価値観外交に頼る危険性8(信用出来ないアメリカ)

数日前に紹介したヤルタ協定を見れば分るように、参加していたソ連は粛清ばかり繰り返している非民主・非人道国家であったことは、アメリカもソ連を「悪の帝国」と言っていた以上認めるしかないでしょう。
日本がソ連は非民主国であったと主張すること自体が、戦後秩序に挑戦する違反行為になるというのでしょうか?
中国・現政権も戦勝国と主張するならば、現政権でさえ非民主国のレッテルが貼られているというのに60年以上前には、日本以上の民主主義国だったということになるのでしょうか?
ヤルタ協定は、言わば強盗同士で山分けの議論していたのであって,日本が戦争でとった領土を返すべきだと言うならば、ヤルタ協定やポツダム宣言自体矛盾しています。
アメリカは日本独立後も小笠原や沖縄を何の権利があって戦後何十年も占領していたのですか?となります。
日本が戦争でアメリカからとった領土ではありません。
アメリカの歴史を見れば本質的野蛮性が顕著で人道などは全く問題にしない国です。
こうした残酷性は敗軍の将にその母親の肉を無理に食わせたりするなど、どんなむごいことでも平気に行なってきた中国古代からからの伝統と共通です。
比喩的に言えば、山賊でも天下をとった以上は、少しは表向き正義や人道を言うしかなくなったので民主主義・人道主義などと言っているだけの国でしかないと言えるでしょうか?
中国共産党政権が無茶なのは、まだ世界覇権を握っていないからアメリカのように格好着ける必要がないので生のままで少し乱暴なだけで、中国だって世界覇権を握れば属国同士の争いを裁くには軍事力だけではなく何らかの合理的ルールが必要になる点は同じです。
民主主義や人道主義の価値観がアメリカと共有していると主張し利用するのは良いですが、アメリカの本質・本音は違う・・日本との関係よりは中国と本質的親和性を持っているので、我が国が価値観外交に酔いしれていると大変なことになります。
今のところアメリカのご機嫌を損じることが出来ませんので、アメリカの価値観が素晴らしいと言ってこれに従って、忠実な僕(しもべ)をやってるしかないでしょう。
ただ警戒しながらやるべきだということです。
戦前日本の人種差別禁止解放運動は、黒人運動家やアジアの独立運動家の支持を受けたものの、どこでも植民地支配を受けていたので、国単位としては日本1国だけでアメリカに挑戦する戦いになってしまいました。
左翼や中韓両国は、中韓以外のアジア諸国を無視してアジアで日本が孤立すると宣伝するのですが、(戦前は全て独立していなかったのでこのような主張・論法は正しかったでしょうが)今はその他の諸国も独立しているし、相応の経済力を持っているのですから、いまでも中韓以外の国を勘定に入れていない広告宣伝は時代錯誤です。
今ではアメリカさえ中国にお墨付きを与えれば、中国が好きなように専制支配出来るようになる・・ベトナムやフィリッピン、台湾,インドシナ半島諸国が、あっさりと中国の領海侵犯や植民地支配を認めるとは思えません。
中世(近世の始まり?)の教皇子午線やヤルタ協定のように、強国が勝手によその国の領域を決められる時代ではありません。
これまで書いているように米中の体質が似ているので、最終的に時代錯誤的な結託する可能性・リスクが高いですが、今回は東南アジア諸国もみんな独立しているので、米中で太平洋を⒉分支配しようと言う勝手な談合は効果がないことになります。
効果がなくとも大国同士の理不尽な合意が出来ると、これに対する抵抗エネルギーとのせめぎ合いになって世界混乱の元ですから、注意して行く必要があります。
1480年代から1500年代中盤にかけての教皇子午線の裁定が当事者外の新興国蘭英仏の挑戦で意味を失ったように、勝手に世界分割を話し合っても多分効能が限られるでしょう。
米中の世界分割密約がなったときに、アジア諸国がどれだけ抵抗出来るかが日本にとって死活的重要性があります。
日本は協力国の抵抗力を着けるためには、戦前同様に台湾フィリッピンから東南アジア諸国更にはインド大陸まで至る諸国にどしどし投資して技術移転して彼らの経済力を着けて行くのが最良の選択です。

価値観外交に頼る危険性2(アメリカの対日意識2)

日本の頭越しに行なわれた米中国交樹立によって、冷戦時代にアメリカに協力して来た周辺国を裏切れないので、今も元西側諸国と価値観が共通していると表向き言い訳して、米中軍事対立しているような格好をしているだけではないでしょうか。
だから中国との対決が激化して日本に肩入れすると実利が大きく損なわれる立場があって、(防空識別権設定のように)口先介入まではするもののそれ以上はしない・・のが基本姿勢と見て良いでしょう。
折角口先警告して大人しくさせてやっているのに、それ以上やるのは行き過ぎだ、「中国のどんな理不尽な挑発にも日本は譲るべきだ」日本が譲らないと「失望した」という本音が出て来ます。
この繰り返しで日本が何をされても言われても反論出来ず、譲って認める結果になって来たので中韓は言いたい放題でっち上げて来たことになります。
アメリカの衰退に伴い徐々にアメリカの果たしていた役割を日本が補充して行く・・逆から見ればアメリカの指導力を徐々に奪って行き、次第に日本の軍事力が強大化して行くのは、アメリカにとって悪夢と考える人が多いかも知れません。
どうせ取って代わられるならば優秀な日本の方が怖いので、中国の方が良いかと言う意見が大勢を占める可能性を検討しておく必要があります。
中国は人口が多いだけでまだローエンド生産国ですから、消費量でアメリカを凌いでも先進国として本当のアメリカの脅威になるのはまだずっと先・・、もしかしたら永久に先進国に追いつけない可能性が高い・・西太平洋を譲ってもどうってことはないと言う判断があり得ます。
(ロケットその他先端軍事技術は殆ど全部アメリカ兵器のパクリと言われていますので、後100年経っても自前では何も作れないでしょう・・サムスンが日本からパクれなくなったら最先端品を作れなくなって行くと予想されているのと同じです)
米軍の撤退が進み日本がアメリカの占領国でなくなり、徐々に真の独立国に近づけば、アメリカにとって中国と日本はどちらの方が親密になり易いかの対等の関係・・正3角形の関係に戻ります。
ココで日米関係の歴史を見ますと、アメリカは早くも第一次世界大戦終了直後の1919年から(オレンジ計画だったか?正確名称を忘れました)日米戦争のシュミレーションをしていて、日本は最大の敵国扱いでした。
日本を攻撃する国家計画をする事自体一定期間内部調整が要りますし、この完成の数年前から研究が進んでいたことになります。
中国での機会均等要求や満州進出などは言いがかりであって、そのずっと以前から日本叩き潰しを計画していたことが重要です。
戦後占領政治によって歴史教育が歪められていますが、元々アメリカは有色人種の日本が台頭したこと自体が許せないという基本思想の国でした。
タマタマ対ロシアのために役に立つから日露戦争で日本を応援してやっただけでそれ以上の台頭は許せなかったので,いつか叩き潰して他のアジア植民地以下の生活水準にすべきだという考え方は日本占領政治の初期の文章に明らかです。
このことは「アメリカの神道敵視政策6(日本人奴隷化2)」 October 28, 2013以前後で紹介しましたが,重要なところですのでもう一度紹介しておきましょう。
「1946年11月、ポーレーは最終報告として

「我々は日本の真珠湾攻撃を決して忘れない」と報復的性格を前文で明言し、「日本に対する許容工業力は、日本による被侵略国の生活水準以下を維持するに足るものとする。
右水準以上の施設は撤去して有権国側に移す」とした。軍需産業と指定されたすべてと平和産業の約 30%が賠償施設に指定され、戦災をかろうじて免れた工業設備をも、中間賠償としてアジアへ次々と強制移転させた。」

爆撃から逃れて漸く残っていた機械設備まで全て中国等へ搬出されたのですから、酷いものです。
命がけで生産設備を戦火から守っていた工場労働者・技術者に海外搬出用の梱包・搬出作業をさせたのですから、彼らは断腸の思いで梱包作業に従事したと言います。
中国歴史で出て来る敗軍の将に母親の肉を食べさせるようなやり方です。
以上の政策発表・・・・実際の行動に、アメリカの対日戦争開始の目的が有色人種に欧米と対等の生活をさせない・・アジアの欧米植民地以上のあらゆる工業生産をさせないという占領目的・アメリカの戦争目的が現れています。

価値観外交に頼る危険性1(アメリカの対日意識1)

衰え始めたとは言え、アジアだけではなく外側にアメリカやロシアという大国がまだ控えているし、欧州もあれば興隆しつつある中南米やトルコを中心とする中央アジア諸国〜中東〜アフリカもあります。
世界から閉鎖された古代中国社会の合従連衡論は結局最強国秦を中心とする連衡策に負けてしまいましたが、古代とは違い、これら外部の牽制があるので、中国が正義に反して秦のような恫喝外交を貫徹出来る訳がありません。
現在の日本・安倍外交は、古代に当てはめればいわゆる合従策ですが、アメリカが裏で中国とがっちり強者同盟を組まない限りかなり優勢です。
アメリカがアジア連合から次第に離れて中国と等距離になった場合どうなるでしょうか。
アメリカと中国と日本を中心としたアジア連合の三つどもえの競争関係が生まれるとアメリカが中国とくっついて2対1の関係になりそうで危険です。
アメリカをおだててアジア連合の盟主に据えておく智恵が日本には必要です。
ココでアメリカが基本的に中国寄りの体質か否か・・基礎的体質を見ておく必要があります。
元々(長期的視点では)アメリカは長期的トレンドとして親中国で反日国で中国との関係の方が本質的価値観が共通している国であることを注意しておく必要があります。
最大の敵国日本が戦争で負けてアメリカの占領下に入ったので、アメリカにとって自分の支配領域の一部としてソ連や中国に容喙させないように戦後中国と対峙していたに過ぎません。
アメリカ軍は日本領土を守るために駐留していたのではなく、支配継続のための駐留でした。
この端的な例が、竹島問題です。
竹島問題は日韓共に当時アメリカの事実上占領下にあって、アメリカの戦力範囲・・防衛上どちらに帰属しても良いことなのでアメリカは、李承晩の暴挙を黙認していたのです。
昨年秋に突如中国が尖閣諸島海域を含めて設定した防空識別圏は戦後直後の李承晩ラインの現在版です。
アメリカがまたもや本気でこれを守る気がないならば、何のための駐留経費分担かとなります。
朝鮮戦争以後アメリカは日本占領支配目的を背後に退かせて、中ソとの対決の前線基地としての役割に表向き変えてきました。
いずれにせよ、日本を守るために駐留占領しているのではなく、自国防衛に必要な前線基地だし、占領地だからソ連や中国に手を触れさせないし口出しさせないというだけのことでしょう。
尖閣諸島問題はアメリカが自分の支配地域としてはそこまであった方が有利だから占領地域に含めていただけであって、中国と仲良くなれば米大陸防衛のために尖閣諸島や沖縄が必須ではなくなることもあり得ます。
最先端防衛ラインを遠くに維持するのは金がかかり過ぎるということで、ハワイの線に後退させれば、日本列島やフィリッピンはアメリカにとって守るべき場所ではなくなります。
今のところ中国海軍が自由に太平洋を遊弋させないための封じ込めに便利だから一応日本の味方をしていますが、西太平洋を中国支配に譲ってしまうと決断すれば、日本のために守る気持ちがなくなるでしょう。
今では、尖閣諸島はアメリカの占領地ではなくなっているので、日本が守りたいなら応援しましょうという程度・しかし実際に戦争になったら本当に応援して巻き込まれる気持ちまではない・・腰の引けた基本姿勢はそこにあります。
アメリカの政策基準は米ソ冷戦時のように何が何でも共産主義から守ると言う時代ではなくなり、実利がどちらにあるかと言うことに変わっているのではないでしょうか?
冷戦の延長で中国敵視政策を基本にしているかのような姿勢・価値観共通主張していますので、本音は元々人道主義や民主主義の価値観を持っていません。
1980年代に漸く黒人に公民権を与えたこと(法律が出来ても実際の差別がなくなるのは100年以上先でしょう)からも分るように、元々野蛮で人道主義・民主主義などの価値観などないのに格好つけていただけですから、中国との方が共通性が高いのです。

アメリカの指導力低下9(合従連衡策)

韓国を除くアジア諸国では中国の専制支配に親和感がないのですから、(価値観が違い過ぎます)アメリカから中国へ用心棒を乗り換えるわけにはいかない以上,引き止め策を工夫するしかありません。
まだアメリカの方が強そうなのと、価値観が共通で優しそうなので頼る相手を変えたくないが、電話しても直ぐに応援に来てくれるかどうか頼りないので、ミカジメ料を値切りたい・・あるいはアメリカがキチンと対応してくれないと気前よく払えませんよ!と言うのがアジア諸国でしょう。
アメリカはミカジメ料を増やしてくれないと、今以上の応援出来ないという立場でしょうしお互いのせめぎ合いがTPP交渉になります。
日本は反日の中国で売れなくとも、車業界が世界で大躍進していることから分るように、中国から自由になるためには中国市場を気にしないでやって行けるように周辺諸国の底上げ・・中国市場の比重を下げるためにその他の国の市場拡大を図るのが交渉力を引き上げるために一番重要な方策でしょう。
まさに大東亜共栄圏の再現・・ウインウインの関係で、お互いに底上げするように協調することが重要です。
そうすれば日本に主導権が徐々に奪われても、ある程度アメリカに有利な交渉が成立すればアジア連合と仲良くしている方がアメリカにとって利益があります。
中国の人口が約13億に対して、東南アジアからインドまでの人口合計は16億とも言いますし、これからの人口伸び率は中国を上回ることが予想されます。
彼らのレベルアップに協力すれば、無茶な要求を突きつけて来る中国を相手にしなくとも、十分対抗出来るでしょう。
この策は、真珠の環とか言われて如何にもいつでもぶち切れそうな弱いメージで、先秦時代の蘇秦の合従策に似ています。
当時の合従は弱者連合でしたし直ぐについえてしまった故事からも張儀の連衡策の方が優っているように見えますが、今回は単純弱者連合ではなく中核になる日本は中国よりずっと先の先端技術を握ってる上に、中国の統計が当てにならないので、今でも日本の方が経済力が上の可能性が高いでしょう。
中国は昨年も8%弱の成長率と発表していますが、電力統計、輸送統計など過去に指摘されたデータは改ざんされるようになって当てにならなくなりましたが、今年は原油消費量の伸び率が注目されています。
消費量がはっきりすればその増減率が成長率とほぼ比例関係ですから、かなり正確ですが、これが不明瞭なために輸入統計数字を見ると原油輸入量は4%以下しか伸びていないと言うことですから、実質成長率は4%を大幅に下回るらしいです。
グーグルの 2010/02/04のニュースhttp://news.searchina.ne.jp/disp.cgiy=2010&d=0204&f=business_0204_053.shtmlでは、中国の原油自給率は50%割るリスクを書いています。
輸入が50%とすれば、50%の輸入が4%増えれば全体の消費量は2%増えたことになり、成長率は2%以下だったことになります。
日本のように省エネの発達した先進国と違い、新興国は消費材としても燃費性能の低い車その他の利用率が高い上に、ローエンド産業中心では生産単位として燃料利用率が高いので、工業化が1割進むと1割以上のエネルギー消費という構図が普通です。
新興国では、先進国の成長率よりエネルギー消費率が高くなる傾向がありますから、原油消費量が2%しか増加していないのに7〜8%成長であったという不思議さがココではっきりします。
昨年春から初夏ころに中国発表の貿易黒字が相手国の貿易統計とあわないことが世界で大問題になりましたが、このときは政府が誤摩化したのではなく投機資金流入用の偽装取引だったということでした。
電力消費量と成長率が合わないと言われば、そのデータを成長率発表にあわせればおしまいですし、国内データはいくらでも改ざん可能ですが、原油輸入の場合輸出国が限定されるので、誤摩化し難いのがミソです。
過去にもこうしたやり方で何十年も誤摩化して来たのですから、その累積の結果たる実際のGDPは本当の所、全く信用で来ません。
仮に本当に日本同様としても日本のように実需があって生産している国とは違い、国策で無駄な投資を繰り返している結果の生産量では実際の経済力とは言えません。
話がそれましたが、中国は粗暴そうだから恐れられているだけであって、真偽は別として、軍事面で見ても実際には日本と互角に戦えないとも言われています。
弱者連合であった古代の脆弱な合従策をイメージさせる「真珠の環」と表現するマスコミ呼称は如何にもな中国政府の喜びそうな表現ですが実態は違っています。

アメリカの指導力低下8(ミカジメ料2)

味方してくれるか否かはっきりしないからイヤになるのではなく、(外に頼るべきところがない以上は)このときにこそ、こちらに引き寄せる努力が必要です。
アメリカが同盟国保護よりは、(同盟国から受けられる用心棒料・ミカジメ料が少なければ)中国での儲けにつられて中国寄り発言が増えて行きます。
フィリッピンや日本等からアメリカは頼りにならないと思われても、日本や東南アジア等は露骨にアメリカに嫌がらせ出来ませんから、アメリカは失うものは殆どありません。
世界のヘゲモニーを握っているアメリカに少し交渉ごとで譲っておいても、イザというときに後ろ盾になってくれるからということで,交渉上いつもアメリカがおいしい思いをして来た有利な立場・・上乗せ利益(用心棒料/ミカジメ料)が減る程度でしょう。
例えばアメリカが南沙諸島や西沙諸島を守ってやっても自国防衛には関係がなく(フィリッピンが恩に感じるだけですが)、中国と仲良くした方がもっとメリットがあるとなれば、アメリカがそちらになびく危険があります。
アメリカの言うとおりにしても、イザというときに何の役にも立ってくれないとなれば、(後ろ盾どころか中国の主張に「お前譲れ」と言い、譲らないと「失望した」というばかりではどちらの味方か分りません)どこの国もアメリカに都合の良い条約を結ぶのには二の足を践みたくなります。
こうなるとアメリカも同盟国に義理立てするメリット(用心棒代)が余計少なくなりますから、悪循環に陥ります。
TPP交渉の成否は、アメリカが同盟国を大事にするメリットを考える分水嶺になる可能性がありますから、アメリカを引き止めるにはTPPでアメリカにかなり良い思いをさせる度量が中韓を除くアジア諸国にあるかどうかでしょう。
今後アメリカを中心とした国際決めごとは、アメリカのご威光低下に比例して参加国にとってはアメリカの言うとおりにするメリットが減って行くのですから、これに比例して、アメリカに都合の良い意向が通り難くなって行きます。
アメリカが自分の威光低下に比例して既得権を譲る気持ちがないと次第に決まりにくくなる展開が予想されます。
(本来は5分5分のところをアメリカの警察官的役割のお礼を含めて有利に7対3で決まっていたとすれば、今後はその比率を下げて行くしかない展開で、これにアメリカが我慢出来るかになります)
依頼者が自分の実体的能力以上の要求をしていれば、誰が交渉担当になってもうまく行きません。
アメリカ国民や政府が自分が対外約束を守れなくなっているのに、従来どおりアメリカに何割も有利な約束を獲得しろと交渉担当者に命じてもうまく行きません。
名交渉家と言われるようになるには、まず依頼者に対して自己のおかれた状況説明能力が必須です。
例えば敗訴が確定した事件を相談された場合、交渉出来る範囲が限定されていますのでその限界を良く説明して納得してくれた範囲で受任しますが、その他の訴訟前の交渉も彼我の戦力分析をして見通しを立てて受任するのですから、我々弁護士業務と政府間交渉も似たようなものです。
TPP交渉がまとまらないのは交渉担当者の無能力によるのではなく、アメリカが従来全面的に「俺に任せておけ」と言えた時代に比べて、どこまで要求レベルを引き下げて良いのかが決まらない・・アジア諸国もあまり当てにならなくなってるので、今まで通りは譲れないが、どこまでアメリカに譲って対中戦線の仲間に引き止めるかの軸が決まらない・・お互いに初めての交渉になっているからではないでしょうか?
日本もアメリカを自陣営に引き止めるにはそれなりのミカジメ料の負担が必要ですから国内利害調整ばかりを理由にしていられない高度な政治判断が求められます。
風俗や料飲店で変なヤクザの嫌がらせを受けないために、特定のヤクザにミカジメ料を払うような関係ですが、国際社会にはまだ統一国家がない以上は仕方がないのが現状です。
折角頼んでいるヤクザAが隣のヤクザBに対抗してくれるかどうか分らないのでは、意味がないのでミカジメ料の払う相手をヤクザBに乗り換えようかと言うのが韓国の動きです。

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