連銀による財政政策2(通貨安競争1)   

アメリカ国債等の大口購入者が日本だけのトキはアメリカの政策には何でもOKですから問題がなかったのですが、中国が巨額保有者になって来ると中国の意向に国債発行額・・国内財政政策が左右される・・政治が左右されるリスクが出て来ました。
中国に大きな顔をさせないために、アメリカはQE1政策採用以降国際収支の赤字をそのままにしておいて、資金不足分は(無制限)自国紙幣発行で賄う方式に切り替えたことになります。
国際収支赤字分を黒字国からファイナンスしないで国際収支赤字分をそっくり自国紙幣の増発で穴埋めすれば紙幣価値が国際収支赤字分下がるのは必然ですから、通商政策的には、この時点からアメリカはドル安政策に切り替えたことになります。
QE1〜QE2政策は、政治的には中国に大きな顔をさせないためであり、内政的には内需拡大→物価上昇目的ですが、貿易競争面から見れば、貿易競争を有利にするためのドル安政策に転換した合わせ技になっているのではないでしょうか?
住宅ローン債権を連銀が買い取ってくれれば銀行は焦げ付きリスクがないので、顧客の支払能力を心配しないでいくらでも貸せます。
これが焦げ付いたときに、これまでのような銀行の不良債権問題も起きないし、公社の不良政権問題も起きませんが、連銀のバランスがどうなるかは別に機会があれば書きます。
連銀による債権買い取りによって住宅建設が進み内需拡大が進むのですが、それによっては消費が増加するのみで輸出が増えるどころか輸入が増えるので貿易赤字が増えて行くのが普通です。
貿易赤字はいくら増えても今後は黒字国からファイナンスしない・・自国紙幣増発で賄うとなれば、開き直って・ドル下落を容認するどころか積極的ドル安政策に転じたとみるべきです。
・・その結果行く行くは貿易競争上有利な地位を得て赤字も解消して行けるという遠大な政策変更であることを我が国は注意しておくことが重要です。
ドルが安くなって来た結果、中国で物を作ってアメリカに運搬するよりは、アメリカ国内で作る方が採算が良くなったという報道も散見されるようになっています。
QE3を好感して直ぐに株式相場が上がりましたが、国際収支アンバランスのファイナンスのために紙幣を1割多く刷れば、アメリカドルの価値も1割下がります。(国内的には1割の物価上昇)
仮にドル紙幣を1割増刷して内需拡大(今回で言えば住宅建設)してその分そっくり赤字が増えても、増刷したドルで支払うとした場合、ドル価値が1割下がっていれば実質支払負担が1割減るので、いくら紙幣増刷によって貿易赤字を増やしても何のリスクもないというのがアメリカ流解釈でしょう。
例えば日本はアメリカ国債を巨額保有していますが、1ドル230円台のときに買ったアメリカ国債が、今では70円台ですから、支払負担は3分の1以下に下がっています。
我が国でいえば、インフレ期待論・・国債残高が1割増えても2割のインフレになれば、実質負担が1割減ってしまうから万々歳という意見(日本の学者の意見はアメリカ経済学の受け売りだから当りまえです)と同じです。
まして、ドル安政策によって将来的には貿易競争力が回復する面があるのでうまい話です。
こんなうまい話が永久に続くのかということですが、それが出来るならば世界中の国が自国紙幣発行増競争・自国通貨安競争でぼろ儲け出来ます。
アメリカは基軸通貨国だから紙幣増発出来るというもっともらしい解説が多いのですが、基軸通貨とは通貨下落の心配がない・・信用があるというだけのことですから、信用がなくなったらどうするかの議論の解説になっていません。
EU域内以外の国々は自分の通貨発行権があるので、イザとなれば自国紙幣の増発で凌げることはどこの国だって同じです。
ドル紙幣増刷に合わせて日々値下がりを続けるとすれば、USドルでの決済を敬遠する方向になる・・基軸国の地位・名誉を捨てることになります。
通貨切り下げに関しては、April 15, 2012基軸通貨とは6(通貨安競争1)」前後で連載していますが、ここで別途考察して行きます。
自国通貨安競争とは言い換えれば、自国通貨の信用毀損・国民能力の安売り行為ですから、自国通貨安政策をどこの国でも滅多に採用しません。
戦後イギリスの地位低下に連動したポンド防衛に必死だったことを想起しても良いでしょう。

アメリカ連銀による財政政策1(QE1〜3政策の意味)

安定成長時代になると資金需要の主役は投資用から消費用に切り変わりますから、無利息〜マイナス金利が中心になって行くべきでしょう。
まして金貨時代とは違って中央銀行が好きなだけ紙幣発行出来る時代では、紙幣需要があれば直ぐ供給出来るので、(国際収支が黒字である限り)資金不足によって金利が上がる理由がありません。
言わば資金過剰(印刷能力の範囲でいくらでも印刷出来る)時代が到来しているのです。
現在では金利政策の効用がなくなっていて中央銀行の役割が低下していると何回も書いてきましたが、過剰供給の(生産余力が大き過ぎて困っている)飽食時代には金利下げ程度では需要を喚起することはないし、仮にあっても微々たるものに過ぎません。
しかも先進国では画期的発明がない限り、改良投資しかない投資効率の悪い社会になっているので、いくら金利を下げても景気対策としては何の効果もない(本来マイナス金利時代に突入しているのではないかという意見を前回まで書いてきました)時代が来ています。
このため今やアメリカでも、金利政策の意味がなくなったので所謂Q1(量的的緩和)、QE2が行われ、ついには日本時間の昨日待望の?QE3が実施されたようです。
Q3の内容を見ると、QE2までと違って言わば無制限に住宅ローン債権等の買い取りが出来るようです。
従来の国債等の買い入れから住宅ローン債権の買い取り枠を無制限に広げたことで住宅市場の底入れを目指しているのでしょうが、政府公認の住宅バブルの再来を目指していると言えます。
サブプライムローン・・支払能力のない低所得層に対してもローンを供与してこれを世界中にバラまいていた咎めがついに出てサブプラムローン問題・2公社の破綻となり、ひいてはリーマンショックでとどめを刺されたのがアメリカ経済不振・・現在の欧州危機の根源ですが、これを今度は2公社というクッションを置かずに連銀自体が直接引き受ける荒療治になります。
紙幣発行権のある連銀が住宅ローン債権を買い取ってやることになれば(買い取り基準に該当する必要がるでしょうが・・・)銀行は支払能力に疑問符のつく低所得者に対しても安心して貸せますので、サブプライムローンによってドンドン家が建設されてアメリカが見せかけの活況を呈していたサブプライムローン全盛時代の再来を狙っていることになります。
2公社が世界中に向けて債券発行して住宅ローン向けの資金調達していた(2公社が破綻するとこれを買っていた中国や日本が大損する関係でした)のとは違い、紙幣発行権のある連銀自体が無制限に住宅ローン債権を買い取るとその資金は自分の刷った紙幣で賄うので、これを得るために世界に公社債を販売してバラまく必要がありません。
2公社のように債券を再販売しない代わりに紙幣をバラまく・・紙幣価値は日々帳尻を外為市場で合わして行くので、イキナリのショックにはなりませんから、2公社のようにデフォルトの心配がない点が違います。
(実はアメリカ国債の最大保有者は中国ではなく、今やアメリカ連銀になっているとの報道を見たこともあります・・今後新規発行(借換債が殆どです)分をアメリカ連銀が買い受けて外国人保有と入れ替えて行けば、外国人保有による外国の発言権を心配しなくて良いことになります。)
アメリカは従来ずっと貿易赤字国ですから、政府資金や住宅建設資金を賄うために国債や公社債を発行して回収・還流していました。
紙幣に変えて債権を海外に垂れ流して来たのです。
その引き受け資金が国内にないことから、そのファイナンスとして貿易黒字国に自国国債等を買って貰って資金還流させていました。
(我が国は黒字国だから財政赤字資金を国内民間資金で賄ってきましたし、ギリシャなどは国内で賄えなかったので外資に頼った結果ついに危機になっています)
今後ドル紙幣を回収・還流させないまま同額の紙幣を垂れ流すと、国際収支の赤字分だけドルの価値が下がってインフレになります。
今後国際収支赤字分と財政赤字分の過剰支出分を自国紙幣増刷で賄うのみならず、過去のマイナス分も借換債発行の都度自国紙幣発行で連銀が仮に全額購入して行くとすれば、過去何十年分の倍速で押し寄せて来ることになります。
(過去に仮に年に100億ドルずつの赤字であって今後も同じ額の赤字とすれば、全額連銀引き受けの場合、毎年100億ドルずつの償還があって新規赤字の100億ドルと合計すると200億ドルずつの紙幣垂れ流しになります。)
こんな極端なことは出来ないですから、既発行債の買い替えの一部を連銀が引き受ける形で徐々に海外に出回っている国債・公債残高を減らして行くことになるのかも知れません。

マスコミによる世論誘導の害4(世代対立を煽る愚2)

July 16, 2012 「マスコミによる世論誘導の害3(不毛な財政赤字論2)」から話題がそれていましたのでその続きに戻ります。
上記で書きましたが、国家予算は単年度の現金収支主義ですから、当座決済資金としての意味もあります。
しかし、これは飽くまで当座の決済可能性・資金手当を吟味すれば足りるのであって、黒字企業が黒字の大部分を再投資に回してしまい、決済資金として手持ち現金を少なくしていて、その代わりにイザというときのために、銀行と一定額までの融資協定を結んでいる場合や、借入金で当座決済を賄っていても何も問題がありません。
長期的視点・・「次世代に負債を残すのか」という視点で将来の安全性を論ずるならば、その他資産内容を見ないで当座の借金額(他にそれ以上の資産があるかを見ないで)だけを取り上げて「大変なことになる」と不安を煽っているのは論理のすり替えです。
長期的視点では総合収支が赤字なのか黒字なのかが重要であって、目先の決済資金・当座性資金が多いか少ないか、それが借金によって賄っているによって優良か不良かの区別にはなりません。
次世代に負担を残すかどうか(将来)を論じながら、目先の当座決済資金源が国債という借金によることを過大に論じて不安を煽るのは、長期視点を論じるのに短期データを利用しているのであって、論者が都合よく資料をごっちゃにしていることになります。
次世代論=将来を論ずるならば、国家の資産内容を総合把握してから議論すべき事柄であるのに、これを全くしないまま目先・当座の決済資金としての金融資産の出所だけの収支(借りているか自己資金か)を議論しても意味がありません。
マスコミは、総合資産表を問題にしない単年度の財政赤字議論をしているのですが、金融資産だけを見て(当座資金の出所だけを見て)赤字か黒字か・・・、そもそも当座決済資金だけの資金出所で赤字か黒字かを論じること自体がナンセンスであることが分ります。
学校用地・公園用地や資材置き場を買収し、駅前広場を整備しあるいはロケット打ち上げ基地の買収等でその分巨額支出して赤字が増えても、同額の資産が残っているのであって、人件費に使ったのとは意味が違います。
ロケットや海底資源探査の例で言えば、有形資産だけはなく長期にわたる研究実験成果や教育投資も次世代に残すべき重要な遺産です。
当面決済に必要な現金勘定の資金源ばかり俎上に載せて「大赤字だ・大変なことになる」と騒いで「次世代は損だ」と宣伝しているマスコミの姿勢は、こんな(教育・研究その他長期的に形成するべき資産)ものにお金を使うよりは現金さえ残してやれば良いかのようなおかしな議論と言えるのではないでしょうか?
(以前にも書きましたが、私のマスコミ批判はマスコミが直接社説等で主張していると言うのではなく、マスコミの意に副う意見を中心に紹介して国民にじわじわと浸透させて行く報道のあり方/マインドコントロールが問題という視点で書いていますので誤解のないようにお願いします)
多くの親は子供に残す遺産として現金を数百万円減らしても、高校進学させたりさらに巨額を使っても(ある程度借金してでも・・この場合借金が残される次世代が可哀想だとなるのでしょうか)子供のためには大学進学させたいのが一般的価値観ではないでしょうか?
(子供が中卒で遺産数百万あるのと遺産ゼロでも高卒、大卒になるのとどちらが良いかの価値判断です)
経済成長期以降現在まで蓄積された公共資産も巨大ですが、みんなこれらを次世代に相続して行くのであってその分現金遺産が減るのですが、次世代が損をするどころではありません。
世代間対立を煽る愚については、2012/05/05「海外収益還流持続性1(労働収入の減少1)」2012/05/06「労働収入の減少2(世代間扶養1)」2012/05/07「世代間扶養2(恩愛の情)」まで書いてきました。
格差や世代間対立を煽るのは愚策ですが、それと実際に苦しくなっている次世代への思いやりや格差が生じている現実への注意とその対策を考えるのは必要です。
私はこれを無視して放置するべしというのではなく、取るべき対策は取るべきで、研究すべきはすべきですが、世代間対立を煽っても仕方がない・・むしろマイナスだという意見で書いています。

マスコミによる世論誘導の害2(不毛な財政赤字論1)

「1000兆円の国債・債務を次世代に残すな!」「年金不安で次世代は損ばかり」とマスコミは宣伝し、国民の多くがその宣伝を真に受けてその気になっています。
しかしその内95%・950兆円は国内保有=債権者は国民ですし、その保有債券を相続するのも次世代ですから、差引僅かに50兆円しか次世代に残す負債はありません。
個人金融資産が1500兆円と言われていますので(上記国内保有比率が今後下がってもその分海外債券を持っていれば結局は同じです)差し引き500兆円のプラス財産を次世代に相続させることになります。
相続財産としては金融資産に限らず自宅やアパート保有など親世代の保有不動産も今では莫大で・一般的にはこちらの方が大きいのが普通です。
この辺は都市住民2世と地方出身者との格差として、今後相続財産のウエートが上がるというテーマでFebruary 5, 2011都市住民内格差7(相続税重課)」まで連載しました。
例えば数億円の自宅やアパートがあって数千万円の負債があった場合、マスコミのように金融資産だけで見れば次世代は数千万円の負債相続ですが、不動産価値と総合すれば数億円の黒字相続です。
個人の場合住宅ローン債務が3000万円あってプラス金融資産が数十万円しかないときに、金融資産だけで見れば約3000万円の赤字ですがマンション価値が8000万円であれば、誰も騒がないでしょうし、子供も金融負債の相続をイヤだとはいいません。
住宅ローン支払中世代は金融資産だけで見れば、(自己資金で間に合えば借りないのが普通でしょうから)一般的に金銭債務だけ見れば債務超過・赤字家計ですが、総資産としては黒字の人が多いでしょう。
相続開始前(65歳以上)の人は住宅ローンも終わっているのが普通で、定年直後は退職金等による金融資産と不動産価値はほぼ均衡しているでしょうが、高齢化に連れて金融資産を食いつぶして行くので、主たる資産は不動産中心となり、プラスそこそこの金融資産を有している人が平均的なところです。
富豪は別として平均的サラリーマンで言えば自分の寿命プラスα程度の金融資産があれば良いという人生設計が普通ですから、80〜90歳前後の人の資産としては不動産が中心で金融資産はホンの一部である人の方が多いでしょう。
お金があまりなくともお祖父さんお祖母さんの保有資産の相続は、大きな価値があるのが普通です。
マスコミで問題にしている資産は、総資産のホンの一部に過ぎない金融資産だけですが、それでさえ1500兆円もあります。
仮に金融資産がゼロに近づいても、実は保有不動産その他の資産価値が大きい時代ですから、これを無視して次世代が負債を相続すると騒ぐのは国民に余計な不安を煽っていることになります。
国有資産も同様で1000兆円の国債=負債があっても、それ以上の国内投資をして対応する資産があれば(個人金融資産が仮に1500兆円もなくてゼロだとしても)黒字の政府です。
政府の財政赤字を騒いでいるマスコミ論調は、個人で言えば住宅や保有アパート価値・保有金融資産などプラス資産をあえて全部無視して、住宅ローン債務だけを針小棒大に論じているようなものです。
こんな議論の方法は子供騙しそのものですから、明らかに誤誘導・一定方向(増税)への意図的な世論操作をしていることになります。
将来大変なことになるかどうかはトータル資産・・バランスシートで見なければ、金融資産のマイナス分だけ見ても話にならないことは誰にでも分る道理です。
企業規模/経済規模が大きくなれば負債も大きくなりますから、大変な負債かどうかは企業全体の規模で比較しないと何とも言えません。
マスコミは比較すべきプラス財産総額を全く論じないで負債の絶対的な大きさだけで、「大変だ」と論じている不合理な論法で、これで日本中が黙っているのですから不思議です。
こんな報道に対して、(日本国民は賢明だから黙っていても内心)みんな馬鹿にしているのだろうと思っていたのですが、6月14日書いたように学者が大まじめにこれを信用しているのにも驚きました。
学者と言えばいろんな専門家のブログを読むと、専門外のことを例として言及する場合マスコミが報じているステレオタイプの誤った知識・歴史認識を前提に書いている人が多いのにも驚きます。
学者の立論の前提が誤ったステレオタイプの知識に基づいているのでは恐ろしいことですが、そう言う意味でもマスコミの学者に与える誤った前提知識の弊害も大きいのです。
次世代に対する負債の先送りとして議論するならば、上記の通り対応する自宅等の不動産車機械などがあれば健全なことになるので総資産とのバランスが重要です。
マスコミの論法は住宅ローンで自宅購入し、あるいは企業が借入金で設備投資した場合に、購入し入手したプラス資産を全く評価しないのですから、銀行制度や社債発行自体を悪だと言っているようなものです。
経済の世界では基本常識になっているバランスシートで健全性を見る方式を、マスコミも知っている筈なのに財政赤字論に関しては全く無視していることになります。
この辺のことは以前から連載しましたが、逆から言えば赤字解消のために国有資産を売却して財政赤字を減らしても、(同額の資産が減っているので)国民にとってマイナスを減らしたことにはなりません。
NTTや専売公社・郵政民営化や国有地である公務員宿舎用地売却で大金が転がり込んでも、その分国有資産が減っているので、総合的な財務(バランスシート)としては変化なし・意味がありません。
(マスコミでは財政赤字だから宿舎用地など売却すべきだという論調がおおいのですが、国家財政全体から見れば意味のない主張で、経済政策として民営が良いか公務員に宿舎が必要かどうかの視点だけであるべきです)
民主党による埋蔵金を吐き出せば良い式の議論も同じで、その分国家資産が減るので差引経済(バランスシート)的には同じです。
マスコミだけではなく政党も経済学者も金融資産・・それもマイナス部分だけをテーマにしている結果、意味のない議論に日本中が時間を掛けていることになります。
年金未納率を減らすために社保庁がドンドン免除者を増やしていた(納付義務者を減らせば滞納率は下がりますが、払う人が実際に増えた訳ではないので年金赤字問題には何の解決にもなりません)のと同じで、問題の解決に関係ないことに時間を費やしているのです。

マスコミによる世論誘導の害1(世代対立を煽る愚1)

国が良くなるもならないも、政治的意見もマスコミのレベルに大きく影響されます。
先日ある役所の会合に出ていて、テーマ外のことで財界系の委員と学者委員とで大激論になったことがあります。
あるテーマについて議論している際に、若手学者が未成年者の入場料を無償にすべきだという発言をしたまでは良かったのですが、更に
「若者は年金や税その他で損ばかりしているのだからそのくらいサービスすべきだ」
と言ったことに対して、県財界の長老でもある委員が、これに対して
「教育者がそんな間違った考えでは困る」
と猛烈に噛み付いて、議題とは関係のない世代論に発展してしまいました。
居並ぶ行政庁の役人(局長以下)は委員からの質問に答えることは出来るものの、質問もないのに会議に口を挟むことも出来ないので、唖然として見守るしかなかったのが何となく滑稽でした。
公開の会議でしたので、傍聴人も笑って・・まじめな(決まり切った?)会議よりもよっぽど面白かった?・・聞いていました。
(公開会議なのでその内議事録がネットで公開される筈ですが、逐語訳ではなく概要になるので多分テーマ外の議論は掲載されないでしょう)
そこではしなくも分ったことは、学者も専門外のことについてはマスコミ報道・・「次世代が損だ」という偏った報道の鵜呑み程度の意見しか持っていないことです。
今日のコラムに限らずこのコラムでのマスコミ批判は、マスコミが直接社説等で主張していると言うのではなく、たまには違う意見も乗せますが・圧倒的多数意見として繰り返し掲載されている意見(多くの国民は鵜呑みにしますので影響が大きい)・・主流的意見批判として書いていますので、そのつもりでお読み下さい。
彼は若いので子育ての経験もないからでしょうが、子供が親に世話になることはあっても親に育ててもらったことを越える面倒を見る子供は数えるほどしかない現実に思いが至らなかったようです。
鳩山元総理のように(総理までなったのですから毀誉褒貶があるとしても一般的に言えば成功した人でしょう)成功した人でも親から受け継ぐ以上のことを、(ここは経済的な損得のレベルで書いていますが、親が子供を思う心以上に子が親を思う心の比較としても同じです)親にしたとはとても思えません。
鳩山氏のように成功した訳ではありませんが、私の場合を振り返っても親が遊びに来たときにホンのちょっとしたプレゼントしたくらいで、親が命がけで戦火の中を逃げ回り私達子供を育て上げてくれたことに比較して何ほどの恩返しもしてません。
東京の家は空襲で燃えてしまい、何の遺産も貰えなくて自分でゼロから資産を築いた私の兄の場合、100歳まで親の面倒を見たので、親にしてもらった以上のことをしていると思いますが、こう言う例は稀だと思います。
(こう言う例は戦後を生き抜いた70代以上の世代に比較的多いだけで、今の若者世代にとっては親にしてもらった以上のことをしている人の比率はもの凄く下がっている筈です)
ここ数十年前から子供一人を普通に大学卒までに育て上げるだけで何千万もかかる時代ですが、かなり成功した息子でも親に何千万円も出す子供は1万人に一人もいないと言っていいでしょう。

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