仮に東電の原発事故前の既発行社債合計が1兆円あったとして、今回の賠償用に10兆円の社債発行が必要になったとすれば、(既発行債は投資資金だったとした場合)1兆円の投資による回収金で11兆円分の負債の金利(本来ならば元利)を払って行くことになります。
実質利回り0、5〜0、6%の金利としても、投資に対する負担としては10倍の5〜6%の金利負担となります。
ちなみに、2011年 4月 4日 11:50 JST「ウォール・ストリート・ジャーナル」http://jp.wsj.com/Japan/Companies/node_215640?mod=LatestAdBlock2によれば、東電の発行済み社債総額は5兆円規模と書かれています。
9月3日現在でネットで平均利回りを調べてみると、みずほなど大手銀行の社債で0、5%前後、政府保証債や東京都で0、4%前後、東電は事故直後のは20何倍の金利差でしたが、今でも4〜5%で大手銀行に比べて約10倍の金利差です。
このままの相場で新規発行していたのでは、東電は払いきれないので政府保証債にして金利コストを安くあげようとしているのです。
中小企業対策としての利子補給と同じ仕組み・大手ですから利権と言うべきでしょうか?
(既発行債の5兆円全部を順次書き換える必要を基準に考えると、5兆円に対する現在の相場である5%で年間2500億の金利負担ですが、これが政府保証債になることによって、10分の1以下の0、4%台=200億円台の金利負担で済むことになりますから、年間約2300億円の利子補給を受けるのと経済的には同じです)
上記のように安い金利にして貰えるとしても、もしも賠償金として50兆円〜100兆円必要となれば、既発行債5兆円規模の設備投資からの回収に対してその10〜20倍の金利負担が発生する計算ですから、賠償金用の社債を新規に発行してもその金利支払だけでも負担が大きすぎて将来的にはこの金利すら払えなくなることが目に見えています。
仮に100兆円損害賠償用に必要となれば、その金利だけで年間4000億円が通常経費の外にかかることになります。
ちなみに汚染水処理費用の内仏アレバ社に支払わねばならない費用だけでもwww.news-postseven.com/archives/20110525_21234.html – キャッシュでは、以下の通り報道されています。
「フランス側から提示されている処理費用4 件はとんでもない金額だ。なんと汚染水処理に1トンあたり2億円もかかるという。最終的に汚染水は20万トンに達すると見られているので、それだけで40兆円。東電どころか日本が破綻してしまう」
※週刊ポスト2011年6月3日号(関連記事)
実際には要求通り払う訳ではないでしょうが、半額に値切ってもアレバ社に払うだけでも20兆円と言う巨額です。
(その後毎日新聞報道では20兆円くらいに試算されていたようですが、最近では更に減少して500億円台になったとも言われています・・何が本当やら・・?)
その他アメリカから借りたロボット料金や、各種資材などでも巨額になって来るでしょう。
これらは損害賠償資金ではなく、事故収束に向けるためだけの費用です。
だからこそ株式市場では、将来行き詰まると見て・事故発生直後から2000円台の相場から400円台まで大暴落になったのです。
実際、社債相場でも東電の既発行債の相場は大暴落・・金利高騰・23倍になっていたようです。(上記の通り今でも約10倍です)
そこで政府保証債の発行となったのでしょうが、政府保証債で金利が安くなっても、借りれば(元金と)その分に対する金利を払う必要があることは同じです。
これを東電の従来債務の元利を払いながら、新たに発生した事故処理費用や賠償金分まで払い続けることが不可能な点が変わる訳ではありません。
東電が事故後経費率が上がった中で、膨大な金利を払って行ける訳がないことから市場価格が暴落・・金利上昇していたのですが、この点は、政府保証をしても金利が従来通り安く抑えられるようになっただけですから、従来金利で払えそうもない点は同じです。
賠償金用として仮に50兆円発行したとした場合、その金利負担に耐えられないので金利分上乗せを増額した社債を借り換え用に再発行して繰り返して行くしかありません。
(現在雪だるま状態に陥っている赤字国債と同じ結果です)
将来いつかは行き詰まるしても、いつか今のところ分らない点は国債の破綻と同じですから、直ぐには破綻しない・・先送りしただけになります。
いつかは破綻する予定ならば、国債破綻と違い危険な原子炉がありますので、将来何時破綻しても良いように、すべての原子炉を徐々に廃止して行く必要があるでしょう。
原子炉が動いたままある日国債と一緒に東電が破綻したときには、今度のように最後は国が面倒見てくれるという後ろ盾がないので、原子炉を止めるべき人材も逃げてしまう可能性がありますし、緊急事態になっても仏アレバ社のような外国資本が応援してくれないリスクがあります。