今回のシリーズでは自治体にどのような権限があるのか?ですが、外国制度は理解に時間がかかりますが、順を踏んで行くしかありません。
まずは連邦と州の関係を見ておきましょう。
https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/zk079/zk079_02.pdfによれば以下の通りです。
65第2章アメリカにおける連邦・州・地方の役割分担
橋都由加子
1.アメリカの政府構造
アメリカの政府は、合衆国憲法に根拠規定をおく、それぞれ主権を持つ連邦政府と州政府と、州の下部単位である地方政府から成っている。
2. 連邦・州・地方の法的な役割分担
2.1 合衆国憲法
合衆国憲法における地方自治の規定は、1791年に成立した憲法修正第10条による。
ここでは「憲法が合衆国に委任し、または州に対して禁止していない権限はそれぞれの州または人民に留保されている」と定めていることから、連邦と州の間での役割分担は、連邦の権限が具体的に列挙されて州が残余権を有するという、州権の強い形となっている。
2.1.1 連邦の立法権
連邦の立法権は、第1条第8節に列挙されている。
・・列挙事項省略・・稲垣
2.1.2 州の立法権
州は一般的に州域のすべての事項について権限を持つが、その権限は合衆国憲法によりいくつかの制限を受けている。
まず、第1条第10節第1項には、以下の州への禁止事項が列挙されている。
1 条約・同盟・連合の締結
2 捕獲免許状の付与
3 貨幣の鋳造、信用証券の発行、金貨・銀貨以外による債務弁済
4 私権剥奪法・遡及処罰法もしくは契約上の債権債務関係を害する法律の制定
5 貴族の称号の授与また、同節の第
2 項と第3項では、以下の州の一定の行為は連邦の同意を必要とするとされている。
1 物品検査法執行のために絶対必要な場合を除き、輸入税または関税を賦課すること
2 トン税の賦課
3 平時における軍隊もしくは軍艦の保持
4 他州もしくは外国との協約もしくは協定の締結
5 現実に侵略を受けたときもしくは猶予しがたい緊迫の危険があるときを除き、戦争行為
2.3 州憲法・州法における地方政府条項
2.3. 1地方政府条項13
州憲法における地方政府や地方自治の規定は州によって異なっている。例えば、アラスカ州憲法では「地方自治」が明確に規定されており、オクラホマ州憲法には地方政府に関する制約や規制に関する条項が多く盛り込まれている。一方で、州によっては、「地方政府」に関する条項や「地方自治」に関する条項が規定されていないものもある。しかし、それらの州憲法にも「収入支出制限条項」があり、カウンティや市などの地方政府について言及しているため、地方政府について全く規定がないわけではない
上記によれば一般に言われている「州兵保持」と連邦憲法の関係がどういう関係になるのか・個別同意によるという程度の弱いもののようです。
日本の幕藩体制では、各大名家保有の兵力は天賦不可譲の権利の扱いでしたが、アメリカの場合連邦政府結成の条約で連邦政府の同意によってのみ州が独自の軍を保有できる弱い関係になっていたことがわかります。
もしかしたら南北戦争で懲り懲りしたので再度の内乱を恐れてこうなったのかもしれません。
同意が必要と言っても、事実上全部同意する前提で憲法が成立したのでしょうが、いざとなれば(州の独立運動になれば)同意を取り消せるのかもしれません。
日本では武士以外の刀狩がありましたが、アメリカの場合(10日ほど前にもラスベガスで大規模な銃乱射事件が起きましたが)個々人の武装権の放棄が進んでいない点は周知の通りです。
州と連邦の関係では、独立戦争時には州から出す兵力中心で連邦政府軍自体がないのですから州軍の存在価値が高かったでしょうが、連邦政府軍が充実していくと各州が独自兵力保持する必要がなくなっていきます。
せいぜい州内の大規模騒乱鎮圧の仕事?くらいですから、日本の警察の有している機動隊程度で十分です。
対外兵器である大陸間弾道弾や核兵器や戦闘機をいっぱい作っても内政に寄与しません・内政が充実していない・・これが端的に現れるのは道義の退廃・治安悪化の結果個々人の自衛権を放棄させられない現状を表しています。
日本で秀吉の刀狩りが成功し明治の廃刀令が浸透したのは、もともと応仁の乱〜戦国時代と言われますが、武士団同士の領域争いであって、庶民はおにぎりを食べながら合戦を見物していたような「のどかで・安全な社会」が続いていました。
刀狩りがあっても庶民が身の安全を守るためにはそんなに困らなかったのでその通り従ったし、明治維新後の廃刀令がそのまま受け入れられたのも、当時治安が良くて武器携行義務の方が武士にとって重荷になっていたからです。
アメリカは国の外形を腕力で大きく囲ったが、(文字通り大ふろしきを広げただけ)未開の原野を広く囲っただけの国土でしたから、(中東やアフリカ等で人為的地図上の直線の国境線びき同様)その中身がスカスカ状態で始まっている点が特徴です。
スカスカの原野に一定の集落・コミュニュテイーができたらその都度申請によって自治・組織体を認めるという仕組みで、日本などと発展の順序が逆である点に問題があると見るべきでしょう。
日本の場合、・・・濃密で阿吽の呼吸で理解し合える信頼関係のある原始氏族共同体〜生活規模の拡大に応じて順次協調していき、氏族を超えた集落共同体へ〜ムラ社会〜と一体感を育成し、必要に応じて市が立ちさらに遠隔地の集団と折り合いをつけながら生活ルールの共通化を図ってきました。
城下町や門前町の発達〜幕藩体制になりましたが、各大名家間の往来が頻繁でしたから御定書のシリーズで10年ほど前に書きましたが幕府の判例を各大名家が導入参考にするなど事実上価値観一体化が進んでいました。
だから、廃藩置県で多くの藩が一つの県になるのをスムースに受け入れ、ほとんどの県で一緒になった住民間でも違和感を感じず民族的軋轢が生じなかったのです。
(部分的に長野県では南信地域と北信地域の反感が根強いことと福島県では会津を中心とする山間部と海岸線の文化の違い・いわゆる「浜通りと中通り」に分かれている程度でしょう)
このように日本列島では、近代〜広域自治体へと順次発展し・民族一体感を築き上げてきた社会ですが・・アメリカの国づくりは何もないところに広大な領域だけ囲った・集落関係は自治体はまだ原始的初歩段階にあると11日のコラム末尾に少し書きました。
その弱み・・空白地帯の大きさ〜コミュニュティ関係の一体感欠如が治安問題に端的に現れていることがわかります。
この後で事例紹介しますが、警察署設置のためだけの自治体結成が行われている事実・・必要に迫られていることからも分かります。
10月12日に引用文で紹介しましたが、環境その他広域処理しなくてはならない事項がどんどん発生しているのに、我が国のような広域連合構想や自治体広域化のこころみが全て挫折している・各自治体のエゴ主張が強くてまとまらない・・現状にも現れています。