キャメロン氏は責任をとって辞意表明しましたが、この後を引き継いだ政権が単に不満を煽るだけではなく国民のはっきりしない不満(私流に言えば、インフラただ乗り論に整理して行く)をうまく吸収して合理的テーマ化して行き解決の道筋を示せるかにイギリスとEU再生の成否がかかってきます。
相手を批判だけして行く方式・・相互に不満だけ高まり相互不信を募らせて行くだけならばシリア等アラブ諸国の混乱とあまり変わらない状態になり、EUとイギリス双方にとってマイナスの結果・・衰退の始まりになるでしょう。
外野から見れば、「植民地支配の果実で実力以上の生活をして来たのだから本来のレベルに戻るだけ・・」と言う冷めた見方も当然あり得ます。

イギリスEU離脱2(マスコミの中立性違反1)

EU首脳がイギリス国民投票の結果に責任を負わずにイギリス国民の要求が非常識だと開き直りに徹するとこの後の交渉がこじれてしまい、ドイツ30年戦争のように何十年にわたる紛争の幕開けになる・・妥協を知らないアラブ諸国のように次第に相手に対する非難をエスカレートさせて移民対反移民グループ間でテロの応酬に陥る懸念があります。
昨日まで書いて来たように遺産や海外収益を移民に分配する政策に怒っているのはイギリス国民に限りませんので、イギリスのわがままを許さないと言う対応ではことを誤ります。
移民に過去の遺産を食いつぶされそうになっている不満がイギリスで保守、労働党の党派・思想の垣根を越えた横断的不満になっているように、イギリス1国に留まらずEU全域の水平的問題ですので(移民の多寡と経済力によりますが・・)EUの内部分裂騒動に発展する可能性を書いています。
社会保障給付水準だけ差別(例えば医療費負担率を上げる?)を認めると言ってもゼロにしないし、移民はなお公園や図書館・教育を受ける権利などの各種インフラ整備や維持費を負担しないでただで使えます。
賃金面で見ても、海外からの送金による上乗せ賃金を地元民と同じように移民も貰えるので出身国で同じ工員として働く(汎用品製造工場の場合同一労働性が高く比較が簡単です)のに比べて何倍もの賃金になる(出身国だと高額所得者として税負担が大きいのに先進国だと最低階層として税負担が殆どないばかりか逆にいろんな補助金が貰えたり料金免除・割引対象になる)ので、キャメロンとEUの談合では移民流入圧力はなくなりません。
キャメロン氏は社会保障負担さえ少なくすれば国民投票しても勝算があると思ったのでしょうが、国民はその程度では納得しなかった・・いろんな分野での移民のただ乗り自体を許せない・・「この程度の制限だと移民圧力が下がらない」と言う冷静な認識が基礎にあるようです。
マスコミは残留派に肩入れするために移民排斥と言う感情論は良くないとか、白人底辺層の主張としてバカにする・・貶めるキャンペインを張るのに熱心ですが、昨日書いたように経済合理性のある主張をマスコミが敢えて無視して感情論にすり替えて来たように見えます。
もしかしてマスコミが肩入れしているのではなく、マスコミが必死に守るべき何かがあって、それに肩入れさせられているのが政治家であり、学者・評論家ではないでしょうか?
開票後の常軌を逸したり脱批判論・・世界経済が大変なことになると言う過剰反応には驚いている人が多いのではないでしょうか?
株の乱高下はマスコミが危機感を煽っている結果であって、その内にマスコミの空騒ぎの威力は収まると思います。
開票から一夜明けた25日日経新朝刊「春秋」では「世界史の中でナチスほど国民投票を多用した政権はなかった」と書き出していて、何でも自分の意見にあわないとナチスとごっちゃにする主張には驚きましたが、マスコミも中韓政府同様にいよいよヤキが回って来たのでしょうか?
日経新聞26日朝刊9p「日曜に考える」と言う論壇では、前財務官山崎氏の意見と言うか国民投票の是非に関する誘導的質問には、「憲法改正を超越するような重大な話を簡単にやってしまった」と批判させています。
マスコミは日頃民意重視と言いながら、マスコミの主張に都合の悪い結果が出ると「ポピュリズム」とすり替えるなどまるで魔法使いのようです。
健全な民意とポピュリズムの区別基準を聞いたことがありません。
日本の消費税増税先送り決定もマスコミでは、ポピュリズム批判を展開していましたが、今回のEU大混乱を見れば、世界経済危機可能性を見込んだ政治決断の方が正しかったように見えますが・・。
上記論壇で如何にも対立意見のように並んで書いているエコノミスト岸田氏の意見では、「世界が経済の時代から政治の時代になりかねない」「経済合理性が第一ではなく人々の不満が政治を動かし経済が引っ張り回される世界だ」
と書いていて、一見賛否両論の紹介のように見えながら実際には、いずれも離脱派は非合理感情的主張でしかないと言うトーンで一貫しています・・中立性=両論併記義務に反していませんか?
私に言わせれば、離脱派の方には学者の味方がないので論理的主張になっていないかも知れませんが、「生活を守りたい言う必死の訴え」=経済論理中心であって,人道的きれいごとを言って・移民排斥論と言う感情論にすり替えているのはマスコミや学者の方ではないでしょうか?
「金持ち喧嘩せず」と言いますが経済弱者は、余裕が無いので「難民が可哀相」などとキレイごとを言ってられない状態になったと見るべき・・むしろ離脱派こそが経済合理性中心主張です。
(赤ちゃんがむずかるのは非合理ではなくおむつが汚れているなど客観状態を表現出来ないだけ・これを察する母親の役割の必要性・移民反対論もこれを合理的に言い換えてやる専門家がいないだけです)
移民排斥は可哀相と訴えている残留派の方こそ感情論ですから、中韓がよく使う自分のあくどい行為を日本がやっているとすり替える得意のすり替え論理を離脱派に当てはめてマスコミが応用しているように見えます。
そもそも離脱派に対する非合理な感情論と言うイメージ広告や欧州で極右とマスコミにレッテル貼りされている勢力は、「これ以上の移民は困る」と言うのが当面の中心主張であって今いる移民を排斥しようと言う感情論ではない筈です。
マスコミが移民反対=ヘイトスピーチ論というレッテル貼りして行くと,自分の意志を曲解されることに対する不満で感情的になる人が増えて却ってこじれて行きテロの応酬になって行くとマスコミの期待するようなヘイトスピーチ・移民排斥などが盛んになるでしょうが・・。
移民排斥の感情論は困ったものだと言う中韓政府顔負けのすり替え報道がいつの間にか幅を利かせていますが、これは日本マスコミだけの現象なのか欧米でもそうなのか?
先日川崎で行なわれた日韓断交を訴えるデモがヘイトスピーチ扱いされていたようですが、どこの国と仲良くすべきかは政治論ですが、マスコミの気に入った国と断交しようと主張するとヘイトになると言う論理根拠が不明です。
マスコミの気に入らない主張を全てヘイトとか、極右扱いして行き、そのデモや表現を妨害することが許されると言う風潮が広がると、マスコミって言論弾圧目的の組織なの?と言う疑問が起きてきます。
移民問題に戻りますと、マスコミの期待する方向へ誘導するために滅多にいない赤ちゃんの写真を大々的報道して感情に訴えて世論を動かそうとして来た難民報道のいかがわしさに欧州の人たちも気が付いてしまった状況です。
難民問題の本質はすぐれて経済問題である事は、難民がアフリカ等の貧困国へ向かわない・・EUに入ってもEU内の高賃金国へ向かう実態が証明しています。
難民や移民自体が経済動機で移動している現実があれば、受け入れる方も人道面の配慮をしながらも経済側面重視の議論であるべきです。
これを赤ちゃんや幼児の犠牲を大々的に報道するマスコミの姿勢は本質から目を逸らす狡いやり方です。
イギリス国民投票結果については、事前世論調査の結果の大外れと言い、その後数日の報道姿勢だけ見ても報道の偏り方が顕著ですから報道信用のがた落ち進行中ではないでしょうか?

フラット化対応2(イギリスEU離脱論)

イギリスのEU離脱国民投票結果が6月24日に出ましたが、(イギリスの国際収支の内容を知りませんがもしかしたら?所得収支トントン〜日立など進出してるので配当金など海外に送金する方の国になっている?)マスコミを通じたイギリスの議論を見るとまさに労賃の国際相場との差額補填資金不足モードに入った現象と言うべきです。
海外からの収入が減って来ている国=資金不足に陥っている西欧諸国・・特に南欧諸国では、補填資金が不足しますので、従来20ポイントの補填していた場合に、これを18〜15〜10ポイントと順次下げて行くしかありません。
財政の苦しい街に入ると道路舗装が痛んだままになっていることや個人で言えば庭の手入れが悪くなって行く状態で、最悪の場合モロに海外市場相場の水準近くまで賃金を引き下げるしか解決の方法がありません。
これを怠っていると南欧諸国のようにいつかは大幅赤字→決済不能・・債権国に大幅カットしてもらうなど悲惨な状況になります。
イギリスは南欧諸国のようにまだ、社会サービスや賃金引き下げまでは必要がないとしても、補填資金不足が近づいている〜現実化しているのかも知れません。
減って来た補填資金を有効に使うには補填対象数の極小化・・人口減が合理的ですから移民で入って来た人たちにまで補填するのでは、先祖の遺産を他人と一緒に食いつぶして早くなくなってしまうのを傍観していられない・・納得しないのは当然です。
移民受入れによって労働者が増えれば良いと言っても,下層に入って来ると需給の関係で賃金アップ圧力を緩和出来るだけのことでしかなく、移民だからと特別安い給与に出来ないので、比喩的に言えば国際市場賃金に仮に一人当たり10〜20ポイント海外収益から所得補填している国では、移民であれ労働者が増えれば増える程補填対象人口が増える→独りあたり補填額が減少します。
世界的サッカー選手のような高額収入の移民だと税を多く払ってくれる(シンガポールはモロにこれに特化した移民受入れ策)ので歓迎ですが、移民の多くは下層労働者ですから税を払うどころか受け入れ国の持ち出しになります・・逆から言えば、母国と同じ組立工で働いても母国の何倍もの賃金がもらえるのが魅力で(言葉が通じないなどの不利益があっても)出稼ぎ労働者が増えるのですカラ利害対立関係です。
いわゆる経済難民増加→拒否論が広がっている理由です。
資源や海外収益に頼る国では、下層人口を増やすと分配を受ける人が増えて一人当たり受益が減るので元々の住民にとっては不利になるのは当然です。
日本でも東北大震災以降は原則として貿易収支が赤字・・すなわち国民の働き以上に国内消費している状態で、不足分を海外での企業収益に頼るようになっているのですから、海外収益が月1兆円〜2兆円あっても配給対象が1億人で分配するよりは5000万人で使う方が一人当たり2倍使える計算になります。
ワザワザ外国人を招き入れて分配する必要性を感じません。
過去何万年も一家の働き手が多い方が豊かな生活が出来てきたので労働者が多い方が良いと今も思う人が多いようですが、(いわゆる人口ボーナス論)資源や貯蓄の取り崩しあるいは海外収益や金融取引収益を労働者に分配している社会になると消費人口の少ない方が豊かな生活が出来ます。
比喩的に言えば、健康な労働者でも生活費不足で半分生活保護を受けているような労働者は、多ければ多いほど社会にとって負担になります。
キャメロン政権が移民に対する社会保障水準差別容認を真っ先にEUに要求したことから分るよう、イギリスに限らず西欧の元大国は原則としては既に海外収益または過去の遺産の取り崩しによる補填社会に入っていてるので、移民受入れによる受益の目減りに対する不満が大きくなって我慢出来ない状態に入っていると見るべきでしょう。
補填分野としては大まかに言えば、①広場や公園道路・水道などのインフラ維持費や②社会保障分野と③働き以上の賃金給付の3分野が想定されますが、日本を含めて先進国のインフラが充実しているのは、単年度労働による収入よりは過去の蓄積(植民地時代の海外利権・・古都奈良の大仏・京都の庭園など)世界中からの本国送金が多いからコソ可能になっているのです。
東京が他の自治体に比べて突出して豊か・・インフラが充実しているのは、東京人の労働収入によるのではなく、資本収益が東京に集まる仕組みになっていることによります・・。
東京への人口流入が続くのは(移民同様に)東京の住民は住民税以上の資本収益によって立派な本社ビル街やインフラを整備してくれる・社会保障負担もしてくれるなどで、居住者は自己負担以上の高度インフラを享受出来るメリットがあるからです。
東京に限らず人口の大都会集中が世界的に進むのは、東京ほどではないもののある程度の大都市にはその地域に地盤のある企業本社があって資本収益等が集中する関係があるからです。
賃金と社会負担の関係に入りますと、その社会の労働者が自己の労働に見合った(国際賃銀市場相場・・大規模工場の組み立てライン場合、同一労働・同一賃銀の市場価値が分り易い)以上の賃金を得ている場合、給与請求権は自己の働きよるように見えていて、その実その企業の海外からの事業収益・金融収益や原油輸出代金等で補填されていることになります。
海外収益に頼る場合、企業で言えば本社部門が小さいほど(国家で言えば小さな政府)労働者が少ない方が資本効率が良くなります。
キャメロン政権は上記補填3分野の内「社会保障水準だけ移民に差別を認めろ」と言う緩やかな要求ですから、EUもこの程度は仕方がないか!とイギリス特例として承諾した点では大人の対応でした。
この程度の妥協で不満が収まるだろうという読み・・キャメロンだけではなく、EU首脳も読み違えたのですから、キャメロンだけではなく、EU首脳も責任を負うべきです。

ポンド防衛の歴史8(イギリスの耐乏生活2)

イギリスによるスターリング地域の為替管理政策は、1931年から終戦までの間、本家の格式を守るために分家の売上も合算して、本家の穴埋めに使っていたようなものです。
新興国アメリカの経済力を背景に世界中に広がりつつあったドル貿易圏の拡大に立ちはだかるスターリング地域・・ポンド交易圏・為替規制の存在を容認出来ないのはアメリカの立場上当然でしたし、他方イギリスがポンド自由化に応じれば当時の支配通貨ドルへの換金ラッシュになるのが必至です。
イギリスのスターリング諸国に対するポンド預かり資産・一種の借金が100億ポンドもあったのに対し、外貨準備が僅か6億ポンドしかない上に国内総生産規模・年100億ポンドから見て換金圧力が大きすぎて、この換金ラッシュに耐えきれません。
結局戦後のイギリス経済は、英連邦諸国の結束維持・・飽くまでじり貧の親戚同士で孤立して頑張るか、より広く拡大しつつある世界自由貿易に参加するかのジレンマに陥っていたのです。
ソ連邦を中心とするCOMECONが貧乏所帯同士で頑張るか、解体して自由主義経済に参加するかの判断と同じです。
(結果的に90年頃にソ連邦自体が解体しましたが・・英連邦の解体進行過程と似ています)
戦後・・アメリカの欧州に対する復興援助・マーシャルプランを通じて、欧州自体が次第に1つの形をとり始めると、イギリスは英連邦諸国との紐帯を捨ててEC→EECの仲間に入るかのせめぎ合いの連続となったのは、その1場面だったことになります。
これが未だに解決出来ずに現在に至っていることになります。
(1973年に漸くEECに参加したにも拘らず、今でもイギリスは統一通貨・ユーロには参加していないなど欧州との関係は微妙なままです。)
アメリカは戦時中から世界中の貿易自由化・・ドルの国際化を求めていましたので、為替自由化に正面から反するイギリスの為替規制・・ブロック経済の象徴とも言うべきスターリング地域の存続は許せませんが、かといって解体・・ポンドの交換性回復をするにはイギリスの資金不足は明白でした。
終戦時のポンド債務残高100億ポンドの内、アメリカ・カナダによる54億ポンドの援助・イギリスが終戦時に保有していた対外債権売却益11億ポンドの合計で不足する約35億ポンドに対して、イギリスの保有していた金・ポンド換算外貨準備は6億ポンドしかなかったので、いきなり交換性回復・自由化をすればたちまちポンドは暴落・破綻・デフォルトになってしまうことが明白でした。
イギリスにはポンド交換性回復能力・経済的裏付けがないのにアメリカが無理な要求していると、せっかくの戦後スキームであるIMF体制の発足が頓挫してしまいます。

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