アメリカの自治体3(州・地方政府の関係)

今回のシリーズでは自治体にどのような権限があるのか?ですが、外国制度は理解に時間がかかりますが、順を踏んで行くしかありません。
まずは連邦と州の関係を見ておきましょう。

https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/zk079/zk079_02.pdfによれば以下の通りです。
65第2章アメリカにおける連邦・州・地方の役割分担
橋都由加子
1.アメリカの政府構造
アメリカの政府は、合衆国憲法に根拠規定をおく、それぞれ主権を持つ連邦政府と州政府と、州の下部単位である地方政府から成っている。
2. 連邦・州・地方の法的な役割分担
2.1 合衆国憲法
合衆国憲法における地方自治の規定は、1791年に成立した憲法修正第10条による。
ここでは「憲法が合衆国に委任し、または州に対して禁止していない権限はそれぞれの州または人民に留保されている」と定めていることから、連邦と州の間での役割分担は、連邦の権限が具体的に列挙されて州が残余権を有するという、州権の強い形となっている。
2.1.1 連邦の立法権
連邦の立法権は、第1条第8節に列挙されている。
・・列挙事項省略・・稲垣
2.1.2 州の立法権
州は一般的に州域のすべての事項について権限を持つが、その権限は合衆国憲法によりいくつかの制限を受けている。
まず、第1条第10節第1項には、以下の州への禁止事項が列挙されている。
1 条約・同盟・連合の締結
2 捕獲免許状の付与
3 貨幣の鋳造、信用証券の発行、金貨・銀貨以外による債務弁済
4 私権剥奪法・遡及処罰法もしくは契約上の債権債務関係を害する法律の制定
5 貴族の称号の授与また、同節の第
2 項と第3項では、以下の州の一定の行為は連邦の同意を必要とするとされている。
1 物品検査法執行のために絶対必要な場合を除き、輸入税または関税を賦課すること
2 トン税の賦課
3 平時における軍隊もしくは軍艦の保持
4 他州もしくは外国との協約もしくは協定の締結
5 現実に侵略を受けたときもしくは猶予しがたい緊迫の危険があるときを除き、戦争行為
2.3 州憲法・州法における地方政府条項
2.3. 1地方政府条項13
州憲法における地方政府や地方自治の規定は州によって異なっている。例えば、アラスカ州憲法では「地方自治」が明確に規定されており、オクラホマ州憲法には地方政府に関する制約や規制に関する条項が多く盛り込まれている。一方で、州によっては、「地方政府」に関する条項や「地方自治」に関する条項が規定されていないものもある。しかし、それらの州憲法にも「収入支出制限条項」があり、カウンティや市などの地方政府について言及しているため、地方政府について全く規定がないわけではない

上記によれば一般に言われている「州兵保持」と連邦憲法の関係がどういう関係になるのか・個別同意によるという程度の弱いもののようです。
日本の幕藩体制では、各大名家保有の兵力は天賦不可譲の権利の扱いでしたが、アメリカの場合連邦政府結成の条約で連邦政府の同意によってのみ州が独自の軍を保有できる弱い関係になっていたことがわかります。
もしかしたら南北戦争で懲り懲りしたので再度の内乱を恐れてこうなったのかもしれません。
同意が必要と言っても、事実上全部同意する前提で憲法が成立したのでしょうが、いざとなれば(州の独立運動になれば)同意を取り消せるのかもしれません。
日本では武士以外の刀狩がありましたが、アメリカの場合(10日ほど前にもラスベガスで大規模な銃乱射事件が起きましたが)個々人の武装権の放棄が進んでいない点は周知の通りです。
州と連邦の関係では、独立戦争時には州から出す兵力中心で連邦政府軍自体がないのですから州軍の存在価値が高かったでしょうが、連邦政府軍が充実していくと各州が独自兵力保持する必要がなくなっていきます。
せいぜい州内の大規模騒乱鎮圧の仕事?くらいですから、日本の警察の有している機動隊程度で十分です。
対外兵器である大陸間弾道弾や核兵器や戦闘機をいっぱい作っても内政に寄与しません・内政が充実していない・・これが端的に現れるのは道義の退廃・治安悪化の結果個々人の自衛権を放棄させられない現状を表しています。
日本で秀吉の刀狩りが成功し明治の廃刀令が浸透したのは、もともと応仁の乱〜戦国時代と言われますが、武士団同士の領域争いであって、庶民はおにぎりを食べながら合戦を見物していたような「のどかで・安全な社会」が続いていました。
刀狩りがあっても庶民が身の安全を守るためにはそんなに困らなかったのでその通り従ったし、明治維新後の廃刀令がそのまま受け入れられたのも、当時治安が良くて武器携行義務の方が武士にとって重荷になっていたからです。
アメリカは国の外形を腕力で大きく囲ったが、(文字通り大ふろしきを広げただけ)未開の原野を広く囲っただけの国土でしたから、(中東やアフリカ等で人為的地図上の直線の国境線びき同様)その中身がスカスカ状態で始まっている点が特徴です。
スカスカの原野に一定の集落・コミュニュテイーができたらその都度申請によって自治・組織体を認めるという仕組みで、日本などと発展の順序が逆である点に問題があると見るべきでしょう。
日本の場合、・・・濃密で阿吽の呼吸で理解し合える信頼関係のある原始氏族共同体〜生活規模の拡大に応じて順次協調していき、氏族を超えた集落共同体へ〜ムラ社会〜と一体感を育成し、必要に応じて市が立ちさらに遠隔地の集団と折り合いをつけながら生活ルールの共通化を図ってきました。
城下町や門前町の発達〜幕藩体制になりましたが、各大名家間の往来が頻繁でしたから御定書のシリーズで10年ほど前に書きましたが幕府の判例を各大名家が導入参考にするなど事実上価値観一体化が進んでいました。
だから、廃藩置県で多くの藩が一つの県になるのをスムースに受け入れ、ほとんどの県で一緒になった住民間でも違和感を感じず民族的軋轢が生じなかったのです。
(部分的に長野県では南信地域と北信地域の反感が根強いことと福島県では会津を中心とする山間部と海岸線の文化の違い・いわゆる「浜通りと中通り」に分かれている程度でしょう)
このように日本列島では、近代〜広域自治体へと順次発展し・民族一体感を築き上げてきた社会ですが・・アメリカの国づくりは何もないところに広大な領域だけ囲った・集落関係は自治体はまだ原始的初歩段階にあると11日のコラム末尾に少し書きました。
その弱み・・空白地帯の大きさ〜コミュニュティ関係の一体感欠如が治安問題に端的に現れていることがわかります。
この後で事例紹介しますが、警察署設置のためだけの自治体結成が行われている事実・・必要に迫られていることからも分かります。
10月12日に引用文で紹介しましたが、環境その他広域処理しなくてはならない事項がどんどん発生しているのに、我が国のような広域連合構想や自治体広域化のこころみが全て挫折している・各自治体のエゴ主張が強くてまとまらない・・現状にも現れています。

アメリカの自治体2(政府形態1)

昨日引用の続きです。
素人の私が自己流解釈するよりそのまま引用の方がわかり良いので、そっくり(と言っても関心のあるところだけの抜粋です)引用さていただきます。
今日のコラムは私の意見部分がなく引用だけです。
http://www.clair.or.jp/j/forum/series/pdf/h18-1.pdf1

3 カリフォルニア州地方自治体の政府形態
(1)アメリカ全土地方自治の政府形態
アメリカ全土には、下記の表が示すようにさまざまな地方自治体の政府形態が示されている。
表 2 政府形態の年代推移
推 移      2005      2004    2000    1996   1992   1988     1984
支配人制   3,475(48.9%)  3,453   3,302   2,760   2,441   2,356   2,290(35%)
市長議会制  3,091(43.5%)  3,089   2,988    3,319   3,686   3,686   3,686(56%)
委員会制   145( 2.0%)   145    143     154   168    173   176(3%)
町総会制   338( 4.7%)   338    334    365    363    369    370(5%)
町総会代表制 63( 0.9%)    63 64    70     79    82    81(1%)
不明 3
計     7,112(100%)    7,091    6,381   6,668  6,737    6,666    6,603
(100%)
出典:The Municipal Year Book 2005,Published by the International
City/County
Management Association (ICMA)
注① 上記の表中の合衆国の地方政府の総計は、2,500 人以上の人口をもつ自治体のみを
示している。また、2,500 人以下の人口をもつ地方政府は 30,000 ほどである。
注② 理事会・支配人制政府のもとで運営されている自治体に住む住民は、9、200 万人以上である。
注③ 25,000 人以上の人口の自治体の 63%は、理事会・支配人制を採用している。
それぞれのシステムについて、簡単に解説しよう。
イ 市支配人制
この制度は、1908 年ヴァジニア州スタウトン市 (Staunton, Virginia) において初めて採用された。
多くの市で急速に採用され、今日では、25 万以下の自治体では半数以上で採用されている。また、ヨーロッパのほとんどの国、またアジアにまで広まっている。
この制度は、理事会によって任命された支配人に全行政をまかせ、理事会は、支配人の任免の他には予算や政策の決定を行うに過ぎない。市長の選出は、理事会の互選か、有権者による直接公選であるが、その任務は、理事会の議長、また対外的代表など数が限られている。支配人は、「行政大学院」で教育を受けた行政の専門家で、予算・政策案の作成、行政組織の管理、情報の収集、市民との交流などの仕事を行う。企業に極めて似た制度と言える。
カリフォルニア州のこの制度の採用率は、非常に高く、また採用してもそのバリエーションに富んでいる。州内 465 自治体のうち、32 自治体が「議会-市長制」であるのに対し、後は、「理事会-支配人制」である。
例えば、第3章で示す「トーランス市」の場合は、もとより「理事会―市支配人制」であるが、支配人はこの半世紀ほどで2人だけである。専門職としてのマネージャーは、通常日本では自治体の「わたり職人」のようなイメージであったが、必ずしもそうではないようである。
ロ 弱市長制
連邦政府の統計では、弱市長制と強市長制は、「議会―市長」と解されて、一緒に取り扱われている[U.S. Census Bureau, Government Organization, 2002CensusofGovernments,Vol.1No.1.]。しかし、ここでは、政府形態のバリエーションを増やす意味からも別々に説明する。
弱市長制は、現在の制度のうちで最も古く 19 世紀前半に始められた。
この制度の特徴は、主任行政官としての市長の地位が極めて弱いことである。議会は部長の任免権を持ち、それによって行政権を遂行する。また議会は、予算案の作成と採択に責任を有する。この他に行政権は、多数の行政委員会にも与えられており、しかもその委員は有権者によって選出される。
この制度は、州制度に類似しているが、地方自治体レベルでは比較的小規模自治体で使われるのが通常である。しかし、例外的に 37 万都市のミネソタ州ミネアポリス市とカリフォルニア州ロスアンジェルス市(市部人口 3,957,875 人)でも採用されている。
ハ 強市長制
1870~80 年頃、この制度が採用され始めた。この制度は、首長と議会がそれぞれ有権者によって直接選出される。首長は、強い行政権をもち、全行政過程の決定・執行に責任をもち、また政治的リーダーでもある。
この制度の欠点は、行政に素人の市長が採用され、政治と行政を区別することが困難な場合が多いことである。
強市長制は、わが国の自治体制度と類似している。
なお、行政管理官制は、強市長制に基本的には類似しているが、行政管理官は首長のもとで支配人制の支配人と類似した機能を果たす。
ニ 委員会制、町総会制
上記の3制度以外には、カリフォルニア州においては見当たらない。少なくとも「自治体年鑑(municipal year book)」や連邦統計局編纂の「政府組織(Government Organization)」には見当たらない。

アメリカの自治体1(法定市と憲章市)

アメリカでは自治体が各州ごとに独自の発展をしてきたとはいえ、結果的に今では自治体の大枠は一般法定市と憲章市の2種類に大別されているようです。
http://www.clair.or.jp/j/forum/series/pdf/h18-1.pdf1
カリフォルニア州の地方自治体について東海大学政治経済学部政治学科教授牧田 義輝氏によれば以下のとおりです。

第2節 カリフォルニア州の政府構造
1 地方政府は自治化区域と未自治化区域に別れる
州内の統治、行政サービスは、州政府の責任である。州政府は、そのために州域内をく4まなく区分し、カウンティ政府を作って、地域の問題に対処し行政サービスを行うのである。しかし、人々が自らのためにサービス機関としての自治体を作ったほうが良いと考えた場合、地方自治体を創設するのである。
このようにして自治体はますます増加傾向にある。今日では、多くの州で自治体の新しい創設に制限を設ける傾向にあるが、「結論」で述べるがアメリカ人の思想では、自治体政府を富追求の手段と位置づけるのが多くの研究者の見解である。このような考えから今日でも依然として多くの自治体を作っているのである。
カリフォルニア州には、「カウンティ」は、現在 58 機関存在している。カウンティは、州内の行政に責任をもつ州政府の任務を遂行するために設置されているが、その意味で「準自治体」(または、州政府の下部組織であるとして「半自治体」という人もいる)といわれている。
カリフォルニア州においては、統合された自治体として「市・カウンティ」がある。例として、サンフランシスコ市・カウンティ(City and County of San Francisco)、ロサンゼルス市・カウンティ(City and County of Los Angeles)として存在する。
このほか、地方自治体は、通常「市(City)」であるが、「町(Town)」と呼ばれる場合もある。その町にも「自治体化された町(Incorporated Town)」と単なる「町(Town)」といわれる「未自治体の町(Unincoporated Town)」がある。さらに「村(Village)」といわれる場合は、すべて未自治体である。
2 特別区政府 (special district governments)
特別区政府は、「一般目的地方政府 (カウンティ、市、町、村など)から実質的に管理・財政上独立し、限定的な目的をもった自治政府機関」である。ここでの定義からは、日本の「事務組合」などとは異なっている。なぜなら、日本の場合は、ほとんどが自治体を母体として、そのための広域行政であるからである。つまり、日本の事務組合などは、財政的に人事的に独立しているということはない。
特別区政府は、近年増加傾向にある。その背景には、大都市圏問題の多様化と深刻化の中で広域需要が増大してきていることがある。これに対応して自治体統合や連合などの方式によって広域自治体を作った方が得策であることはいうまでもない。しかし、このことによって公選公務員や職員が削減されることに対する反対、また個々の自治体の強い自治意識が阻止要因となって、広域自治体の実現は不可能である。それで、その妥協の産物として特別区が増加しているのである。
第3節 カウンティ政府
1 アメリカにおけるカウンティ政府の状況
カウンティは、約 1,000 年前のイギリスのシェア(Shire)に起源があるとされている。
当時、市民政府であると同時に国家政府の行政を受け持っていた。合衆国憲法の起草者達は、カウンティを州の問題とし、州の行政手段として位置づけた。
カウンティ政府の最高意思決定・執行機関である理事会(カリフォルニア州では、board of supervisors”、本報告書では「監理委員会」と訳している。なお、他の州では通常“board of commissioners”と呼ぶ)は、条例・規則の制定、予算案の審査・採択などの立法責任、それらを執行し、首席行政官、および部局の活動を管理監督する行政責任などを持つ。通常、理事は、小選挙区制で選出され、4年に1度の選挙で選出される。
2 カウンティの創り方、憲章の制定・改定
知事は、カウンティの創設が住民から提案されたとき審査をする「カウンティ形成審査委員会(County Formation Review Commission)」を作り、5人の委員を任命する。
カウンティ憲章の制定、および改定の手順は、カウンティ監理委員会のメンバーが過半数以上の賛成で採択された条例に基づいて発議される。条例の制定には、直近の選挙によってカウンティの有権者によって選出された 15 名の有権者から構成される憲章委員会の選出が必要である(Code Sec.23000-23027)。
6 カウンティ政府と広域行政
・・・カリフォルニア州同様、アメリカには連合型の広域政府が一例としてない。1960・70 年代に犯罪、福祉、暴動、環境、人種差別問題が大都市問題として噴出したときこれらの問題を解決するために大都市圏総合広域政府の創設の提案が、全米で 100 例以上提案された。
しかし、この種の広域政府は実現していない。
このようにカナダなどでは多数作られている連合型広域政府でさえ作られない理由は、地方自治体の自治権が強力であることに尽きる。カナダなどの場合、たとえば「トロント大都市圏自治体」の設置のように上位政府である州政府の議決で創設できるのに対し、アメリカの場合は大都市圏広域政府を作る場合に近郊自治体と中心大都市自治体の利害が不一致である場合(人種、経済格差、文化、環境などほとんどが利害対立しているが)住民投票において近郊の多数、中心都市の多数をそれぞれ要件とすることなどによってすべてが挫折したのである。
第4節自治体政府
1 自治体の権限
自治体政府 (municipal governments) とは、「一定地域に集住する人々に対する政治区画であって、一般目的地方政府として設立される自治体法人である」と定義されている。自治体政府は、具体的にどのようなサービスを行い、またどのように課税するかについて自ら決定することができる。それはサービスを提供する「企業」を作るという考えに似
ている。しかし、自治体は無制限に自治権を有しているのではない。
2 一般法定市と憲章市
このように州政府(日本ならば基本的に国家)は、自治体に権限を与えるに制限列挙方式であるが、しかし自治体に広範な自治権を与えていることも事実である。
アメリカの場合、自治体を作るということは、自治権を与えるということであり、州議会が憲章 (charter)を与えるということである。1850 年頃まで州議会は、自治体を設置する毎に特別立法を制定していた。しかし、それは、いかにも繁雑で非効率的であった。結果として、今日では、自治体の作り方に2つの方法がある。
1つの方法は、自治体の人口規模や課税資産価値などによって類型化し、あらかじめ州議会によって制定された法手続きに基づき自治権を与えるという方法である。カリフォルニア州においては、「一般法定市(General Law Cities)」と呼ばれている。
もう1つの方法は、自治体が独自に憲章を作る場合で、通常ホームルール憲章といわれる。この方法は、ホームルール憲章を州議会が認める場合と、州憲法に付与されている権限に基づき憲章を作る場合がある。

カリフォルニア州の場合は、「憲章市(CharteredCities)」と呼ばれる(Code.Sec.34101- 34102)。
(1)一般法定市政府
一般法定市政府は、州法によってあらかじめ定められた手順によって市(自治体)を作
る。次のような職制が定められている。
(a)最低5名からなる市理事会(b)市書記(c)市財務官(d)警察署長
(e)消防署長(f)法によって規定されている下位公務員・職員
(2)憲章市

要は、州のモデル通り設立するのが法定市と言い、自前の定款で市をつくるのが憲章市ということでしょうか。
ただし自前の 憲章を作れると言ってもホームルール法で決まった範囲の自由度でしかないようですし、法定市と憲章市の 違いを書いた以下の比較表表を見ても議員定数や報酬の基準、任期や再選回数の制限など・・それほどの違いはないようです。

表1 一般法定市と憲章市の比較
特徴
政府形態
一般法定市  州法が政府形態を設立するために市理事会が行う手続きを規定している。
憲章市    市長制、または市支配人制を含むいかなる政府形態も採用できる。
契約
一般法定市  公共事業の契約 5,000 ドル以上の公共事業の契約には競争入札が要求される、等。
憲章市  競争入札が要求されていない。交渉力による契約が用いられるかもしれない
その他省略

アメリカの州・郡(County Government)と市町村の関係2

アメリカの場合、州の規模が大きいので隣の州で日常規制・ごみ収集方法が違ってもあまり関係がないと言えば分かり良いでしょう。
例えば、関東地方だけで7都県もありますが、アメリカの場合で言えばカリフォルニア州の何分の1です。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q116683326によると以下の通りです。

カリフォルニア州面積:411,045平方km
(日本の面積の1.1倍)

以上のように州(ステート)と連邦の成り立ち・・歴史が違う上に事実的な意味を持つ面積規模もまるで違うアメリカの州の連邦の政府に対する自治権を理想化して日本の小さな都道府県や市町村に当てはめる議論は間違いです。
アメリカの場合、主権国家内の自治権というよりは独立国の条約による連合体・・EU加盟国がマーストリヒト条約等に従う義務によって、もともと100%あった主権が制限されている関係と見るべきです。
上記歴史経緯や地理条件などを総合すると、州に対して郡(County Government)や市町村がどのような自治権を有しているかの研究こそが日本の自治の参考にすべき基準です。
以下はカリフォルニア州政治に関する17年10月7日現在のウィキペデイアの記事からです。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%AA%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%AB%E3%83%8B%E3%82%A2%E5%B7%9E%E3%81%AE%E6%94%BF%E5%BA%9C地方政府

「カリフォルニア州は郡に分割されており、郡が法的な州の小区分である[8]。州内には58郡があり、480の都市、約3,400の特別地区と教育学区がある[9]。特別地区は具体的な公共計画と公共設備を有権者のために運営し、「その境界の中で行政的あるいは所有者としての機能を果たすための州の機関」として捉えられている[10]。
地方政府の権限の詳細を支配下に置くために州議会は1963年にサンフランシスコ郡を除く全郡に地方機関結成委員会を創設した。」

その境界の中で行政的あるいは所有者としての機能を果たすための州の機関」ということは、要約すればこれと言った自治権がない・・州政府の末端行政機関であるかのような位置付けです。
別の記事を見ると郡は条例制定しても市の批准がないとその市内では適用できないというので相応の条例制定権があるようですが、上記カギ括弧書きの要約と合わせると州政府の下位機関としての行政執行を具体化する範囲程度のイメージです。
そこで各州と郡を一体として・・市町村の自治体との具体的な関係を見ていきます。
自治体とは何か?政府とは何か?となると意外に難しいのに気づきます。
昨日書いた通りアメリカは、もともと独立国家の連合体ですから、州内の統治をどうするかについて連邦憲法に何も書いていないことになります。
ですから州政府と郡や自治体との関係も州ごとに違うことを前提にする必要があります。
そもそも州の憲法事項になっているかを最初に問題にすべきでしょう。
https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/zk079/zk079_02.pdfによれば以下の通りです。

2.2
地方政府の法的位置づけ10
地方政府は各州ごとに州憲法や州法によって規定されており、その種類や機能は一律に定義することができない。歴史的には、地方政府を州の一部局として自治の範囲を狭く解釈する見解と、州からある程度独立した組織として自治の範囲を広く解釈する見解との対立があった。
地方政府の機能や権限を狭く限定的に解釈する前者の代表としては、
「ディロンの法則(Dillon’s Rule)」と呼ばれる解釈基準がある。この基準によると、地方政府は州憲法や州法によって付与された権限のみを行使することができる。
一方で、地方政府の固有の自治権を主張する議論として「クーリー・ドクトリン(Cooley’s Doctrine)」が挙げられる。クーリー裁判官は1871年にミシガン州最高裁判所で、「州憲法による黙示の制限」によって地方政府の権利は州議会の権力から保護されており、「純粋にあるいは基本的に地方的な事務については、地方政府の法が州法に優先する12」と述べている。
・・・・このため、南北戦争の頃になると州議会の過剰な介入に反発した地方政府や住民が、地方の自治権を主張して各地でホームルール運動を起こすようになった。この運動が一定の成果を挙げて、各州の州憲法や州法において、人口等の一定の条件を備える地方政府に対する、州政府の介入を制限・禁止する規定や、州憲法や州法に違反しないことを条件に、地方政府に自治憲章を制定する権利を認める規定が定められることで、地方政府の自治が保障されるようになった。ただし、実際にはこの特典が得られる地方政府は限られており、また自治憲章に関する規定は州憲法や州法にもとづいている。自治憲章のための権限は、あくまでも州政府から地方政府への授権であり、州政府から独立した自治権を地方政府に与えるものではない。」

以上要するに州法で許容される範囲の自治権しかないということでしょう。
各州が自由に決めてきたとは言っても江戸時代の各大名家が周辺大名家のいいところを吸収模倣して行ったように時間の経過でおのづと共通化していきます。
アメリカでは学校制度から何か何までいろいろあって自由な国だという評価する人が多いですが、ただ発展段階が原始的〜初歩段階にあるからに過ぎないのではないでしょうか。

アメリカの州・郡(County Government)と市町村の関係1

日経新聞の10月4日夕刊1面には柏崎崎原発「合格」と大見出しで出ています。
あとは新潟県知事の同意を得られるかがテーマらしいですが、新潟県の同意が何故必要になったのかの疑問です。
「昔は越の国だった」という主張を始めるとは思えませんが・・?
新潟県も思うように原発反対で補助金をうまく取れなくなると「昔は中国の領土だった」という主張を始めるのでしょうか?
そこまで行かなくともあちこちの県が何かある都度エゴむき出しで行動するようになると、なにかあっても助け合いたい気持ちが薄れて民族一体感が次第に蝕まれていき、民族維持のために自己犠牲を厭わない勇猛果敢な精神がすり減っていきます。
これが中韓の狙いでしょう。
そもそも地方自治制度がなんのためにあるか?という疑問になってきます。
現在憲法改正論が(反対論を含めて))盛んですが、この辺で憲法で定める地方自治の限界・自体首長が、その自治体領域が日本の領土ではない(とは言っていませんが・・)かのような主張をすることが許されるかを議論する必要があるように思われます。
地方自治制度は、アメリカの意向で現憲法で導入された制度ですから、当然にアメリカの連邦と州の関係をモデルにしていると見るべきでしょう。
以下に比較紹介するように大日本憲法には地方自治の章節がありません。

大日本帝国憲法
目次
第1章 天皇(第1条-第17条)
第2章 臣民権利義務(第18条-第32条)
第3章 帝国議会(第33条-第54条)
第4章 国務大臣及枢密顧問(第55条-第56条)
第5章 司法(第57条-第61条)
第6章 会計(第62条-第72条)
第7章 補則(第73条-第76条)

日本国憲法
第八章 地方自治
第九十二条  地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。
第九十三条  地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
○2  地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。
第九十四条  地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。
第九十五条  一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。」

憲法を見ると特定自治体の同意がないと国策遂行できないのは、その地方だけの特別法制定の場合に限定されています。
憲法上は全国的な国策の貫徹には、特定地方の同意がいらない仕組みです。
憲法上の要請ではないのにあれもこれもと地方の同意が必要な制度にしていたことが間違っているのです。
オナガ知事15年訪米時の記事からです。

http://vpoint.jp/media/44476.html
翁長雄志沖縄県知事の訪米は大失敗
江崎 孝  2015/6/05(金)  メディア批評|沖縄 [沖縄時評]
恥晒した権限誤解翁長知事の思い込みをはるかにしのぐほど、米国の要人や政治家は民主主義が何であるかを心得ていた。つまり州知事と州政府の安全保障に関する法的権限を厳しく峻別(しゅんべつ)していたということである。その点、外交・安全保障にかかわる地域の首長の法的権限を誤解し、夜郎自大な発言で、世界に恥を晒(さら)した翁長沖縄県知事とは雲泥の差である。
・・最後に付け加えると、出発前の記者会見で外人記者が発した「それ(訪米)よりも知事はなぜ安倍首相を説得しないのか」という質問の意味が理解できなかった翁長知事の責任を問うべきである。」

地方自治体首長が政府の頭越しに外国で国防・国家主権に関する事柄を政治発言をするのは、越権行為であり許されないということは、アメリカのように独立している各州が連邦を結成した場合には、州政府が連邦政府の専権事項である外交や防衛問題に口出しするのは条約違反になるという意味でより一層はっきりします。
ただし、元々自分らは先住民・異民族だから・・というのでは、同じ土俵での議論になりません。
冒頭に書いたように日本の地方自治制度は、長年の国内議論すらも必要性もなく敗戦時に歴史の違うアメリカ憲法を(法的素養のない人材が?)模倣して作られたものです。
日本の地方自治制度を論じるならばアメリカ各州内の地方自治の実態や歴史研究が必須です。
アメリカの連邦と州の関係は周知の通り独立国同士の連合契約・条約で成立しています。
合衆国ではなくUNIRED STATE OF・・・ステートの連合ですから、日本の地方自治体とは経緯・本質がまるで違います。
もともと百%の主権を持っている各州(国)が連邦を組むために主権の一部を連邦政府に移譲した関係・移譲しない部分にはもともと持っていた主権が残っているのは当然です。

https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/zk079/zk079_02.pdf
「2.1
合衆国憲法
合衆国憲法における地方自治の規定は、1791年に成立した憲法修正第10条による。
ここでは「憲法が合衆国に委任し、または州に対して禁止していない権限はそれぞれ
の州または人民に留保されている」と定めていることから、連邦と州の間での役割分
担は、連邦の権限が具体的に列挙されて州が残余権を有するという、州権の強い形と
なっている。」

軍で言えば同盟行動する以上、軍事活動時に一致協力する範囲で独自行動を制約される程度の関係です。
アメリカ連邦政府と各州の関係は、主権国家である日本がアメリカとのいろんな条約を締結すればこれを守る義務があるような関係の方が近いでしょう。
このような場合、日本やアメリカに自治権があるかという方向の議論ではなく、条約によってどこまで日本国内法が(商取引で言えば契約したらその契約を守られねばならない範囲のレベル・・人権がどこまであるかの議論でありません・・)制約されるかの議論であって順序が逆です。
自治の面でアメリカとの比較をするならば、アメリカの州政府と州内の郡や市その他の自治体の関係と日本の中央政府と県市町村の自治権を比較するのが本来の議論です。
日本の県の権限を連邦政府と対立・緊張関係にある(独自の軍を持ち)州の自治権?と同じように見る現在の暗黙の前提となっている議論自体が無茶過ぎておかしいのです。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC