国債引き受けに関する外国人比率が仮に2割3割と上がってもあるいは5〜6〜8割に上がっても、日本が対外純債権国である限り国債がいくら増えても対外的に困ったことにはなりません。
日本が外国国債を100兆円持っていて日本国債を外国勢が50兆円持っているときに売り攻勢を受ければ日本は保有している外国債券を売り浴びせて対抗すれば足ります。
現在で言えば日本はアメリカ国債を1兆ドル以上保有しています(その他にユーロその他の外貨も持っています)ので、外国人投資家(ソロスのようなアングロサクソン系デイーラーが現在の国債金融プロの中心です)が日本国債を売り浴びせて勝負を掛けて来たら、日本は保有しているアメリカ国債を対抗売りすればアメリカが困って直ぐに中止するしかない・・空売りを仕掛けた方が大損するしかありません。
日本が対外純債権国である限り、国債暴落事態は起きないのが論理的帰結です。
国民に心配を呼びかけるならば、国債の残高の大きさではなく、日本がどの程度の生活水準で貿易収支以上の支出を続ければ対外債務国に転落する心配があるかの研究とその成果発表であるべきです。
もしも現状の生活を維持すると国際収支が赤字になるとすれば、国費の繰り入れ方式が国債から税に変わっても政府の支出額が同じままでは国際収支がどうなるものではありません。
このときに必要な提案は生活水準を収入以下に落とすべき提案・意見です。
国債発行残高累増の問題・・国民の心配点は、国債の量と税収の関係にはなく国全体でその年ごとの収入以上の赤字生活・・貿易収支赤字を続けると対外的借金国に陥ってしまわないかの心配でしょう。
経済学者が国際収支赤字→純債務国転落を心配しているならば、今年度あるいは近い将来の日本の支出計画を示して、このままの水準で行けば、何年後には国際収支赤字に転落するから予算規模・生活水準をどの程度縮小すべきかの議論を仕掛けるのが筋です。
(国民に一定の生活水準を保障する思想が前提として編成される)予算規模が国際収支上持続可能かの議論をせずに、収入源を国債から税に変更すれば解決するかのごとき意見は論旨が無茶過ぎます。
このまま財政赤字が続けば大変なことになるから増税すべきだと多くの論者が言いますが、上記の通り財政赤字と国際収支赤字とは同じ赤字という言葉を使っても分野の違う概念です。
財政赤字は国民と政府の帳簿付け替え関係であり、対外的に赤字になるかどうかの議論とは関連性がありません。
税を一杯とって政府だけが財政黒字でもトータルとして国全体の支出が国全体の収入を上回っていれば(国際収支赤字である限り)不健全ですし、財政赤字でもトータル支出が国民の稼いだ総収入以下(国際収支黒字)であれば内部(政府と国民の)の分配問題に過ぎません。
息子や娘に生活費を強制的に入れさせずに子供らに借金しながら贅沢していても、息子らと親の対外的総収入の範囲内であれば、その一家は将来的に何の問題もありません。
逆に息子らに強制的に生活費を入れさせても息子らがそのために対外的に借金して入れている場合、息子らがサラ金地獄に陥ってしまうリスクが高まります。
国債が累増して行くと大変なことになるのは国際決済が出来なくなる(対外債務累増)ことにあるとするならば、政府の財政赤字額の多寡が問題ではなく、日本経済全体が対外的に赤字になるような支出計画かどうかです。
現在の予算(支出)規模で行くと、仮に何年間で日本経済が過去の蓄積を食いつぶして対外純債務国に転落するのであれば、予算=支出額をそのままにして税を上げても同じです。
現在の年金・社会保障その他公的インフラ水準を保障して行くと仮に今後5年で経常収支赤字を通り越して対外純債務国になるとすれば、年金給付等各種インフラ水準を引き下げるしかありません。
(国際収支が赤字になるのは国内生産以上の消費をした場合であって、その原資が国債によるか、税収によるかは関係がありません。)
国民は長期的には国際収支の範囲内でしか生活出来ない(一時的に借金で贅沢出来ますがいつかは破綻する)ことは自明です。
親の生活費として月25万円仕送りしている息子がこのままでは後5年で自分の貯蓄を食いつぶしてサラ金に借りないと親に仕送りを続けられなくなるとすれば、払えなくなる時点まで仕送りしてお金がなくなったら仕送りをイキナリストップするか、今から、親への仕送りを20万円に減らして(親に生活水準を落として貰い)仕送り期間を10年に延ばすかの議論が必要です。
この議論で、息子の仕送りを任意による(国債)のではなく強制的に親が取れる権利(税)に変更しても、事態は変わりません。
ちなみに税を上げる・国債増発は、政府支出を増やすことです。
もしもこのまま行ったら国際収支が近いうちに赤字になって大変だとするならば、むしろ政府支出を抑える方向・・減税して所得再分配基準を引き下げる・・国民に我慢を求めるための論説ならば趣旨が一貫しますが、国際収支の赤字の心配を煽った上で、それが増税の必要性に何故繋がるのか趣旨不明のマスコミ論調が多すぎます。
国債で賄うか税をどれだけ取るかは、日本経済全体の収入範囲内での分配問題でしかなく、税収を上げても国際収支が好転することはありません。
4月6日に書いたように国債による資金吸い上げは余剰資金の吸収ですが、税による場合有効利用出来るべき資金まで強制徴収してしまう結果、経済萎縮効果が大きくて却って国際収支赤字転落を早めてしまいます。
ただし私は消費税にシフトして行くのが公平だと言う意見を何回も書いているとおり、消費税率を上げて所得税を少なくして行く事自体には賛成です。
国債の累積を増税によって解消しないと日本経済が大変なことになるとする現在流行の論理がおかしいので反対しているだけです。